99話 別荘じゃダメですか?
海で遊んだ後は、今夜泊まる皆越先輩の別荘に場所を移した。
「別荘と言っても普通の家だからな。あまり期待しないでくれ」と皆越先輩入っていたのでそういうものなのかと思っていた。
しかし実際に付いてみるとそれが嘘だったことが分かる。
誤解なきように言うと、皆越先輩は嘘をつく意思はなかったのだろう。
ただ、本当に大したことない普通の家だと思っていたのだと思う。
「先輩なんですかここ……」
皆越先輩の別荘を目にした僕は思わず言葉を失った。
その家、というよりは屋敷といったほうが正しいか。
とにかくそれはデカイ。
語彙力が壊滅していると言われるかもしれないが、誰もがこの屋敷を見てまずはじめにその感想を抱くだろう。
もしくは凄いとかそういう感情かもしれない。
大きさは良い例えが思いつかないが、少なくとも10世帯が広々と過ごせるくらいの壮大さだ。
外観は古さを感じるが、それはボロいとかそういう古さではなく趣を感じるような、もっと言えば歴史的価値のありそうな古さだ。
皆越先輩が、観音開きのドアへ向かうと彼女が触れていないにも関わらず開かれる。
一瞬自動ドアかと思うも、流石にこの外見でそれは無いだろうと思う。
少し待てば、中にいた人が開けているのが見えた。
「どうしたんだ泰くん。入んないのか?」
はっとすると、その場所に立ち尽くしたままなのは僕だけだった用で、3人は屋敷の中に居た。
僕も慌てて皆を追いかける。
「お邪魔します……」
恐る恐ると言った感じで扉をくぐる。
『おかえりなさいませ。ゆかりお嬢様。』
中に入ると数十人の召使いが規律の取れた礼をしている。
僕は弥久先輩に耳打ちをする。
「(僕、GHQによって財閥は解体されたって授業で習ったんですけど)」
「(は?何言ってるの。まあ無理もないか。私も最初は驚いたし)」
「2人でなにコソコソ話してるんですか?」
『なんでも無い』
つい反射的に否定してしまったのが良くなかったのか、弥久先輩とかぶってしまった。
特にやましいことは無いのだが、なんだか後ろめたい気分になる。
そんなもんだから瑠璃は怪しむような視線を向けてくる。
しかし、それも一瞬のことですぐにいつもの瑠璃に戻ると、
「まあ良いです。そんなことより見てください!本物のメイドさんですよ!私初めて見ました!」
青い瞳を輝かせる瑠璃。
「本物の定義がわからないけど、それがプロとしてやってるってことなら見たことあr……ぶっぉ」
隣から飛んできた拳が僕のみぞおちに沈み崩れ落ちる。
「私は初めて見るわ。誰がなんと言おうと初めて見る」
「弥久はここはもちろん私の本邸にも来たことあるだろう?」
弥久先輩はしまったという顔をしていた。
「皆越先輩。ここ見て回りたいです。案内してください」
「ああ、任せておけ。そうだなまずはあそこから見せるか」
良くも悪くも自由な瑠璃が皆越先輩を連れて屋敷を見に行った。
「なんだか、瑠璃に助けられるのも癪に障るわね」
「そうかも知れませんね」
「まあ、あんたのせいでこんな事になったんだけどね」
「…………」
その後僕は、荷物を置くために使用人に部屋を案内してもらった。
客間だと言うのに、僕の部屋より数倍広かったのは少しショックだった。
そもそもここ別荘だったよな、と疑いたくなるほどに。




