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マンション開拓①

読んでいただきありがとうございます

ご意見ご指摘感想待ってます

ウチの兄、小野崎悠は正直めんどくさい人だ。学生時代は私と喧嘩は絶えず、嫌いではないけど好きにもなれない。でも基本は優しく、私に何かあると烈火のごとく怒ってくれるのです。

そんな兄が家に引きこもるようになり、だんだん様子がおかしくなり最近でこそ、以前のように笑うようになったが、時々悲しそうな顔をしている。


その兄が最近再開した篤紀くんと食料を調達しに行ってからまた元気がない。

友も邦彦くんも心配そうにしているが何かあったのか聞いても、


「なんもないよ〜!あ、それより久し振りにホットケーキでも作るかなぁ」


と、笑顔で話をそらす。篤紀くんに聞いてもいい辛そうにしている。話したくないならこれ以上は聞かないけど、正直気になるんだよなぁ。


「ねぇ、友ちゃん誰かから連絡きた?」


「ぜーんぜん!でもなんか、会えそうな気はする」


「なにそれ」


友ちゃんはいつも根拠のない自信というかそういうのがすごい、まぁそれに元気付けられたりしているわけなんだけどさ。


「でもさー、悠くんすごいよねぇ」


「なにが?」


「だってさ、色々知ってるしここでこうやって居られるのも悠くんが色々頑張ってくれたからでしょ?」


そうなんだよなぁ。お兄ちゃん、あの日からすごい張り切ってて…。でもさ、一人で食料調達に行ったりとか、あーいうのはもうやめて欲しいな!いつも張りきるとどっかで空回りするんだし!


「由紀ちゃん?」


「え?あぁ、ごめんごめん!お兄ちゃん、普段からこうなったらこうしようって考えてたらしいし、それが奇跡的に実現しただけだよ」


「それは…まぁ。」


友ちゃん、そこは痛いって素直に言ってもいいんだよ……。


「さ、また筋トレでもしよ!」


「またー?由紀ちゃんむきむきになっちゃうよ?」


「いざという時役に立ちたいからね!今日はなんのドラマ見ながらやろっか」


「んー、夏のソナタは?」


「ふるっ!まぁいいけどさ!」


まぁ、お兄ちゃんのことだ。きっと時間が経てば元気になるでしょ!ウチの家族はみんな悪いことは寝れば忘れるしね!



▼△▼△▼△▼


小百合さんの心配そうなあの表情が…

あの時叩き潰したあの女の子の感触が…

頭にも体にもしっかり残っていた。


気持ち悪い。

キモい!

思えばあの時始めて殺したのはあの子だった。

ゾンビだから殺してもいい?いや、違うだろう?元は人間だ。家族だっている。

それに俺はゾンビに限らず生きてる人間も殺してる。不思議なことに全く躊躇いもなくやれたんだ。

本当は自分が一番死にたいくせに。気持ち悪い。


「はっ……」


ここ最近寝ようと横になると以前のようにマイナス思考になってしまう。そのせいか夢の中でも自問自答は繰り返され時には悪夢を見て起きてしまう。

顎を引っ張られるような指先から感覚の抜かれていくような不思議な感覚と共に自然と涙が出ていた。


時計はまだ4時半。すっかり目が覚めたな、軽く外に出てみるかな。

外はまだ少し暗いけど、まぁ太陽も出てきている。最初はあの腐った匂いも辛かったが………いや、今も慣れてねぇわ。くっさ!!

あの一見以来犬がウチの下によくいるのを見かけるため、前回篤紀と出かけた時ドックフードを大量に持ってきた。二階から一階にばらまくくらいしかできないが、ばら撒けば集まって食べていってくれるし、もうこっちに来ないことを願おう。共存大切!


さて、朝飯の用意でもするかな。

台所でパスタを茹でていると、携帯が鳴り出した。親父からか?

メールは2つ。夜中に1つとさっき来たものだ。


--大和--

「実家はみんな荒らされてて連絡がつかなかった。今日中にザキの家に行っても大丈夫か?」


--???---

「無事?」


さっき来たのは大和たちか。

勿論大丈夫だが、途中食料や資材を持って来れたら持って来てほしい。と返信を送っておいた。問題はもう一つ。

登録してないメアドからだ。とりあえず、無事だとだけ返信はしておく。


黒のゴミ袋に水を入れ天気がいいので今日も外に置いて温めておく。

んじゃ、起こしにいきますかなぁ


「おーい、起きろー。朝ごはんよぉ〜」



▼△▼△▼△▼


「情熱の〜赤いバラ〜♪」


「今朝は随分機嫌いいね。」


「そう?普通よ普通。それよりこれ持ってってー」


「これは?スパゲティよ。粉チーズとタバスコ持ってってね」


「ホント、非常時とは思えないほど不自由ないんだよなぁ。」


「ボーイスカウトで鍛えましたから!なんなら食える草とかも知ってるわよん」


「お兄ちゃん!やめてよ!?」


顔を洗った由紀が台所の入り口から頭を出して全力で拒否していた。

んー、ノビルとか美味しいのに…


「そういえばザリガニ釣り行った時もなんか本読みながら野草拾って食べてたよね」


こら邦彦!やめなさい!


「お兄ちゃん……?」


由紀はゴミを見るかのような目を向けてくる。久しぶりに見たよこの目!なんか癖になりそうな申し訳ないような気持ちになる目だ。


食事を済ませ、今朝の大和たちのことを伝えると皆、了承してくれた。俺もてっきり大和たちはどっかのホームセンターで立てこもる方を選ぶと思っていたから意外だったが、信頼できる人は多くいた方がいいからまぁいいよな?


そういえば、邦彦の体が完治した。

まぁ、片手ヒビ入ってるんじゃないかと思っていたが、そうでもなかったようで、今なんて由紀たちと筋トレをしているくらいだしな。

昼からは由紀たちも連れて三階の開拓でもしようかな。



「バゥ!バゥ!バゥ!」


外から野犬を率いてるボスの夜叉丸(俺命名)が吠えている。コイツは餌をやるようになってから階段前で番をしてくれている。


玄関を開けて見るとゾンビたちがいつも通りウヨウヨしている一階に大型ワゴン車がこれでもかというくらい奴らを薙ぎ払いながらエレベーター前の広場で止まった。


車からライダースーツにメットをつけた奴やミリタリー服に身を包んだ男が7人ほど飛び出し、周りのゾンビを一掃し始めた。


「おーい!持って来たぞ!」


「大和!!久しぶり」


二階からロープを垂らし近くのパイプに繋ぐと一人ずつ荷物を背負ったまま登り始めた。


「久しぶりだねぇ」


「お前はそうだよな。ってか、なんかやつれた?」


そうかな?そんな気はしないけど…


「久しぶり。かっちゃんたちも途中拾ってきた!」


「よっ!」


次々と登ってくる面々に非常に懐かしさを感じる。

とにかく部屋にあげ、温めた水を風呂に貯め、全員風呂に入れさせた。


「すごい数になってるね…」


「まぁ最悪となりの家とか空いてるしそこで寝てもらうしかないだろ」


風呂から出てきた大和たちはすっかり小綺麗になって、さっきの荒くれ者感はすっかり無くなっていた。


「友ちゃんと由紀は初対面だったよな?

左から、佐々木大和、中岡利伸、弓塚太輔、七星雄太、森勝樹、坂東凛音、大島昇だよ。

みんな俺と小、中一緒だったんだ」


「小野崎由紀です。太輔くんは久しぶりだよね。」


「邦彦の妹の友です。よろしくお願いしますね」


「由紀ちゃん久しぶり。もう高校生かぁ早いねぇ」


弓弦とは幼馴染のため由紀とはかなり面識があるのだ。それに由紀や友ちゃんの存在は小学校や塾が同じなのでみんな顔は知っている。


改めて自己紹介とここでの簡単なルールを説明して、流石に狭いので隣の空き部屋に泊まってもらうことにした。

それにしても、11人かぁ、サッカーの試合出られるなぁ…



△▼△▼△▼


俺、大和、太輔、篤紀、勝樹の五人で三階の開拓を始めた。


うちのマンションは10階まであるのだが、この間篤紀と帰ってきた時、外から見たらベランダに紐が垂らされており、上の階から下の階へ侵入した形跡が見れたから、4人の時はなるべく外に出たくなかった。しかし、今は11人もいる。みんなになら任せても大丈夫だろうから、心置きなく上の階へ捜索にいける。

上の階への階段は封鎖されたままだったが、一つ一つ崩して一階から二階への階段のところへ積んでおいた。

階段は俺同様滑りやすくなるようなにか垂らしているみたいなんだよなぁ…


三階に着くと、ボロボロの扉や窓の割られた部屋が無数にある。


「こりゃひどいな…」


「最悪この煙玉でまた…」


「まだそんなの持ってたのか…」


「これめっちゃ臭いんだよねぇ…」


「とにかくみんな固まっていこう」


端っこの階からゆっくり侵入するが、どうも人は居ないようだ。

まぁ、食料もないわけだけど…。

冷蔵庫なんて開けた瞬間腐卵臭したしね。


「次の部屋行くぞー!」


「滑り止め付き手袋人数分あったから付けとこ」


その後使えそうな資材は見つかったりしたが、人は全くおらず、上の階への行くことにした。


「ねぇ、ちょっと待って?」


「どした?」


「これ…ピアノの弦?」


3階から上に行く階段には足元にピアノ線が張られていた。


「こわっ!」


「これ上にだれかいるんじゃないかな。」


「だとしたら注意しないとな…」


「非常階段から行くのは?」


「いやー、多分ゾンビってるわ…」


「ゾンビってるってなんだよ……」


一応確認で非常階段へ向かい扉に耳を当てて見ると中からくぐもった声で唸り声が聞こえてきた。


「あー…」

「やっぱり…」


「仕方ないよ。ほら、ピアノ線でも、ドン○ーで持ってきたこれ使えば切れると思うからさ、いこ」


ピアノ線はせっかくなので切って、指を切らないように巻き取り回収した。


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