第2回!資材集め!!
文章力が欲しい…。
篤紀が加わり数日が過ぎた。玄関のドアを開け何かが叩く音がするのでのぞいてみると野犬が三匹廊下の前をウロついている。
「お兄ちゃん、どうしよっか」
「んー…これは考えてなかった…」
こんな恐ろしい世界になってから1ヶ月以上過ぎてる中で生き残ってるならかなり統率のとれた集団なのだろう。
侵入口はおそらく階段か…?
噛まれたら狂犬病とかも考えられるしな…。
「ねぇ、これなんか使えないかな。」
由紀がクローゼット何か取り出し持ってきた。
って、これ、今年なんとなく買ってきた爆竹じゃん。使えるか…?
「いいんじゃない?これでザキと由紀ちゃんの部屋の窓から玄関前にいる犬に投げつけて怯んでる間に俺と篤紀とザキで抑えれば…」
「まぁ階段のとこにまだ潜んでるかもしれないからなんともいえないけどそれはそれで使えそうだね。」
「私はさんせーい!」
「わたしも!」
「んー…まぁ他に思いつかないしな。」
と、言うわけで由紀命名犬撃退作戦開始です。両部屋には由紀と友ちゃんを配置して2人同時に笛の音を合図に投げることになった。篤紀はシャベルを、俺は木刀を、片手負傷中の邦彦は鉈を持ち、念のため外用の厚手の服と作業用手袋をして玄関前で準備した。
「じゃあ俺先に行くよ」
俺、篤紀、邦彦の順で並び俺は笛を思いっきり吹いた。
廊下からはバチバチと弾ける音が鳴り響き、犬たちのきゃんきゃんと悲鳴のような鳴き声も聞こえてくる。
ドアを勢いよく開けるとキャンッとまた聞こえた。どうやらタックルする勢いで開けたから気づかなかったが、ドアの前に犬がいたようだ。壁とドアに挟まれて気を失っている。
急いで階段前まで行き体制を立て直す。
両側には一匹ずつ。さっき気絶してた犬は既に外に投げたので恐らくもう大丈夫だろう。
大きさは中型と小型…。階段の隙間を通れたのがこのサイズだけだった…ということだろうか。兎にも角にも、数回噛まれそうになったものの、なんとか撃退はできた。
「ふぅ…」
「ねぇ、これ下にも結構いるんじゃないかな。」
「うん…多分ね。もともと俺らがギリ隙間から入れるように作ってたから、完全には封鎖してないんだよ」
試しに階段下へ爆竹を投げてみると案の定数匹犬の声が聞こえてくる。
「んー、どうするかなぁ…」
「当分夜に外には出られそうにないね…」
食料にも限界がある。そろそろ外に出て色々収穫したかったのだが…。
まぁ最悪、上の階を見に行ってみるかな…。
一瞬大きな黒い影が上から下へ落ちるのが見えた。
同時に熟れたトマトでも落としたような、水の入った袋に肉を詰めて落としたらこんな音がするだろうな…なんて考えてしまうような生々しく耳に残る音が聞こえた。
柵から下を覗くと、そこには小学生くらいの子供とその両親だろうか。首から上は血だまりになり、子供の方は落ち方が悪かったらしく、首の骨が首から突き出るような形で体がピクピクと痙攣して、時折「あっ……あっ…」と聞こえてくる。
「おぇぇぇぇぇぇぇ」
「うわぁぁぁぁ」
「うっぷ……」
1ヶ月過ぎようとした頃からたまに外であーして落ちたものを発見してはいたが、落ちるところを目撃したのは初めてだ……。
邦彦も篤紀もそして俺も、想像以上にグロテスクな出来事に思わず朝食のパンを吐き戻しそうになった。ってか、邦彦はマジで吐いた。
死体は瞬く間に犬が群がり、ゆっくり、ゆっくりと奴らが近づき犬はそれに気づくと一目散に逃げ出し、今度は奴らが群がっている。
「たしかにあーすれば死んでもゾンビ化できないね…」
「けど…なんであんな」
食料が底を尽きたのか、耐えられなくなったのか…。このマンションの住人はあと何人くらいいるんだろう。
安全地帯を求めて外に出るのは危険だけど、いつまでも家にいるわけにも行かない…よな…。
部屋に戻ると俺たちはぐったりと項垂れていた。昼飯は空気にもなれず、由紀と友ちゃんに任せて水で済ませ1番顔色の悪い邦彦は横にならせておいた。
携帯のニュースやSNSを見ていると、やれ各地のセーフティーエリアが奴らに襲われ崩壊しただの、空港で海外からの避難民が不時着し機体ごと爆発しただの、太平洋に避難した船が他国の船に沈められただの、世界規模でこの騒動は起きていた。
その中にひとつだけ気になる記事を見つけた。
いわゆるちゃんねる系まとめサイトだが……。
「何見てるの?」
「いや、まとめサイトなんだけどさ。」
由紀と2人で携帯のまとめサイトを見る。
「東京の地下に秘密施設が!」
「○国がウイルスの実験に失敗!」
「ゾンビではない!感染者だ!」
「私たちが予防接種で打っていたアレは…」
「なんか、胡散臭いのばっかりだね」
「まぁ、そういうのもこのサイトの面白いとこでもあるよ。それでさ、これ見て」
そこにはマル秘外に溢れるゾンビたちを調査して見た。という記事があった。
そこでは外から二体のゾンビを捕まえて、色々な実験をしてみたとか、何体か死体を捕まえて特徴をまとめてみたという内容だ。
「よくこんなことやるね」
「いつになっても目立ちたがりはいるんだろうな」
写真はかなりスプラッタなものが多かったが、早く動き回るものは皆んな何かしら刺した跡があるか、噛まれた後があり、
遅く動くものは足の筋が切れていたり、かなり腐っているものが多いらしい。
「これさ、最近流行ってたウイルスの予防接種とかじゃない?」
予防接種ねぇ…
「あれ打つとウイルスに感染したら反応してあーなるとか!」
たしかに、俺らはみんな予防接種を受けていないが、それならもっと早くゾンビが出てきていたんじゃないか?
「んー、どうだろうな」
「なんか、たまに外に出ると実感するけど、本当にゾンビだらけの世界なんだよね…」
「まぁウチは安全過ぎるくらいだからな。」
「お父さんもお母さんも、大丈夫かな…」
「……大丈夫だと願うしかないだろ。」
うん。と返事をすると由紀はおれの肩に頭を乗せてしばらく俯いたままだった。
▼△▼△▼△▼
「んじゃ、行ってくるけどなんか欲しいものある?」
「んー、特にないかな?それより、やっぱついてっちゃだめ?」
「我慢しろよ、お前いなきゃ邦彦も友ちゃんもなにしていいかわからんだろ。」
「でも…」
「由紀ちゃん、一緒に待と?大丈夫だよ、悠さんしっかりしてるし!」
「いや、それはない」
由紀さんや、即答することはないんじゃないのかい?
「しっかりはしてないかな」
「どっちかっていうと気分屋だよね」
「お前らまで!?」
俺と篤紀は朝早くから近くの店を周り、食料調達に行くことにした。
怪我が治りつつあるとはいえ、家に男1人は欲しいということで邦彦には留守番をしてもらうことになった。
「…気をつけてね?」
「大丈夫大丈夫!ちゃんと帰ってきますよ」
「んじゃ、行ってくるよ」
毎度おなじみ防犯ブザーさんを投げ込み、その隙に車に乗り込む。
「よし、エンジンもちゃんと着く!」
「中に何も侵入してないみたいだし、大丈夫だぞ」
「んで、どこ行くの?」
「とりあえず、ワオンとか?裏口に予備の食料があるはず。あとはドン○ーとかは?」
「んー、了解。あとなんか武器欲しいね」
「そうだね、流石にリーチが短いもの多いしね。」
「あ、バイパスの先にホームセンターなかった?」
「あったけど、行けるか?」
「あー…通行止めかも…」
とりあえず、車でドン○ーに先に向かうことにした。ドン○ーに近づくと、周囲に柵が作られていて、中に人がいるのが見える。
「ありゃ、やられたな…」
「なんかこっちきてないか?」
スーツ姿の男が近づいてきて窓を開けるよう指示してくる。慎重に窓を少しだけ開けると、男は何も持っていない、争う気はないことを示すかのように手を上にあげて近づいてきた。
「やぁ、君達は2人だけかな?」
「どもっす。いや、拠点にあと3人いて、今は食料とか資材探し中っす。」
「あの、食料はなくてもいいのでトイレットペーパーとか長い木の棒なんかあれば分けてもらえませんか?」
「あぁ、別に構わないよ。ただ、我々もかなり人がいるから食料は勘弁してくれ。」
「いえ、ありがとうございます。」
その後男は数人を連れて、水や塩砂糖、あとは木材や工具、などをくれた。
「あの、バイクのメットとかありますか?」
「あぁ、あるよ。手袋なんかも持ってこようか?」
「すいません。是非お願いします。」
その後色々と資材や武器になりそうなものをもらい礼を言うと携帯の番号を交換し、何かあれば連絡してくれと言われた。
篤紀と車を出して、ワオンに向っていると数体奴等が現れたが、篤紀は全く気にせず引いて進んでいた。
車って意外と丈夫なんだね。
ワオンの駐車場に着き、扉の前で車を止める。ガラス張りの入り口は所々割られている。中はきっと奴らでいっぱいなんだろうなぁ…。
車のエンジンを切り周囲を確認してから車を降り、中に入る。
中に入る奴らがうようよしているが、見る限り二階にはあまり居ないようだ。もしかして人でもいるのか……?
中に入り素早く2人で奴らを倒しつつ進むと、なんとかフードコートにたどり着けた。
持ってきたリュックに食材を入れ、裏口の倉庫の中に入ろうとした時だった。
「だれ!」
振り向くと、そこにはサバゲーでもするかのような格好の女が銃をこちらに向けて居た。
「あれ、本物?」
「わかんないよ…。けど、とりあえず手あげよ」
女は無抵抗と分かると銃を下ろして近づいてきた。
「…感染者じゃないみたいね。どこから入ったの?」
「俺、ここで前にバイトしてたから、その、フードコートのキッチンから入れるの知ってて…」
「……そう。なら納得ね。けどそこにあるのはやめてちょうだい。表に出てるものならとっても良いけど。」
「他にも人がいるんですか?」
「ええ、3階と屋上にね。きた時既に誰かがキャンプ用品を買い占めてたらしくて資材は不足してるけど服なんか燃やして普段は暖をとってるわ。」
篤紀、じっと俺を見るな。そうですよ。俺ですよ!ガラガラ二つ分持って我が家に持って帰りましたよ!。なんなら商品のタグ外す奴も持って行ってあるから証拠十分だよ!
「それは、大変でしたね。わかりました。」
「ありがとう。私の名前は小林小百合。良ければ表のものを持ち運ぶの手伝いましょうか?3人居た方が安心でしょ?」
ご都合主義展開並みみんないい人ばっかりだな…。なんだこれ、いいのこれ?
「俺は、小野崎悠。こっちは大塚篤紀っす。いいんすか?」
「ええ、これの試し射ちもしたいしね。」
そう言って右のホルスターに入れある銃を見せてきた。
「あの、それは…」
「本物よ?警察官の死体から拝借したの。音が出るからあまり使いたくはないけど、間違いなく殺れるわね。」
いるんだなぁ、こう言う人本当に。感心しながら、商品棚のある表へ出ると、以前来た時よりかなり荒らされて居た。
「また、誰か取っていったのかしら?まぁ、いいわ。早く詰めちゃって」
「は、はい!」
篤紀と缶詰やレトルト食品、カプ麺や乾麺、その他調味料を詰め込めるだけ詰め込み、リュックを前と後ろに身につけ、車まで戻る。
小百合さんは最後に小学生くらいの女の子の写真を見せて来た。
「この子、私の妹なんだけど、どこかで見かけたら保護してもらえないかしら。あの日友達の家に行って帰ってないのよ」
俺はその写真の女の子を知っていた。それもとてもよく。
「…?わかりました。その時はここに届けに来ればいいですか?」
「ええ、そうしてちょうだい。」
礼をして、車を出す。
終始無言の俺に篤紀は色々と話題を振ってくれるが、生返事だった。
「……もしかして、小百合さんの妹のことで何か知ってるの?」
「初日に俺ここに忍び込んだって話したろ?」
「由紀ちゃんから聞いたよ。それで?そこで助けたの?」
「いや、その時さ子供のゾンビに襲われたんだよ。」
「えっ、ってそれまさか…」
「多分そう。暗かったし顔も酷いことになってたからわからないし、倒した後投げ飛ばしたから確証はないけど、多分アレが小百合さんの妹さんだったんだと思う……。」
「……それは言えないよね…。」
心に何か刺さったような息苦しさと手の先から力の抜ける後味の悪い感覚が家についてからもずっと続いた。




