復讐と再開
ウチの近くにもコンビニあればいいのになぁ…
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読んでいただきありがとうございます
あの日から1ヶ月。
家の電気がつかなくなった。
ツイッターやネット掲示板にはさまざまなニュースが挙げられている。どうやら近くの電線が事故で切れたらしい。
湯を沸かすこともできなさそうなので黒色のゴミ袋に水を入れて日光で温めておくことにした。幸い天気は良いため、意外と暖かい。
「ねぇ…友ちゃん大丈夫かな?」
友ちゃんとは由紀の小学校からの親友の子のことだ。俺と友の兄の邦彦が小学校からの友人のため、昔は4人で遊んだりもしたものだ。
「まぁ、邦彦いるだろうし大丈夫だろ?メッセージでも送ったらどう?」
「うん…やってるんだけど連絡なくて…」
「まぁ、最悪ウチで保護しても良いしな。」
「うん…」
すると俺の携帯が珍しくメールが来たことを知らせた。
開いて見ると、そこには俺が浪人するまでよく会っていた数少ない友人の1人の大塚篤紀からメッセージが来ていた。
「生きている?」
簡単なメッセージだったが、これだけでも少し安心した。
「誰からー?」
「篤紀からだよ。」
「あー!篤紀くん!生きてたの?」
「みたいだ。」
俺も由紀も生きてるぞ。今、家に立てこもってる。
返信をしてしばらくすると由紀の方にも連絡が来た。友ちゃんも生きていたらしい。
だが、自体はあまり良くないようだ。
メールを見るなり由紀は顔を青くして台所で洗い物をしていた俺のところへ駆けてきた。
「お兄ちゃん!友ちゃんが!!」
送られてきたメールによると、友ちゃんの家も立てこもっていたらしいが、ベランダから人が入り込んだらしく、邦彦によって友ちゃんだけは逃げれたらしく、今は近所のコンビニのトイレに避難中らしい。幸いコンビニでバッテリーを手に入れて携帯の充電ができ、唯一頼れたのが由紀だった。
「アイツの家も共働きだったもんな…」
「助けに行こうよ!あのコンビニならウチから近いし!!ね!」
「んー、よし、行くか。」
今回は荷物を極力減らし、身動きの取りやすいようにした。
久しぶりの外は以前ほどではないがやはり暑く、服の中はプチサウナー状態だ。
階段の足止めは崩されていなかったが上への階段にも同じようなものがされていた。流石にこれだけ時間が経てばにたようなことをする人もいるだろう。
ちなみにベランダは現在完全封鎖中だ。備えよ常に!って、これはボーイスカウトか。
階段の隙間から下に降り、目的のコンビニへ急いだ。
コンビニまでの大通りは乗り捨てた車や燃えかす、そして挟まってもなおもがく奴らがうようよしていた。
「マジでバイオやん……」
「お兄ちゃん!いくよ!!」
我が妹ならがなんとも勇敢なことで…。
由紀は車の上に乗り挟まっているゾンビの頭は確実に潰しながら渡っていった。
「由紀、まて!1人で行くな!」
「でも友ちゃんが!!」
振り向いた由紀の後ろの茂みから奴が飛び出してきた。俺はとっさに由紀を突き飛ばして
持っていた木刀で頭を叩き割る。
「こういう時に1人で行くと…はぁ…死ぬんだよ…。隙を突かれたりして…。」
「……うん。ごめん…」
「わかればいいよ。」
頭をくしゃくしゃと撫でてやり、先を急ぐ。
外から邦彦のいるマンションのベランダを見るといたる階に割られた窓がある。すでに住人同士で食料の奪い合いでもしているのだろうか。例のボウガンやパチンコの性能を確認しつつ慎重に目的地を目指した。
しばらく走り続けたが、本当に人は見かけることなく、コンビニの前までついた。
コンビニは酷く荒らされていて、駐車場には数体見られる。持っていた防犯ブザーを道路側に投げ込み奴らを誘導してから中に入った。トイレへ由紀を向かわせ俺は店内を警戒しつつ見渡している。
「お兄ちゃん!友ちゃん無事!」
「あの、悠くん、ありがとうございます」
「大丈夫。それより噛まれてない?アイツらの血を浴びたとか、引っかかれたとか…」
「それは邦彦にも言われてたから大丈夫です!それより、邦彦を助けに生きたいんです…一緒に来てくれませんか?」
確か、邦彦の家は5階だったはず…。
「お兄ちゃん!行こうよ!」
「………わかった。」
友ちゃん誘導のもと邦彦のいる部屋まで行くことにしたが、問題がまた起きた。
さっきの防犯ブザーが予想以上に奴等を集めてしまったのだ。コンビニ前の大通りは奴らで山のようになっていて遠回りしなければたどり着けそうにない。
「確か、こっちからも行けたよね…」
「はい!」
防犯ブザーのお陰で奴らがこちらに気づくことはなく、マンションの下まで来ることはできた。友ちゃんの家のマンションは下の玄関で認証キーが必要になり、それからフェンスで外から入れないようになっている。やはりお高いマンションは警備も行き届いているのだろうか。電気もマンションの予備の電源が働いているため、しっかり作動している。
中に入り階段を上って行くと所々に住人が作ったであろう策などが置かれていた。
階段を登りながら簡単な間取りを聞き、作戦を考える。相手は2人組で30代くらいの夫婦らしいが、見た目もいかつくて怖かったと涙を浮かべながら話してきた。
行きに見た割られた窓はその2人が原因なんじゃないだろうか。
そうだとしたら、かなり慣れた相手なのだろう。
友ちゃんの部屋の前に着き、由紀と友ちゃんには出刃庖丁や鉈、ガス銃を持たせ最悪殺すことも躊躇わないよう声をかけておいた。
「お兄ちゃん入らないの?ってか、何炙ってるのさ。」
「アルミホイルの玉…ですか?」
「これは俺が中学の時流行った簡単煙玉だよ。あとで説明するけどとりあえず、これで…よしっ!中に投げ込んだら入るぞ!」
煙玉を投げ込み玄関から向かって左側の邦彦の部屋に入り込む。
リビングからは慌てる男と女の声が聞こえてるくる。ここまではびっくりするくらい予定通りだ。上手く行き過ぎてこのあとなんかありそうで怖いくらいだ。
「なんだこれ!!」
「ちょっとアンタ見てきなさいよ!」
「ちょっと待ってろ!もしかしたら逃げた奴が味方つけてきたのかもしれねぇ!ぶっ殺してやる!!」
由紀と友ちゃんをクローゼットにひそめさせ、部屋でさっきの煙玉を炊いて、準備をしておく。
「ここか!どこだごらぁ!」
煙が薄くなってきた瞬間に男の喉と股間めがけてボウガンを打ち込んだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
「アンタ!どうしたんだい!」
急いで煙玉を炙り部屋の入り口に投げ込み、
痛みで悶え暴れてるヤンキー風の男の頭を数回木刀で叩き、倒れたのを確信してから包丁でとどめを刺しておいた。
血まみれの男を廊下に出して起き、
また扉の裏で身を潜めていると女の方がフライパンを持ってやってきた。
「アンタ!?ちょっと!!あんた!!どこだ!!出てこいよ!!ぶっ殺してやるぅぅぅぅ!!!」
めっちゃ怒ってるよ……。
ってか、2人して似たようなこと言うなよ。扉の隙間からパチンコで女の顔めがけて玉を打ち込むと奇跡的に玉は女の目にヒットした。
「ッッッ!!!そこかぁぁぁ!!」
女は扉を乱暴に開け俺に向かって襲いかかってきた。しかし、それを見た由紀と友ちゃんがクローゼットから飛び出し、後ろからガス銃で女の背中に打ち込んだ。
「イッタァ!!くそ!!」
そして、木刀でいつも通り脳天をぶっ叩いてとどめを刺しておいた。
「人……殺しちゃった…」
「……」
友ちゃんは血で汚れだ床を呆然と眺めて怯えながら呟き、由紀は泣きそうになる友ちゃんの頭を抑え自分の肩にそっと抱き寄せた。
絵面的にはすげぇかっこいい。
我が妹ながらなんと男前な…。
リビングに着くとボロボロになった邦彦が横たわっていた。
「邦彦!!」
「お兄ちゃん!!」
「友…。それにザキ…。助けに来てくれたのか……ありが…ゔっ…」
傷はかなり酷くいたるところ青くなっていた。
「友ちゃん。ちょっとこれ持ってて、俺は邦彦抱えて行くから。」
「ど、どこ行くんです?」
「ウチだよ!」
「いいの?」
「大丈夫大丈夫!あ、着替えとかバックに詰めておいでよ!」
「こいつのも頼むよ」
「は、はい!ありがとうございます!」
その後邦彦と友を連れて奴等をまた倒しながら我が家へ戻った。
由紀もだいぶ慣れたのか警戒しつつしっかりと仕留めて進むようになった。そのため帰りは少し楽に感じた。
しかし、今のところ本当に順調だ。
本当に驚くレベルで。
まぁ、油断しないようにせんとな。
家に戻りベランダを確認し家の中にも特に変わったことはないので、ひとまず安心だ。
友ちゃんと由紀を先に風呂に入らせて俺は邦彦の傷の手当てをした。
「ザキ、ありがとうね…」
「気にしなくていいよ。当然のことしただけだし。」
そっか、と言うと邦彦は俯いたままただジッと手当を受けていた。
「あとで頭くらいは洗ってやるから体は友ちゃんに拭いてもらってな。」
「うん。」
「おう、んじゃ、なんか飲むか?酒もさっきコンビニから拝借したからあるぞ。」
「いや、水でいいよ」
そう言うと軽く邦彦は鼻で笑った。
▼△▼△▼△▼
夜。
ベランダにキャンプ椅子を置き、外を観察しながらコンビニで拝借した酒を飲んでいると寝てるはずの邦彦がやってきた。
「何してるの?」
「見てわかるでしょ、カッコつけてるの。」
「フッ…」
また鼻で笑いやがったなこの!
しかし、邦彦はベランダのサンダルを履きもう一つの椅子に座っていいか聞き、俺の隣に座り始めた。
「この策もよく作ったね。」
「まぁ、物干し竿一本なくても困らないし、グルーガン様様だよ。」
「昔から工作得意だったもんね。元気でよかったよ。」
「俺はまさかこんな再開するとは思わなかったけどね。」
「あぁ…これに関しては本当に助かったよ。
「気にしなくていいよ。飲む?」
「じゃあ…一口だけ。」
そう言うと邦彦はグッと一気に飲んだ。
「みんな、心配してたよ。なんかすごい病んでるって聞いてたし、そっとしといてあげようってなってさ…」
「そっか。ありがとうね」
「ううん。」
「まぁ俺は元気だよ。それに今は由紀守らなきゃいけないからな。」
「そうだね…」
「ふふふ」
「ん?どうしたの?」
「なんか懐かしいからさ」
俺はこの3年間みんなが何をしていたか全く知らない。どこの大学に行ったか、どんなバイトしていたか、彼女はできたのか。
会ってしまうと、みんなの変化を目の当たりにしてしまい、置いていかれたような感覚になってしまうのが怖かった。寂しかったからだ。
気付いた時には人と会うのをやめて引きこもるようになっていたわけだしな。
けど、どんなに長い間会っていなくても会えば以前のように話せるそんな関係こそ本当の友達なのかもしれない。
「そうだね。これから当分はよろしく頼むよ。」
「それはこっちのセリフだよ。」