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兄の空回り

2話です!

皆さんゾンBが出たらどうします?

私ならやっぱ家に引きこもりますかね。


日は沈み、いつもなら煌々とライトがついているはずのリビングは真っ暗なまま。

由紀は帰るなり部屋に篭ってしまい、俺も疲れが出たのかリビングのソファーに横になっている。


行きはあれほど苦労したのに帰りは奴等に会うこともなく、帰ることができた。

電気もいつまで保つかわからないため近くのATMで今年の受験費用と思って貯めておいた金を全て引き出して置いた。

これからどうするか…。


ゾンビみたいな奴等も数が少なければ警察が鎮圧できるだろう。けど、量が多かった場合避難するほかないか…。

あとは、それまで家の補強だな。とりあえず、ベランダの柵はダンボールで塞いで外から入れなくしてあるし、横の仕切りも塞いだから横からの侵入も大丈夫だろう。窓も補強はできた。

問題は食料か…。

最悪、俺が買いに行けばいいし、足りなくなれば俺の分を由紀に回せばいい。

正直俺だけで買いに行くのは不安だが、由紀が今はあんなだしな…。

冷蔵庫の氷や冷却材は今のうちに作れるだけ作っておこう。


元々人生終わったなどと考えていた俺にとっては由紀を守るという目標が明確にできただけ、生きる希望になっていた。


「由紀〜?大丈夫か?」


部屋の前で声をかけてみるも返事はない。

ドアから覗いてみるが部屋は暗く、ベットで横になっており、寝ているようだ。


冷蔵庫を確認するも当分は生きていられるだろうが、やや不安なところはある。

俺1人で買い物行ってみるか…。


家の二重鍵を忘れずにかけて由紀の部屋の前に置き手紙も置き、目の前のワオンへ出かけた。


街は異様なほど静かだった。携帯はマナーモードにしているため万が一かかっても大丈夫なはず。しかし、バイブ音だけでも響きそうなほど静かだ。時折聞こえる人とも思えない声はおそらく奴等だろうか。

なるだけ音を立てずワオン内へ入ると、

ワオン内はかなり荒れていた。

ひとまず、カップ麺や缶詰、氷砂糖に肉や魚、置いてある食材は無差別に、でもなるべく、長期保存ができるものをメインにカゴに入れ、最後に包帯や薬、ライターに電池を集め、携帯の計算機で計算をして、無人のレジに金を置いて、二階へ向かった。

二階のキャンプ製品売り場では寝袋や由紀用の登山靴、そのほかにもキャンプ製品を入手し、中には自家発電ライト付きラジオなどあり今後役に立ちそうなものが手に入れられた。


変えの下着や服もいくつか買い、これだけあれば大丈夫なはず。

この騒動が起きて他の店も帰宅命令を出したのか人はほぼいない。

時折聞こえる声もおそらく奴等なはず。

お陰で食料など困ることなく購入できた。

今考えればレジ通してないけど大丈夫だよな?まぁ、最悪俺が捕まるだけだしいいか。


せっかくなので3階までまわり、バッテリーを持てるだけ購入して他にも考えられる必要なものは全て購入した。あとは帰るだけだな。


帰ろうとレスカレーターを降りて一回に行くと子供がしゃがんでいる。

親とはぐれたのか、いや、でもこんなところで1人とは…

慎重に近寄るとだんだん声が聞こえてくる。


「……ぐすっ…ゔゔゔ」


俺は軽く肩を叩いた。


「なぁ、大丈夫か?」


「…………」


反応がない。これはもしかしてそういうパターンか?

腰につけた木刀を引き抜いておく。


「ゔ……ヴぅウィルアアアアアアア」


「やっぱりぃぃぃぃぃぃ!!!」


飛びついてくる子供型の奴を木刀で叩き潰し、なるべく遠くへ投げつけた。

木刀からはまさに骨が折れるような音が聞こえ、握っている手には肉を潰して何かを叩きおるような生々しい感覚が伝わってきた。


「き、きもちわりぃ…」


念のため頭は叩き割って、再度先ほど行った食料品コーナーに行きアイスと保冷バック。

ついでにサイドコーナーにある包丁も五、六本拝借してお金はまとめてレジに置いて置いた。


△▼▽▲△▼



家に帰ると玄関で由紀が体育座りをして待っていた。


「………た、ただいま!ほら、こんなにお前の好きなの買ってきたぞ!今日くらい美味いもん食って元気出そうぜ!なぁ…」


俺らしくもない元気な声で由紀に話かけるが由紀はそれを許さなかった。


「1人でどこ行ってるのさ…」


「いや、その。ワオンに…」


「なんでっ…」


由紀は俯いたまま冷たい声で言い放つ。


「いや、お前寝てたし、それに食料も冷蔵できなくなったら腐るの早いもの多いから買い足そうかと」


「……そうじゃなくて!!なんで1人で出かけたの!!起きたらお兄ちゃんいないし!お母さんの職場あんなだったし!なんでそばにいてくれないの!?なんで!なんでぇぇぇ…」


そう言って由紀は子供のように泣きながら俺に抱きついてきた。


「い゛ぎででよ゛がっだよ゛ぉぉぉ。ぁぁぁぁあ」


ガン泣きする由紀の頭を撫でながら、俺も強く抱きしめる。今こいつを守れるのは俺しかいない。俺がいなくなったら由紀は1人になってしまう。それを改めて認識することができた。


しかし、これではゾンビに襲われたなんて口が裂けても言えないな。

その後由紀の説教は夜遅くまで続き、時間はすっかり遅い時間になってしまった。


「由紀、それじゃあ外に置いたままの水中に入れるから手伝ってくれ」


「いいけど、よく持ってこれたねこんなにたくさん。」


由紀の機嫌はすっかり治り目の周りは赤いままだが、許してくれたようだ。


「まぁ、業務用のカートで持って帰ってきたからな。」


「なんでそんなの見つけられるのさ……」


呆れ半分感心半分くらいの目で聞いてくる。


「そりゃ、俺が去年あそこでバイトしてたからな!実は地図も持ってたりする」


「よくそういうの持ってるよねぇ。普通捨てない?」


「ばっか!お前。これでもしゾンビが来たらどう立ち回るかとかすげぇ考えるの楽しいんだぞ!」


「まぁ、それが本当になって助かってるからこっちとしてもいいけどさぁ…。今後1人でいかないこと!いいね!」


「ゔっ…はーい…」


一階の非常階段の扉は封鎖し、中に水だけ置いて置いたので取りに行くのは容易にできた。

それからエレベーターの扉はまたまた、ダンボールとガムテープで封鎖し、階段にはローションとダンボールやら自転車で簡単にだが、防壁を作って置いた。


「ねぇねぇ!今日の夕飯はなに?」


「今日は遅いから昼の残りの蕎麦と天ぷらさんだ!」


「えー!なら卵で天ぷら閉じてよ」


「それはいいぞ〜。ちなみに明日の朝は少し豪華にするからな!」


「いいの?」


「あぁ、初日くらい良いもん食って元気付けようぜ!」


「やったー!じゃあ手伝うー!」


由紀の手伝いもあってその日の夕食はすぐに終わり、電気が通っている今のうちにバッテリーなど充電の必要なものを充電し、風呂など準備を始めた。


「テレビ…ニュースばっかりだね」


「まぁ、今こんなだしな。情報大切だし、一応見ておこうぜ。なんならこれでDVD見ても良いから。」


そう言って車に置いて置いたDVDプレイヤーを渡すと由紀は部屋から韓流ドラマのDVDを持ちだし見始めた。

どうやら、今回の騒動の犯人はまだわからないらしいが、これは日本だけでなく世界各地で起きているらしい。

テレビでは、やれホームセンターに逃げようだの対策はこうしたほうがいいだの、さまざまな勧告がされている。

今頃目の前のワオンも人で賑わってそうだ。


「なぁ…これからなんだけどさ…」


「まって!今いいとこ!!」


「あ……うっす」


風呂の用意ができたかな…。


「ふー!満足満足!でお兄ちゃんなに?」


「風呂、湧いたから入ってこい。あとアイスたくさん買っといたから好きなの食っていいぞ」


「本当?センキュー!」


さて、俺はベランダで奴らの観察でもしますかね。



△▼△▼△▼△


「お兄ちゃん出たよー。なにしてんの?」


「んー、観察。」


へぇーと興味なさげに言い冷凍庫にあるハーゲンドッツを幸せそうに頬張る。

コロコロ表情のよく変わることで。まぁ少しは元気になってくれたかな?それだけでも少しホッとした俺がいる。


「んで?何かわかったの?」


「んー、とりあえず、当分家に籠ることにした。」


「それいつものお兄ちゃんじゃん」


おおおっと?妹よ。そのたまに飛び出す言葉のナイフはやめようね?切れ味良すぎて死にたくなっちゃうから!


「うぅ…本当はホームセンターなんかで引きこもりたいんだが、ウチの周りにはホームセンターはない。それならウチの中の方が現状1番安全だろ。電気とガスなんかが切れても多少はなんとかなるしな。」


「まぁ、今のところお兄ちゃんしか頼れないし、由紀はなんでもいいよ。そういえばなんか連絡あった?」


「いや、まった…」


ちょうど俺の言葉を遮るように家族全員送信で親父からメールが届いた。

以前台風が来た時も地震があった時もだが、親父が全員送信でメールする場合は緊急の時だけなのだ。


「「!!」」


[ 悠、由紀、ママ、俺はなんとか無事だ。みんな無事なら連絡をくれ。]


「れ、連絡きた!!お父さん生きてるよ!!」


「あ、あぁ!だな!」


[俺も由紀も無事だ。母さんは職場見に行ったけど、酷い有様で携帯も置いたままで連絡がつかない。]


[そうか。お前たちだけでも生きててくれてよかった。ママも知っての通り根性の塊みたいな人だ。きっと無事だろう。悠、お前は死ぬ気で由紀を守れ。由紀、お前は悠の言うことを必ず聞け。2人とも仲良く。家から出ないで生きててくれてよ]


「よかった……」


再び泣き出す由紀の頭を撫で、俺も思わず泣いてしまった。


[当たり前だ。父さんも死ぬなよ]









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