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変わる日常

久しぶりの作品なので訂正やご指摘があればコメントお願いします。もちろん感想も大歓迎です。

定期的にはできないでしょうが、完結まで持っていければと思っています。よろしくお願います。



突然だが、この世界に自分は必要なのだろうか。


ある日僕はそんなことを不意に思った。

僕に限らず1人の人の価値とは一体どれほどのものなのだろう。その価値とは一体どうすれば高くなるのだろうか。

冷静に考えればなんとも無意味で時間の無駄になる下手したら厨二病を疑われるような考えだと思う。


人に価値なんてない。人の価値の差なんて神様にでも任せておけばいい。


だけど、あの時の僕にはそれが人生のテーマなのではないかと思うほどに頭に焼き付いて居た。



7月某日


「………。ん、なんか作ってんの?」


リビングで下着姿も同然現役JK(笑)がスマホを片手に見て居たドラマを止め話しかけてきた。


「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれた妹よ!!

兄は今蕎麦を茹でているのだ!お主も食うだろう?」


「あー…もうこんな時間か。サンキュー」



あいよーと返事をするも、妹はまた韓流ドラマを大音量で見始めぐだぁっとし直した。


やれやれ、我が妹ながらなんとも……。

後ろ姿なんて親父とお袋を足して2で割ったようなものだ。


世間一般ではすでに学生は夏休みに入り、

健全な社会の歯車である両親は社畜ライフを続けている。


蕎麦を茹で、あり合わせの野菜で天ぷらを揚げていると先程まで最高気温がどうのこうのと言っていたニュースが変わり速報が流れ始めた。


「うへぇ…またなんか変なウイルスが蔓延だって〜」


「インフルかー?ノロかー?お前も変なもん貰ってくるなよー?」


「はいはーい。お兄ちゃんも気をつけ…あー、外でないから平気か」


そういうと妹は鼻でフッ笑いドラマ鑑賞に戻りやがった…

由紀ちゃん?不意打ちでお兄ちゃんの痛いところをつくのはやめて頂戴ね?ほんと今、ぐさっときたから!!


まぁ、本当のことだから言い返せないわけでして…。

俺こと小野崎 悠は、現在二浪中で絶賛引きこもり中のニート同然な生活をしている。

訳あって人と家族以外と関われなくなり、2年近く地元の友人たちともまともに連絡を取って居ない。まぁ、今頃俺なんて忘れられてるだろう。



「由紀ー、由紀ちゃんやー、お蕎麦とお天ぷらですよー」


しばらくしてからリビングへ作ってた昼食を持っていくと、由紀は余程腹が減って居たのか、ササーッと冷蔵庫から飲み物を取り出しテーブルに並べ始めた。


蕎麦をすすり、揚げたての天ぷらを食べていると由紀は携帯でドラマを見つづけていた。


「食事中は携帯しまえよ…」


「テレビ、ニュースばっかなんだもん!」


まぁ、こいつくらいの歳の時は俺もまともに見てなかったし気持ちは分かるが…


「まぁいいか…。それより天ぷら美味いか?」


「あー、美味しいよ!流石だねぇ。ただね、このピーマンは……いらないです。」


箸につままれたピーマンの天ぷらをジトーっと見つめていると、なにかを思いついたようにこちらを見つめなおした。


「おにいちゃん、目つぶって?」


「は?」


「いいからいいから、ほら、アーンしてあげるから」


お前それ、ピーマン食わせる気マンマンじゃねぇかよ…

隠そうとしないあたり妹らしいというかなんというか…。


昼食を終えて食器を洗っているとテレビから緊急速報が入ってきた。


「沢野アナ!沢野アナ?」

「こちら、現場の沢野です。男性は病院のあちらの窓から這うように抜け出し、近くを散歩中だった30代男性に噛みつき、その後も逃走中です。また、目撃者によるとその噛まれた男性も気づいた頃には居らず、行方を捜索中です。」


「えー、その男性はなぜその病院を抜け出したのですか?」

「……はい!えー、こちらの病院なんですが、最近流行りの新型ウイルス感染者を集めており、抜け出した男性も患者の1人だそうです。病院での治療に耐えられなくなったのではないかと現在警察関係者が病院へ詳しく事情を聴いているそうです。」

「はい!ありがとうございました。

えー、新型のウイルスですが、現在わかっていることは空気感染することはなく、感染者との接触によって感染するそうです。

逃走中の男性の特徴ですが……………」


ニュースの途中で由紀がテレビを切った。


「おい……。お兄ちゃん見てたんですけど?」


「あ、そーなの?ごめーん。でもうるさい」


う、うるさいって…、

仕方がないので部屋に戻り、部屋の扇風機をつけその日俺はぼーっとして過ごした。



「ん?由紀、どっか行くん?」


「ちょっと、アオンに行って赤ペン買ってくるー」


「あいよー、あ!百円やるからアイス買って来てけろ」


「えー、そこは200円出して由紀のも買わせてよ」


「しゃーないのぉ…ほれ、好きなもの買っておいで」


「あいあーい」


そう言って、ドアの鍵も閉めずに出かけて言った。


さて、洗濯物中に入れるか…

窓を開け、ベランダに出てみるとサイレンが鳴り響いている。近くで何かあったのか?


次の瞬間玄関のドアが勢いよく開かれ、鍵がかかる音がした。


「お兄ちゃん!!!」


帰って来た由紀は汗を大量に流していて、

どこか焦っている様子だった。


「どうしたんだよ」


「そ、外大変なことになってるの!!なんか、ゾンビみたいのがたくさん!!」


「いやいや、ゾンビってお前…」


「いいから!あっ!ニュースになってるかも!」


そう言ってテレビリモコンをとりテレビをつけると、先ほどのニュース番組は終わっており、代わりに緊急中継で防衛省のお偉いさんや総理大臣等がテレビに映っていた。


「ベランダからはなにも見えなかったのになぁ…」


「本当なんだって!!目の前のワオンから火出てたし!」


あーだから、サイレンが鳴ってたのか。

通りでなぁと納得しているとテレビの中継は凄いことになっていた。


「こ、こちら東京駅です!みてください!まるで映画です!中継をご覧の皆さんは慌てず、家からは出ないでください!また、外出中の方は建物の中に隠れ、白眼、異臭ののする人には近づかないで!!」


ほぉ…まるでバイオですな…。


「なにのんきに洗濯物畳んでるの!!逃げなきゃ!!」


「どこにさ。」


「えっと……避難所?」


「こういうのはそういうとこに行った方がピンチになるんだよ。漫画やアニメでは定番だ。それに考えてもみろ。人が密集するところにいたら、感染者が出た時真っ先に感染広がるだろ。」


学生時代ありとあらゆるゾンビものを見てきた我にぬかりはないのだよフフフ。

まぁ、ゾンビの種類にもよりそうなんだよなぁ…。音に反応するのかとか。異業種とかいるのかーとか。


「まぁ、幸い食材はあるわけだし、しばらくは…」


そう言いかけた時、由紀が俺の胸ぐらを掴んできた。


「お父さんとお母さんは!」


「電話して確認取ればいいだろ。それに…親父達なら会社だ。最悪のことも考えられる。そ、それに…助けに行って何かできるとも思えない…」


「電話ならさっきもうしたよ!でも…繋がらないの!」


なにもできるはずがない。なにしろ情報が足りなすぎるだろ。どのくらい感染してる?どんな奴らがいる?それもわからず、武器だって、趣味で買った包丁やらガス銃やら木刀くらいだ…。


「…もういい!」


「おい、どこいくんだよ。」


由紀はリュックを背負い、動きやすい格好に着替え始めた。


「お母さん達迎えにいく。お母さんなら職場近いし、迎えに行けるはずでしょ!」


「待てって!母さん達ならお前の安否を優先する。あの2人がいない以上俺はお前の安全を優先せにゃならん!だから、行かせるわけには…」


部屋に閉じ込めようと、部屋の前に立って説得してみるも、妹は俺を睨みつけて一歩も引こうとはしない。むしろ、やる気十分と言ったところだ。


「どいて!」


「だめだ!」


「どけ!!」


ここで引き下がっていいのか…いや。だめだろうな。


「はぁ……わかった。けど俺もついていく。いいな。」


「……わかった。」


「ちなみに、お前なに持ってくつもりだったんだ?」


由紀は無言で背負っていたリュックを俺に突き出す。お前はカンタか!

中を見てみると、お菓子と携帯、財布に充電器…


「……お前遠足にいくの?」


「なっ!助けに行くんでしょ!!」


いやいや、遠足ですよねコレ。


「武器は?」


「武器いる?」


………。

妹様はいつもどこか抜けていらっしゃる…。

こんなぐだぐだで大丈夫なのだろうか。




△▼△▼△▼△▼


「んじゃ、行きますか。」


「ほい!」


携帯充電器を充電し、昔ボーイスカウトで使った紐とハンドブック。新聞で包んだ包丁に竹刀入れで木刀を包み、携帯食料、水、携帯式トイレとウェットティッシュ、あとは保険証と……


「なに確認してるの!もう何回もしたからいいでしょ!いくよ!」


「いやしかしだな。こういうのはお前、準備大切だぞ!」


「ほら、お兄ちゃんのガス銃も持ったし!きっと大丈夫だって!」


その自身はどこから来るんですかねお嬢さん?まったくやれやれとため息も吐きたくなるものですよ。

リュックを背負い、靴を……


「お前、それスニーカーじゃねぇかよ。」


「ん?動きやすい方がいいでしょ?」


「登山用の靴あったろ?コレにしとけコレに。サイズ合わなかったら途中買うかなんかしといてやるから。」


「むぅ…サイズはともかくダサいんだよなぁ…」


「ダサくて結構!命大切に!これが作戦だ!間違ってもお得意のガンガンいこうぜなんてするなよ!」


「はいはい。」


こういう時は聞き分けのいい奴で良かった。

先ほどもそうだが、動きやすさを重視するあまり、タイツに短パンなど防御力を捨てるのはどうかと思う。また、いつ帰れるかわからない現状から考えて、なるべく厚めの服がいいはずだ。



ドアを開けると猛烈な暑さと共になんとも言えない腐った匂いと焦げ付く匂いがする。

不意に部屋干しにしてて良かったと思っしまった。


「お兄ちゃん…脱いでいい?」


「いや、一応着とけ。」


母さんの職場は家から近く、自転車ではなく歩きで行くことにした。

マンションを出て街を歩くと匂いや暑さ、人がまったく居ない以外に変わったところはなく、いつもの様子だ。いや、こんだけあれば変わってるか。


「後ろからなんか来てるか?」


「なにも…ってか、本当に何もないじゃん」


用心しすぎたか…?

まぁ、しばらくすれば警察が鎮圧するだろうくらいには思っていたが……。


「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


曲がり角に差し掛かった時、人の悲鳴が聞こえて来た。


「!!」

「なに!?なに!?」


後ろを確認しつつ塀から覗き込むと、

よくゴルフの練習をしてるおっさんが三体のゾンビに襲われていた。


「た、助けた方がいいんじゃないの!?」


「いや、もう噛まれてるし、無駄だ。それよか今のうちに急いで渡るぞ!」


しかし、そう上手くは行かなかった。


「た、助けてくれぇぇぇ!!おーい!聞こえてるんだろ!?なぁおい!!」


おっさん!ゾンビ三体を連れながらよろよろこっちくるなぁぁぁ!!

いや、幸いゾンビはおっさんに夢中で動こうとしないぞ…?


「由紀急いで逃げるぞ!!」


「う、うん!」



しばらく、走り大通りに出ると、車やら人やらで密集していた。

鳴り響く車の音、泣き叫ぶ子供の声、加えてこの暑さだ。由紀をしっかり抱きしめはぐれないよう通り抜けるが、なかなか前に進めない。こんな中で襲われでもしたらたまったもんではないな。


「お兄ちゃん…なんか焦げ臭くない?」


言われてみれば先程から焦げた匂いがする…

まさかと思い携帯のカメラで上から前を撮影し確認すると車が燃えていた。

脇道から飛び出した車とぶつかり、炎上したのだろうか。


「遠回りだけど、人気のないとこから行くぞ」


「ちょっ!待って行くから!」


映画やアニメだと気がついた時には感染が拡大して、街は地獄絵図となるようだが現実は違うらしい…。なんだこのじわじわ攻められるような感覚は!暑いのも相まってイライラする。


「ねぇ、少し休憩しない?」


「こんなところでか!?」


「でもほら、人気ないし、日陰だし、ちょうどいいじゃん!それになんかイライラしてるし、一旦落ち着きなよ!」


あまりに由紀らしくない言葉に驚いた。

普段ならここで軽くお互いイラついて喧嘩して落ち着くところなのに。

いけないいけない。冷静に考えよう。


他所様の家の倉庫の上でお茶を飲むというなんとも言えない状況を経験したのちに、行動を再開した。

家を出た頃とは街の雰囲気もだいぶ変わり始めた気がする。

依然サイレンの音は止まず、腐った匂いや暑さ、焦げた匂いは変わらないものの、人の叫び声が多くなり、奴等の姿も見ることが多くなった。家に篭って助けを待つ人も家の補強を強め始めたのか、窓を内側から補強する姿が見られる。


「ねぇ…お母さん大丈夫かな?」


「正直わからん。職業的にもあの人の性格的にも、子供を死んでも守るだろうしな。最悪の場合を考えといた方がいいかも」


「……なんでそんなこと言うのさ」


「悪い。けど、心の準備はしといた方がいいだろ。」


こんな時気の利いたセリフでも言えればモチベーションも上がり行けるのだろう。でもそれが思い浮かばない。ついついこう言ってしまう。やっぱ俺にはこういうのは向いていないな。由紀にごめんと心の中で謝りつつ先を急いだ。



▼△▼△▼△▼


暑さに耐え、人が乗り捨てたであろう車の上を歩き、ようやく目的地には着いた。しかし…。


「……」


由紀は愕然とし、その場に座り込んでしまった。それもそのはず、窓は割られ、中はボロボロになって人の気配がまったくなかった。

どこかに避難したのだろうか、中を確認するも、職員のバックや園児達の荷物は置き去りにされている。


「ねぇ……お母さん達、避難したんだよね?

ね?そうだよね!」


「……」


「ねぇ……なんか言ってよ…お兄……ちゃん……」


何も言えなかった。だから、昔母さんが泣きそうなときしてくれたように抱きしめた。「そうだよ!俺らの母さんが簡単にやられるかよ!」「きっとそうだとしても途中襲われないとも限らない。」台詞は思いつくのに声にできない。そんなこと言っても慰めにもならないはずだから。

幸い、以前来たとき置いてあった刺股がなくなってる様子から武器は持ったはずだが、どこに避難したかすらわからない。


「お母さん……」


泣き始める由紀の手を握りその日俺たちは家に戻った。




これは俺たちの地獄のような日々の始まりであり今思えばまだこんなのは幸せでしかなかったのだ。









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