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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
明姫の輿入れ
7/29

 次の日、城主の輝太郎てるたろうが帰って来たらしく、明姫の顔を一度見たいと言われた。城主の輝太郎は、滅多に帰ってこない放浪城主らしい。

「明姫がんばって下さい」

「うん」

 明姫がくるまで、ヒマなので、城内を歩いていた。

(え~と、こちらが、家臣の部屋?)

「な~にしているの?」

 明るい口調で、声をかけて来たのは、例の金髪男だった。

「きゃー」

「そんなに驚かなくても」

 金髪の青年は、拗ねた。

「だって、あなた、金髪じゃない」

「なんだ、やっぱり、君も俺の事、外人だから嫌いって事?」

「えっと、外人? そうよね、金色は外国の色よね」

「えっ? 知らなかったの?」

「忘れていただけ、昔、金髪の妖精に、化かされたことがあって、それ以来、金髪がダメなのよね」

「へ~、君っておもしろいね、差別したんじゃなくて、化かされたからか、初めて聞く話だよ」

「それで、何?」

「俺は、れんアドルフ、この城で言う、城主の息子、しかも次男」

「それは、失礼でした」

「別にいいから、それより、君と仲良くしたいな」

 アドルフは、手を振っていなくなった。

「えっ?」

 アドルフの背中を見て、夏菜は、輝助の弟なら、兄の嫁を嫁に欲しいかと聞かれて、手を挙げないのも納得であった。

(な~んだ、それだけか)

 明姫の美貌に落ちなかったのではなく、遠慮していたのだと知ると、怒りも落ち着いた。ちょっとふざけた人だったけど、悪い人では、なさそうだと思った。

 そうしているうちに明姫は、客間に戻っていた。

「城主に気に入られたわ」

「よかったわね」

「この城の新しい御局が、私の器量を見たいって言い出して、試験をしようと言って来たの、大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよ、明姫は、お琴も舞も誰よりもうまいですもの」

「少し練習したいから、夏菜も付き合って」

「いいですよ」

 嫁入り道具から、お琴を出して、練習を始めた。

「『金雲』って曲を弾いたらどうですか?」

「たしかに、あの曲は、難しくて縁起が良い物ね、でも、舞の時にお琴を弾いてくれる人がいないのです」

 夏菜は、琴は、あまり得意ではない、だが、持ち曲は何曲かあった。

「私が、弾きましょう」

 夏菜は思った。ここで引き受けないと言ってはいけないと、だから、夏菜は、「引き受けますよ」と笑顔で言った。

「ただ、『舞桜』にしてください、あれが、一番得意ですから」

「はい」

 明姫は、嬉しそうに返事した。夏菜も自分の琴を出して、練習した。

「『舞う桜、散りゆく日の~』の所が難しいわ」

「私は、『金色の空、ああ、めでたし』の所が早く弾けないわ」

 二人で、一生懸命練習した。

 しばらくして、明姫の方は、練習が終わった。

「夏菜の調整は、終わった?」

「はい、合わせて見ましょう」

 明姫は、舞の衣装に着替えている。白い着物に鶴が描かれている。頭には、豪華なかんざしを挿して、頭に固定する。この格好で舞うのは、意外と大変なのである。だから、練習を必要とする。

コロリンテン、テンテンシャンと琴を弾いて行くと、明姫が腕を斜めにあげて、ゆっくり振り下ろす。

テンシャンシャンと続けて弾くと、着物の袖の鶴模様を見せながら、半腰になり、扇子を開く。

一連の動きは、とても優雅で、さすが明姫と感心した。

「本番でも、ちゃんとできるかしら?」

「できますとも」

 夏菜は、不安になる明姫を落ち着かせるために、力強く言った。


   〇 ◎ 〇


 その日は、明姫と湯につかり、不安を忘れて眠った。

 布団をしいて、布団の中に入ると、明姫は。

「緊張しますわ」

 と言って、震えていた。

「大丈夫ですよ、うまく行きます」

 夏菜は、長年の付き合いなので、わかっていた。明姫は、いざと言う時、とても堂々とすること。さっきまで、震えていた人とは別人のようにやり遂げてしまうのだ。夏菜もそれは、前から不思議に思っていたが、本番に強い人なのだと言えば、そうなのかもしれないと思う。

 夏菜は、たいした不安も感じず、眠ってしまった。

 その夜、明姫は、部屋を出て行った。

(? 御不浄ごふじょうかしら?)

 そう思い眠っていたがなかなか戻らない。

「明姫」

 夏菜が廊下に出ると、何かが光った。不思議に思っていると、向こうから、明姫が歩いてくる。

「夏菜、ごめんなさい、道に迷ってしまって」

「ええ、いいのですよ」

 夏菜は、今の光は、霊の仕業だと思い警戒した。

「どうしたの?」

「さっき、光りませんでしたか?」

「いいえ、夏菜にだけ見えたのかも知れませんわね」

「私、霊に憑かれちゃったのでしょうか?」

「う~ん、わかりませんけど、そうかもしれませんわね」

 夏菜は、お化けが嫌いだ。小さなころからこれだけは、疑う気になれないのだ。夏菜は、霊はいると確信している。

 その理由は、妖精がいるなら、霊もいると言う、何とも適当な思い込みだが、夏菜にとっては、真実なのである。

「どうしようかしら、霊に憑かれていたら」

「大丈夫よ、お札貼っておく?」

「はい」

 額にお札を貼って寝た。

(霊よ出て行け~霊よ出て行け~)

 強くそう思い眠った。

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