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十二才になったころには、下女から始め、侍女まで上り詰めた。一部の人は素性を知っているので、神月国の姫を殺めようとしていると言ううわさも流れた。
しかし、夏菜は。
「明姫~」
神月国の姫、神楽明姫は、黒髪を長くしていて、美しく、唇は桜の花びらのように可憐で、すっとした鼻は、形が良く、目もパッチリしている。
「夏菜、どうしたの?」
「これ、明姫に合うんじゃないかと思いまして」
隣の国から商人が持って来たかんざしを持ってそう言う。
「あら、かわいい」
サクラの花が印象的で、花びらが舞うのを表現した。珍しいかんざしだった。
夏菜は、この城に入って、四年、十才の時に明姫に一目ぼれしてしまったのだ。
(なんて、美しいの明姫)
明姫の優雅な振る舞いに、感嘆の声を漏らす。
「夏菜、ありがとう」
「いえ~」
(明姫、かわいい)
この夏菜の行動が、あまりにも明姫にご執心に見えたので、国の人も仇討など考えていないと確信したのだ。当の夏菜も、明姫を殺そうなどとみじんも思っていなかった。
「夏菜、私達、親友よね?」
「ええ、もちろんです」
夏菜の感情は、憧れである。美しさや、優雅さ、自分にない物に憧れていたのだ。夏菜は、侍女まで上り詰めたが、実際は、試験前だけがんばってなった一夜漬け侍女なのである。
『夏菜さんは、本気を出せば、とても優秀なのに、なぜ、いつもは、あんなにダメなのですか?』
と何度、御局に言われたことか。
「明姫、商人は、他にも面白い物を運んで来てくださいました。ぜひ、ご一緒に、見に行きませんか?」
「いいわね」
明姫も同意したので、商人の品を見に行った。巷で人気の、ガラス細工から、びっくり箱の仕掛けに驚かされたり、楽しい時間を過ごした。
「すごいですね」
「この品も買いますわ」
明姫と過ごす時間が、一番の幸せだった。




