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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
これからの未来
26/29

 城に戻ると、みんながうわさをしていた。

「まあ、きつねがいないとずいぶんなお顔なのね」

「普通の女じゃん」

「あの美しい女性はきつねだったなんて」

「皆さん、仕事にお戻りください」

 夏菜は、明姫をかばってそう言った。

 明姫の部屋に向かい、食事をしていたが、明姫は、あまり食べる気が無いようで、箸を握って座っている。

「大丈夫ですか?」

「何だか、ムカムカするの」

「ストレスですかね?」

「そうかもしれないわ」

 夏菜は、とりあえず、医者を呼んだ。

 そして、数時間後医者が来て、人通り明姫を見て。

「オメデタですね」

「まあ、輝助様の子がいるのですか」

 夏菜は、明姫が城に残る理由も出来た上に、明姫に子供が出来たと言う事で、大いに喜んだ。

 明姫懐妊のニュースは、城中を駆け巡った。

「輝助様の子供ですか」

「殺した相手の子供なんて、何かかわいそうね」

 女の人は、明姫が、自分の子供を愛せないのではないかと心配していた。

 しかし、明姫は嬉しそうだった。

「よかった。私、もう一人じゃないんだ」

「明姫、私がいるでしょう」

 夏菜は、拗ねるようにそう言った。

「だけど、夏菜は、アドルフ様の物だもの」

「明姫を侍女として引き受けなくてよくなったのですもの、別れようかしら」

 冗談でそう言っていると。

「ひどいな~夏菜ちゃん、俺と明姫どっちが大事なのさ」

「どっちも、めんどうくさいから選ぶことはしないわ」

「ええ~、俺じゃないの」

 アドルフは、悔しそうにそう言った。

「それより、アドルフは、仕事でしょ、私は、明姫といますから、しっかり働いて来てください」

「はーい、明姫、明姫って、面白くないな~」

「夏菜、たまには、アドルフの相手もしたら」

「いいんです。私、まだ、結婚していないもの」

「それじゃあ、すればいいじゃない」

「そう言うわけにもいかないでしょう」

 夏菜は、恥ずかしそうにそう言った。実は、一度、明姫のために、求婚を受け入れたのだ。だから、アドルフが、いつ、結婚に踏み切ってもおかしくは無い状態ではあるのだ。

「アドルフ様は、まだ、求婚なさらないの?」

「いいえ、良いと言いました。ただ、それは、明姫のためだとも言いました」

「そのような返事では、アドルフ様は、夏菜の求婚への返事をなかったことにしたのかも知れませんわね」

(ええ!)

「だって、私の為なんでしょう、その返事じゃ、アドルフ様が納得していないのかもしれないわ」

「そっか、もう、明姫は、安泰な立場で、私の返事の意味がないんだ」

「だから、踏み切らないのよ」

「……もう一回、求婚を待つべきかしら?」

「もう、夏菜から言ってあげたら、結婚したいって」

「……」

 夏菜は、恥ずかしさから、真っ赤になった。

「出来ないわよ」

「がんばれ」

 夏菜は、明姫が元気になり、うれしそうな顔で、応援してくれるので、少し安心した。

「うん、がんばるね」

少し気合を入れた。


   〇 ◎ 〇



 アドルフの元へ向かった。

「アドルフ、差し入れ持ってきちゃいました」

「夏菜ちゃん」

 藍色のうさぎ模様の包にお弁当を入れて、手に持って行った。

「さあさあ、おいで」

 そう言って、隣に座ろうとした時。

「山岡屋です」

 大荷物の太めの商人が入って来た。

「おおっと、夏菜ちゃん、お弁当ありがとう、今は、忙しいから、また今度、来てくれないかな?」

「え、ええ、そうですね」

 アドルフは、手を引っ込めて、商人を見ながら言った。

「こちらの商品は~」

 夏菜は、そそくさと部屋を出た。

(明姫、うまく行きますように)

 明姫の助言で、煮物を作ったのだが、うまく行くか不安だ。煮物は、にんじん、サトイモ、インゲンを醤油で煮た簡単な物である。明姫は、いつも、「夏菜の煮物は格別よね~」と言っていたけど、きつね時代の事なので、少し信頼していない。

「明姫、行ってまいりました」

「よくやったわ、まず、胃袋をつかむのよ」

 明姫は、妙に張り切っている。

「そんなに、私を結婚させたいですか?」

「夏菜は、誰よりもいい子だから、誰よりも幸せに成らないとだめなのよ」

 明姫は、夏菜の余った煮物をみつめている。

「おいしいそうですか?」

「大丈夫おいしそうよ、夏菜の煮物は、いつだっておいしそうよ」

 明姫が喜んでそう言う。

「煮物の醤油の量は、どうやって、調節しているの?」

「目分量です」

 夏菜は、恥ずかしくなってそう言った。

「へ~、もう夏菜は、目で見てわかる位、作り慣れているんだ」

「下女だったころ、下女頭に、みっちりたたき込まれまして……」

「そうだったの」

 夏菜は、明姫に少し呆れた。

「夏菜、間違いなくおいしいから自信を持って」

「うん」

 しばらく明姫と話しこんだ。すると、アドルフが現れ。

「夏菜ちゃん、お弁当おいしかった。特にサトイモの煮物がおいしかったよ」

「本当!」

 夏菜は、うれしくなって、顔を輝かせていると。

「庭で、話をしない」

 アドルフは、そう言って、夏菜の手を取った。

「はい」

 二人で、手をつないで、庭に向かうと、花々が咲き乱れていた。色々な色の花がたくさん咲いており、きれいだった。

「アドルフ、その……」

 照れていると。

「明姫、元気になってくれてよかったね」

「うん、だって、明姫は、私の友達だもの」

「もう、敬愛したり、憧れたりはしないんだね」

「ええ、今は、いい友達よ」

 夏菜は、イキイキした様子でそう言った。

「夏菜ちゃんには、昔、明姫しか見えない時代があったよね」

「うん、あの時は、完璧にきつねに化かされていたわ」

 アドルフは、悔いる夏菜の頭をなでた。

「大丈夫、夏菜ちゃんが悪いんじゃないよ、ただ、君は、明姫に一生懸命だっただけなんだから」

「ええ」

 夏菜は、アドルフの手を握り。

「それで、用件は?」

「あの、その……」

 アドルフが慌てだした。

「夏菜ちゃんは、俺と結婚する事をどう思っている?」

「えっ?」

(どう思っている?)

「一生、側で見守っていてくれる? 君は、幸せに成れる?」

 アドルフは、顔を真っ赤にしてそう言う。

「私は、あなたの一番最初の許嫁なのよ、その時から、ずっと、あなたと結婚する約束をしていたはずよ」

「そうだね、でも、嫌ならいいんだよ」

「じゃあ、嫌って言ったら」

「良いって言うまで、抱きしめる」

 そう言って、後ろから、ぎゅっと抱きしめられた。

「どうしようかしら、私も良いって言えなくなりそう、あなたが離れたら寂しくなるから」

 アドルフの腕に頬をよせた。

「愛しているよ」

「私も」

 しばらく二人で抱き合っていた。

「あの~、もう、仕事の時間ですよ、アドルフ様」

 下働きの武士が、罰として、アドルフを呼び出しに来たらしい。何人かの武士がこちら見ている。

(はずかしい)

「いやー仲がいいですね」

「え、ええ」

 夏菜は、頬を染めて、返事した。

(いつから、聞いていたのかしら?)

「祝言の日も近いね~」

 アドルフが、からかわれていた。

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