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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
輝助の死
22/29

 きつねのアヤカシを探す前に、輝太郎きたろうが帰ってきた。頭は、短髪で、元気がよさそうなおじさんであった。

「や、アドルフ」

 元気よくそう言って、中に入って行く。

「さすがの放浪父さんね、息子が死んでも元気そうです」

「あれは、上辺だけだよ、陰でこっそり泣くんだ」

 アドルフは、夏菜と内緒話をしていた。

輝助てるすけ―!」

 さすがの放浪父さんも息子の遺体の前では、涙を流していた。

「ごめんな、何でも任せきりにしてしまって」

 優しく、頭をなでる。しかし、輝助は動かない。輝太郎は、それを見て、わんわん泣いていた。

「さて、輝助のいない今、俺の跡取りは、アドルフだけだな」

「……そうですね」

「これからは、この城をアドルフが仕切れ」

「えっ!」

「できないのか? 俺の息子だろ」

「……」

 アドルフは、混乱しているのか、黙っている。

 夏菜は思った。城主になったら、誰も差別できない、輝助には悪いが、よかったのではないかと。

「でも、俺、金髪だし」

「おお、きれいでいいだろ」

「みんなに嫌われているし」

アドルフは、そう言って、口をつぐんだ。

「そんな事は無い、今まで、輝助がいたからだ。輝助がなくなった今は、アドルフ、お前しか頼れないだろう」

「父様は、軽く見過ぎている。俺が、この城で今まで、何をされていたのか、知っているんですか?」

「差別されたり、いじめられていたんだってな」

「知っていたんですか?」

「もちろん、だから余計にアドルフの城を見てみたいんだよ」

 輝太郎は、悪びれずにそう言った。

「父様」

「期待しているぞ」

「はい」

 その日のうちに、アドルフが、次期城主になる話は広まった。

「アドルフ様が、次の城主」

「私達、ひどい事言っちゃったし、首かもね」

「俺もだよ」

 城のみんなは、アドルフに何かはしてきていたので、腹いせに、一斉に首にするのではないかと怯えていた。

「アドルフ、城の人達どうするの?」

「いますぐ、全員首と言いたい所だけど、そうは行かないだろ、兄さんの仕事を引き継ぐんだ。今まで、兄さんの手伝いをしていたやつを首にはできない」

「そうですよね、みなさん心配し過ぎなんですよね」

 夏菜は、少し、プリプリ怒ってそう言った。

「なんで、夏菜ちゃんが怒っているのさ」

「だって、みんなアドルフの事、ちっともわかってないんですもの、今までだって、無能だから城主の座を狙わなかったのではなく、兄に譲っていただけですのに」

「ふふふ、夏菜ちゃん買いかぶり過ぎだよ」

「そんなことない」

 アドルフは夏菜の様子を見て楽しんでいた。

「そういえば、明姫ってどうなるんですか?」

「一応喪に服してもらって、女官にでもなってもらって、働いてもらうかな」

「明姫が女官?」

 夏菜には、実感がわかない答えだった。なぜなら、明姫は、夏菜の中では、絶対的な姫君だったからだ。

(明姫が下働きの手伝いなんて、想像できない)

 しかし、神月国に帰ることも出来ないので、明姫が、生きる道は、女官しかないような気がした。

(かわいそうな明姫)

 夏菜は、明姫に同情した。


   〇 ◎ 〇


 夏菜は、その足で明姫の元へ向かった。明姫は琴を弾いていた。

 テンテンシャンテンテンシャンと鳴っている。

「上手ですね、明姫」

「夏菜、輝助様は? 今日は、会いに来てくれないのね」

「そうですね……」

 夏菜は、少し悩んだ。輝助の事を言ってしまっていいのか? ダメなのか?

「ねえ、夏菜」

「あの、明姫、輝助様は、もうこの世にはいないのです」

「えっ?」

 明姫は、きょとんとして、笑った。

「夏菜、きつい冗談ね」

「……」

 夏菜は、明姫が受け入れたくないのだと思い、肩をつかんだ。

「明姫、私は、冗談で言っているのでは、ありません」

「本当?」

「ええ」

「輝助様が死んだ」

 明姫は、悲鳴を上げた。すると、何人かの人が入って来て。

「大丈夫ですか?」

 と手を差し出す。

「うそよ、うそよね、夏菜、冗談でしょう」

「冗談ではありません」

「私は、これからどうしたら良いの、輝助様がいないのでは、追い出されてしまうわ、国になんて帰れないのに……」

 明姫が悲痛の叫びをあげる。

「大丈夫です。アドルフが、城においてくださるようですよ」

「そうなの?」

「はい」

 明姫は、一回落ち着いた。

「大丈夫です。明姫、これからも、私が、何とかなりますから、命だけは絶たないでくださいね」

「……」

 明姫は、黙ったままだ。

「夏菜、お願い、アドルフ様と結婚して、私を侍女に雇ってくれない?」

「そのつもりです」

 明姫を女官にするのでも、いきなり下女とも行かない、しかし、姫もいない。それなら、アドルフと夏菜が、結婚して侍女を設ける。アドルフと話し合った結果そうなった。

「立場が逆転しちゃったわね」

「気にしないでください、形だけ、形式だけですから。私の憧れは、いつだって、明姫ですからね」

「夏菜」

 明姫は、複雑そうな笑顔を浮べた。

(そうよね、急には、受け入れられないよね)

 夏菜は、明姫をなだめて、眠りにつかせた。その日は、明姫が起きて叫んでも良いように隣に寝てあげた。

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