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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
アドルフの初恋
20/29

 次の日、アドルフは、見つからない。

(どうしたのかしら、何かあったのかしら?)

「あの~、アドルフさんがどこにいるか知りませんか?」

「輝助様が呼び出したらしい」

 夏菜は、こっそり、輝助の部屋へ向かった。

「そんな、今更、許嫁って」

 アドルフのそんな声がした。

(許嫁!)

「相手は、どうしても、この城の息子と結婚させて欲しいと言っている。私は、もう結婚している。お前しかいないんだ」

「いやだよ、兄さん、俺、好きな人がいるんです」

「夏菜ちゃんだろ、妾にすればいい」

(妾ですって!)

「俺は、認めない」

 輝助の部屋から出てきたアドルフと夏菜は、目が合ってしまった。

「夏菜ちゃん」

「アドルフ、その、そういえば、妾って手があったのですね」

 夏菜は、壊れそうな笑顔でそう言った。

「その人と結婚すれば、地位も手に入るし、差別も減りそう、いいじゃない、それでも、私、ついて行くよ、妾にでもしていいよ」

「夏菜ちゃん」

 アドルフは、暗い顔をしている、きっと、縁談を断れないのだろう。

「俺さ、輝助兄さんの事を尊敬しているのさ、だから、出来るだけ、逆らわないようにしていたんだ」

 アドルフは、遠い目でそう言った。

「だから、嫌だなんて、良く言えたなと思ったよ」

「そうなのですか」

「昔から、輝助兄さんは、出来が良くて、俺は、金髪で二番手だ。だれも期待しない人物だろう」

「そうかもしれないわね」

「だから、本当は、小さい頃から、どこかの国のお姫様と結婚させられることは、わかっていたんだ」

 アドルフは、夏菜を見て。

「その一人目が夏菜ちゃんだったんだよ」

「そうですか」

 夏菜は、冷静にそう返事した。

「一人目から、夏菜ちゃんみたいないい子に出会えて、女の子も良い物だと思った。けど、二人目の子は、俺をみて言ったよ「変なの」って」

「ひどい!」

「そこで、気が付いたんだ。俺の死んだ許嫁は、いい子だったんだって、その後も、三人、四人と見合いした。でも、全員断った。夏菜ちゃんを忘れられなくて」

 アドルフは、そっと夏菜の頬に手をかけた。

「俺の理想は、いつだって君だった。君以外考えられないんだ」

 夏菜は、沸騰した頭を落ち着かせようとするが、うまく行かない。

「あ、あのね、アドルフ、私、アドルフが幸せに成るなら、妾でも良いって本気で思っているのよ」

「でも、そんなの俺が許さない」

 アドルフは、強くそう言っていなくなった。残された夏菜は、驚いたのとはずかしいので、パニックを起こしていた。


   〇 ◎ 〇


 夏菜は、その後、洗濯物を取り込みに行った。

「夏菜さん、アドルフ様は、来ないの?」

 下女の女たちが喜んでそう言う。

「来ないと思うわ」

 夏菜は、笑顔でそう言った。着物の下に着る、襦袢を畳みカゴに入れる。

(明姫の分も、しっかり畳んで)

 明姫の分をカゴの中に入れた。そして、全部畳み終えたら、明姫の元へ、洗濯物を届けに行った。

「明姫、お待たせしました」

 そこには、倒れている明姫がいた。

「大丈夫ですか?」

「たすけ……」

 よくみると、眠っている様だ。

「明姫、昼寝するなら、布団を敷いてください」

「う~ん、怖い夢を見ていたわ」

「そうですか」

 洗濯物を置き、明姫の乱れた髪を整えた。

「一体、どんな夢を見ていたんですか?」

「忘れたわ」

 明姫は、何事もなかった様に、毅然とした態度で、鏡の前に座っている。夏菜の鏡に映った手を見つめている。

「明姫、すごい汗ですね」

「夢見が悪かったから」

「あんまり、良い事では無いですよね。少し不吉な位です。何も起こらないといいですね、明姫」

「そうね」

 明姫の部屋をでた。すると、一本の雷光が見えた。

(うそ、今日、晴れているのに)

 夏菜は目をこすった。

(疲れているのかしら?)

 アドルフの事で、色々あったので、疲れて見えたのだと言われても納得してしまいそうだと思った。

(まあ、いいか)

 アドルフの事を考えながら、部屋に戻った。お客様用の湯飲みの一つに、アドルフ用と書いて、棚に置いた。

(また、アドルフが来てくれるように)

 そう祈った。夏菜は、ヒマなので、一冊の本を読んでいた。それは、巷で人気の、絵師が謎を解く推理小説だった。

 いつの間にか夜になり、眠る準備をしていると、また、雷光が見えた。

(気のせい?)

 それにしても、二回も続けて見るのは、おかしいと思い、外を見た。ところが、何もなかった。

(やっぱり、気のせい?)

 戸を閉めて、眠りについた。

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