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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
アドルフの初恋
18/29

「夏菜ちゃん、重そうだね、運ぶの手伝おうか?」

 アドルフは、洗濯物を運ぶ夏菜に声をかけた。城の中では、アドルフと夏菜の関係は、知れ渡っていて、アドルフも堂々と声をかけるまでになっていた。

「これは、女の仕事です。アドルフさんには、させられません」

 夏菜は、そう言ってアドルフを振り切った。

「つれないね~」

「ね~」

 下働きの女性達と楽しそうにそう言っている。

(アドルフめ~調子に乗りやがって……)

 夏菜は、洗濯ものを干し終えて、明姫の元へ行く。

「きいてください、明姫、アドルフったら、下女と仲良くなってるんですよ、親しそうに話していて、何だか、もやもやします」

「夏菜は、素直でかわいいわね」

 明姫に頭をなでられる。

「はっ、すいません、明姫」

「いいのよ、もっとお話、聞かせて」

「明姫は、輝助様と仲良くやっているんですか?」

「ええ」

 明姫の顔が曇ったのを夏菜は見逃さなかった。

「輝助様に不満がありますか?」

「無いわよ」

「そうですよね、美しい明姫を手に入れて、喜ばない男の方なんていないですよね~、すみません」

「私、こんな顔じゃなかったら、どうなる?」

「えっ? そうですね、何も変わらないんじゃないですか、夫は、国同士の物だから離縁できない、私は、変わらず務めるとして、何か変わりますか?」

「よかった」

「明姫、どうしたんですか?」

「うふっ、美人な女は、いつか終わりが来るものでしょう、その時、どうしようか考えていたのよ」

「そうですか、大丈夫です。明姫は、美人なおばあちゃんになるでしょうから、終わりなんてないですよ」

 夏菜は、楽しそうにそう言った。

「それより夏菜、アドルフ様と結婚なさい」

「えっと……」

 夏菜は、結婚には踏み切れずにいた。夏菜の国は、もう神月国の一部であり、夏菜には何の価値もない。ところが、アドルフは、価値のある男だ。他の国の女と結婚したら、国の地位が良くなる。

(やっぱり、私じゃダメよね)

 そう落ち込んだ。

「夏菜、聞いてる?」

「え、ええ、結婚は、しない事にしています」

「家柄を気にしているなら、アドルフ様にそう言ってみたらいいんじゃないですか? 案外受け入れられると思うわよ」

「私が、言うんですか?」

「ええ」

 夏菜は、少し考えた。

(アドルフは、きっと、私を選ぶ、だけど、それではだめなの、この国で生きていくなら、少しでも力を手に入れて、いじめられないようにならなければいけないわ)

 夏菜の意思は、固かった。

「夏菜は、アドルフ様といた方が幸せなんじゃない」

「そうですかね? 外人の妻っていたぶられるんじゃないですか?」

「それでも、幸せだと思う」

 夏菜は、明姫を見つめて思った。

 ——それでも、幸せだと思う。ですって、それで、私が幸せに成れたって、アドルフは、今のまま、苦しみ続けるのよ。

「幸せじゃないですよ、全然」

「そうかしら?」

「そうです」

 夏菜は、乾いた方の洗濯物を置いて、部屋を出て行った。

(今ごろ気が付いた。私、アドルフを幸せにしてあげられないんだって)

 夏菜は、涙を流して、廊下を歩いた。

「ちょっと夏菜さん、泣いてるのですか?」

 宮に呼び止められた。

「目にゴミが入ってしまったのでしょうね」

「そうですか? 花粉症みたいに真っ赤ですよ」

「そうそう、花粉症なの、最近辛くて」

「今は、何でしたっけ? 何かの花粉の季節だったわね、仕方ないわね~、この国の花のどれかに合わないのがあったのですね」

「そうですね」

 笑顔を作って別れた。

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