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次の日、アドルフに会いに行くと、アドルフは、お腹を空かせていた。
「朝ごはんは、俺の分無いんだってさ」
アドルフは、苦笑いしてそう言った。
「私、お菓子を持っているわ、まんじゅうよ、明姫にもらったの」
「おお、助かる」
あれから、アドルフは、いじめられている事を隠すのは、やめたようだ。
「顔、血が出ているわ」
「唇が切れたのか」
「薬、塗っておくわね」
夏菜が、小箱を取り出して、薬を指で唇に塗ろうとしてた。その時、アドルフは、夏菜の指を吸った。
「えっ、えっ、体に悪いわよ」
「夏菜ちゃん、ありがとう」
アドルフは、優しく笑った。
「いいですか、アドルフ、お薬と言うのは、傷口に塗る物でして……、確かに、唇に塗る物は、体の毒にはなりません、でも、吸うのはやめておいた方が良いと思います」
「ふ~ん、夏菜ちゃんは、真面目だね、男が女の子の指を吸う理由なんて一つなのに」
「言わないでください、恥ずかしいです」
夏菜は、ゆでダコのように赤くなった。
アドルフの部屋から帰る途中、夏菜は、誰かに捕まった。
「きゃっ」
「嬢ちゃん、あのアドルフの恋人だったとはね」
「離してください」
よく見ると、この前の三人組だった。三人共ちょんまげをしていて、同じ顔に見えるが少し違う。
「アドルフを呼べ、この子の命が惜しければ、そうだな~国に帰れとでも書いておけばいいんじゃないか」
「何を言っているの、アドルフの国は、この国でしょう」
「お嬢ちゃん、あんな、金髪が同じ国の人間なわけあるか」
(ひどい)
夏菜は、腕を縛られ、足も動かない様に縛られていた。口には、猿ぐつわをされて、う~う~としか声が出ない
「アドルフは、来るかね?」
一時間しても、アドルフがくる気配がない。
「こいつ、もしかして、遊びで釣った女だったんでしょうか?」
「……そんなはずはない」
「外国人ならではの、ポエムとか言う奴で落としたんじゃないですか」
「そうかもな」
そこにアドルフが現れた。
「待たせたな」
「なぜ遅れた?」
「刀の手入れをしていてな」
そう言って、アドルフは、刀を振りかざした。
「城内で、刀を使うのは、禁止されているだろ、どうしたんだ」
「輝太郎様に許可を取っていて遅れた」
「ま、待てよ、それって、輝太郎様に俺達の事を話したんじゃないだろうな?」
「三人の名前、所属、部隊、全部話したさ」
三人の男の顔から滝のような汗が流れた。
「おい、俺達、抹殺されるぞ、アドルフは、輝助様よりも輝太郎様に溺愛されているらしいからな」
「逃げるぞ!」
「「おおう」」
三人がいなくなった途端、アドルフは、力が抜けたようにしゃがみこんだ。
「ふ~、何とかうまく行った」
夏菜を縛っている縄をほどき、猿ぐつわを外した。
「大丈夫」
「うん、大丈夫です。でも、あれ、本当ですか? 輝太郎様は、遠くに出かけていて、滅多に帰らないのでしょう」
「ああ、うそ、言ってみただけ」
良く考えると、輝太郎様が帰ってくるはずはないのだ。だから、夏菜は、怪しいと思っていた。
「一時間待てば、あいつらの頭も正常じゃなくなると思って、遅く行ったんだよ」
「アドルフは、よく頭が回りますね、まさか、輝太郎様の名前を出すとは……」
「この作戦が、失敗したら、殺す気だった」
「うそつきですね。あの人達を殺す気なんてなかったくせに」
「いいや、気持ちの何%かは、殺す気だったよ」
アドルフが冷たい顔でそう言った。
(本気だったんだ。アドルフがこんな顔するなんて)
「よりによって、夏菜ちゃんを攫うなんて……怖かったよね」
「ううん、アドルフの心配していた。あの人達、私を殺す気なんてなかったわ、アドルフを罠にかける事しか考えていなかったわ」
「そっか」
アドルフは、優しく笑った。
その後、あの三人は、輝助の手によって、仕事を首になった。それでも、まだ、アドルフは、時々、外人扱いされて苦しんでいた。




