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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
夏菜の明姫教育
10/29

 アドルフの部屋を出て。

(静まれ~私の心臓)

 夏菜は、平静を装っていたが、実際は、心臓がばくばくいって、言う事を聞いてくれないのだ。

(アドルフは、からかっているって、わかっているのに……)

 胸元に手をやると、ドクドクと脈拍が速い事がわかる。

「夏菜、どうしたの? 顔が真っ赤よ」

 明姫がそう言って近づいてきた。

「明姫、私、二人で出かけようと誘われてしまったみたいなのです」

「まあ」

 明姫は嬉しそうに息を漏らす。

「相手は、どなたなの?」

「蓮アドルフ」

「ああ、あの金髪の方ね、確かに恰好よかったけど、夏菜がその方と恋仲だ何て思わなかったわ」

「い、いえ、恋仲なんて、そんなことは、ございません」

「でも、お出かけに誘われたんでしょう?」

「ええっと」

 夏菜は、もじもじしながら返事した。まさか、明姫の勉強会だとは言えなかった。

「彼は、次男だから、夏菜が結婚したら、私達、義姉妹になるのよ」

「それは、いいですね」

 夏菜は、ふと、アドルフと結婚した時の事を考えてしまった。アドルフが優しく微笑んで隣にいる。それは、とても幸せなような気がした。

(そうなったら、うれしいかも……)

 また、心臓の脈が速くなった。

「私は、輝助様と、うまくやっていけそうよ、夏菜の恋も応援してあげるから、私達幸せに成りましょう」

「うん」

 夏菜は、部屋に戻り、着物を引っ張りだした。

(逢引きってものは、やっぱり、かわいらしい恰好で行くべきよね? どんな格好をしたらいいのかしら? と言うか、逢引きなのかしら?)

 着物を二十着、全部出して、品定めする。

(なでしこの模様がいいかしら? それとも、スイレン?)

 夏菜は、あくまでも侍女のため、立派過ぎる派手な着物は持っていない。だが、それは、アドルフも分かっていると思い、なでしこ模様の着物を取った。薄い赤色のなでしこ模様だ。

 かんざしは、赤い梅のかんざしにした。

(似合うかしら?)

 鏡の前でくるくる回る。

(うん、ばっちり)

 夏菜は、納得のいく、着物が見つかり、安心した。


    〇 ◎ 〇


 明姫の元へ向かうと、新しい侍女が来ていた。

「あなたが、夏菜さんですか? 私は、みやと申します。よろしくお願いします」

 夏菜に頭を下げたのは、黒い髪を一つに結い上げている。真面目そうな、宮と言う侍女だった。

 一方、もう一人は、ももと名乗った。髪は、長く後ろで一つに結んでいる。桃色の着物を着ていて、すぐに桃は覚えられると思った。

「夏菜さん、うわさは、聞いております。あなたの琴は、素晴らしかったと言っている方がいました」

「そんな事ないです」

 照れて謙遜していると、桃は。

「実際、聞いてみたら、そんなことも無かったりしてね」

 失礼な態度でそう言って来た。

「桃、夏菜さんは、上司ですよ、少し言葉に気を付けなさったら」

 宮がそう言って桃を叱る。

「いいのよ、宮、私は、気にしていないわ」

「いいえ、許しては、行けません」

「それは、いいとしましょう、明姫にはあいさつなさったの?」

「ええ」

「何、あれっ? と思ったわ、まるで、人形みたいにきれいな人なんだもの、この世の人間だと思えなかったわ」

 桃が興奮してそう言った。

「そうでしょう、明姫は、美しいの、そして、天才で、いつも、優雅な素敵な人です。二人共好きに成れると思うわ」

「そうですか、そうなれるといいのですが……」

 宮は、遠慮がちにそう言った。

「大丈夫よ」

 夏菜は、二人共に肩の力を抜くように言った。

 明姫の着物の整理を三人でしていると、桃が。

「この上品な模様、初めてみるわ~」

 とか、感心する声を何度も上げた。様子を見ていたら、桃は口が悪いと言うよりも、素直なのだと思った。そして、仕事が雑だ。

 宮は、真面目で、着物の折り目をしっかり確認している。いい仕事をする、良い侍女だと思った。

「二人共、手伝ってくれてありがとう」

「「いいえ」」

 三人の雰囲気は、とても、明るく和気あいあいだった。

「あの、明日の仕事の事なんですけど……」

「明日は、用事があるから、二人に任せられないかな?」

「それは、いいですけど、何の用ですか?」

「街に出かけて、勉強会をするの」

「それは、どのような?」

 宮が食いついた。

「蓮アドルフと二人で、街をぶらぶらしながら勉強をするの」

「それは、逢引きと言うものですわ」

「次男か、良い所に目を付けたわね、あの金髪は、少しあれですけど、一応、地位はありますからね」

 桃が楽しそうにそう言う。

「地位何て狙ってないわよ、私は、明姫がいれば、男なんていらないと本気で思っているもの」

「……そんなに明姫が好きなの?」

「え、ええ」

 夏菜は、少しためらって返事した。アドルフが、明姫は、自分のために行動していると言っていたのを思い出したからだ。

(そんなことはない、明姫に限って、大体、アドルフが疑い深すぎるのよ)

 少しイライラしたが、侍女仲間の前でこんなことを言っても、ただの惚気と言われるだろうと思い言わなかった。

「どうしたのですか?」

「えっと、私は、明姫が大好きよ」

「まあ」

 宮が嬉しそうに声を漏らした。

「私も、そう思える方に仕えるのが夢ですの、この人を一生世話してあげたいと思ってみたいわ」

「そうね、明姫には一生仕えるつもりでいるわ」

 夏菜の目は確固たる意志を示していた。

 着物の整理が終わって、三人とも部屋に戻り、各自眠った。

 しかし、夏菜は。

(アドルフと逢引き、逢引き、逢引き――!)

 頭の中がその事でいっぱいで眠れなかった。

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