2話
「エリク、来なさい」
「はい」
今しがた俺の事を呼んだのは、この小さな町に唯一存在する大きな建物、教会の神官様。
この女性は昔から俺が独り身だと言う事を気遣ってくれていて、お姉ちゃんの様な人なのだ。
まだ自我が目覚めていない頃なんかは一緒にお風呂も入ったりしていたくらいだ。
今は流石に成人も近いと言う事で自分から入るのをやめている。
この神官様。名前はマリア。年齢は、「女の人に年齢の事を聞くものじゃありません」と言われていて知らない。
噂では25歳は超えているという説もある。
そしてこのマリアさん、神官という職についているのに、娼婦の噂が出るほどのスタイルなのだ。
そんな説明を自分の中で再確認しながらしていくとマリアさんから儀の始まりを告げられる。
「準備は出来たかな?」
「はい、準備万端です」
「よろしい。それでは儀式を始めます」
「よろしくお願いします」
神よ 我が子達の 祝福あらん事を 神託魔法 セブンスエグゼクティア !!!
「はい、これでエリクの最初のスキルが表示されると思うわよ」
このマリアさんが使った神託魔法は、後天的に覚えられる魔法だそうだ。
ただ、マリアさんがこの魔法を覚えたのは、俺と出会ってからの事らしい。なんでだろう?
うん。とりあえずまずは自分のスキルの確認をしなくちゃ!
ステータスの表示は念じればいいんだよね?
========================================
名前:エリク レベル:1
体力 10
魔力 5
力 3
知力 8
素早さ 3
運 100
《スキル》
成長
========================================
「うわぁ!でました!!でましたよ神官様!わーい!!」
「エリク良かったわね。私は教会の掟に従ってエリクのスキルを確認する事が出来ないけど、
エリク自身はそのスキルの事を知る事が出来るからしっかり確認しておくのよ?」
そう。ステータスが自分で確認できると言う事はスキルの内容も自分で確認できるらしい。
他の書物では鑑定のスキルがあるらしいのだが、自分のスキルに関しては自分で確認できるのだ。
鑑定スキルってどういうものなのだろう?今度調べてみよう。
「はい!!ありがとうござます神官様!」
「こーら。二人だけの時なんだからマリアお姉ちゃんって呼びなさいって言ってるでしょう。」
2、3年前からだろうか。
マリアさんからは、二人きりの時はお姉ちゃんと呼びなさいと言われているのだ。
なぜお姉ちゃんに拘るのかは疑問なのだが、なぜかそこに疑問を持ってはいけない気がした。
なのでここは素直にしたがっておく。
「はーい。ごめんなさいマリアお姉ちゃん。」
「うんよろしい!」
「折角もらったスキルだ!早速確認しなくちゃ!どれどれ?」
========================================
《成長》
このスキルを獲得した者は、
下記の値の成長が格段に早くなる。
・ステータス値 ・スキルレベル
・スキル習得 ・レベル
(尚、ステータスの運のみ固定)
========================================
「これは…!!!」
「どうしたの?スキルがあんまり良くなかった?」
「い、いや!そうじゃないよ!お姉ちゃん!」
「そう?本当に大丈夫?」
「うん!大丈夫!とりあえず一旦帰るね!」
「うん。気をつけて帰るんだよ?」
「はーい!」
そして一旦心を落ち着かせる為にも外に出る。
多分。多分だが、この成長というスキルはかなり強力なものだと思う。
書いてある事が異常すぎるのはこの歳の自分でも分かる。
一般的なステータスやスキルの習得率、レベルの上昇やスキルレベルの上昇は、
俺みたいなのは当てはまらない。
ステータスはレベルに依存するし、レベルの上昇だって50レベルが一生とも言われている。
スキルの習得率なんてもってのほかだ。
1つのスキルを習得するのにだって1年から3年はかかるとも言われているのだ。
その成長速度の遅さのせいで、皆同じように成長が止まったりもする。要するに壁だ。
それが、その壁が、この成長スキルのおかげでなかった事になってしまうのだ。驚かないわけがない。
ただまぁ、とりあえず外に出たはいいが、このみんなの視線がちょっと痛い。
「失礼しました…。これは帰ってから見直した方がいいかもな…。」
そんな事を思いながら一旦家に戻る事にした。