八月一五日
本作はフィクションです。
一部史実に登場する人物が存在しますが現実ではありません。
その事を理解した上でご視聴ください。
昭和一八年八月某日
海軍航空技術廠(空技廠)
みんみんと蝉が五月蝿く鳴く日中。
直射日光が照りつける滑走路には、未だ試験中の戦闘機や爆撃機の姿。
そんな機体の横に飛行服を着て整備員や上官と機体について喧々諤々と語り合う搭乗員達を傍目に「うへぇ」等と思いながら扉をくぐる。
何せ上空の気温は非常に低くなる。
一〇〇mで大よそ-〇.八度、上空三〇〇〇mとなれば地表が二〇度の場合-四度となる。
極寒ともいえる上空で薄着でいられる訳も無く、結果防寒用に厚手に作られた飛行服は熱を逃さないように作られている。
そんな物を地上で着ていては熱が逃げず汗で酷く蒸すのだ。
休みの日故に薄着だが、あんな物を着ている姿を見ているだけで暑くなってくる。
「多少は涼めるか」ぐらいの気持ちで空技廠へと訪れたが、あれを見て一気に汗が噴出してくるようだ。
だが、実際はひんやりと涼しく感じられる室内。
最初は昨日の試験飛行前の試験項目確認を炎天下でやっていた事をふっと思い出させてくれた事に恨み言を呟きそうになったが、実際は「来て良かった」なんて思う。
なんて簡単な思考回路をしているんだろうか、と自分の単純さに苦笑いをせざる負えなかった。
そんな中、飛行服を着た試験飛行士や白衣を着た技師、制服を着込んだ軍人と何度かすれ違いながら自分の部署へと顔を出そうかと廊下を行く。
現状が現状故にこうして休暇をもらえるだけありがたいのだが…行った所で何も無い。
だからと家で何かしようにも何も無いのだ。
生まれたばかりの娘を相手にしたくても親父とお袋があれやこれやと世話を焼き。
兄貴夫婦は親父の店を受け継ぎ今日も開けてるから何かしら顔を出すのも気が引ける。
女房は女房でこの状況だからと実家の両親に顔を見せに行ってるから家にいない。
結果、同僚の顔を見に行くという名目で訪れた。
…とは言え、もしかしたら外で試験飛行に参加してるかもしれない。
暑さからさっと視線をそらしてしまったが故に顔も確認していなかった。
しまったな、等と思いつつ歩の速度を落とさず窓の外に居ないか、と確認をした。
そんな余所見がいけなかった。
ドン、という音と共に白衣を着た技師とぶつかってしまった。
あっと思ったが、すでに相手が持っていた書類は地面へと落ち、その上に木造模型が落下した。
やってしまったと後悔しながら手早く落ちた書類を拾いつつ「すみません」と言葉をかける。
だが相手側も「いや、こちらこそ」と返しながら一緒になって書類を拾い始めた。
あぁよかったとやさしい反応に安堵しながら落ちた木造模型を手にし、その形状に違和感を覚える。
機首に操縦席と思われる場所が無い。
尾部に水平尾翼しかない。
主翼左右中腹前方に垂直尾翼が一枚づつ付いている。
右へ左へと模型を傾け、じっくりと観察してしまう。
何処がどうなっているのか、何処に操縦席があるのか、どうしてこんな形になっているのか。
書類を拾っていた筈なのに、その奇怪な模型を手に疑問符を大量に浮かべ調べてしまった。
それを見た相手は、さっと手にあった模型を持ちスッ…と機体を後ろへと動かす。
「こっちが前で、こう飛ぶんですよ」
「えっ……えっ?」
そう言われ、彼の持っている模型をじっくり観察する。
機首と思ってた場所は尾部で水平尾翼は機首に付き、後ろの主翼に垂直尾翼。
本来の飛行機とは間逆。
あまりにも奇怪で特殊な形状。
言われた通りに進む、と頭で理解しようにも今まで学んできた常識がそれを許さなかった。
「…これは水平尾翼――この場合先尾翼と言うんですが、それを前に配置した『前翼機型』という物でね。
本来前に配置する発動機を後ろに搭載して『牽引式』から『推進式』にした物なんだ」
「推進式…ですか?」
その説明に再度模型を見る。
確かに発動機は機体後方にあり押し出す形になっている。
「こうする事でプロペラや発動機への空気抵抗を減らして速度を得られる。
さらに重心を後ろにすることで遠くに前翼を配置することができて昇降舵の効きを良くし、格闘性能も手に入る」
彼はそういって自身有り気に語る。
だがその逆側配置にふと考えてしまう。
「…でもこの配置だと逆に安定性が極端に悪くなるのでは?」
紐か何かで引っ張るのなら安定してまっすぐ進む。
だが後ろから押す場合少しでも向きが変わるとまっすぐ進まなくなってしまう。
そう、牽引式ならばいいのだが推進式では安定性が低くなると考えた。
そんな考えを彼は笑顔で肯定した。
「よくわかったね。
確かに安定性は低いし少しの動作で大きく動いてしまう構造だよ」
「そうなると搭乗者は常に操縦桿に意識を向けないといけない…長距離での負担が大きいのでは?」
「うん、そうだよ」
「でしたら余計に運用に支障が出ると思いますが……」
零式艦上戦闘機の航続距離は二二〇〇km前後。
対する敵戦闘機の航続距離はその半分以下と言われている。
元々海上での空母運用、長距離を飛行して敵と交戦する事を想定していた。
その為零戦では低速での燃費向上と航続距離、そして格闘戦性能を主体に設計していた。
こうなると長距離への運用を考えれば搭乗者への負担は減らすべきである。
そう関係無い筈なのに、彼に意見を述べる。
そんな自分の反応に彼は笑みを浮かべ近くの部屋の扉へと歩み寄り手招きした。
「確かに海軍思想的に考えれば長距離飛行に対する搭乗者への負担軽減、そして安定性は必須だ。
だけれども、この機体はそれを必要としていない」
「必要としていない?」
彼の手招きに答えながら、一緒にその扉を潜る。
確かこの部屋は風洞実験室だった筈だと思い出し、木造模型を持っていた事に合点がいった。
その部屋の中には、すでに他の技師たちが待機していたのか、送風機の準備を終えている。
煙と共に風を送り、模型に対して当てる事で実機に発生しうる空気の乱れや流れを調べる実験。
それがこの風洞実験であり、この部屋はその風洞実験場なのだ。
彼は手にしていた模型を作業していた技師に渡すとこちらに向き直り、近くにあった図面を広げた。
「この機体は『上昇力』『速度』『火力』を求めた局地戦闘機――高高度迎撃機なんだ」
その図面には機関砲を四門。
最大速度四〇〇ノット(約七四〇キロ毎時)を想定。
略符号J7。
先ほどの模型の元となる図がそこにあった。
あまりにも特殊で、あまりにも奇怪。
今まで学んできた学問、操縦してきた機体。
そんな今までの全てを吹き飛ばすかのようなその姿。
「この機が完成すれば、いずれ来るだろう本土爆撃を防ぎ国民を守ることができる」
「守る…ですか……」
その奇抜な思想。
奇怪な姿。
それに反し余りにも野心的な設計。
戦う為の武器ではなく、守る為の武器。
自分は、その言葉と図面に描かれていた可能性の塊に心惹かれた。
「…興味があるみたいだね」
「あ、いえその……」
相手も、自分のその興味を感じたのかそう笑みを浮かべて返された。
「君がいいのなら、この開発計画に参加できるように上に掛け合ってみるよ」
「…ありがとうございます」
確かに興味があるのは事実である。
だが自分の仕事である別機の試験飛行はまだいくつも残っている。
だが、もし今の仕事が終わったら参加したい、と言う気持ちは十分にあった。
彼はスッと手を差し出し、それが握手を求めた物だと分かると、自分もはにかみながら返す。
が……
「自己紹介がまだだったね。
僕は鶴野、鶴野正敬、テストパイロットで階級は大尉だ」
「はっ……はぁっ!?しっ失礼しました!」
一介の技師だと思っていたら、とんでもない相手だった事を理解し、すばやく握手を終え敬礼を返した。
少尉である自分よりも上にいる相手だとは思っても見なかった。
「じっ自分は鷹山信二少尉であります!」
蝉の声が聞こえる夏の一日。
自分の声が、風洞実験室に響き渡った。
―――
「はぁ……」
あの日よりちょうど二年。
九州、蓆田飛行場の外で一人の男が焚き火を背に腰掛けながら滑走路を眺めため息をついていた。
あれから日本は米国爆撃機の脅威にさらされ続けていた。
日々繰り返される工場や都市への絨毯爆撃に人々の士気は落ち、心すらも弱っていた。
何せ高度一〇〇〇〇mを飛ぶ米国の空の要塞「B‐29」を前に、高射砲も零戦も手が出せなかったからだ。
そんな中で必要とされたのが「局地戦闘機」。
高高度へと素早く昇り、一撃の元敵爆を屠る。
その発想を可能とするべく開発されていたのがJ7、海軍十八試局地戦闘機。
その名を――震電
彼こと鶴野は開発プロジェクトの最高責任者であり、試作一号機のテストパイロットでもあった。
数日前のことである。
八月三日の朝、二度目の飛行試験の際に乗り込もうとした所を他の技術者やテストパイロットたちに止められた。
――いま死なれればJ7の見通しが立たなくなる
彼らの言い分は最もだった。
故に彼は宮石操縦士に代わりに飛んでもらう事となった。
その結果は十五分程の短い試験飛行だったが、しっかりと空に上がったのだ。
続く六日、別のパイロット達にも飛んでもらい問題点の見直しを行った。
カウンタートルクによる傾き。
ブレーキの制御性。
操縦桿のガタ。
操舵の重さ。
高揚力装置稼動による機首下げ動作。
エンジン系統、噴射燃料濃度、油温過昇のトラブル。
全て、その全てを見直し対応策が講じられた。
続く八日、全ての調整を済まし問題の微修正を終えた機体が空を舞い、再びの問題の洗い出し。
そして問題の洗い出しを終え、トラブルに対する修正を終えた。
合わせて、パイロットたちの意思により二号機にも同様の調整と補給を終え、最悪即座に迎撃に上がれるような状況にされていた。
六日と九日に落とされた米国の新型爆弾、それを落とされまいとした行動である。
一七日の全力飛行試験、それを終えれば後は量産と迎撃作戦が行われる。
一部の者には「あんな不自然な機体が空を飛ぶものか」と言われたが、それが実際に空に上がるはずだった……
そう上がるはず『だった』のだ。
八月一五日、日本の無条件降伏による中止が無ければ。
全てが終わり、脱力するしかなかった。
あと少し。
後数日も待てば空に上がれたのだ。
確かにこれ以上本土を焼かれるわけにはいかない。
それを理解しながら焚き火に次の設計図を放り込む。
やるせない気持ちと共に、海軍による焼却処分命令故に自らの手で処分する。
「…はぁ……」
「…大丈夫ですか大尉?」
そんな中、気が付いたかのように声をかけながら近寄る青年がいた。
かつて風洞実験に立会い、その後別の試験で参加できず昭和二〇年の四月からの参加となったテストパイロットの一人――鷹山信二。
木槌片手に彼は鶴野の傍に立ちながら燃やされる設計図を眺めていた。
「…歯痒いな……」
「そうですね…あと少しでした……」
そう呟きながら、燃え盛る炎に視線を落とした。
鷹山もまた技術者であり、また八日のテスト飛行を担当し、同時に鶴野からの勧めで是非にと二号機の専属パイロットになっていた。
思い入れは鶴野と同等かそれ以上の物を持っていたに違いない。
それを察しながら、手に持つ木槌を見て理解してしまう。
あぁ、彼もまた自らの手で作り上げた愛機を壊さなければならないんだろう、と。
「…では、鶴野大尉……」
「ん、あぁ……」
彼はスッと手を伸ばす。
鶴野は彼が何をしようとしたのか一瞬戸惑い、そして理解する。
彼もまた手を伸ばし握手をする。
鶴野がいなければ彼はココにいなかった。
そして、それが今全て消えるのだと思った。
それが故の行為なのだろう、と彼もまた強く強く握り返す。
無念と無常さを秘め、鶴野は握っていた手を離す。
だがその思いが分かったのか、彼は苦笑いをするとビシッと敬礼を返した。
「…今まで、本当にありがとうございました」
その一言と共に、彼は二号機が格納されている壕へと駆け足で向かう。
見透かされたなぁ…等と思いながら、頭をかきながら次の設計図へと手を伸ばした。
そこには設計図以外に、記録されたフィルムや写真なども含まれていた。
見れば見るほど、思い出が浮かんできては消えた。
彼は不意に、目頭が熱くなりながら数日前を振り返る。
思い返すのは数日前の飛行試験。
八日――試験飛行する一号機のコクピットの中で、鷹山はまるで子供のような声をあげながらはしゃいでいた。
これが完成すれば日本の空を守ることもできるだろう、と思えるぐらいに。
通信機越しに「飛んだ、飛びましたよ!大尉!」等と声を上げた彼に皆で歓声を上げたのも、もはや久しく感じるほどであった。
だが、それはもう過去。
諸行無常とはこの事か、とその記録が残されていた記録テープ諸共炎に放り投げた。
ゴゥッと一瞬炎が揺らめき、またゆらりゆらりと小さくなびく。
後何枚だったか、等と考えながら手を伸ばし、ふと気がついた。
次の設計図が無い。
ずいぶんと無気力のまま燃やしていたのだろう。
彼は予想以上に意気消沈している自分を恥じた。
パイロットであり二号機担当であった鷹山は自らの手で壊す覚悟を決めていただろうに、と。
彼は別の設計図はどこにあっただろうかと重い腰を上げた。
後の歴史に一切残らないであろう事を嘆きながら震電を思う。
せめて一度だけでも、全力で空を飛ばせたかった。
だがきっと、震電は産声を上げる事無く歴史から消える。
そう思ったときだった。
三菱重工業製ハ四三星形複列一八気筒の雄叫びが、飛行場に響き渡った。
稼動予定は無い。
何せ全て焼却処分する命令だったのだから。
いったい誰が、という思いと同時に予感が的中する。
にらみを利かせる五式三〇粍固定機銃四基。
轟々と音を上げ続ける可変定速ピッチ付き六枚プロペラ。
太陽光を受け、きらりと光を反射する機首前翼。
振り返った先には格納されていた壕の中で叫び声をあげる二号機の姿があった。
四〇〇ノットを目指したが故に与えられたその特徴的なエンテ翼機は、自らの推進力でもってゆっくりと滑走路へと姿を現す。
何をする気だと声を上げる前に、鶴野は二号機がどうしようとしているのかを理解した。
メイン滑走路前で停止した震電は補助翼、昇降舵、方向舵の順に上下左右と確かめるように動かす。
全てを終えたのか、一瞬の静寂の後産声を上げるかのように発動機をかき鳴らす。
加速、加速。
想定馬力二〇〇〇を超える設計だったハ四三と直径三m四〇cmからなる六枚プロペラから生み出される推進力。
全力加速による速さは一瞬で、滑走から始まり鶴野までの僅かな距離は瞬く間に縮まる。
「たっ……鷹山ぁっ!!」
彼の叫び声は目の前を通過する震電二号機に――そして搭乗者であった鷹山へと向けられる。
だが、その声は届く事無く、通過した震電から発せられる突風によって掻き消された。
ぼうっと焚き火が煽られ、鶴野も両腕で顔を隠し足で踏ん張らなければ突風で吹き飛ばされたかもしれない。
だが徐々に突風は収まり、震電と鷹山は滑走路の先で空へと上がった。
「大尉!何事ですか!」
今の騒ぎに気がつき、他の整備員や研究者たちが駆け寄ってくる。
それも当然であろう。
戦争は終わりありえるはずの無い突然の騒ぎなのだったからだ。
だがそんな謙遜の中、鶴野はただ空を見上げていた。
それに気がついた様に一人、また一人と空を見上げる。
そこには、悠々と空を飛ぶ震電の姿があった。
本来ならば起きてはいけない事に怒りを顕にする筈であったが、皆が皆同じように空を眺めるだけであった。
飛ぶはずが無い、飛べるはずが無い、飛ぶ理由も無い努力と研究の結果が。
その震電が今、彼らの目の前で全力で空を飛んでいるのだから。
歓声も喜びも感動も無く、ただただ皆がそろって無言でそれを見守り続けていた。
「あの馬鹿者が…なんて事をしてくれたんだ………」
もう一人のテストパイロットである宮石操縦士は鶴野の背後からそう呟きながら空を見つめる。
口調こそ荒っぽいが、その顔には笑みが浮かんでいた。
大空を舞う震電は、飛行場上空で機体を左右させる。
そして機体は大きく上昇し、宙を一回転する。
その動きに、技師たちも非常事態である筈なのに歓声を上げた。
だが鶴野も、宮石も、他の技師たちも。
鷹山がこのまま基地に帰ってくるとは思わなかった。
震電設計に参加する事になってこの地に来た時の彼の目はにごり、半ば死んでいた。
そんな彼は震電の設計、開発、試験運転に命をかけていた。
ならば次に彼がどうするのか等、手に取るように分かってしまう。
鷹山の駆る震電は、そのまま基地から遠くへと飛び去って行く。
上空の雲へと、その姿を消していく。
騒音も、風切り音も、その全てをなくして。
「…飛んだな」
「えぇ…飛んで逝っちまいましたなぁ」
きっと彼はそのまま『むこう』へと逝ってしまうのだろう。
そんな確信が彼らにはあった。
震電の消えていった空を眺めながら、宮石が鶴野に手紙を渡す。
鶴野には何も聞かずとも、それが彼の残していった物であることがすぐに分かった。
「上にはどう報告します?」
「…そんなの決まっているじゃァないか」
そう言って手にした手紙を目の前で燻っている焚き火に放り込んだ。
「この地に鷹山信二少尉は訪れなかった。
来る際に爆撃か戦闘機の襲来かで人知れず戦死した。
インフラの崩壊でそれらの報告が行き届いていなかった。
…皆、いいな?」
その彼の言葉に技師たちは、皆そろって苦笑する。
当たり前じゃないかとでも言うかのように。
「一号機以外の予備部品の即時解体を進めてくれ。
二号機の資料は全て廃棄し、一号機のみ残す形にすれば証拠としては十分だ」
その言葉に技師たちは了解と答え解体、焼却作業を再開する。
鶴野も別の資料を探しに室内へと戻るべく滑走路に背を向けた。
二号機資料を消し――そして、鷹山の証拠を抹消するべく……
後の歴史は語る。
計画名J7W1。
海軍一八試局地戦闘機『震電』。
戦争末期、全力飛行を目前に終戦を迎えた悲劇の戦闘機。
飛行時間は試験飛行での僅か45分のみであり、それ以外で飛行した情報は無い。
二機開発され解体途中の一号機と一部の資料は英訳され米軍に接収、復元も飛行する事も無く保存された。
現在でも震電一号機は国立航空宇宙博物館の復元施設であるポール・E・ガーバー維持・復元・保管施設にて分解状態のまま保存されている。
――資料や技師達の言葉の中に『鷹山』なる人物は一切現れる事無く………
海軍一八試局地戦闘機『震電』
型式番号J7W1
大日本帝国海軍が進めた高高度迎撃機(局地戦闘機)の一機、他に雷電などが該当する。
特徴的なエンテ翼戦闘機であり、こうする事で機動性と空気抵抗を減らし、また武装を機首に集中させられた。
昭和一九年(1944年)一月に実験用小型滑空機で滑空試験に成功、同年五月にB‐29の迎撃を最大目的として正式に試作発令される。
しかしいくつもの壁を前に設計は遅れ、最終的に全力飛行を目前に終戦を迎える。