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キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第1話 巡り合わせ
4/17

義理でも、少なからず私にとっては数少ない家族なんだ・・・

はー・・いただきます」

あっためた昨日のおかずの残りと、卵焼きと、ご飯とふりかけを前に手を合わせ、食べ始める。



(・・おはよう、


雅)


「、おはようございます慧太さん」


慧太さんもいつもどおりだ。犬猿の仲であるショートが起きたら必ず5分以内に、追うように起きてくる。

”本人は危機本能が警鐘を鳴らすんだ”、

なんて言っていたけど・・・要するに、勝手に行動をしないように自分が寝ている間に何かが起こったら対応できないからという意味なんだろう。どこまでも責任感が強い、というか正義感の強い慧太さんには感服する。人じゃないほかのみんなにはあんまりそういう感覚すらないみたいだし・・同じ人間としてそういうところはすごく助かる。


まぁ、危機本能って言い方はちょっと、人間っていうより野性的な感じがするけど。


普通なら誰にも会わず、誰もいない静かなダイニングで1人で食べる朝食なんて味気ないものなんだろうけど・・私に限っては1人でも、誰にも会わなくても全然静かじゃないしむしろ慌ただしいくらいだ。にぎやかを通り過ぎてうるさいし。


(ちっ・・・)


わざわざ舌打ちしなくても・・・。


(ところで雅)







「ん・・・?なぁに?」


味噌汁に口をつけながら返事する。


(お前、お父さん再婚してから1年経つのに、まだ兄弟に会ってないだろ?)


「・・・あぁ・・


確かに。






もう1年かぁ・・・」


前からお父さんは家には帰ってこなかったし、新婚ってことでその中私がいるのも逆に気を遣ってしまうし、何より仕事のこともあるって今は2人で住んでいるらしいから本当にここは私だけの家になっちゃったわけで。

相変わらず多くのものはここに置いたままで向こうで買い足してるみたいだけど、もうお父さんとも2週間は会ってないし、新しいお母さんの藍子さんに会ったのも、最初の顔合わせの時と、結婚式と、2か月前の3回だけ。兄弟が7人もいるのは驚いたけど、まさか一緒に住むのなんてありえないし、体に問題を抱えた私がそこに行ったらどうなるかなんて簡単に想像がつく。

相手の体性が強ければいいけど、そうじゃない可能性もあるし、たとえ強くたって私の性格がコロコロ変わったりしてるのを見ておかしいと思われたら説明しなきゃだし、説明したら巻き込んで、振り回してしまうことになるし・・・さすがにそれは申し訳ない。


それに、一緒に住めばにぎやかでいいかもしれないけど、こうやって口に出して会話したりはできなくなっちゃうんだし・・・。


あぁ、あと藍子さんが言うには兄弟たちは不仲も不仲、それもいいところな感じなほど各自個性が強くて自分勝手で傲慢な人たちが多いらしく、女の子がそこに入ったらどんなことになるかわからないと心配してくれていた。


お父さんも、滅多打ちにあったらしく長いこと凹んでいたし。


藍子さんがやめておいた方がいい、と言っていたのもあって、兄弟と一緒に住もうとは思わなかったけど・・・そっか、会ってさえいないんだっけ。

結婚式のときも、なんだかんだ理由つけていかない、と言ってたらしい。実際、式場、結婚式と言っても本当に藍子さんのお母さんとおじいちゃんと私しかいない感じのもので、簡単ブライダルみたいなものだった。さすがに兄弟全員が来ないと聞いた時は驚いたけど、反抗期なのかもしれない。


(もう1年かぁ、なんてのんきなこと言ってていいのかよ。家族増えてどんな人かなぁとか言ってなかったか?)


確かに・・それは気になるけど・・なんていうんだろう、

相手も私も子供だけど子供じゃない、っていうかもういい年だし、いまさらって気もするし・・・・。それに、何より私のことに巻き込んでしまうことになりそうで申し訳ない。

もしもみんなと性格合わない人たちだったら、アクアとショートくらい正反対の人とかいたらそれこそ・・どうなるか、・・恐ろしいし・・・。

日中の短時間とか、学校だけでも何度か危ないことはあったのに、ずっと一緒なんていくら自分の部屋にいたって不安は大きい。


(そもそも家族とは一緒に住むものだろう)


確かにそうだけど・・・。

私も家族が増えたのは嬉しいし・・・お父さんが好きになった、一緒になりたいって思った人が大切にしている人なら、私も大切にしたいなって思うけど・・・・・。


(そうだよそうだよ、思い切って会いに行ってみれば?)


ここ、目黒から電車で30分はかかってしまう場所、吉祥寺にその家はある―――――――

と、聞いたことはあるし住所も知ってるけど、何も用がなかったしそんなこと思い浮かんでもやってみようとは思わなかった。

っていうか、アクアは・・またからかいのタネがほしいだけじゃないのかな。


(そこなら俺の本体だって飼えんだろ)


本体って・・・。

そもそも、ショートは番犬だし、何度も言ってるけどすぐのりうつるために近くにいたい気持ちはわかるけど向こうにいてもらわないと神社が困っちゃうんだって。いつの間にか、見に行くんじゃなくて一緒に住むみたいな話になってるし。


(使用人もいるのだろう?

それならば生活も楽になるに違いない)


いや、それは実際私にしか影響しないけどね・・・。そういう暮らしに慣れてるっていうか、当然みたいな感覚の翡翠には快適な空間かもしれないけど・・・。

私は別に家事が嫌いなわけでも、苦手なわけでもないし・・今ぐらいがちょうどいいんだけど。

正直、そういうお金持ち感覚はよくわからない。

私だって、決して貧乏な方じゃないと思うし、父子家庭だけれどお父さんが頑張ってこの家のために働いてくれるからこんないいマンションにも住めているけど、だからってお金持ちってわけでもないと思う。

特にすごい金額のお小遣いを渡されてるわけでもなく、毎月の食費と、ちょっとのお小遣い、それにバイトでのお金くらいで私は特に物欲が強い方でもないからそれ以上お金が欲しいと思ったこともない。何かブランドバッグがほしいとかそういうのもないし、金銭感覚は普通だと自分では思っている。

使用人って、別に家族でもないのにプライベートに入ってきてるのはなんか・・イマイチ馴染めなさそうな気がする。


「うーん・・・」


今のところ・・そんな時間はないよね。そんな時間があればおじいちゃん手伝ってあげたいし、空いてる時間には慧太さんやショートに振り回されてるし。

バイトだって、これからのためにあんまり休むわけにはいかないし・・・。


(会うだけでも会ってみたらどうだ?)


(そうだよそうだよ)

(いくら再婚相手の子供とはいえ、そういうことはきちんとやっておいた方がいい。


大人になって外に出たとき、もしも父親が亡くなった時必要な男の名前はそいつらになるんだ)


慧太さんの言ってることが、やっぱり1番いろんな面で説得力がある。斗真も私のために言ってくれているのはわかるけど、説得力って面で言うとやっぱりもともと人間で、1番そういう感覚が近い、そういう知識もある慧太さんの言う言葉にうなずける。

将来、私が家を出て独立して、最初は保証人としてもちろん父か祖父に名前を書いてもらうことになるんだろう。

そういう場合、必要なのはきちんと働いていて力のある男の名前なんだから。しかも、ある程度親密じゃないとそういうのは書いてもらえない。

けれど、確かにその頃に祖父が生きているとは限らないし、父だって、慧太さんみたいにある日突然死んでしまうかもしれないし、藍子さんの前の旦那さんみたいになる可能性だって否めない。

どちらにしろ、きっと肉親の少ない私にとってその人たちは、少なからず大切になる人たちなんだ。

事実関係上も、それ以外でも。


(?


慧太、どういう意味だ?)


「そう・・だよね、

いい加減挨拶くらいしないとね」


いまさらって感じかもしれないけど、都合のいい時だけ頼るなんてことはしたくないし、やっぱりそう言われると顔くらい見て、挨拶くらいしておきたい。


私の、家族になった人たちのことなんだから。


(説明するのは・・少し面倒だから・・また今度)


ばっさり切り捨てた慧太さんに内心苦笑しながら皿を下げて、洗い始める。


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