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キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第1話 巡り合わせ
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雅の朝の準備時間

第1話 

巡り合わせ



ピピピッ



私の朝は、毎朝この携帯アラームで始まる。

毎度のことで1コールで布団から腕だけ出して音を止め、少しだけ目を瞑ったあと、のっそり布団から起き上がる。


まだ眠気の覚めない頭で服を着替え、あくびをしながら洗面所に行く。


(お早う)


「ん・・おはよぅ・・・」


いつものように完全に眠気の欠片もないまっすぐな声の翡翠の声に返事をして目を瞬きながら髪を束ねる。


(おっはぁ~雅~!)


「・・おはよう・・・」


相変わらず元気だなぁ・・アクアは・・・。


「・・・・」


冷たい水で洗顔してようやく頭が覚めてきた。


(今日はバイトか?)


「ええと・・・午前中はシフト入ってるけど、午後はないから神社行くつもり。


っていうかおはよう、斗真」


この家には今誰も居ないので、遠慮なく口に出して話せる。彼らのように内側で会話することもできるけど、ずっと黙って動いてるのもなんか変だし、仮にもしゃべってるのに声に出さないっていうのも違和感で、口に出してしまうことが多い。


(あぁ、おはよう)

(また残り物を食べられるのか)


疑問符がゼロな、それが当然とでも言いたげな翡翠が急に違う話題を投げかけてくる。


「翡翠最近そればっかりだね。

何か気に入ったのでもあったの?」


売れ残ってしまったおかずをもらって帰ることは前からあったけど、ここ最近のメニューだと魚のフライときんぴらごぼうと・・あとポテトサラダとかが多い。

何が好きなのかまでは正直よくわからないけど。


(あの、

白身魚の揚げ物が好きなのだ)


あぁ、魚のフライだったんだね。これまでは油ものあんまり好きじゃなさそうだったのに。

でも、確かにあれはおいしいよね。白身魚だから魚自体はさっぱりしてて、ころもがサクサクしてて・・・絶妙な感じがすごくおいしい。時期によって色々メニューが変わっていくうちのお店ならではっていうか、旬だからこそおいしいっていうか。


普通の時はしゃけのり弁だけど、それにあれがのってるのは、たまらないよね。普段のしゃけもおいしいけど。


(それは俺も好きだな、うまい)


あはは、斗真はただもともと猫だから魚好きなだけでしょ。


(えぇ~?俺はまた、牛肉の甘辛炒めが食べたいぃ~)


また言ってる。

アクアがそれ好きなのはわかるけど、あれは9月から10月の期間限定のやつだし、それ以外でもトッピングは可能だけどそういう時は大体作られる量が決まってるからあまることなんてないけどね~・・・。


(愚民にはあの美味なるものがわからないとは・・・。かわいそうなやつだ)


ひどい言われよう(笑)。


(えー?

ひーちゃんこそかわいそーだよねぇ、あれがおいしくないと思ってんだもん、舌とれちゃったとか?)


ごちゃごちゃ言っている人たちをスルーしてご飯をよそっていたが、なんだかヒートアップしそうだったので


「アクア、ちょっと黙ってて」


と静かに言う。


(はっ、雅の手を朝から煩わせるとは、何とも脳みそのない犬だな)


(あぁん・・・?)


やっぱりご飯のにおいにつられて起きるらしいショートがあきらかに不機嫌そうな声を出した。


(ひーちゃんがショーちゃんのこと脳みそのない犬だってさー)


・・・。


(あんだと?)


「アクア・・・ダメだって言ってるでしょ」


言っても聞いてくれることなんて少ないけど、言わないよりはましだ。


(まぁまぁ、ショート、落ち着いて。


今言ってたのはアクアのことで、ショートのことじゃないから)


斗真が朝から忙しい。


(な?)


何も弁解さえしない無駄な落ち着きを放っている翡翠に斗真が話を振った。







(我は起きていないものの話をするほど無粋ではない)


よかった。


(・・・・アクア・・・)


ショートの怒りの矛先はけしかけてきたアクアの方に向いてしまったらしい。


(えぇー?俺っ?


っていうか、じゃあなんで俺に犬なんて言ったんだよ~俺犬じゃないし~神使だしぃ~)


・・馬鹿・・・・。


(貴様が崇拝してやまないという土地神とやらに付き従っていたのだろう?主君に忠実な犬ではないか。


それに、本当の犬という意味では犬にさえ失礼であるな。まだそちらの犬の方が貴様よりは賢いだろう)

(別に崇拝なんてしてないし、そもそもそれが俺の仕事だしぃ~。

それに、

言葉もしゃべれない犬と一緒にしないでよねー)

(・・あぁん?)

(アクア、いちいちショートのことけしかけんな。

しゃべれないっていうけど、お前だって人と話すことはできないだろ。ショートだって、同種同士なら話せるし)

(ごめん~俺難しいことわっかんない~)



(・・・はぁ・・・)


(後で会ったら殴り飛ばすから覚悟しとけアクア)


(ひ~っ、やめてよ怖いなぁ~)


住人、という言葉のとおり、こうして会話をしているが普段は別の場所に区切られたところに7人はいて、たまに1か所に、広間みたいなところに行くことがあって、そういうときだけ顔を合わせる。だからつまり、そこにいかなきゃアクアは殴られることもないわけだけど。


「毎朝毎朝よく飽きないなぁアクアは。

あんまり調子に乗ってると私も許さないよ」


これ以上斗真を困らせないでよ。朝からショートの感情逆なでしないでよ。


(えぇーっ、雅ぃ~)


「甘えた声出してもダメ。

はー・・いただきます」


あっためた昨日のおかずの残りと、卵焼きと、ご飯とふりかけを前に手を合わせ、食べ始める。


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