表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第2話 初めまして
15/17

浮かび上がる長男の行動とピザで怒り


「・・・これとこれ、とこれ・・?」


1人で3つも食べるの?

大きさとか何も言ってかなかったし・・・。大きなサイズのハーフ&ハーフと、もう1つはなくてもいいね。私は適当に冷蔵庫覗いてご飯作ろう。

あまったら私が食べればいい話だし。

ええと・・・。


(別に言うこと聞かなくてもいいんじゃないか?)

(そうだ、あのような者の言うことを聞く必要はない。雅は召使ではないのだから)

(そーだそーだ!)

(・・・・)

(あんまり最初からなめられてたら、あとでひどいことされるぞ)


「だから召使じゃないのはわかってるよ、要は捉え方だって。


これは・・なんていうか、良心?


それに、どうしてこういう態度とってるのかもわからない今文句をつけても何か解決できるとは思えないし、ただいうこと聞いてるだけじゃないよ、大丈夫だから」


少なくとも知らないところで頼まれて、お金乱用されてるよりずっといい。


(雅は甘いんだよ!)


「はいはい、ごめんなさいごめんなさい。


・・はい、ツナマヨとシーフードのハーフ&ハーフ、大きさはLで、はい、お願いします」


よし、これでOKっと・・・。

まだごちゃごちゃ言っているみんなを頭の中から追い出して、厨房に行って明らかに業務用冷蔵庫の大きさの銀色の扉を開ける。

うわ、すごい飲み物の量。スパークリングウォーターに、天然水が瓶で横の扉にたくさん入っていて、オレンジジュースにグレープジュース、ミックスジュースに野菜ジュースと飲み物だけでもすごい種類だ。

もちろん牛乳もある。

左にはマヨネーズやらケチャップやら、常温で置いておけない調味料がずらり。

・・こんなに使うのかな。

1番上の段にはチョコレートとかの常温で置けないお菓子が入っていて、2番目の段にはたらことか、チーズとか、卵とか、あとは冷やご飯があって、3番目にはあまり何も入っていなくて、兄弟の誰かがいれたと思われる食べかけのお菓子や食べかけのものがいくつかあった。

一旦閉じて、その下を開ける。

うわ・・大きなお肉。絶対業務用だ。野菜もこんなにたくさん。全部色も形もきれいで、・・って・・・な、なにこれ、と・・トリュフ?

トリュフだよね・・・!?

初めて見たけど・・・え、あと・・魚も・・大きい・・・。

さばいてきてない一匹が丸々入ってるってなかなか豪快な光景だ・・・。全部規模が変だよ・・・。


「・・・」


炊飯ジャーも業務用で、一気に15合も炊けるやつだった。釜はもちろん空だ。このご飯がいつのかわからないのが心配だけど・・ちょっと食べてみて平気だったら適当にビビンバでも作ろうかな、きちんとパックの牛肉もあるし。








野菜をまな板の上で切っていたら、ピンポーンと音がしそういえばインターホンはどこにあるんだろうと思いながら見ると、扉のすぐ横に黒いインターホンがあった。

画質はきれいで、大きく、普通のと違ってずいぶん高性能なのがわかった。


「はい」


向こうにうつっているのは・・あぁもう来たのか。なんだか早すぎる気がするけど・・・あのお店、吉祥寺店だけどここからは結構離れている位置にあるようだし・・・。


『ピザデリバリーです、お届けに参りました』


「はい、今行きます~」


どうやってロックを外すのかわからなかったが、横にあったそれらしきスイッチを下に下げると、インターホン越しにがちゃっと音が聞こえてきた。

あ、これだったんだ。


「そこでお待ちください」


玄関と門扉からの距離がずいぶんあるので、普通なら中に入ってこられても別に何とも思わないところでもこれだけ離れているともはや家の中という感じがして入ってこられるのは少し、嫌な感じがした。

とはいえ、まだここに来たばかりの私が自分の家、なんて立派に言えることじゃないかもしれないけれど、玄関で顔を合わせるのは少し不安なのだ。

すぐにダイニングから出て玄関に行って急ぎ足で靴を履き、かかとを履きつぶす形になったが気にせずに駆け足で表へ出る。


「はぁっ・・・」

「あれ?


環巳さんの彼女さんですか?」


は・・はぁ?


「ええと・・?」


「あぁいや、実はうちはいつも高槻様によくしていただいていてもう何年もの付き合いになるものですから・・・」


つまりは、知らない女の人が出てくることが、何度かあった、ってことなんだろう。私をそういう風にとらえたってことは。


「いつもは3枚以上必ず頼むのに今日は変だなって思ったら、彼女さんの影響だったんですね~」


・・・3枚以上必ず?


「今回の彼女さんは力が強いなぁ~」

「あの・・・」

「あ、代金は月の終わりにまとめてもらってて、こっちに料金はつけてあるんで、気にしないでください」


「・・・・」


そう・・なんだ・・・。お得意様すぎるとそんなシステムまであるのか。いや・・うちが特例なんだろう、たぶん。


「はい、どうぞ」




「・・・あの、私はこの家の長女で、めぐみさんの妹ですよ」


改めて受け取りながらそう言っておく。


「えっ!?」


ヘルメットをかぶったその人が心底驚いた顔でこっちを2度見する。


「え・・・妹さんですか!?


驚きました、実は俺この家担当なんすよ」


なんかまた口調が砕けた・・・。


「・・・申し訳ないんですけど、これからはあまり頻繁には利用しなくなるかもしれません。

その月の終わりに払う制度というのも、来月からはやめていただいても・・・?」

「え・・っ・・・

あ、

はい、わかりました」


なんでですか、みたいな顔はしていたけれどそこはさすがにお客様なので素直に頷いてくれた。


「けど、妹さんなんていたんですね、びっくりです」


・・まぁ、去年妹になったばっかりなので、当然といえば当然のことだけど。


「じゃあ、またのご利用をお待ちしておりまーす」


本当にこの家に来ることに慣れているのか、おしゃべりな人だったな・・・。届くまでの時間が短いのってもしかしたらだけど、めぐみさんがよく使うから怒られたりとかもしてるのかもしれない。

私みたいに、時間通りじゃない、遅い!って。お得意様、っていうこともあるのかもしれないけど。


まぁ、あくまで想像の話だけどね。


(なんだ?それは)


あぁ、みんなは知らないんだっけ。


「デリバリーピザだよ、お店で作ったピザを、家まで運んでくれるの」


駆け足で玄関に戻り、靴を脱いでごめんなさい、と謝りながら靴の上を歩いてダイニングのテーブルにほかほかのそれを置く。


(うまそうだな!)


やっぱりショートはこういうファストフード好きだね。


(あんなふうに簡単に女って名前が出てくるほど、めぐみは女を連れ込んでたのか。しかも、女を表に出すことだってあの言い方じゃ少なくなかったんだろう)

(女のことは全員召使と思っているのやもしれん)


(・・・嫌です・・・)


「勝手な想像はよくないよ、みんな」


まぁ、女が出て来て『彼女さんですか?』って直結して言うほど頻繁に彼女が変わって、何度も知らない女の人が出てくることがあったのだけは確かだけど、それが全部女を連れ込んだってことにはならないし・・・・。

毎回お金を払うのが面倒になるくらいに、3枚以上も頻繁に頼んでたなんて・・そんなに食べてよく太らないなぁ・・・うらやましいよ・・・。

見た感じ、シャツ1枚だけだったけど普通に体引き締まってたし。

あぁ、でもそれは一重にこれまで勤めてたお手伝いさんたちのおかげだったのかも。

もしくは、運動でもしてるのかな。

それなら少しは健康的だけど・・やっぱり、頻繁すぎるファストフードはよくないよ。お金がいくらあっても足りない。いくらお金に困ってない、親にたくさんの収入があるからってそれに甘えて垂れ流すように使うのは違う。


親が、汗水たらして働いて、寝る時間も食べる時間も、家に帰る時間さえ惜しんで働いて、ようやくできたお金なんだ。

私たちのものじゃない。

私たちのために、っていうのはあっているかもしれないけどだからって好き勝手に全部を全部使っていいってことでもない。


(雅、本当にやめておいた方がいいんじゃないのか?この家・・長男がこんな調子では、下がどんなものなのか・・・・。

長男はまだ一応大人で、年齢も離れているからいいだろうが、年齢が近くなってきたらそれこそ何をされるか・・・)


「・・大丈夫だよ、危なかったら私もお父さんや藍子さんを頼るから」


そんなことないとは思うけど。


「ピザ来たー?






・・何ぶつぶつつぶやいてんの妹ちゃん?」


思いっきり怪訝そうな顔をしてまたあくびをしながらめぐみさんが中に入ってきた。


「あ・・いえ、なんでもありません。

どうぞ、これピザです」


「いや、別にわざわざ言わなくてもわかってるけど・・って・・は?


なんで1枚なの」


またわかりやすく顔をゆがめ、鋭い視線をこちらに向ける。


「言われていた味を、Lサイズでハーフ&ハーフにしました。あともう1つは仕方がなく断念です」

「・・あ、の、さ~・・

勝手なことしないでくれるかなー?


雅ちゃんは言われたこともできないのかなー?」


切れる寸前とでもいうように苛立った視線を向けてきた。私の中の人たちも、今にもブチ切れそうなので視線は合わせず、目を伏せる。


「すみません、でもこういうものを頻繁に食べるのは体に悪いと思います。

それに、いくら男の人でもピザを3枚っていうのは・・・。


めぐみさんがおっしゃっていたピザのサイズって、全部Lですよね?」


「何、生意気だね。


そう、Lだけど?

男は女と違ってよく食べるの、そんなことも知らないで俺に意見してくんじゃねぇよ」


あぁ・・・もう、慧太さんとショートが怒ってきてる・・・。この2人を同時に怒らせる人なんて久しぶりに見たよ・・!っていうか、ここまでみんなが活発になってるのが久しぶりっていうか、安定のない人と話したのが久しぶりって言うか・・・・。





「・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ