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キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第1話 巡り合わせ
13/17

衝撃の長男との初対面



荷物を肩にかけ、地図を時々確認しながら住宅街に入ったり、大通りに出たりを繰り返して、ようやく家が見えてきた。


・・・うわ・・・何この家・・・!


ここらへんのおうち全部でかいなぁとは思ってたけど・・・私の身長の2倍くらいはある大層な門扉に大きな塀で囲まれ、お城みたいな、本当に洋館って雰囲気の作りの建物が真ん中に


どーん!


ワインレッドの赤の屋根が3つ突き出ていて、1番右が南館で、左が北館なんだろうなと思った。


・・・すごいおうちだなぁ・・・なんだかもう、スケールどころか世界が違うような・・・・。


(なんだこれ・・・)


慧太さんが呆れたような声を出している。


(すごすぎます・・・大きすぎます・・・)


(・・・これなら本体放し飼いにできんじゃねぇか)


なぜだか満足げなショート。



(うーわーーなぁにこれー!!


やばい、探検したいっ!!)


変な方向でテンション上がってる人が1名。

・・でも、テンション上がってもおかしくないほどの大きさだよね。私はちょっと、純粋に楽しむ気持ちより驚きと呆けの方が先を行っちゃうけど。


(・・・大きすぎるだろ・・・)


(ただ大きいだけとは、工夫のない家だ。

和風ならばよかったものを)


あはは・・ええと、インターホン・・あった。


ピンポーン、と音が鳴り、向こうからガタガタ音がした。


出てくれるかな・・・ちょっとだけドキドキする。




・・・・あれ?

返事がない・・・。


もしかしたら聞こえていないのかも、もう1度・・・――


『うっせぇんだよ!!』


え・・・?


な・・何今の声・・・。

急に罵声が・・・。


「・・・あ・・あの・・・私、高槻雅って言います、ええと・・」


聞いてくれてるのかな、向こうにいるかな。


『はぁ・・?


あー召使の妹ちゃんね、

どうぞ~入って~』


・・な・・なんか今、さりげなくさらっとすごいこと言われた気がするんだけど・・・。


その声の直後、がちゃっと門扉が開く音がして、恐る恐る門扉を開けて中に入る。きちんと閉じたらすぐにがちゃっと閉まる音がした。


(おい、本当に大丈夫なのか?この家)


(この雅にあんなこと言いやがるとは・・許さねぇ・・・!)


いや、似たようなものだと思うけど・・・。ただ、やっぱり知らない男の人から、生で聞く声は・・迫力が

違うな。すごく驚いた。


(・・・怖いです・・・)


「・・大丈夫だよ、藍子さんの息子さんたちなんだもん、乱暴はしないよ、きっと」


顔も見ていないのに決めつけるのはよくない。


少し歩いて扉の前まで来た。

開いているのかな、と扉に手をかけると急に扉が開いて頭にぶつかりそうになって慌てて後ずさる。


「・・・ん~・・・?


どーもー」


眠そうな顔をしたまだ寝癖も直していない、あきらかに寝起きみたいな様子の男の人が扉から顔を出した。


さっきの人・・なのかな。


大きく前の開いたシャツ、首元に見える金色のネックレスに、手首にジャラジャラ巻かれているアクセサリー・・雰囲気は、遊び人という感じでさっきみたいな罵声を出すような感じの人には思えなかった。


不機嫌そうな表情をしながら、扉を開けてくれた。


「お・・お邪魔します・・・」


この人が誰かはともかく・・結構な大人の人に見えるけど、なんでこんな時間にいるんだろう。よくよく考えたら、この時間にここにいるってこと自体、おかしいんじゃないのかな。私みたいなフリーターなのかな。

学生なら学校の時間だろうし、とても大学生には見えないし・・・。

うわ、なんだかすごく空気がむっとしてる。


換気をしていないのか、いろんな匂いが混ざって、汗のようなにおいやしょうゆみたいな匂いもする。


空気がこもっちゃってるんだと思う。


広い玄関には、靴が散乱していて入ったとたん一歩も動けなくなってしまった。


向こうまで結構な距離があるんだけど、これはどうやって行ったらいいんだろう。

男の人は靴の上を何事もなさそうに歩いてどんどん先に行ってしまう。


慌てて靴をそろえて脱いで、つま先立ちになりながらできるだけ大股で床まで行き、ついていく。


スリッパを出そうと思ったけど、そんな時間はなさそうだった。


埃やちりひとつない、きれいな絨毯の廊下を歩く。


「ええと、雅ちゃんだっけ?」


はい、入ってとそう言いながら少し進んだところの扉を開けてくれた。


「はい、ありがとうございます」


中は、よく絵画とかに描かれてるような、お金持ちの象徴みたいな長机がありイスもずらーっと絶対使ってないだろうと思う量並んでいて、向こうには暖炉、その上には大きな絵画があり、左側には厨房らしきものが見えた。


「俺は環巳。

25歳」


ええと・・・。


「め、めぐみさんはご長男なんですか?」


「んー?


そうだけど?」


何か問題ある?と不機嫌そうな威圧するような雰囲気を醸し出しながらそんな目を向けてくる。

ウェルカムじゃないのは最初の言葉でわかっていたけれど、何も言ってくれないとこっちから質問するしかない。


「今ここにいらっしゃるのはめぐみさんだけなんですか?」


「そうだけど?」


・・・普通には答えてくれないみたいだ・・・。


「ところで雅ちゃん、なんなのそのフード。


こっち見ろよ」







っ・・!?



何、今の低い声・・・!びっくりした・・・!


「・・・え・・・えと・・すみません、昨日ちょっと・・・自分で切ったらひどいことになっちゃって、見苦しいかな、と・・・」


初対面なので、距離感も何もわからないまま、仕方がなくフードを取る。


「・・・ふーん・・・なんか、冴えないね~」


・・・・言いたい放題だな・・・。


「ふぁ~・・じゃああっちに溜まってる洗い物してくれる?


あと、そっちに散らかってるもんもよろしくね~」


・・・え?


あぁ、よく見たらカップラーメンとか箸とかがそのまま放置されている。雑誌やらポテトチップスと言ったお菓子類も。


「え・・あの・・・」


「・・ん?」


不機嫌そうな顔で頭に手を置きながらめぐみさんが振り返った。


「・・・いえ、・・なんでもありません」


「昼ごはんはね~ピザデリバリーね、メニュー一覧どっかにあるはずだから探して11時半ぴったりに持ってきて~」


のらりくらりとそう言いながらばたんと大きな音を立てて扉が閉まり、出て行ってしまった。


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