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キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第1話 巡り合わせ
12/17

飯が遅い朝




「ん・・・」




家には10時に行くと藍子さんが連絡してくれたらしいので、今日は7時までゆっくり寝てアラームを止めて起きる。


「・・ふぁ・・・・」


ん?

・・なんだか、首がすっきりしてる・・・って、あぁそうだった。昨日髪切っちゃったんだっけ。


違和感を感じつつ、服を着替え、洗面所に行く。


ええと・・そうだ、これじゃ髪縛れないし・・・・。

あ、そういえば前に買っておいたけど使わなかったバンド、まだ残ってるかな?


部屋にバンドを取りに戻ってから、それをつけて、洗顔を済ませた。


(お早う雅。


・・・寝癖がものすごいぞ)


開口1番いつもの翡翠のまっすぐな声に毒づかれた。

そんな鬱陶しそうな声出さなくても。


「おはよう翡翠。


これは・・なんていうか、短いから仕方がないんだよ」


そこまでくせっ毛ってわけでもないけど、短いと跳ねちゃうのは仕方がない。ずっと髪を伸ばしてたからこういうの初めてだなぁ・・・。


バンドをとって、気になる箇所に水をつけしめらせたあと、ドライヤーと櫛を持って乾かす。


ちょっと面倒くさいけど、きっと髪を洗うのは楽だろうと思う。


めちゃくちゃに切ったせいで、ところどころ多かったり少なかったり、きちんと寝癖を直しても全体的にばさばさもさもさしてて、ぼさぼさで冴えない感じだけど・・・時間に余裕ができたらきちんと早いところ美容院に行こう。


(おはよー雅~!)


「おはよう」


(おはよう、すごいな、その髪。

すごく量が多く感じるな)


(・・・おはようございます・・・)


あれ、峰藤もう起きてたんだ。


「おはよう2人とも」


よーし、ご飯ご飯っと。


(・・・昨日はごめんなさい、


・・・雅さん・・・)


もともと声のトーンが暗いせいで、反省して声が沈んでいる今日は余計に暗く聞こえてしまう。


「気にしなくていいんだよ、峰藤が反省しているならそれで。


峰藤が私の中にいたいって思ってくれてるから、こうやって一緒にいるんだし、私だって峰藤は大切だから」


素直にネガティブな感情をさらけ出せる峰藤を見ていると、私まで気持ちが楽になる気がする。峰藤は、ある意味私のそういう部分を補ってくれてるともいえる。


(・・雅さん・・・)




(飯がおせえ!)





「うわっ!


えっ・・・びっくりしたぁ、もう起きてたんだショート」


(・・・うるさい、ショー)


(飯がおせえつってんだろ!!さっさと手ぇ動かせ!)


どんな剣幕だよ・・・。

確かに、今日は普段よりゆっくりだもんね。バイトがなくても6時には起きているし。


「はいはい、ごめんなさいね、

今作りますからね」


感覚を共有しているだけにお腹が空いてるのはわかるけど・・私よりも空腹を強く感じるっていうか、私にとっての当然がショートにとっちゃ当然じゃないって言うか。感じ方の違い、捉え方の違いとでもいうのかな。


こんな大声出す元気がまだあるなら、ご飯なんて当分いらなそうな気がするけど。


(・・・早くしろ・・・)


そんな地を這うような声出さないでよ。


「それより、ショートも慧太さんも、おはようございます、

あと斗真も」


こんなにうるさくてもやっぱり起きないサファイア、本当に寝つきがいいっていうか・・・うらやましい。

普段は私が寝ていたらみんなしゃべらないでくれるからいいけど、もしもこんなにしゃべられてる状態で寝ろって言われたら私絶対無理だもん。


(おはよう)


(朝から大変だったな)


(・・ちっ・・・)


また2人がバチバチしてる・・・。

何とか大人な慧太さんが黙ってくれてるからいいものの・・。


ご飯を食べ終わって、まだ少し時間があったのでキャリーケースに洋服一式を詰め、他にいるものを旅行かばんに入れる。


お父さんは引っ越し業者を呼んでくれると言っていたけれど、たかが洋服、たかが1か月なので、キャリーケースで何度か往復すればそれで済む。

他に何か向こうに持っていくもので大きなものがないのに、引っ越し業者さんなんて少し大げさすぎる気がした。

さすがにこの髪じゃ縛るわけにもいかなくて、かといって帽子をかぶるともっと不格好になってしまうので仕方がなく適当にフードをかぶっていくことにした。





5分ほど時間に余裕をもって家を出て、駅につく。

普段、あまり電車は使用しないのできちんと降りる駅も事前に携帯で調べておいた。ちなみに、私は電子プリペイドカードがあるので携帯にマネーをチャージしてそれで改札を通った。


きっぷでもいいんだけれど、しまったり持っていたりするのが、手荷物があると大変だからこっちの方がどちらかというと便利でよく使う。時間もかからない。


運よく座席が空いていたので膝に旅行かばんを置いて座る。


普段から外に出るときは黒ぶちの伊達メガネをして下を向いていることが多いけれど、フードをしているおかげでさらにそれが不自然じゃなくなっていた。


いいのか悪いのか・・よかったのかな?

メガネは、直接視線を合わせないためのささやかな抵抗手段で、本当にささやかでしかないのだが、そのメガネをかけていると少し根暗な人にも見えるので、下を向いていても不自然ではないという利点もある。

この髪型じゃ、本当にどこかのがり勉くんみたいだ。服装で女だとわかるくらいで、頭から上は完全男みたいだし。


あ・・・吉祥寺だ。






環状線にのって吉祥寺で降りて、改札を出た。


(静かなところだな・・・)


吉祥寺に来るのは初めてだもんね。


(中々雅な雰囲気ではないか)


はは、確かにちょっとおしゃれで落ち着いたイメージはあるよね。


ええと・・・ここの駅から徒歩15分・・・。

ちょうど吉祥寺駅とその次の駅の間くらいにあるんだ。












荷物を肩にかけ、地図を時々確認しながら住宅街に入ったり、大通りに出たりを繰り返して、ようやく家が見えてきた。


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