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キスさせてくれませんか・・・? お兄ちゃん  作者: 赤屋 颯妃
第1話 巡り合わせ
11/17

峰藤の感情表現の仕方

「っ・・・!?


み、峰藤!?





えっ、ちょっ・・・峰藤って!!」


な、なにするつもり!?





「っ・・・」


鋏がこっちに向かってきて、

危ない、と思ったらじゃきじゃきと左手で髪を掴み乱暴に切り始めた。


私の体の主導権を握るまでの感情の爆発はなかったみたいだけど、何かに我慢できなかったらしく、

私の体を、

意識は私に預けたまま勝手に動かして髪をじゃきじゃきと乱暴に、暴れ狂うように、

まるで自分を傷つけるように5分間くらい切って、

ようやく満足したのか、


(ごめんなさい・・)


と小さくそう言ってようやく自分で手を動かせるようになった。


「っ・・はぁ・・っ・・・」


脱力して、突然すぎる出来事に驚きすぎてようやく肩の力が抜けてほっとして床にはさみと一緒に手を投げ出す。


「・・・なん・・だったんだろう・・・」


周りに散らばっている自分の髪を見ながら、さっぱり涼しくなっている首元に手を当てる。


(・・・峰藤にとって、知らない人との接触は、それほどストレスだったんだろう)


静かに慧太さんが言った。


(でも、断ることはできなくてその感情の行き場がなかったのかもしれない)


・・・・・。


「・・・はぁ・・っ・・そっか・・・」


よかった、安心した・・・。

また、何かよくわからない考えに走っているのかと思った。

それなら、私にもどうにかできる。私にも、きちんと配慮くらいはできる、何かできる。


・・・峰藤は、自分の言いたいことは喧嘩になっても言うほかの人たちと比べてうまく感情表現ができないことは、元からわかっているんだから、きちんと目を配ってあげないと。


それにしても・・・どうしようかな、これ。


峰藤の感情も声も聞こえなくなったってことは眠ってしまったのかもしれない。


「・・よしっ」


はさみの柄の部分を持って床に手をついて立ち上がる。


片づけなくちゃ。


髪もどこまでどんなふうに切れてるのかはわからないけど・・・これだけで済んでよかった。


ほかのみんなも、峰藤を起こさないように黙ってくれているし、私もさっさと眠っちゃおうっと。


一旦髪についている、切った髪を全部落とし、そこで上も下も一旦脱いで、下着姿で部屋まで戻って新しいパジャマを着る。

急いで外に出たせいで履いていなかったスリッパも履いて、ほうきとちりとり、それにコロコロを持ってリビングに戻る。


峰藤は、ちょっとネガティブで感情表現が苦手だ。言葉じゃうまく言い表せなくてそんな自分に余計にむしゃくしゃして、自己嫌悪して、その感情の行き場がなくなった時、こうして爆発してしまう。


最初は驚いたけど、その感情は確かに誰にでもあるもので私にも理解できたし、途中からは行動で表せるなら、まだ峰藤は大丈夫だって、行動で表してくれてよかったって思うようになった。


言葉で表せないなら、どんな形でも行動で表せるのはいいことだ。


そんな感情まで、行動で表せないほど抱え込んでしまったらもう本当に感情の行き場がなくなって、峰藤が壊れてしまう。


いつも、自分を傷つけるみたいに、暴れて、周りにあたっているように見えて本当は1番自分を傷つけて、責めていて。


そんな峰藤を見ているとすごく儚い気がして心配するけど、そのあとの峰藤は素直に謝ってくれるし、反省もしてくれる。


髪をここまで切られたことはなかったけど・・・何度も家の壁に体当たりしたり、自分の頭を自分で殴ったり、そういうことがあったので、それよりましだと思う。


髪なら時間が経てばのびるし、別に痛くない。


これくらいなら、全然いいんだ。

本当にしちゃいけないことはわかっているし、絶対本当に危ないことはしたりしない。ただちょっと、不器用なだけなんだ。


「・・うーん・・・」


片づけ終わって、試しに洗面所に行って自分の姿を見てみたら予想以上にぐちゃぐちゃに切られていてぼさぼさで、まるで漫画に出てくるがり勉で冴えない男の子みたいで少し苦笑してしまった。














こんな姿で明日会いに行くのか・・なんて説明しよう。

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