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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第2章 敬太くんとサルの群れたち
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その2

「そろそろ食べ物を探さないと、日が暮れてしまうぞ」


 サル左衛門は、日が暮れる前に食べ物を探すようサルの群れに言いました。人間にしろサルにしろ、生きていくためには食べ物を欠かすことができません。


 サルたちは、食べ物を探すために木々の中に入っていきました。もちろん、敬太も子ザルたちといっしょに食べ物を探しに行きます。


 サルたちが春によく食べるのは、ブナの若芽や若葉などです。敬太や子ザルたちはブナの木を見つけると、そこに生えている若芽や若葉を取り始めました。


「ちょっと、この若葉はぼくのだぞ」

「なんだよ、1つぐらい若葉取ったっていいだろ」


 サルたちが食べ物を探しているとき、子ザルたちがブナの若葉の取り合いでケンカになっています。それを見た敬太は、自分が取ってきたブナの若葉を子ザルにあげました。


「子ザルが大好きなブナの若葉をあげるから、ケンカはやめようよ」


 敬太は、自分が持っているブナの若葉を子ザルたちに分け与えました。


「敬太くん、ありがとう」

「どうもありがとう」


 子ザルたちは、ブナの若葉をくれた敬太に感謝しました。そして、子ザルたちは敬太へのお礼をするために奥のほうへ行きました。


「敬太くん、ぼくたちにおにぎりとブナの若葉をくれたお礼にいっぱい持ってきたよ」

「えっ、こんなにもらってもいいの?」

「敬太くんは、昼ご飯あまり食べてないでしょ。だから、ぼくたちが敬太くんのためにブナの若芽と若葉を持ってきたよ」


 今度は、子ザルたちが敬太のために晩ご飯であるブナの若芽と若葉を集めてきました。


「ぐううううっっ~」

「あっ、敬太くん、すごいお腹の音だね」

「でへへ、いっぱい遊んだりしたからお腹がすいちゃった」


 敬太は、子ザルたちといっぱい遊んだりしたのでお腹がすいてきました。敬太と子ザルたちは、晩ご飯を食べるためにすぐ元の場所へ戻っていきました。


 他のサルたちも、次々と元の場所へ戻ってきました。サルたちの群れが全てそろったところで、みんなで晩ご飯を食べ始めました。


「サル左衛門さま、子ザルたちからブナの若芽と若葉をいっぱいくれたよ」

「敬太くんから、ぼくたちにブナの若菜を分けてくれたんだよ。だから、ぼくたちがそのお礼にブナの若芽と若菜を敬太くんにあげたよ」

「ほうほう、敬太も子ザルたちも食べ物を分け与えたりしているんだね。相手のことを思いやることは大切なことだぞ」


 サル左衛門は、相手への思いやりがある敬太と子ザルたちを褒めています。


 敬太は、ブナの若芽も若葉も食べるのはもちろん初めてです。そして、若芽も若葉もサルたちは生のままで食べています。サルたちが食べているのを見て、敬太はブナの若芽や若葉をそのまま口の中に入れて食べました。


「ぼくのばあちゃが作ってくれるご飯もおいしいけど、サルたちといっしょに食べる晩ご飯もおいしいよ!」


 敬太は、初めて食べたブナの若芽と若葉のおいしさに元気な声で言いました。そして、敬太はたくさんあったブナの若芽と若葉を残さずに食べました。


 晩ご飯を食べた後、敬太はすぐ目の前にいるメスザルを見ました。そのメスザルのお腹は、大きく膨れているように見えます。


「サル左衛門さま、メスザルさんのお腹が膨れているのはどうして?」

「メスザルのお腹が膨れているというのは、もうすぐ赤ちゃんが生まれるということなんじゃ。敬太だって母さんのお腹から生まれたでしょ。サルも人間も女の人のお腹から赤ちゃんが生まれるんだよ」


 敬太が再びメスザルを見ると、自分と同じように元気いっぱいのサルの赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみです。でも、メスザルは早ければ明日にも生まれるかもしれないのであまり動けません。


「さあ、ぼくの手につかまっていっしょに寝るところまで行こう」

「敬太、どうもありがとう。わたしのお腹に赤ちゃんがいるのを気遣ってくれているんだね。がんばって赤ちゃんを産んだら、敬太にも見せてあげるわ」


 敬太は、大きなお腹を抱えたメスザルを自分の左手でつなぎながら、サルたちの寝床となるところまで連れて行きました。


 今日のサルたちの寝床は、いつもいる広場より少し離れたほら穴のそばです。サルは、夜になるとあまり動かずにそのまま寝ています。


 今日も太陽が西へ沈むと、サルたちがいるところも次第に暗くなってきました。サルたちは、すぐにほら穴のそばで寝転がりました。ほら穴の中では、子ザルたちが寝る準備をしています。


 子ザルたちはまだ幼いので、外敵から身を守るためにほら穴で寝ています。ほら穴のそばで寝ているサルたちの周りには、サル左衛門を中心に大人ザルが取り囲んでいます。


「ねえねえ、敬太くん、いっしょに寝ようよ」

「敬太くん、寝よう、寝よう」


 子ザルたちは敬太をほら穴のところへ連れていくと、ほら穴でいっしょに寝ようと言ってきました。


 敬太は、大きな風呂敷から自分が寝るためのお布団と掛け布団を敷くと、そのまま布団の中に入りました。


「敬太くん、人間はいつもこうして寝ているの?」

「ぼくたちは、いつも寝るときはお布団というのに入って寝るの。子ザルたちが寝るときは、いつもこの格好かな?」

「ぼくたちは、お布団とかは使わずにそのままゴロンとなって寝るよ」


 子ザルが全部で8匹いることもあって、敬太も子ザルといっしょに寝ることにワクワクしています。子供が大好きな敬太にとっては、他の子供といっしょに暮らしたり寝たりすることに憧れています。


 ほら穴の真ん中に敬太くんが、その両側には子ザルが4匹ずつがそれぞれ寝ています。こうして、敬太も子ザルたちもぐっすりと眠っていきました。




 次の日の朝になりました。東から太陽が昇り始め、その光がほら穴の中にも入ってきました。


 最初に目が覚めたのは子ザルたちです。子ザルたちが目が覚めると、すぐに下のほうを見ました。


「えへへ、きょうもやっちゃった」

「ぼくのおねしょはでっかいぞ」


 どうやら、サル助をはじめとする子ザルたちは、きょうも全員おねしょをしてしまいました。子ザルたちがほら穴の地面に描いたおねしょの形は、かわいい形からでっかいのまであってさまざまです。


 子ザルたちは、まだ寝ている敬太のほうを見ました。敬太はまだまだ夢の中にいるようです。これを見た子ザルたちは、すぐに敬太の掛け布団の周りへ行きました。


「よいしょ、よいしょ、よいしょ」


 子ザルたちは、敬太の掛け布団をめくろうとしますが、子ザルたちにとっては重いこともあってなかなかめくれません。


「……あれっ、子ザルたち、どうしたの?」


 敬太は、子ザルたちの行動に気がついたのか、夢の中から覚めました。目が覚めた敬太が見たのは、掛け布団を一生懸命めくろうとしている子ザルたちの姿でした。


「敬太くん、もう朝だよ。早く起きようよ」

「ぼくは、今日も敬太くんといっしょに遊びたい、遊びたい」

 子ザルたちは、敬太に朝になったから起きてと呼びかけながら、掛け布団を引っ張り続けました。

「子ザルたち、起きるからちょっと……」


 敬太が言いかけたとき、子ザルたちが引っ張り続けた掛け布団がめくれました。掛け布団を強く引っ張ったこともあって、掛け布団がめくれたのと同時に子ザルたちは思わず尻餅をついてしまいました。


「敬太くん、今日もでっかいおねしょしちゃったの?」

「でへへ、きょうも元気いっぱいのおねしょをお布団にしちゃったよ」


 サル助が敬太のお布団をみると、そこにはでっかくて元気なおねしょがべっちょりとぬれていました。

敬太はほっぺを赤らめながらも、明るい笑顔でおねしょをしちゃったことを子ザルたちに言いました。


「子ザルたちのみんなも、地面にいろんな形のおねしょをしちゃったね」

「ぼくたちもいろんな形のおねしょをしたけど、やっぱり敬太くんのでっかいおねしょにはかなわないよ」


 敬太と子ザルたちは、みんながおねしょしたのをお互いに見ながら、今日も朝からみんなで笑顔でにぎやかになりました。子ザルたちは、早く外へ出たがっていたので、先にほら穴の外へ出ました。


「ほら穴から出たら、最初にサル左衛門さまにこれを見せようかな」


 敬太は新しい赤い腹掛けを付けると、すぐにおねしょしたばかりのお布団を持って外に出ました。


「サル左衛門さま、今日もおはようございます」

「敬太、今日も元気いっぱいだな」


 敬太は、サル左衛門に朝のあいさつをしました。これを聞いたサル左衛門も、敬太が今日も元気であることを喜んでいます。


「サル左衛門さま、今日もでっかくて元気なおねしょをお布団にしちゃったよ! すごいでしょ、すごいでしょ」

「ははは、今日も敬太のお布団と腹掛けに見事なおねしょをしちゃったな。お布団へのでっかいおねしょは、敬太がいつも元気で明るい子供である証拠じゃ」


 敬太は、今日もおねしょしたことをうれしそうに言いました。サル左衛門も、いつもでっかくて元気なおねしょをする敬太を褒めました。


 そこへ、一足先にほら穴から出た子ザルたちもやってきました。


「えへへ、ぼくたちも床におねしょしちゃった」

「お前たちも、おねしょを元気よくべっちょりとやっちゃったんだね。サルも人間も、おねしょをするのは元気な子供なら当たり前だぞ」


 サル左衛門は、おねしょをしちゃった子ザルたちに対しても褒めています。サル左衛門から褒められた子ザルたちは、顔を赤らめながらも笑顔を見せています。


 敬太や子ザルたちがおねしょをしても明るい笑顔でいられるのは、サル左衛門が温かく見守ってくれるおかげです。


 敬太は丈夫で幹の太い枝を見つけると、物干し代わりにして木の枝と枝の間にのせました。そして、おねしょしちゃったお布団と赤い腹掛けをそこに干しました。


 敬太は、すぐに子ザルたちといっしょに遊ぶためにサルたちの群れへ戻っていきました。敬太が戻ってくると、子ザルたちが敬太の体にへばりつきました。


「敬太くん、今日もいっしょにあそぼ」

「かけっこしよう、かけっこしよう」

「それじゃあ、みんなでかけっこしようかな」


 子ザルたちは、敬太といっしょに遊びたくて待ち遠しかったようです。さっそく、敬太と子ザルたちによるかけっこ大会の始まりです。


「敬太くん、目をつむって10数えたらかけっこするよ」


 敬太は、子ザルたちに言われた通りに両手で目を隠しました。


「せ~の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!」


 敬太は、10数えたので目を開けました。しかし、子ザルたちはすでにかけっこをはじめています。

 

 普通にかけっこしたら、敬太がぶっちぎりで勝ってしまいます。そのため、子ザルたちは敬太が目をつむっている隙にかけっこを始めました。


「へへへ、敬太くん、ぼくたちに勝てるかな」

「もうっ、子ザルたちったら」


 子ザルたちはすでに遠くまで走っているので、敬太もすぐに走り始めました。かけっこが大好きな敬太は、走り出すとすぐに子ザルたちに追いつきました。


「うわっ、敬太くんがぼくたちのところにもう追いついたの」

「ぼくは、かけっこがとっても大好きだよ。子ザルたちより先に大きい広場まで走っていくよ」


 敬太よりも先にスタートした子ザルたちは、すぐに敬太が自分たちに追いつくとは思わなかったのでびっくりしています。子ザルたちに追いついた敬太は、そのまま追い抜いて引き離すとゴールである大きい広場へ到着しました。


「うわ~い、大きい広場へ一番乗りで着いたぞ」


 敬太は、大きい広場へ一番乗りで着くとかけっこで勝ったことを大きく喜んでいます。そして、敬太に追い抜かれた子ザルたちも次々とゴールしました。


「敬太くんは、やっぱり速いなあ。ぼくたちが敬太くんよりも先に走っても、すぐに敬太くんが追いつくんだもん」

「ぼくは、いつも山道を走ったりしているけど、これでも普通に走っているだけだよ」

「じゃあ、敬太くんが本気を出したら、もっと速く走れるのか。すごいなあ!」


 子ザルたちは、敬太くんの足の速さにびっくりしています。そうするうちに、サル左衛門をはじめとする他のサルたちも大きい広場に戻ってきました。


 サル左衛門は、お腹に赤ちゃんがいるメスザルと手をつなぎながらきました。メスザルのほうは、身重であまり動けません。このため、サル左衛門はメスザルといっしょに手をつないでゆっくり戻ってきました。


「メスザルさん、大丈夫?」

「敬太、わたしもお腹の赤ちゃんも大丈夫よ。ここでゆっくり休んで、いつでも赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしているわ」

「メスザルさん、赤ちゃんが生まれそうになったら呼んでね」


 メスザルは、サル左衛門のすぐ横で寝るような形で休んでいます。そして、メスザルの両手で大事そうにお腹の赤ちゃんを守っています。敬太も子ザルたちも、サルの赤ちゃんが生まれるのを今から心待ちにしています。

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