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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第8章 敬太くんと獣人の赤ちゃん

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その22

「獣人め! ぼくは絶対に逃げたりしないぞ!」


 敬太は、双子の獣人に向かって体当たりしようとすぐさま駆け出しました。しかし、双獣雷は恐ろしい顔つきで笑みを浮かべながら敬太に現実を突きつけようとします。


「おい! おれたちに攻撃しようものなら、こいつらがどんな目に遭うのか分かっているだろうな」


 敬太が獣人たちの手前で足を止めると、双獣雷によって人質になっているゆう蔵とワンべえの姿がありました。獣人たちのあまりの恐ろしさに、ゆう蔵もワンべえも大声で泣き続けています。


「うえええええ~ん! うえええええええええええ~ん!」


 双獣雷は、自ら持っている槍の鋭い刃先でゆう蔵とワンべえを脅しています。ゆう蔵の泣き叫ぶ様子に、敬太は双子の獣人への強い怒りをあらわにしました。


「よくもひきょうな手を使いやがって……」

「ひきょうだと? それはおれたちにとって最高の褒め言葉だぜ! ぐはははは!」


 双獣炎は、どんな汚い手を使ってでも敬太を始末しようと両手で槍を構えています。その槍は、敬太の手前で一旦止めています。


「ぐはははは! 少しでも動いたら、この槍がおめえの体を突き抜けることになるぞ」

「ぐぬぬぬぬっ……」


 敬太は怒りに震えながらも、獣人へ攻撃を仕掛けることができないもどかしさを感じています。敬太の表情は、双獣雷の人質になっているワンべえにも伝わっています。


「このままだと、敬太くんの命が危ないワン……」


 ワンべえは敬太の危機を感じ取ると、双獣雷が持っている槍に飛びつきました。いきなりのワンべえの行動に、双獣雷はあわてた様子ですぐに振り落とそうとします。しかし、ワンべえは槍に噛みついたまま離れようとはしません。


「や、やめろ! このチビ犬め、じゃましやがって!」

「絶対離さないワン!」


 双獣雷は、ワンべえを始末しようにも高圧電流を出すことができないことにあせりを感じています。その間も、ワンべえは噛みついたままで必死にしがみついています。


 双獣炎は、この様子を見ようと横へ振り向きました。この動きを見た敬太は、双獣炎が構えている槍を両手で握りしめました。


「ぐぐぐぐぐぐ~っ! ええ~いっ!」

「お、おれが持っている槍が……」


 双獣炎が持っていた槍は、敬太の凄まじい力によってバキッと真っ二つに割れてしまいました。双獣炎がうろたえているのを横目に、敬太はゆう蔵とワンべえを助けるために双獣雷へ飛び蹴り攻撃を仕掛けようとします。


「これでも食らえ! え~い! とりゃとりゃあっ!」

「うわっ! い、いきなり何を……」


 敬太は強い蹴りを食らわせて双獣雷が後方へ倒れると、人質になっていたゆう蔵とワンべえを助け出しました。ゆう蔵は敬太に抱きかかえられて安心したのか、大声で再び泣き出しました。


「うえええええええ~ん、うえええええええええ~ん!」

「ゆう蔵くん、あんなに恐い思いをさせて本当にごめんね」


 敬太は、ゆう蔵をなでなでしながらやさしく抱きしめています。ワンべえも、敬太の右肩に飛び上がってはペロペロと顔をなめなめしています。


 でも、双子の獣人との戦いはまだ終わっていません。敬太たちの目の前には、双獣炎と双獣雷の2人が怒りの表情を見せながら迫ってきました。


「このチビめ……。まだ戦いは終わったわけではないぞ……」

「よくも恥をかかせやがって……。このままで済むと思ったら大間違いだぜ……」


 獣人の存在に気づいた敬太たちですが、ゆう蔵を抱いているので攻撃を仕掛けるには不利な状況です。ゆう蔵はとても苦しそうな表情を見せながら、再び大きな声で泣き叫んでいます。


 これを見た敬太は、ゆう蔵がどうしてあれだけ苦しそうな顔つきをしているのかすぐに分かりました。それは、敬太もゆう蔵もいつも必ずするのが当たり前のことです。


 そんな中、双獣炎は手のひらから出した赤い炎を敬太たちに向かって投げつけました。


「うりゃあああああああっ!」

「わわっ! 獣人め、何をするんだ!」


 敬太は、とっさの機転で双獣炎が次々と放った炎をなんとかかわしました。けれども、その炎は敬太たちを取り囲むように広がっています。


「ぐはははは! おめえらがこの中で黒こげになるまで丸焼きにしてあげるわ!」

「ぐぐぐぐぐっ……。獣人め……」


 双獣炎の不気味な笑い声に、敬太は拳を握りしめながら怒りをにじませています。ゆう蔵の泣き声も、先ほどよりも激しさを増しています。


「うええええええ~ん! うえええええええええええええ~ん!」

「炎に囲まれて身動きができないワン……」


 敬太は、自ら抱いているゆう蔵を何とか助けたいという思いがいっぱいです。そんなとき、敬太のお尻が次第にムズムズするようになりました。


 これに気づいた敬太は、以前にも使ったあの方法を思い出しました。


「ワンべえくん、ぼくの肩にしっかりつかまってね!」

「敬太くん、ここから抜け出す方法を思いついたのかワン?」


 敬太はその場でしゃがみ込むと、タイミングを見計らいながらお尻に少し力を入れました。すると、いつも聞き覚えがある元気いっぱいの音が鳴り響きました。


「プウウ~ッ! プウウウウウウウウウ~ッ! プウウウウウウウウウウウウウ~ッ!」


 敬太がでっかいおならを2回も続けて出たその瞬間、凄まじい大爆発を引き起こしました。大爆発によって、敬太たちは双子の獣人に向かって吹き飛ばされました。


「お、おいおい! こ、こっちにくるな!」

「わっ! わわわあああああああ~っ!」


 双獣炎と双獣雷は、突然の出来事にあわてふためいています。しかし、双子の獣人は身をかわすことができないまま敬太たちと真正面からぶつかってしまいました。


 そのはずみで後方に倒れ込んだ双子の獣人ですが、これで敬太たちの攻撃が終わることはありません。


 敬太は、ゆう蔵を大事そうに抱きかかえたままで双獣炎の体の上に尻餅をつきました。すると、ゆう蔵は敬太に何かを訴えるような表情で泣き叫んでいます。


 これを見た敬太は、ゆう蔵を抱くのをやめてすぐに放すことにしました。なぜなら、ゆう蔵が泣き叫ぶのは、それなりの理由をあることを敬太は知っていたからです。


「うええええええええええ~ん! うえええええええええええええ~ん!」

「お、おい! やめろやめろ! 赤ん坊め、おれの顔の上に……」


 ゆう蔵は、双獣炎の顔面にお尻をついて座り込んでしまいました。さすがの双獣炎も、これでは口を開けてしゃべることができません。


 そのとき、ゆう蔵は敬太に負けず劣らずのでっかい音をお尻から出しました。それは、ゆう蔵の赤ちゃんらしさを示す元気なおならの5連発です。


「プウウウッ! プウウウウッ! プウッ! プウッ! プウウウウウウウウウ~ッ!」

「うっ! おれの顔にくさいおならを……」


 双獣炎は、ゆう蔵が放った強烈なおならを顔面に食らってたまらない様子です。でも、ゆう蔵はそんな双獣炎の様子を知ることはありません。


 おならがいっぱい出たゆう蔵は、双獣炎の顔に座ったままで何かを出そうと必死にふんばっています。その瞬間、倒れ込んだままだった双獣炎は思わず上体を起こしました。


「よ、よくも……。おれの顔に大きなうんちをしやがって……」


 双獣炎の顔面には、ゆう蔵がしたばかりのうんちがべっとりとついています。そのうんちは、ゆう蔵が元気な赤ちゃんである立派な証拠です。


 思わず地面に転がり落ちたゆう蔵ですが、敬太に抱きかかえられるといつもの笑顔を取り戻しました。


「ゆう蔵くん、うんちがいっぱい出てすっきりしたね」

「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」


 ゆう蔵の顔つきは、うんちが出てすっきりしたことで満面の笑みを見せています。これを見た敬太も、獣人たちとの戦いが続く中でゆう蔵を抱きしめて愛情を注いでいます。


 一方、ワンべえのほうも双獣雷の右腕に噛みつくとそのまま離れようとしません。双獣雷は怒りのあまりに、ワンべえを地面へ振り落とそうとします。


「このチビ犬ごときが……。早く放せ! 早く放せ!」

「どんなことがあっても、絶対に放さないワン!」


 ワンべえは小さな子犬ながらも、双獣雷を相手に堂々と戦っています。これに刺激を受けた敬太は、ゆう蔵を抱きながら双獣雷へ向かって駆け出しました。


「ワンべえくん、ありがとう! ここはぼくにまかせて!」


 敬太は左足を踏み込んで飛び上がると、そのまま双獣雷に強い蹴りを次々と食らわせていきます。敬太の蹴りを受けた双獣雷は、なすすべもなくそのまま後方へ倒れてしまいました。


 絶好の好機に、ワンべえは双獣雷の体の上へ後ろ向きで飛び乗るとその場で左足を上げました。


「ジョパジョパ、ジョバジョバジョバ、ジョジョジョジョジョ~ッ」

「うわっ! おれの顔におしっこを……。やめろ、やめてくれ!」


 ワンべえは、双獣雷の顔を目がけておしっこを命中させています。双獣雷は、あわてておしっこでぬれた顔を両手でぬぐおうとしています。


「敬太くんのおかげで本当に助かったワン! ペロペロペロペロペロペロ~ッ」

「もう、ワンべえくんはぼくの顔をなめなめするのが大好きなんだね」


 敬太は、ワンべえからなめなめ攻撃をされて思わず照れ笑いを見せています。なめなめ攻撃は、ワンべえが敬太と友だちであることを示す愛情表現です。


 いつもの明るい笑顔を再び見せる敬太たちですが、相手の双子の獣人のほうもここで逃げるわけにはいきません。


「よくも、おれたちの顔に汚いものを……」

「絶対に殺してやるからな……。覚悟しやがれよ……」


 怒り心頭の双獣炎と双獣雷が拳を震わせていると、その後ろから力獣が間に入ってきました。


「あのチビたちを叩きのめすことすらできないとは……。やっぱり、このおれが出て行かないといけないようだな」

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