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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第8章 敬太くんと獣人の赤ちゃん

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その6

 村の田んぼには、稲の穂が一面に広がっています。いよいよ今日は、村人総出での稲刈りを行う日です。


 敬太は、土間にあった稲を刈り取る鎌を右手で持っています。これを見て、盛兵衛はやる気満々の敬太に目を細めています。


 敬太は、これから始まる稲刈りが待ち遠しくてたまりません。


「ねえねえ、早く田んぼに入って稲刈りをしようよ! 早くしようよ!」

「はっはっは! 早くも準備万端だな! でも、あれだけ広い田んぼだから大変だぞ」

「あれくらいのこと、ぼくだったら全然平気だもん!」


 稲刈りは、村人が一斉に行っても1日で終わるとは限りません。それでも、田植えや稲刈りを1人でこなしたことのある敬太にとっては自分の力を試す絶好の機会です。


 板の間にいるおひさも、げん吉を抱きながら敬太をやさしく見つめています。


「うふふ、敬太くんは相変わらず元気いっぱいだね」

「それじゃあ、今から子供たちといっしょに田んぼへ行ってくるよ!」

「敬太くん、ぼくもいっしょについて行くワン!」


 敬太とワンべえは家から飛び出すと、お布団が干されている庭に子供たちが待っていました。子供たちは、敬太にあいさつ代わりの言葉をかけました。


「今日もおねしょしちゃったの?」「わ~い! おねしょ! おねしょ!」

「でへへ、今日もおしっこの夢を見て元気いっぱいのおねしょをやっちゃったよ!」


 物干しに干されているのは、敬太とげん吉がしてしまったおねしょ布団です。どんなに言われても、毎日のおねしょが敬太の元気のシンボルであることに変わりありません。


 すると、獣人の男の子2人が敬太にへばりついています。


「早く行こ! 早く行こ!」「いっちょに(いっしょに)行こうよ!」

「もうっ、しょうがないなあ。みんなで田んぼへ行って稲刈りをするぞ!」


 今日は稲刈りなので、いつものようにみんなで遊ぶのとは様子が違います。でも、小さい子供たちにとっては敬太といるだけでもうれしいものです。


「ねえねえ、どんな名前なの?」

「こん蔵だよ! よろちくね(よろしくね)!」「ぼくは、ぽん助という名前だよ」


 敬太とワンべえは、小さい男の子たちといっしょにあぜ道へ出て行きました。他の子供たちも、敬太たちの後をついて行きます。


「稲刈り、稲刈り、楽しいな~♪ だって、おいしいお米ができるんだもん~♪」

「敬太くんは、好き嫌いしないで何でも食べるところがいいワン!」


 敬太たちは、歌を歌いながらあぜ道を歩いて行きます。田んぼの中には、大人たちが鎌を持って入っています。


「おっ、赤い腹掛けのぼうやは初めて見るなあ。ぼうやの名前は?」

「ぼくの名前は敬太! 7歳児の元気な男の子だよ!」

「すごいなあ、左腕にこんな力こぶがあるぼうやは見たことがないぞ。敬太という名前も、元気な男の子にぴったりじゃ」


 気さくに話す大人たちに、敬太はいつもの元気な声で応えています。敬太たちが少し歩いた先には、盛兵衛とおひさが大事にしている田んぼと畑があります。


「うわっ、すごいなあ! これだけあればお米がいっぱい取れるぞ!」


 敬太は田んぼの中へ足を踏み入れると、鎌を器用に使いながら稲を刈り始めました。3本ほど刈ると、田んぼから一旦上がってからはざがけをします。それを何十回、いや何百回も繰り返し行います。


 稲刈りに慣れた手つきでこなす敬太にとって、このくらいのことで苦にすることはありません。他の大人たちと比べても、敬太の稲刈りの速さはダントツです。


 年上の男の子たちも、これを眺めながら驚きを隠せません。


「あの敬太が、小さい体でこなすとは……」「あんなに速くこなすなんでできないよ」


 そんな声を横目に、敬太は引き続き稲刈りにいそしんでいます。すると、敬太の様子を見ていた小さい男の子4人とワンべえが次々と田んぼへ入って行きました。


「いっちょに(いっしょに)遊ぼう! いっちょに遊ぼう!」

「後でいっしょに遊んであげるから、ちょっと待ってね」


 敬太が稲刈りとはざがけを行うときも、小さい男の子たちはずっといっしょです。小さい男の子にとっては、遊びと仕事の区別がまだ分かっていません。


 それでも、敬太は決して怒ることはありません。小さい子供が駄々をこねるのは、敬太も最初から分かっているからです。


 そして、盛兵衛が自分の田んぼへきたときには敬太の手でほぼ全部刈り終わろうとしていました。


「うわわっ! もしかして、あれだけ広い田んぼを全部刈り取ってくれたのか」

「おっとう、ぼくが田んぼの稲を全部刈り取ったからね!」


 敬太の左手には、刈り取ったばかりの稲が握りしめられています。盛兵衛は、自分の力でやり遂げた敬太に柔和な顔立ちで見つめています。


 しかし、他の田んぼで刈り取っているのはまだ半分以下です。これを見た敬太は、すぐに他の田んぼへ行って手伝うことにしました。


「ねえねえ、いっしょに稲刈りを手伝ってもいいかな?」

「ははは、ぼうやたちが手伝ってくれるのなら大助かりだよ」


 敬太の後ろには、ちゃっかりと小さい男の子4人とワンべえがいます。腹掛け1枚のかわいい男の子の笑顔は、人間も獣人も全く関係ありません。


 敬太は、いろんな田んぼで稲を刈ってからはざがけまでを繰り返し行っています。単調な農作業に見えますが、おいしいご飯を食べるために一生懸命がんばっています。


「あのぼうやのおかげで、こんなに早く稲刈りが終わるとは……」

「こんなに働き者の子供は見たことがないぞ」


 大人たちは、稲刈りでの敬太の働きっぷりを見てたいそう驚いています。でも、敬太がすごいのはそれだけではありません。


「おっとう! 今から畑でイモ掘りをしてもいい?」

「はっはっは! もしかして、敬太はイモをたくさん食べたいからじゃないかな」

「だって、イモを食べるのが大好きだもん! 早く畑でイモを掘りたいよ!」


 盛兵衛は、自分の畑に敬太とワンべえを連れて行きました。他の子供たちも、畑の前で敬太たちの様子を見ています。


 畑のほうでは、盛兵衛やおひさが食べるための野菜などを植えています。中でも、畑の半分を占めるのがイモ畑です。


 イモづるが伸びているのは、イモの収穫ができる目印です。敬太はイモづるを鎌で切ると、土の中を両手で掘り起こしています。


「わ~い! こんなに大きなイモをいっぱい掘り出したぞ!」

「おおっ! こりゃあすごいなあ」


 敬太が手にしているのは、いくつも実った大きなイモの数々です。他の子供たちも、根っこにあるイモにくぎづけになっています。


「ぼくも食べたいなあ……」「食べたい! 食べたい!」

「それじゃあ、このイモを1本ずつみんなにあげるからね!」

「わ~い! わ~い!」「敬太くん、ありがとう!」


 子供たちは、敬太から手渡されたイモに目を輝かせています。敬太も盛兵衛も、子供たちの喜ぶ顔を見てとてもうれしそうです。


 そのとき、敬太のお腹からあの音が聞こえてきました。


「ギュルギュルルル、ギュルギュルギュルルル、ゴロゴロゴロゴロゴロロッ……」

「敬太くん、どうしたのワン?」

「ワンべえくん、何でもないよ。そんなに気にしなくても……」


 ワンべえの心配をよそに、敬太はイモを掘り出そうと一生懸命です。その間も、盛兵衛は敬太のしぐさを心配そうに見つめています。


「敬太くん……。ずっと苦しそうだけど、本当に大丈夫?」

「おっとう、心配しなくてもぼくは平気だよ。えいっ! ええ~いっ……」


 敬太は笑顔を絶やさずにイモ掘りを続けると、さっきよりも一回り大きなイモを発見しました。


「えいっ! えいっ! ええ~いっ! うううううううううう~んっ……」


 何とか大きなイモを引き抜こうと、敬太は必死に声を上げています。そして、敬太がお腹に力を入れて思い切って茎を引っ張ったときのことです。


「うううううううううううう~んっ……。プウッ、ププウウウウウウウウ~ッ!」


 敬太は大きなイモをたくさん取れましたが、掘り出したときの勢いに尻餅をつくように倒れてしまいました。すると、その場で大きなおならの音が周りに響き渡りました。


「でへへ、でっかいおならがいっぱい出ちゃったよ」


 元気なおならに照れた表情を見せる敬太ですが、上半身を起こすと目の前にもう1つの元気のシンボルがありました。


「はっはっは! こりゃあ、見事にでっかいうんちが出てしまったなあ」

「おっとう、元気なうんちのほうもすごいでしょ!」


 敬太は、畑の上で大きなうんちの大失敗をしてしまいました。その様子は、他の子供たちやワンべえの知るところとなりました。


「わあっ! うんちをおもらししちゃったの?」

「わ~い! 敬太くんのうんちだ! うんちだ!」


 それでも、敬太は仁王立ちになって自分の出たばかりのうんちを自慢しています。大好きなイモをいつも食べているので、うんちの色も元気そのものです。


 敬太のうんちは、肥やしとして畑の土といっしょに耕すことになりました。


「これだけ元気なうんちなら、畑の肥やしとしても十分いけるなあ」

「これからもイモをいっぱい食べて、うんちがいっぱい出るようにがんばるぞ!」


 自ら掘り出した大きなイモの数々に、敬太は改めて目を輝かせています。そんな敬太の姿に、盛兵衛もやさしく見つめています。

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