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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第8章 敬太くんと獣人の赤ちゃん

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その5

 敬太は朝ご飯を食べ終えると、ワンべえといっしょに外へ出ました。物干しには、敬太とげん吉がやってしまったおねしょのお布団が干されています。


 すると、敬太の姿を見た村の子供たちが次々とそばへ寄ってきました。村の子供たちは、初めて見る小さい子供に興味津々です。


「ねえねえ、どこからきたの?」

「う~ん……。ここからかなり遠いところからやってきたよ」


 村の子供たちは、ここまで自分の足でやってきた敬太に驚きを隠せません。なぜなら、子供たちは村の外へ出ることがめったにないからです。


「ぼくの名前は敬太、いつも元気いっぱいの7歳児だよ! 隣にいるのは、ぼくといっしょにいるワンべえという子犬だよ! みんな、よろしくね!」

「わあっ! かわいい子犬もいるんだ! ぼくにもさわっていいかな?」

「ワンべえくんは、子犬でやさしいから大丈夫だよ」


 ワンべえの頭をさすっているのは、腹掛け1枚だけつけた小さい男の子です。男の子の愛情が通じたのか、ワンべえは男の子の足をペロペロとなめています。


「わあっ! 本当にかわいいね」

「ぼくも犬にさわりたい!」「あたしも」「ぼくも」


 ここに集まった6人の子供たちは、かわいいワンべえの姿に一目ぼれです。


 子供たちの格好も女の子や年上の男の子は丈の短い着物を着ていますが、幼い男の子は敬太みたいな腹掛け1枚だけです。


 そんなとき、年上の男の子が敬太のおねしょ布団が干されているのを見つけました。


「あのお布団って、もしかして敬太くんのお布団なの?」

「ぼくはねえ、いつもお布団にでっかいおねしょをしちゃうんだ」


 お布団を見られた敬太は、照れながらも自分のおねしょのことをみんなの前で言いました。子供たちは、敬太がやってしまったおねしょをじっと見つめています。


「わ~い! まだおねしょが治らないんだね」{おねしょ! おねしょ!}

「でへへ、これからもおねしょをしたらみんなにお布団を見せてあげるよ!」


 みんなからはやしたてられても、敬太はおねしょのことを全く気にしません。それどころか、敬太は仁王立ちで堂々と立っています。


「みんなと友達になりたいけどいいかな?」

「いいよ! ぼくたちも、友達がいっぱいいたほうがいいもん」


 敬太と村の子供たちは、すぐに友達として打ち解けるようになりました。子供たちは、敬太に自分の名前を次々と言い出しました。


「ぼくの名前は、岩五郎っていうんだ」「ぼくは勘太、よろしくな」

「あたしは、たよっていう名前なの」「あたいの名前はみおだよ、みおだよ!」

「ぼくのにゃまえ(名前)、じんちゅけ(仁助)」「虎丸だよ、よろしく!」


 村の子供たちは、敬太に負けず劣らずのはしゃぎようです。この様子に、敬太はあることを提案しました。


「これから、みんなでかけっこをしようよ! いいでしょ」

「そんなに言うのなら、ぼくたちも受けて立つぞ!」「絶対に負けないんだから」


 かけっこはここから村の入口を折り返して、再び元の場所へ戻るというものです。村の子供たちは、敬太に負けじとはりきっています。


「それじゃあ、一斉に行くぞ! 敬太に負けてたまるか!」

「わあっ! 先に行かないでよ!」


 村の子供たちは、敬太よりも一足早く駆け出して行きました。少し出遅れた敬太ですが、かけっこの速さには誰にも負けません。


「い、いつの間に……。あんな小さい子供に追い抜かれてたまるか」

「どうだ! かけっこぐらい、誰にも負けないぞ!」


 敬太は、先頭を走っていた岩五郎を一気に追い抜くとそのまま村の入口を折り返しました。そして、おひさたちの庭へ一番乗りで戻ってきました。


 ぶっちぎりでかけっこの一番乗りを果たした敬太に続いて、他の子供たちも次々とやってきました。


「かけっこでは負けたけど、今度は絶対に負けないぞ」

「どんな勝負だって、ぼくは受けて立つからね!」


 かけっこの速さで圧倒された岩五郎と勘太は、敬太に再び勝負を挑もうとします。木の枝で土俵を作ると、2人はその場で着物を脱ぎ捨てました。


「敬太、次は相撲で勝負だ! 早くかかってこい!」

「お相撲ぐらい、ぼくだって絶対負けないもん!」


 ふんどし姿になった岩五郎と勘太は、赤い腹掛け1枚の敬太に勝ってみせると意気込んでいます。土俵に入った敬太の前には、最初の相手である勘太が待ち構えています。


「はっけよい、のこった」


 土俵の上でぶつかり合うと、勘太は自分の力を敬太に見せつけようとします。しかし、敬太は間髪入れずに勘太を上手投げで倒しました。


 勘太は、あっという間に倒されてちょっと悔しそうです。この様子を見て、岩五郎のいる土俵に入りました。


「小さい子供だと思って油断したけど、今度は本気でいくからな!」


 岩五郎は、村の子供相撲大会で横綱になったほどの腕前です。敬太と岩五郎は、土俵の上でにらみ合っています。


 そして、2人は合図と同時に真正面からぶつかって行きました。岩五郎はここでやられたら、子供相撲の横綱の名前がすたります。


 でも、敬太の腹掛けのひもをつかんでもそこからなかなか動かすことができません。


「ぐぐぐっ、どうしてだ……。どんなに押してもビクとも動かない……」

「どんなに強い相手でも、お相撲では負けないぞ! えいえいえ~いっ!」

「うわっと、うわうわわっ!」


 敬太は、自分よりも大きい岩五郎をそのまま土俵の外へ押し出しました。敬太のあまりの勢いに、岩五郎は押し出されたはずみで尻餅をついてしまいました。


「あんな子供に負けるなんて……。く、くやしい……」


 岩五郎は、小さい子供に相撲で負けてくやしさをにじませています。そんな岩五郎に、敬太は右手を差し出しました。


「そんな顔をしたらみっともないよ。だって、ぼくたちは友達なんだし」

「で、でも……」


 岩五郎は敬太のやさしさを感じながらも、なかなか素直になれません。腹掛け姿のちびっ子に負けたことで、岩五郎は自分の心の弱さに情けない気持ちになっています。


 すると、勘太が岩五郎のそばへ寄ってきました。


「岩五郎、意地っ張りにならないで素直になろうよ。敬太だって、お布団にでっかいおねしょをするんだし」

「あの敬太にも弱点があることだし、そこはお互い様だな。はっはっは!」


 勘太の言葉に、岩五郎はすぐに大笑いしながら立ち直りました。これを聞いた敬太も、照れた表情で笑顔を見せています。


 そこへ、庭のほうに腹掛けをつけた小さい男の子2人が入ってきました。2人は、獣人の赤ちゃんであるげん吉と同じように青い肌色をしています。


「もうっ、ちゃきに行かにゃいでよ(先に行かないでよ)!」


 そのとき、男の子の1人が石をつまずいて転んでしまいました。足をケガした男の子は、その場で大泣きし始めました。


「うえええええ~んっ! うええええええええ~んっ!」

「道のほとりに薬になる草があるから、ちょっとの間ガマンしてね」


 敬太はその泣き声にすぐ反応すると、獣人の男の子をおんぶして道に出るところへ走り出しました。道のほとりには、イタドリがいくつか生えています。


「イタドリの若葉を取って、それをもめば……」


 敬太は自分のそばに男の子を座らせると、イタドリの若葉をもんでいます。そして、男の子のケガをした右膝にその若葉を塗りつけました。


「まだ痛いかな?」

「ちょっとちみる(しみる)けど、もう泣かないよ」


 泣きやんだ男の子は、自分にやさしく接する敬太の姿をじっと見ています。


「さあ、手をつないでみんなのところへ行こうね!」

「うん! いっちょに(いっしょに)行こう! いっちょに行こう!」


 敬太たちが戻ると、獣人の男の子同士ですぐにじゃれ合っています。2人は、まるで双子のように顔立ちが似ています。


 子供たちが集まったところで、敬太はみんなで楽しめる遊びを思いつきました。


「ねえねえ、みんなでおしくらまんじゅうしようよ!」

「それ、いいね」「いっしょにちよう(しよう)」

「それじゃあ、行くよ! おしくらまんじゅう、押されて泣くな!」


 敬太たちは、背中を向けて円陣を組みながらおしくらまんじゅうを始めました。村の子供たちといっしょに、敬太も背中や肩を押し合いながら遊んでいます。


 家から出てきたおひさと盛兵衛も、敬太が子供たちと楽しそうに遊んでいる様子に目を細めています。げん吉も、おひさに抱かれながらキャッキャッと喜んでいます。

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