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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第7章 敬太くんと天狗の親子

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その1

 敬太とワンべえは、険しい山道を歩き続けながら歩き続けています。どんなにつらい道のりであっても、敬太はいつも明るくて元気いっぱいです。


 そんな敬太も、自分のお父さんとお母さんのことを思い出すたびにさびしい思いに包まれます。少しでも早くお父さんとお母さんに会いたいというのが、敬太にとっての率直な気持ちです。


「おっとうとおっかあに早く会いたいけど、どこにいるのかな?」


 それでも、ワンべえといっしょにいるおかげでつらい顔を見せることはありません。どんなことがあっても、敬太とワンべえは大切な友達として互いに信頼しています。


 しばらく歩き続けると、敬太たちは山道の途中で現れた谷底を前に立ち止まりました。そこは元々つり橋で向かい側の山道とつながっていましたが、今はその橋が完全に崩れて通ることができません。


 谷底の真下には、川が流れているのが見えます。これを見た敬太は、意を決して直接飛び降りることにしました。


「橋がないのなら、ここから谷底まで一気に降りるしかないぞ」

「え~っ! そんなことをしたら、敬太くんも死んでしまうワン」


 ワンべえは、谷底を見ただけですごく恐がっています。しかし、敬太はそんなことを気にする様子は全くありません。


「ワンべえくん、絶対に離したらダメだよ!」

「敬太くん、下を見たら本当に恐いワン……」

「そんなに恐くないって!」


 敬太はワンべえを抱きかかえると、谷底にある河原に向かって飛び降りました。そして、空中で1回転するとそのまま河原の上へ着地しました。


 あれだけ高いところから飛び降りるのは、大人でもかなり危険なことです。しかし、敬太は何ごともなかったように堂々と仁王立ちしています。


 でも、いっしょにいるワンべえはあまりの恐さに体が震えています。


「敬太くん……。本当に恐くて気が失いそうになったワン……」

「ワンべえくん、恐い思いをさせてごめんね」


 さすがの敬太も、ワンべえを危険にさらすことをしてしまったことに反省しきりです。


 そのとき、悲鳴を上げた子供らしき声が敬太たちの耳に入りました。敬太とワンべえは、急いでその声が聞こえたところへ向かって行きました。


 そこには、凶悪そうな大きなツキノワグマが子グマを左手でわしづかみにして持ち上げています。凶悪なクマに捕まった子グマは、大きな声で泣き続けています。


「かわいい子グマがこんなところにいるとはなあ、ぐはははは!」

「うええええ~ん! うええええええええええええええ~ん!」


 敬太は、すぐさま凶暴なクマがいるところへ出てきました。かわいい子グマの泣き声を聞いて、敬太は黙っていられません。


「早くその子グマを放せ! 早く放せ!」

「おい! 誰に向かって言っているのか、ちゃんとわきまえているんだろうな」


 敬太の目の前には、二回り以上も大きいツキノワグマがいます。その顔には大きなキズがあり、明らかに恐そうな顔つきで敬太をにらみつけています。


 そして、凶暴なクマは大きな口を開けるしぐさをしながら野太い声で再び言い始めました。


「おれはなあ、食べるものがあれば子グマであろうとこの大きな口で噛み砕くのさ。言っている意味が分かるか?」

「よくも、かわいい子グマにこんなことを……。絶対に許さないぞ!」


 敬太は右手を握りながら、酷いことを平然と言い放つツキノワグマへの怒りをにじませています。それでも、凶暴なクマは一切聞く耳を持とうとしません。


 そんな凶暴なクマの態度に、敬太はガマンできるはずがありません。敬太は強い怒りをぶつけようと、ツキノワグマに向かってすかさず攻撃を仕掛けようとします。


「ツキノワグマめ、これでも食らえ! え~いっ! とりゃあっ! とりゃあっ!」

「うわっ! いきなり何をしやがる! いててっ、いててててっ!」


 敬太は、凶暴なクマへ強烈な拳と蹴りで次々と食らわせていきます。いきなりの攻撃に、ツキノワグマは反撃することはできません。


 その間も、敬太は間髪入れずに凶暴なクマへの攻撃を続けています。


「え~いっ! とりゃあっ! とりゃあっ! とりゃああっ!」

「うわわっ、うわあああっ、うわあああああああああっ……」


 あれだけ図体の大きいツキノワグマも、続けざまに攻撃を食らえばひとたまりもありません。凶暴なクマは、後方へ仰向けのままで倒れこみました。


 そのとき、凶暴なクマが倒れこんだはずみで子グマが空中に投げ出されました。これを見た敬太は、すぐに両手でその子グマを受け止めました。


「うええええ~んっ! あんな顔でにらみつけて、本当に恐かったよ……。うええええ~んっ!」

「子グマくん、もう泣かなくても大丈夫だよ。ぼくがちゃんと守ってあげるからね」


 敬太は、助けたばかりの子グマをやさしく抱きしめています。ワンべえも、その様子を見ようと敬太のそばへきました。


 そんな子グマの姿に、敬太は自分のお父さんとお母さんといっしょに暮らしたときのことを思い出しています。


 そこへ、別の大きなクマが敬太のところへ近づいてきました。そのクマは、敬太と戦った凶暴なクマとは違ってどこか温和な表情のように見えます。


「どなたか知りませんが、子供を助けてくれて本当にありがとうね」

「そんなことを言わなくても、子グマを助けることぐらい当たり前のことだもん!」


 敬太のそばにいる大きなクマは、子グマのお母さんです。お母さんグマは、やさしさと元気さを兼ね備えた敬太の姿に目を細めています。


「母ちゃん、本当にごめんなさい……。うううっ……」

「そんなに泣かなくても大丈夫だよ。これからは自分勝手なことをしたらいけないよ」


 クマの親子が話している様子に、敬太はしんみりと見入っていました。


 敬太は、抱きかかえている子グマをお母さんグマの背中に乗せています。お母さんグマと子グマのほほえましい姿は、敬太やワンべえにも伝わっています。


 そんな中、凶暴なクマが敬太の背後からひそかに迫ってきました。その表情は、敬太から受けた屈辱で怒りに満ちた顔つきとなっています。


「よくも、このおれにじゃまをしやがって……。ただで済むとは思うなよ……」

「敬太くん、気をつけてワン! 大きなクマが後ろにいるワン!」


 後ろから忍び寄る黒い影に、ワンべえは敬太に向かって思わず叫び声を上げました。その声が耳に入ると、敬太は振り向きざまに右足でツキノワグマに回し蹴りを食らわせました。


「みんな、早くここから急いで逃げて!」


 凶暴なクマとの戦いに、これ以上ワンべえたちを巻き込みたくありません。敬太の声に、ワンべえとクマの親子は離れたところへ逃げることにしました。


 しかし、この様子を見逃すツキノワグマではありません。凶暴なクマは、敬太の一瞬の油断を突くように攻撃を仕掛けました。


「他のことばかり気にとられていいのかな? うりゃあああっ! うりゃあああっ!」

「うっ! いててててててっ……」


 凶暴なクマは、大きな左足で敬太のお腹を思い切り蹴り上げました。急所を突かれた敬太は、その場で崩れ落ちるように倒れました。


「ぐはははは! 油断していたらどうなるかというのをおめえに教えないといけないな」

「うぐぐっ、うぐぐぐぐぐぐぐっ……」


 ツキノワグマは、痛がる敬太を仰向けにしては左足で強く踏みつけています。尋常でないその踏みつけ方に、敬太はなかなか声を出すことができません。


 すると、凶暴なクマによって踏みつけている敬太のお腹からはあの音が聞こえてきました。


「んぐぐぐぐぐぐぐっ……。ギュルル、ギュルギュル、ギュルゴロゴロゴロッ……」


 敬太は、急にお腹が痛くなるのと同時にお尻のほうもムズムズし始めました。しかし、このまま凶暴なクマの前に屈するわけにはいきません。


「うぐぐぐぐっ……。んぐぐぐぐぐっ、ぐぐぐぐぐぐぐぐっ! えええええ~いっ!」

「うわっ、わわわっ! あれだけ踏みつければ、くたばっているはずなのに……」


 凶暴なクマは、踏みつけていた左足を敬太が持ち上げている姿に驚いています。敬太は歯を食いしばりながら持ち上げると、ありったけの力でツキノワグマを後方へ押し倒しました。


 敬太の攻撃はこれだけでは終わりません。クマの足首をつかんだ敬太は、その足首を交差させながら思い切りひねります。


「ツキノワグマめ、どうだ! え~いっ! え~いっ!」

「うげっ、うげっ! いててっ、いてててっ、いてええええええええええっ……」


 足首を何度もひねるうちに、その痛みはツキノワグマにも伝わってきました。凶暴なクマは、あまりの強烈な痛みに顔をゆがめています。


 その様子を見た敬太は、凶暴なクマの真上へ飛び乗ってとどめの一撃を食らわせます。それは、ツキノワグマにとって最も強烈なものです。


「プウッ! プウッ! ププウウッ! ププウウウウ~ッ! ププウウウウウウウウ~ッ!」

「うっ! く、くさい……。目の前で思い切りでっかいおならを……」


 敬太は、5回も続けて特大のおならを凶暴なクマの前で放ちました。これを食らったツキノワグマは、鼻が曲がるほどのおならのにおいで息をすることができません。


「どうだ! ぼくのでっかいおならはこんなにすごいぞ!」

「わわっ、わわわっ! こ、これ以上戦うのは勘弁な……」


 凶暴なクマはこれ以上戦い続けてもかなわないと悟ったのか、その場からあわてて逃げていきました。これを見た敬太は、両腕で力こぶを入れながら仁王立ちしようといます。


 しかし、ホッとしたのもつかの間のことです。敬太は苦しそうな顔つきを見せると、思わす両手でお尻を押さえながら走り出しました。


「も、もうガマンができない……。ギュルギュル、ギュルゴロゴロゴロゴロッ……」


 敬太は、うんちを必死にガマンしながら河原を走り続けています。そのとき、横手にクマの親子とワンべえの姿が見えたので急いでそこへ向かいました。


 ワンべえは、敬太の様子がおかしいことに気づくとすぐに声をかけました。


「敬太くん、そんなにあわててどうしたワン?」

「うんちがガマン……。もうガマンできない……」


 敬太は、お尻を押さえながらすぐに大きな木のそばにしゃがみました。ずっとうんちをガマンしていた敬太でしたが、そのガマンもついに限界がきてしまいました。


「うんっ! うんっうんっ! うううんっ! うううんんんんんんんん~っ!」


 敬太はガマンしていたものを出そうと、お腹に思い切り力を入れながらふんばり続けました。しばらくすると、敬太は全部出し切っていつもの明るい笑顔に戻りました。


「ワンべえくん、ここを見て見て! こんなにいっぱいうんちが出たよ!」

「敬太くんがお尻を押さえて苦しそうだったから、ぼくも心配していたワン。でも、元気なうんちがいっぱい出て本当によかったワン」


 敬太が立ち上がると、そこには出たばかりのでっかいうんちがあります。恐そうな強い敵を見事にやっつけた敬太ですが、こんなかわいらしいところはまだ7歳児の男の子そのものです。


 隣にいるクマの親子も、敬太の様子を見ようと横へ振り向きました。


「あらあら、こんなにうんちが出ちゃったんだね」

「わ~い! 大きなうんちだ! 大きなうんちだ!」

「でへへ、大好きなイモをいっぱい食べ過ぎて元気なうんちがたくさん出ちゃった」


 うんちは、敬太がいつも元気な子供である立派な証拠です。こうして、敬太たちのにぎやかな笑い声が河原に響き渡っています。


 そのころ、高い木の真上で謎の男が河原の周りを見渡しています。よく見ると、その男の視線はある一点に集中しています。


「獣人たちを何人も撃退させたちびっ子のことは風の便りで聞いたけど、まさかあれだけ恐ろしいクマをやっつけるとは……」

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