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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第6章 敬太くんとお寺の大家族

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その18

 敬太の額には、獣人の子供であることを示す紋章が現れています。その紋章を見た獣人たちは、思わず不気味な笑みを浮かべながら口を開きました。


「そうか……。やっぱりここにいたのか」

「獣人の子供がいるという噂は聞いていたが、まさかこんなところで会うとはなあ」

「これはおれたちにとって好都合だぜ、ぐはははは!」


 獣人たちは、指をポキポキさせながら敬太の前に出てきました。人間と同じ姿である獣人の子供は、獣人たちにとって裏切り者に他ならないものです。


 それでも、敬太はどんな状況であっても動じることはありません。獣人の子供であっても、おせいや男の子たちは敬太のことをずっと信じているからです。




「敬太くん、いつでも私たちがついているからね」

「敬太くんなら、あんな獣人なんかやっつけてくれるさ!」「敬太くん、負けるな!」

「敬太くん、がんばって!」「ぼくたちも、敬太くんのことを応援しているからね」




 敬太の心の中に浮かんだのは、かわいい男の子たちによる励ましの声です。そして、いつもやさしく見守るおせいの姿もあります。


「みんなのためにも、獣人たちを絶対にやっつけるからね」


 敬太は、右手の拳を握りしめながら改めて心に誓いました。それは自分のためであるのと同時に、みんなのためでもあります。


 獣人たちは、この様子を見ながら苦虫を噛み潰したような顔を見せています。一向に攻撃を仕掛けないのを見て、獣人たちは5人がかりで敬太への攻撃を加えようとします。


「おめえが攻撃しないなら、おれたちのほうから行くぞ!」

「獣人の紋章があろうとなかようと、おめえをこの場で始末することに変わりないぜ!」


 獣人たちによる一斉攻撃に、敬太は素早く反応しました。敬太はその場から高く飛び上がると、そのまま急降下しました。


 その勢いで、敬太は双子の獣人の背中を次々と強く蹴りつけました。そして、他の獣人たちにも強烈な拳や飛び蹴りを立て続けに食らわせています。


「獣人め、どうだ! えいっ! えいっ! とりゃあっ! とりゃとりゃあっ!」

「グエッ、グエグエッ……」「いてててててっ……。敬太め……」

「今までと比べ物にならない力があるとは……」


 獣人たちは、敬太による凄まじい攻撃の前になかなか立ち上がることができません。この間にも、敬太は獣人を続けざまに真上へ持ち上げては地面に叩きつけています。


 こうして、獣人たちは次から次へとうつ伏せで折り重なっていきました。


 すると、敬太は急にお腹が痛くなってきました。どうやら、大好きなサトイモを多く食べすぎたのが原因のようです。


「ギュルギュル、ギュルギュルル、ギュルギュルゴロゴロゴロゴロッ……」


 その音は、敬太があの必殺技を繰り出す絶好のチャンスです。敬太は、すぐそばにある大きな木の太い枝に飛び上がりました。


「よ~し! ここからぼくの必殺技を放ってみせるぞ!」


 敬太は真下を見ながら狙いを定めると、そこから高く飛び上がりながらお腹に力を入れました。


「え~いっ! ププウッ! プププウウッ! プププププププウウウウウウッ!」

「う、うげっ……。息ができないほどくさい……」

「おのれ……。とってもくさいおならをしやがって……」


 敬太は急降下しながら、真下にいる獣人たちに向かって特大元気噴出砲を3回も出てしまいました。でも、敬太の攻撃はこれで終わることはありません。


「獣人め、これでどうだ! え~いっ、それっ!」

「わわわっ! こっちにくるな、こっちに……」「うわっ、うわわわっ!」


 獣人たちは、あまりの激しい体の痛みに体を起こすことができません。それでも、敬太からの攻撃をどうにかしてかわそうと必死になっています。


 そんな獣人たちをよそに、敬太は両足を大きく開きながら落下しています。そして、獣人たちが折り重なっているところに尻餅をついたときのことです。


「とりゃあっ! プププププウウウウウッ! プププププププウウウウウウウッ!」

「うぐぐぐっ……。本当にくさい……」「何を食べたら、こんなくさいおならが……」

「どうだ! 元気いっぱいの特大元気噴出砲の威力は!」


 敬太は、獣人たちに乗っかったままで特大元気噴出砲を再び食らわせました。獣人たちは、鼻につくほどのくさいおならのにおいで気を失っています。


 敬太の元気なおならは、獣人たちの周りにまでにおいが充満しています。敬太が右へ振り向くと、そこには牛助とワンべえが地べたでぐったりしています。


「さすがに、敬太のおならには参ってしまいそう……」

「敬太くんのおなら、あまりにもくさくてたまらないワン……」

「でへへ、元気いっぱいのおならが何回も出ちゃったよ!」


 でっかいおならは、敬太が元気な男の子であるシンボルです。牛助とワンべえは、敬太の元気さにたじたじとなっています。


 敬太は、牛助とワンべえをその場で起こしました。そのとき、獣人たちは体を震わせながら敬太をにらみつけています。


「このチビめ……。よ、よくもおれたちに……」

「ここから生きて帰れると思うなよ……」


 敬太は獣人たちを飛び越えて空中で1回転すると、大きな池へ通ずる向かい側に着地しました。そこは、大きな池がはっきりと見える位置にあります。


「や~い! 悔しかったらここまでおいで!」


 敬太はお尻をペンペンしながら獣人たちを挑発すると、そのまま大きな池へ向かって駆け出しました。これを見た獣人たちは、ついに怒りが頂点に達しました。


「よくも、おれたちをコケにしやがって!」

「絶対に許さないからな……。殺せ! あのチビを殺せ!」


 獣人たちは、敬太に向かって長い鎖を一斉に投げ込みました。敬太はその様子に気づくと、後方から飛び交う鎖を次々とかわしていきます。


 こうして、敬太は軽い身のこなしでかわしながら大きな池に到達しました。そんな中、獣人たちは敬太のわずかな隙を狙おうとします。


「よ~し! この大きな池を泳いでみんなのいるところへ……。う、うわわっ!」

「ぐはははは! 残念だったな!」

「どんなことをしても、おれたちからは絶対に逃げられない運命なんだよ」


 敬太は、双獣炎から放った鎖が左足首に巻きついたはずみでうつ伏せになって倒れました。それでも、こんなことで立ち止まる敬太ではありません。


「これくらいのこと、全然へっちゃらだぞ!」

「そんなバカな……。鎖が巻きついたままなのに……」

「えいっ! えいっ! えいっ! うぐぐぐぐっ……」

「わわわっ! 引きずられてしまう……。わっ、わっ、わわわわっ……」


 敬太は歯を食いしばりながら立ち上がると、鎖がからまった状態で大きな池へ入って行きました。左足首に鎖が巻きついても、敬太は歩きながら双獣炎を力いっぱい引っ張り続けます。


 双獣炎は、地面を引きずられながらも鎖を握ったまま離そうとしません。


「うぐぐぐぐっ……。うぐぐぐぐっ……。えいっ! ええ~いっ!」

「わわっ、わわっ、わわわわわわっ……」


 敬太の凄まじい力は、双獣炎の想像をはるかに超えるものです、双獣炎は、敬太の力強い馬力の前に鎖を手離してしまいました。


 こうして、敬太は大きな池の中へ消えて行きました。


「くそっ! まだ遠くへ行っていないはずだ!」

「あのチビめ……。池の中をくまなく探せ! くまなく探せ!」


 血相を変えた双子の獣人は、敬太を追って池の中へ入って行きました。他の獣人も、その後をついて行くように池へ足を入れようとします。


 これを見たワンべえは、最後尾にいる獣人の右腕に飛びついて噛みつきました。


「いてててっ、いてててててっ……。いきなり噛みつきやがって!」

「ここから先には行かせないワン!」

「いててててててっ……。早く放せ! 早く放せ!」


 獣人は、ワンべえをその場で振り落とそうと必死です。しかし、ワンべえは噛みつくのをやめようとしません。


 そこへ、牛助がものすごい剣幕でにらみつけながらやってきました。


「敬太に手出しをしようものなら、ただでは済まないからな!」




 敬太は、大きな池の深いところへ向かって潜って行きます。左足首は鎖が巻きついたままですが、こんなことで気にする敬太ではありません。


 獣人たちのほうも、敬太の後を一斉に追いかけようとします。でも、あまりの水深の深さにこれ以上水中で息を止めることができません。


 獣人たちは水面から顔を出すと、敬太へのいらだちをにじませています。それは、獣人たちの表情を見てもすぐ分かります。


「くそっ! あのチビめ、どこまで潜って行ったんだ!」

「敬太め、覚悟しやがれよ……。絶対に息の根を止めてやるからな」


 深呼吸を終えると、獣人たちはそろって池の深いところへ向かって潜りました。




 一方、敬太は大きな池の深い底を目指して潜っています。さらに深く潜ると、敬太が見たことのある大きな魚の姿が現れました。


「巨大ナマズ、敬太だよ! またきたからね!」

「おおっ、敬太か! どうしてまたここに?」


 突然の訪問者に、巨大ナマズはびっくりしています。敬太とはしばらく会うことはないと思っていたからです。


 すると、ナマズは敬太の左足首から垂れ下がっている鎖がどうしても気になります。


「敬太、どうしたの? 足に鎖が巻きついているぞ」

「ちょっと油断しちゃって、獣人が放った鎖にからまってしまった。でも、これくらいのことでは絶対にへこたれないぞ!」


 どんな状況であっても、敬太は言い訳をしないで常に明るい笑顔を見せています。その様子に、巨大ナマズも目を細めています。


 しかし、その間にも獣人たちが少しずつ敬太たちのところへ接近してきました。後方から迫る敵の影に、敬太はうすうす感じています。


 すると、敬太は左足首に巻きついた鎖を見ながらあることを思いつきました。早速そのことを巨大ナマズの耳元で伝えようとします。


「おいおい、そんなことをしたら……」

「これは、巨大ナマズがいないとできないことなの。ぼくはどうなってもいいから、いっしょにやろうよ!」

「う~ん、しょうがないなあ。敬太の強い気持ちにはおれ様も負けたよ」


 敬太の思いついた方法はとても危険なものです。それでも、敬太の強固な決意に巨大ナマズはやめろとは言えません。


 そんなとき、敬太たちの背後から獣人たちが現れました。獣人たちは、まるで獲物を見るような目つきで敬太をにらみつけています。


「敬太め、ようやく見つけたぜ……」

「獣人の子供である以上、おめえはおれたちから逃れることができないんだよ!」


 獣人たちは、今のうちに敬太を始末しようと襲いかかりました。これを見た敬太は、すぐさま巨大ナマズの背びれにまたがりました。


「おれ様の泳ぎ方は荒々しいから、背びれをしっかり持たないといけないぞ!」


 巨大ナマズは敬太を乗せると、すぐさま縦横無尽に水中を遊泳し始めました。敬太は、激しく動き回るナマズの背中にしがみついています。


 獣人たちのほうも、敬太への攻撃を仕掛けようと巨大ナマズを追いかけます。ナマズの動きに手こずる中、双獣雷は敬太の左足首から垂れ下がる鎖を見つけました。


「ぐはははは! 池の中を逃げようとしたってそうはいかないぜ!」


 双獣雷はタイミングをうかがうと、敬太がまたがった巨大ナマズが近づいてきました。これを見て、双獣雷はすかさず垂れ下がった鎖を片手で持ちました。


 それでも、敬太は決して動じることはありません。巨大ナマズは、池の中をずっと遊泳し続けています。


「敬太め、これでも食らって死んでしまえ!」


 双獣雷は鎖を握りしめると、巨大ナマズにまたがる敬太に向かって高圧電流を流し始めました。不気味な笑みを浮かべながら、敬太の命を絶やそうと右手から電流を送り続けています。


 しかし、敬太の額には獣人の紋章が現れています。双獣雷がどんなに高圧電流を流しても、敬太の体はビクともしません。


「敬太がおれ様に言っていたのは、これが狙いだったということか」

「そういうことだよ。だから、巨大ナマズにまたがっているのもこのためだもん!」


 敬太と巨大ナマズは、改めて双獣雷を誘い出した狙いを再確認しました。双獣雷は、敬太の術中にはまっていることをまだ知りません。


 すると、敬太の左足首に巻かれた鎖が突如として砕かれました。鎖を持った双獣雷は、そのまま水中へ投げ出されました。


「うわあっ! うわあああああああああっ……」


 突然のことに、双獣雷は叫び声を上げるのが精一杯です。その様子をよそに、敬太は巨大ナマズから水中へ飛び出しました。


 すぐ目の前には、敬太を追っていた獣人たち2人が迫っています。敬太は、獣人たちの真正面から突っ込んで行きました。


「ぐはははは! 自分から地獄へ行くことを……」

「え~いっ! とりゃああっ!」

「わわわっ、うわああああああああああっ……」「ぎゃああああああああああああっ!」


 敬太が突っ込んだ瞬間、獣人たちの体に高圧電流が流れ始めました。獣人たちは、あまりにも強力な電流を浴び続けながら叫び声を上げています。


「獣人め、これでどうだ!」

「ぎゃあああああっ……。ぎゃああっ、ぎゃああああああああああああっ……」


 敬太が放ち続ける高圧電流の前に、獣人たちは何も言い出すことができません。そうする間に、獣人たち2人は次第に石化するようになりました。


 石化した獣人たちは、そのまま細かい砂のようになって池の底へ沈みました。これを見た敬太は、真横へやってきた巨大ナマズに再びしがみつきました。


 一方、双子の獣人は後ろから近づいてくる巨大ナマズの姿にあわてて池から脱出しようとします。敬太は、次第に水面に近づいてきたタイミングでナマズの背中に立ちました。


「獣人め、絶対に許さないぞ! え~いっ! とりゃあっ!」


 水面から現した敬太は、巨大ナマズの背中から一気に大きくジャンプしました。

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