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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第6章 敬太くんとお寺の大家族

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その10

 どす黒い雲に覆われた空から雷鳴が響き渡る中、大権官がいる大きな城の本丸では何ヶ所も包帯を巻かれた獣人たちが痛々しい表情を見せながら報告している。


「おれたちが始末したはずの敬太が、まさか目の前にいるなんて……」

「大権官さま、本当に信じてくださいよ……。あのチビはマムシの毒が回っても不死身なのでは……」


 獣人たちは、目の前にいる大権官に敬太と戦って敗れたことについて必死に言い訳しようとしています。しかし、そんな言い訳が大権官に通用するはずはありません。


「おめえら……。よくもおれの前でそんな見え透いた言い訳ばかり言いやがって……」


 大権官は、敬太に敗れた獣人2人に鋭い目つきで怒りをあらわにしています。その怒りの矛先は、自分たちの部下をコテンパンに痛めつけた敬太に向けられています。


「敬太め、おれたちの仲間をよくもこんな目に遭わせやがって……。このままただで済むとは思うなよ……」


 大権官が体を震わせながら怒りを充満しているのを見て、周りにいる獣人たちはおびえた表情でその様子を見入っています。


「おい! あれを持ってこい!」

「大権官さま、いつもの大きな丸太を持ってきました。今日は、敬太に見立てて赤い腹掛けをつけています」


 大権官の前には、獣人たちが持ってきた大きな丸太があります。その丸太には、金太郎みたいな赤い腹掛けをつけています。大権官はこれを見ると、すぐさま丸太を右手で思い切り叩き割りました。


「おりゃああっ! おりゃおりゃああああっ! ミシミシ、メリメリメリッ……」


 大権官は2つに叩き割った丸太を両手で持つと、大きな丸太は自らの怪力でいとも簡単に割れていきました。これを見ていた獣人たちは、凄まじい怒りを発する大権官の様子に震えあがっています。


 こうして、大権官の手によって大きな丸太は粉々に砕かれました。それでも、大権官の腹の虫が治まる気配はありません。


「あのチビめ、今度こそおめえをこの丸太のように粉々にして殺してやるからな……。覚悟して待っているんだな」


 大権官は、獣人たちが敬太から受けた屈辱の数々を忘れていません。右手に乗せた丸太のかけらを握りつぶすと、大権官は敬太を絶対に殺してやると声を震わせました。



 一方、敬太たちは暑い夏真っ盛りの中でも元気いっぱいです。


 今日は畑仕事をお休みにして、すでに収穫した畑に大きな円を描いて土俵を作っています。どうやら、敬太たちはこれからみんなでお相撲をするそうです。


 最初は、敬太以外の男の子たちが土俵に上がって取組に入ります。その間、敬太はいっしょに連れてきた津根吉と桑吉のお世話をしています。


「はっけよい、のこった!」


 土俵の上では、峰七が他の男の子たちと力の差を見せつけています。さすが、ちびっこ相撲の横綱というだけのことがあります。


 敬太も、目の前に繰り広げられるお相撲を見ながらワクワクしています。


「やっぱり峰七くんのお相撲は本当にすごいなあ。ぼくも早く……。うわっ!」

「ジョジョジョ~ッ、ジョパジョパッ、ジョパジョジョジョ~ッ……」


 敬太はお相撲を見ながら、泣いている津根吉を自分の顔のところまで抱き上げました。すると、津根吉は敬太の顔面におしっこをひっかけ始めました。どうやら、津根吉が泣いていたのはおしっこがしたかったからそうです。


 この様子を見た男の子たちは、おしっこを命中された敬太の顔を見て喜んでいます。


「わ~い! 敬太くん、顔におしっこをかけられちゃったね」

「でへへ、今日も津根吉くんにおしっこを命中されちゃったよ」


 獣人には凄まじい強さを見せる敬太も、津根吉や桑吉といった赤ちゃんからのおしっこ攻撃にはかないません。これには、さすがの敬太もたじたじの様子です。


 一方、津根吉は敬太に抱かれながら、おしっこが出てすっきりしたのでキャッキャッと大喜びしています。


「牛助くん、いっしょにお相撲しよう! お相撲しよう!」

「気持ちは分かるけど、敬太くんの力強さにはわしもかなわないよ」


 敬太は、牛小屋にいる牛助にいっしょにお相撲をしようと呼びかけました。牛助は前回のお相撲の取組で、敬太の凄まじい力強さを思い知らされたのでやんわりと断りました。


 しかし、牛助は獣人をやっつけるほどの凄まじい力を持っている敬太のことをいつも見守っています。あれほど力が強くて元気な男の子は今まで見たことが無いからです。


 そのとき、洗濯物を干し終えたおせいが敬太たちの様子を見るためにここへやってきました。これを見た敬太は、すぐに津根吉をおんぶすると、桑吉を抱きかかえながらおせいのところへ行きました。


「ふふふ、こんなに暑い最中でもお相撲を取るのが大好きだね」

「おっかあ、峰七くんのお相撲を……。わっ、わわっ!」

「ジョジョ~ッ、ジョパジョパジョパッ、ジョパジョパジョジョジョ~ッ……」


 敬太はおせいに話しかけようとしたとき、桑吉が敬太の顔におしっこ噴水を命中させました。桑吉の元気なおしっこ噴水に、敬太も思わずびっくりしました。


「敬太くん、今日も赤ちゃんにおしっこをかけられちゃったね」

「油断していたら、桑吉くんからおしっこ攻撃をされちゃったよ!」


 敬太は津根吉や桑吉のお世話をするとき、赤ちゃんから顔面へおしっこをよくかけられます。でも、それは赤ちゃんにとっての敬太への愛情表現といえるものです。敬太も赤ちゃんのお世話をするのが大好きなので、おしっこを命中されても明るい笑顔を欠かすことはありません。


 そこへ、さっきまで土俵でお相撲を取っていた男の子たちが敬太のそばへやってきました。それは、敬太が他の男の子たち全員と土俵でお相撲を取るというものです。


「敬太くん、ぼくたちとお相撲を取ろうよ! 取ろうよ!」

「でへへ、それならみんなといっしょにお相撲を取ろうかな」


 土俵に入った敬太の相手は、津根吉と桑吉を除いた男の子6人です。峰七以外の男の子は、そんなにお相撲が強いわけではありません。それでも、敬太はみんなと大好きなお相撲を取ることがうれしくてたまりません。


 みんなが土俵に入ったので、立合いの合図はおせいが行います。


「はっけよい、のこった!」


 敬太は峰七と正面からぶつかり合うと、すぐさま峰七の左腕を両手で抱えました。そして、敬太は峰七を右肩に担いですぐに前方へ投げ倒しました。


 これを見た菜八と居六、それに紺次郎は押し相撲を試みようとしましたが、逆に敬太によって土俵の外へ押し出されました。


「うわっ! お相撲が強い敬太くんにはやっぱりかなわないよ」

「わわわっ、敬太くんにそのまま押し出されちゃった」


 峰七たちは、あの恐ろしい獣人たちを撃退した敬太の力強さにすっかり降参してしまいました。しかし、土俵の中にいるはずの貫吉と扇助の姿が見当たりません。敬太は土俵の周りを見ましたが、2人の姿はどこにもいません。


「貫吉くん、扇助くん、どこにいるのかな?」


 貫吉と扇助が急にいなくなったことに、敬太は戸惑っている様子です。しかし、敬太が気づかない間、貫吉と扇助は敬太の後ろに隠れながら動きに合わせてついていきました。


 そして、貫吉と扇助は敬太の両足を手でコチョコチョとくすぐり始めました。


「コチョコチョコチョコチョ、コチョコチョコチョコチョコチョ」

「うわっ、うわっはははっ! く、くすぐったいよ……。うわっはははっ!」


 2人のくすぐり攻撃に、敬太は笑うのをこらえることができません。これを見た貫吉と扇助は、敬太の両足へくすぐるのをやめようとしません。


「コチョコチョコチョ、コチョコチョコチョコチョ、コチョコチョコチョコチョ」

「わっはははは、くすぐったいってば……。うわっ、わわわっ!」


 敬太は自分の足がくすぐられるのに耐えられずに、ついに土俵の上に尻餅をついてしまいました。さすがの敬太も、小さい男の子によるくすぐり攻撃に降参しきりです。


「でへへ、貫吉くんと扇助くんのくすぐり攻撃にはかなわないよ」

「わ~い! 敬太くんに勝ったよ! 勝ったよ!」


 貫吉と扇助は、お相撲で敬太に勝つことができたので、足をピョンピョン跳ねながら喜んでいます。強い相手にはものすごい力強さを見せる敬太ですが、赤ちゃんやかわいい子供には弱いようです。


 太陽に照らされた中でお相撲を取ったので、敬太たちは汗をいっぱいかいています。こういうときには、やっぱり冷たい水の中へ入って汗を流したいはずです。


「おっかあ、みんなといっしょに近くの大きな池へ行ってもいい?」

「行ってもいいけど、くれぐれも気をつけて行かないとダメだよ」


 敬太は、桑吉と津根吉を除く男の子6人といっしょに大きな池のある所へ行くことにしました。おせいから注意事項を聞いた敬太たちは、お寺から山道へ出るところまで出ると、そこから左へ曲がって歩き続けます。


 敬太は、大きな池で早く泳ぐのが待ちきれない様子です。


「敬太くん、大きな池へ行ったら何をするの?」

「池の中に入ったら、思い切り泳いだり潜ったりするぞ! だって、ぼくは川や海で泳いだりするのが大好きだもん!」

「わあ~い! 敬太くん、いっしょに泳ごうよ!」「いっしょに泳ご! 泳ご!」


 敬太の後をついて行く男の子たちは、意外にも大きな池へ行くのは初めてです。それでも、大好きな敬太といっしょに水の中へ入るのを今から楽しみにしています。


 そうするうちに、敬太たちは大きな池のあるところへやってきました。その大きな池を見るや、敬太たちは大きな池に向かって駆け出していきました。


「池の中へ入ったら、こんなに気持ちがいいよ」

「それっ、パシャパシャパシャ!」「パシャパシャッ、パシャパシャパシャッ!」

「うわっ! よくも水をかけてくれたな! 今度はこっちからお返しだぞ、パシャパシャパシャッ!」


 敬太たちは池の中へ入ると、すぐにパシャパシャと水のかけあいっこを始めました。真夏の暑い昼間に水の中へ入るのは、子供たちにとって気持ちのいいものでず。


 かけあいっこが終わると、男の子たちは池の中を泳ぎたいと言ってきました。でも、男の子たちが池で泳ぐのは初めてなので不安でいっぱいです。


「今度は池の中を泳ぎたいけど、本当に大丈夫かなあ……」

「そんなに水を恐がらなくても大丈夫だよ! ぼくが両手を握るから、顔に水をつけて泳ごうね」


 水への恐怖心から、男の子たちは泳ぎたくてもなかなか一歩が踏み出せません。これを見た敬太は、恐がらなくても大丈夫と男の子たちを励ましました。


 最初は、敬太と同じ年である菜八が池の中に入りました。敬太が菜八の両手を握ると、菜八は水の中に顔をつけました。


「なっぱくん、水の中はどうかな?」

「初めて水の中に顔をつけたけど、恐くなかったよ」


 最初は恐る恐る水に顔をつけた菜八ですが、実際にやってみると恐くないことが分かって安心しました。菜八は再び水に顔をつけると、敬太の指示に従って泳ぎ出しました。


「なっぱくん、足をばたつかせながら泳いでみて!」


 敬太が菜八の両手を握って支えると、菜八はすぐに足をばたつかせながら水しぶきを上げています。


「ぷは~っ! 敬太くん、どうだった?」

「なっぱくん、よくがんばったね! 少しずつでも自分で泳げるようになるといいね」


 菜八が池の中から顔を出すと、敬太は自分で泳ごうと努力した菜八を笑顔で励ましました。この後も、敬太が他の男の子たちにも次々と泳ぎ方を教えています。


「敬太くんのおかげで、恐がらずに池の中で泳げるようになったよ」

「ぼくはまだ泳げないけど、顔に水をつけることができたぞ!」


 泳げる子もいれば、泳げない子もいるけど、いつも心のやさしい敬太が教えてくれるので男の子たちは感謝の気持ちでいっぱいです。


 すると、今度は敬太が大きな池を見ながら何かウズウズしている様子です。


「これから、池の中へ深いところまで潜っていくからね! みんなは、ぼくが戻ってくるまでここで待っていてね!」

「池のほとりで水遊びをしながら待っているからね」「早く戻ってきてね!」


 敬太は何を思い立ったか、池の中へ入るとすぐに水深の深そうな奥のほうへ向かって泳ぎ出しました。好奇心いっぱいの敬太は、池の底はどんなところなのか興味津々です。


「とても深そうな池だけど、素潜りをすれば大きな池の深いところまで行くことができるぞ!」


 敬太は大きな池の奥のほうまで泳ぐと、一旦水面から顔を出しました。そこで深く深呼吸をすると、敬太は素潜りで池の深いところまで向かいました。


「うわ~い! 池の中にも、こんなにいっぱいお魚が泳いでいるぞ!」


 池の中を潜り続ける敬太が目にしたのは、フナやアユ、それにシロウオといった川にも生息するお魚が数多く泳いでいます。しかし、ここにいるのはそれだけではありません。


「ここには小さいメダカもいるし、大きなコイもいるぞ!」


 大きな池には、大小問わず様々なお魚が自由自在に泳ぎ回っています。これだけお魚がいれば、晩ご飯の食べ物探しも困ることはありません。


 敬太は、おせいを喜ばせようと目の前を泳いでいるフナやアユを捕まえようとします。すると、敬太の前に巨大な魚らしきものが現れました。


「ここがおれ様の縄張りであることを知らずに入るとは、おめえも命知らずだなあ」

「命知らずだと? それはどういうことだ!」

「縄張りの中に入ったやつは、たとえ子供であろうとおれ様のエサになるのさ!」


 突如として敬太の前に現れたのは、体長が約7尺(葯2.1m)もある巨大なナマズです。ナマズは、自分の縄張りにいる敬太を今にも飲み込もうと口を開けて待っています。


「ぐはははは! ごちそうが探す手間が省けたことだし、早速おめえを大きな口で丸飲みしようかな」

「うわっ、いきなり何をするんだ!」


 ナマズは、間髪入れずにいきなり敬太に襲いかかりました。目の前にいるごちそうを、ナマズがそのまま逃すつもりはありません。


 しかし、敬太は水中であっても軽い身のこなしで、ナマズの襲撃から逃れることができました。巨大ナマズが相手であっても、敬太は決してひるむことはありません。


「ちっ、うまく逃れたようだな。しかし、おれ様が見つけた獲物は、おめえがどんなに逃げてもしぶとく追いかけ回すぜ、ぐはははは!」

「そんなに言うなら、こっちから行くぞ!」


 ナマズは、一度狙った獲物を逃すまいと敬太を追いかけ続けます。すると、敬太は何を思ったのか、巨大ナマズのほうへ真正面から向かって行きました。


「おめえは本当のバカだな。わざわざおれ様のごちそうとして……」

「ナマズのエサになんかなってたまるか! え~いっ!」


 敬太は、大きな口を開けて待ち構えている巨大ナマズの背びれをつかむと、そのまま背中にまたがりました。これに気づいたナマズは、何としてでも敬太を振り落とそうと水中を縦横無尽に泳ぎまくっています。


「しぶといやつだな! こうなったら、おめえを振り落としてやろうか!」

「うわっ、わわわっ! ナマズめ、いきなり暴れやがって!」

「おりゃあっ! おりゃあっ! おりゃあっ!」


 ナマズは、何度も暴れながら敬太を振り落とそうと試みます。しかし、敬太のほうも両手を離さないように、ナマズの背中に必死に抱きついています。


 敬太は、激しい動きと水中遊泳を繰り返すナマズに負けるわけにはいきません。ナマズの頭のところまで移動すると、敬太はある方法を思いつきました。


「何度やってもおれ様にしがみ続けるとは……」

「巨大ナマズなんかに絶対負けるものか!」


「相変わらず強がりを言っているようだな。だが、これはどうかな? おりゃあっ!」


 巨大ナマズはこの池の王者ということを示そうと、激しく遊泳しながら水面へ向かって行きました。そして、ナマズは水面から顔を出すと、敬太に抱きつかれたままで空中へ大きく飛び上がりました。


 すると、敬太は絶好のタイミングを逃すまいとお腹に力を入れました。それは、いつも大好きな親イモを残さずに食べている証拠でもあります。


「プウッ! プウッ! ププウ~ッ! ププウ~ッ! ププウウウウ~ッ!」

「うっ、く、くさい……。本当にくさい……。こんなにくさいにおいは初めてだ……」


 敬太は、巨大ナマズの頭の上ででっかいおならを5回も続けて出てしまいました。敬太のおならを食らったナマズは、あまりのくさいにおいにそのまま池の中へ落下しました。


 一方、敬太は巨大ナマズから手を離してから空中で1回転すると、水しぶきを上げながら水中へ飛び込みました。そこには、敬太のおならを食らった巨大ナマズが怒りに満ちた表情を見せています。


「おれ様の顔にくさいおならを5連発しやがって……。ただで済むとは思うなよ……」

「それはこっちのセリフだ! ナマズなんかに絶対に負けないぞ!」


 敬太とナマズは、お互いに真正面からにらみ合うと、巨大ナマズは敬太を丸飲みしようと大きな口を開けて襲いかかりました。しかし、敬太もそれに負けじと素早くかわすと、すぐさま巨大ナマズの真横からまたがりました。


「これでどうだ! えいえ~いっ!」

「うぐっ、うぐぐぐっ……。苦しい……。息ができない……」


 敬太は、ナマズの首元を両足で強く絞め始めました。首が強く絞められるにつれて、巨大ナマズは息ができないほどの苦しい表情に陥りました。


「ナマズめ、これで参ったか!」

「許してください……。もう二度と人を襲ったりしないと約束するから、本当に約束するから……」


 巨大ナマズは、敬太の足絞め攻撃にこれ以上耐えられなくなって、ついに降参することになりました。そして、ナマズは今までの行いを素直に反省して敬太に謝りました。


「本当に心から謝っているのなら、今までのことは全部許してあげるよ!」

「こんなことをしたおれ様を本当に許してくれるなんて、うううっ……」


 敬太は、心から反省している巨大ナマズを許してあげることにしました。敬太のやさしさに、ナマズは涙を流しながら感謝の気持ちを伝えました。


「ぼくの名前は敬太だよ! よろしく!」

「敬太という名前か……。今度は、敬太のために必ず恩返しをするからな」


 巨大ナマズは、敬太へ恩返しの約束をして再び池の深いところへ戻って行きました。



「みんな、池の中でこんなにたくさんお魚が取れたよ!」

「わ~い! 敬太くんが戻ってきたよ!」「敬太くん、敬太くん!」


 大きな池の奥から戻ってきた敬太の歓声を聞いて、男の子たちは足をピョンピョン跳ねながら大喜びしています。


「敬太くん、大きな池で何をしていたの?」

「池の深いところまで潜ったり、大きなナマズとお友達になったりしてとても楽しかったよ! それに、これだけお魚があったら、おっかあも喜んでくれるぞ!」


 敬太は、大きな池の奥へ行ったときの思い出をみんなの前で楽しそうに話しました。そして、笹の串に刺したお魚を見せると、男の子たちは晩ご飯でお魚が食べられるとあってうれしそうです。


 すると、敬太くんのお腹から何やら大きな音が聞こえてきました。


「ぐううう~っ、ぐうううううっ~」

「敬太くん、お腹がすいたの?」「お腹の音がグーグー鳴ってるよ」

「でへへ、今日はいっぱい遊んだからお腹からこんなに元気な音が鳴っちゃったよ」


 今日はお相撲をしたり、水遊びをしたりと体をいっぱい動かしたので、みんなにとって楽しみにしている晩ご飯が待ち遠しそうです。敬太たちは、大きな池で取れたお魚をおせいに早く見せようと急いでお寺のほうへ戻って行きました。

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