その10
敬太はおみかや新吉とともに、高い丘にあるおみかの段々畑でサトイモを収穫しています。サトイモ畑を見ると、そこには大きな葉っぱが畑全体に広がっていました。大きな葉っぱが生えているということは、サトイモが大きく育っているサインです。
敬太は木くわを使わないで、両手の力だけでサトイモを掘り出しています。すると、親イモの周りに子イモがくっついたサトイモを掘り出しました。
「おっかあ、見て見て! こんなに大きなイモを掘り出したぞ!」
「サトイモを掘り出すのを敬太くんや新吉くんが手伝ってくれるおかげで、あたしも本当に大助かりしているよ」
敬太は、足をピョンピョン跳ねて喜びながら、自分で掘り出したサトイモをおみかに見せました。おみかは、敬太や新吉がサトイモ掘りを手伝ってくれるおかげで大助かりしているので、2人の姿を見ながら目を細めています。
「おっかあは、お腹に赤ちゃんがいるから、無理をしなくてもいいよ」
「サトイモ掘りは、ぼくたちでするから、おっかあはゆっくり休んでいいよ」
「あたしは、いつもお腹の赤ちゃんに手でさすったりしているからね。でも、赤ちゃんが生まれるまでは、あたしもここへきてがんばるからね」
新吉は、おみかのお腹がかなり大きい姿を見て、お腹の赤ちゃんを大事にしてほしいという思いから無理をしないでほしいと言いました。敬太も、サトイモ掘りは新吉といっしょにするから、ゆっくり休んでいいよとおみかに言いました。でも、おみかは大きなお腹をさすりながら、赤ちゃんが生まれるまでは畑仕事をがんばるからと笑顔で答えました。
「おっかあのためにも、ぼくがこの手でサトイモを掘り出して見せるぞ!」
敬太は、再び両手を使ってサトイモを掘り出そうとしています。しかし、このサトイモは、親イモや子イモがついている球根がかなり深いところにあるので、手で掘り出すのは難しそうです。
「よ~し! こうなったら、ぼくがこの腕力でサトイモを引っこ抜くぞ!」
「敬太くん、1人でやっても大丈夫なの?」
「おっかあ、ぼくはこんなに力があるから、引っこ抜くのはまかせてよ!」
敬太は、かなり深いところにあるサトイモを自分の力で引っこ抜くことにしました。おみかは、敬太が1人で深いところからイモを引っこ抜くのは大丈夫なのか心配です。しかし、敬太は右腕の力こぶをおみかに見せながら、サトイモを引っこ抜くのは自分にまかせてと言いました。
「うんしょ、うんしょ、うんしょ…」
敬太は、両腕だけでなく、腰にも力を入れながらイモを引っこ抜こうとすると、いきなりお尻からあの音が出てしまいました。
「ブウッ! ブウウウウウッ!」
「ふふふ、敬太くんったら、イモ掘りの途中で元気なおならが2回続けて出たね」
「おっかあ、おならを目の前で2連発しちゃったよ」
敬太は、おみかの前ででっかいおならを2回も続けて出てしまいました。でも、おみかはおならをするのは元気な子供である証拠なので、おならが出ちゃった敬太を見ながら笑顔を見せています。
敬太は、サトイモを何とかして引っこ抜こうとするために、腰だけでなくお腹にも力を入れ続けています。そのとき、敬太のお尻が急にムズムズしてきました。
「う、うんちが出そう…。でも、もうちょっとしたら、このサトイモを引っこ抜くことができるし…」
敬太は、急にうんちが出そうになりました。しかし、もう少ししたらサトイモを引っこ抜くことができるので、敬太はうんちをガマンすることにしました。
「うんしょ! う~んしょ! う~んしょ!」
夏の強い日差しが高い丘の段々畑に照り付けていることもあり、敬太は体から汗がいっぱい出ています。それでも、敬太は今にも出そうなうんちをガマンしながら、必死にサトイモを引っこ抜こうとします。
そして、敬太がもうひと踏ん張り腰に力を入れて引っこ抜こうとしたときです。
「ううう~んっ! ううう~んっしょ!」
敬太は、最後の力を振り絞って引っ張ると、畑の中からでっかい親イモが3個も掘り出すことができました。しかも、親イモの周りには子イモや孫イモがいっぱいくっついています。
「おっかあ、新吉くん、ちょっとここを見て見て! ぼくが掘り出したサトイモは、こんなにでっかい親イモが3つも出てきたんだよ!」
「わあっ、敬太くんは1人でこんなに大きいサトイモを掘るなんてすごいね!」
「敬太くん、こんなにでっかい親イモを掘り出したのはあたしも見たことがないわ。親イモの周りには、子イモや孫イモが何十個もついているんだね」
敬太は、掘り出したばかりの大きなサトイモの茎を右手で持ちながら、おみかと新吉を呼びました。新吉は、敬太が1人で大きな親イモを3個も掘り出したことを聞いて、驚いた表情を見せました。
おみかも、でっかい親イモが1つの茎から同時に3個も掘り出したのは自分も見たことがありません。しかも、親イモの周りには子イモや孫イモが何十個もついているので、おみかは改めて敬太の力強さを感じました。敬太は、自分だけの力でこんなに多くのサトイモを掘り出すことができたのです。
そのとき、おみかは敬太の足元に何かあるように見えたので、そこに何があるのかよく見ました。これを見たおみかは、敬太を見ながら微笑んでいます。
「ふふふ、敬太くんは自分の力でこんなにたくさんのサトイモを掘り出すことができたのね。そして、足元には敬太くんらしい元気なのがいっぱい出ちゃったね」
おみかは、敬太が自分の力で掘り出した大量のサトイモを右手で持っている姿を見ています。さらに、おみかは敬太の足元を見て、敬太が元気な男の子であるシンボルと言えるものがありました。これを見たおみかは、敬太がいつも力持ちで元気であることに目を細めています。
「でへへ、実はでっかいサトイモを掘り出す途中で、お尻に力を入れすぎて元気いっぱいのうんちがたくさん出ちゃったよ!」
敬太は、最後の力を振り絞って大量のサトイモを掘り出すときに、自分のお尻に力を入れてしまい、見事にでっかくて元気なうんちを畑の上にしてしまいました。おみかが敬太の足元にあったのは、元気な男の子にぴったりな敬太のでっかいうんちだったのです。
新吉も、敬太のうんちがどんなものか見たくなったので、敬太のいるところへやってきました。
「わあっ、敬太くんの元気なうんちだ! 敬太くん、すごいね!」
「新吉くん、ぼくはいつも親イモを残さないでいっぱい食べるから、こんなにでっかいうんちがいっぱい出たよ! すごいでしょ!」
新吉は、敬太の元気なうんちを見て、とてもうれしそうな表情を見せています。これを聞いた敬太も、大好きな親イモを残さずにいっぱい食べたおかげでうんちがいっぱい出たことを笑顔を見せながら自慢しています。
「敬太くんがサトイモを残さないでちゃんと食べてくれるおかげで、元気いっぱいのうんちもたくさん出るもんね」
「おっかあ、これからもこのサトイモを残さずにお腹いっぱい食べるよ! そして、でっかいうんちが出たら、おっかあにも新吉くんにも見せてあげるよ!」
「敬太くんがいつも明るくて元気なのは、この親イモをいっぱい食べてくれるおかげだから、あたしもうれしいよ」
おみかは、敬太が元気いっぱいのうんちがたくさん出るのは、いつもサトイモを残さないで食べてくれるおかげと笑顔で言いました。敬太も、主食であるサトイモをこれからもお腹いっぱい食べるとともに、でっかいうんちが出たらおみかと新吉に見せてあげると元気な声で言いました。
これを聞いたおみかも、敬太が親イモをいっぱい食べてくれるおかげで、いつも明るくて元気であることにうれしそうな表情を見せました。
「敬太くんのでっかいうんちは、こうして肥やしとして畑を耕せば、また大きな親イモがあるサトイモがまた育つからね」
「この畑で大きなサトイモが早く育つといいね」
おみかは、敬太のでっかいうんちを肥やしにして、畑の土といっしょに木くわで耕しています。敬太はこれを見ながら、大きなサトイモがこの畑で早く育つのが楽しみです。
「敬太くんや新吉くんが手伝ってくれたから、竹かごにこんなにたくさんのサトイモがぎっしりと入ったね」
「これだけサトイモがあれば、晩ご飯はもう心配しなくてもいいね」
おみかは、竹かごの中にぎっしり詰まったサトイモを見て、こんなにたくさんのサトイモを収穫できたのも敬太と新吉が手伝ってくれたおかげと2人を褒めました。こんなにたくさんのサトイモがあれば、おみかの家での晩ご飯は心配しなくてもよさそうです。
「おっかあ、早く晩ご飯に大きな親イモが食べたいなあ」
「ふふふ、敬太くんには今日もでっかい親イモをいっぱい食べさせてあげるからね」
おみかは、敬太が晩ご飯に大好きな親イモを食べたいと言うので、今日もでっかい親イモを食べさせてあげるからと笑顔で言いました。
「でも、敬太くんはサトイモを両手で掘っているから泥んこで汚れているし、お尻もうんちでいっぱい汚れているから、ちゃんときれいにしないとね」
「でへへ、竹かごの中に入っているサトイモを家まで運んだら、すぐに海へ入って汚れたところをちゃんと洗うからね!」
敬太は、サトイモ掘りで両腕を中心に泥んこで汚れている上に、お尻のほうもうんちでいっぱい汚れています。
おみかは、敬太に汚れているところはちゃんときれいにするように言いました。これを聞いた敬太も、サトイモを家へ運んだ後に海に入ってちゃんと洗うからとおみかに言いました。
「それじゃあ、サトイモが入っている竹かごを背負って行くよ!」
「敬太くんは、力持ちで元気いっぱいだから、サトイモがぎっしり入った竹かごだって楽々と背負うことができるんだね」
敬太は、サトイモがぎっしり入った竹かごを背負うと、一足先に家のほうへ向かって歩き始めました。これを見た新吉は、敬太が力持ちで元気いっぱいの男の子であることを改めて再確認することになりました。
「さて、あたしも家のほうへ帰るとするかな」
「おっかあ、大きいお腹を大事そうにしているけど、大丈夫かな?」
「敬太くん、新吉くん、あたしは大丈夫だから気にしなくてもいいよ」
おみかも敬太と新吉に続いて、高いところの段々畑から下りて帰ることにしました。しかし、おみかはお腹の赤ちゃんが気になって、大きく膨らんだお腹をさすることが多くなりました。
敬太は、そんなおみかの様子を見ると、再びおみかのいる段々畑へ戻りました。おみかは、自分の体を心配してくれる敬太や新吉に大丈夫だからとやさしい笑顔で言いました。
「それだったら、ぼくがこの木くわを持って行くよ。敬太くんも重たそうなサトイモを背負っているし、これはぼくが持って帰るね」
「2人が何でも手伝ってくれるおかげで、あたしも畑仕事が楽々とできるようになったよ。どうもありがとうね」
新吉は、おみかを少しでも負担をかけないようにするため、おみかが持っている木くわを自分が家まで持って帰ることにしました。おみかは、敬太と新吉が何でも手伝ってくれるから、畑仕事が楽々とできるようになったことを2人に感謝しました。
こうして、敬太と新吉はおみかといっしょに家へ戻るために、高い丘から傾斜のきつそうな坂道を下りることにしました。おみかは、お腹の中に赤ちゃんを守るために少しずつ歩きながら下りなければなりません。敬太と新吉は、お腹を右手で持ち上げるように歩くおみかを心配そうに見ながら坂道を下りて行きました。
「おっかあ、本当に大丈夫なの?」
「あたしは大丈夫だから、そんなことは心配しなくてもいいのよ」
敬太は、おみかがお腹をずっと押さえているのが気になったので、大丈夫なのか聞いてみました。すると、おみかは笑顔を見せながら、自分の体を心配しなくても大丈夫だよと敬太に言いました。
あまり痛々しい表情をおみかが見せると、敬太や新吉に余計な心配をかけてしまうかもしれません。おみかは、大きいお腹が張ってきたので少し苦しい表情ですが、2人にはできるだけそういう表情は見せないようにしています。
「登美蔵さん、あなたも楽しみにしていた新しい命がもうすぐ生まれるからね」
おみかは、自分の大きなお腹を見ながら、お腹の中に宿っている新しい命がもうすぐ生まれることを天国にいる登美蔵に向かって心の中で言いました。おみかがもうすぐ赤ちゃんが生まれるということは、登美蔵にも伝わっているはずです。
「おっかあ、海に入って汚れた体を全部洗ったよ!」
「敬太くん、汚れていた両腕もお尻もきれいに洗ったね」
敬太は、泥んこで汚れた両腕とうんちで汚れたお尻を洗うために、海に入って体を洗ってきました。そして、敬太はすぐに家へ戻ると、おみかに全部洗った自分の体を見せました。おみかは、赤い腹掛け1枚だけ付けている敬太を見ながら、かなり汚れていた両腕もお尻もきれいになったことに目を細めました。
「そろそろ乾いたところだし、これからお布団を家の中に入れるよ!」
敬太は、家の庭へ出ると、物干しに干していたお布団2枚を家の中へ入れようとするところです。これらのお布団は、今日の朝起きたときに見事にでっかいおねしょをしてしまった敬太と新吉のお布団です。
「あれっ、さっきまで太陽が出ていたのに、いつの間にか急に雲行きが怪しくなってきたなあ。それに、次第に風が強くなってきたぞ」
敬太は、干しているお布団を取り込もうとするときに空を見上げました。すると、今まで雲が少ない青空だったのが、いつの間にかどんよりとした雲に覆われてきました。しかも、風が次第に強くなってきたので、敬太は雨が降る前にお布団を家の中へ急いで入れることにしました。
「おっかあ、お布団を家の中へ…」
「う、ううっ、ううっ…」
敬太は、おねしょが乾いたお布団を2枚とも家の中へ入れたことをおみかに伝えようとしました。ところが、おみかは板の間で横になった状態のままで、苦しそうな顔つきになっています。
「おっかあ、苦しそうな顔をしているけど、どうしたの?」
「お腹の赤ちゃんが生まれそうで、かなり痛そうなの…」
敬太は、おみかのそばへ行くとどうして苦しそうな顔をしているのか聞いて見ました。すると、おみかは陣痛が始まって、自分のお腹の赤ちゃんが生まれそうとかなり痛そうな様子で声を振り絞りながら言いました。
そこへ、井戸で水汲みに行っていた新吉が戻ってきました。
「新吉くん、おっかあの赤ちゃんが生まれそうで苦しい顔をしているの! ちょっとこっちへきて!」
「おっかあ! 大丈夫か! いまから準備をしてあげるからね!」
「敬太くん、新吉くん、心配しなくてもいいよ。少し動くぐらいだったら大丈夫だよ」
新吉は、おみかが新しい命である赤ちゃんが生まれそうと敬太が言ったので、すぐに板の間にいるおみかのところへ行きました。新吉にとっても、出産するために苦しい思いをしているおみかの体のことが心配になったので、土間に水を汲んだ桶を置くと、敬太とともにすぐにおみかのところへやってきました。
おみかは、自分のお腹に新しい命が宿っていることを敬太や新吉はもちろん知っています。だからこそ、敬太と新吉は赤ちゃんが生まれるかもしれないおみかの体のことを心配しているのです。それでも、おみかは心配しなくても大丈夫と2人に言うと、足を伸ばした状態で座ったままで腰を起こしました。
「おっかあ、囲炉裏でお湯を沸かすから、火打ち石で火おこしをしてもいいかな?」
「いいけど、敬太くんは火おこしをしたことがあるの? 台所に火打ち石と火打ち金があるから持ってきてごらん」
敬太は、赤ちゃんがいつ生まれてもすぐに対応できるように、囲炉裏でお湯を自分で沸かそうとするところです。陣痛が始まっているおみかにこれ以上負担をかけるわけにはいきません。
このため、敬太は自分で火打ち石で火おこしをしたいとおみかに言いました。しかし、敬太はこれまで他の人が火おこしをしているところを見たことはありましたが、自分で火おこしをしたことはまだありません。おみかは、台所に置いてある火打ち石と火打ち金を持ってくるように敬太に言うと、敬太はすぐに台所に置いているこれらの道具一式を持ってきました。
「おっかあ、火打ち石と火打ち金を台所から持ってきたけど、これでどうやって火おこしができるの?」
「敬太くん、これだけでは火はつかないよ。サトイモの葉っぱが台所にあるから、それを持ってきてごらん」
火打ち石と火打ち金だけだと、火花は出ても直接火をつけることはできません。火をつけるためには、火口と呼ばれる火のつきやすいものが必要です。敬太はおみかの言う通りに、火口となるサトイモの葉っぱを台所へ再び取りに行きました。
「おっかあ、サトイモの葉っぱを持ってきたけど、これがあれば火がつくの?」
「敬太くん、火打ち石を火打ち金でカチカチさせたら火花となって飛び散るから、葉っぱを火花に近づけば火がつくからね」
敬太が台所からサトイモの葉っぱを持ってくると、おみかは火打ち石で火をおこす方法を敬太に分かりやすく教えました。これを聞いた敬太は、すぐに土間にある薪を囲炉裏の前へいくつか持ってくると、すぐに火打ち石と火打ち金を使って火をおこすところです。
「カチカチッ! カチカチッ! カチカチカチッ!」
「おっかあ! 葉っぱに火がついたから、これからお湯を沸かすからね!」
「敬太くん、自分で初めて火おこしをすることができたんだね。どうもありがとう」
敬太は、右手に火打ち石とサトイモの葉っぱを、左手に火打ち金を持ちました。火打ち石と火打ち金でカチカチさせると、火花が飛んでサトイモの葉っぱに火をつけることができました。敬太は、自分で初めて火おこしをすることができたことをおみかに伝えると、おみかも自分で火おこしを行った敬太に感謝しました。
「敬太くん、鍋の中に水を入れたから早く沸かそう」
「それじゃあ、薪を入れてから火のついた葉っぱを入れるよ」
新吉は、鍋の中に水を入れると、板の間に上がって鍋を自在鉤にかけました。敬太は自在鉤に水の入った鍋をかけたのを見て、すぐに薪を入れてから火のついた葉っぱを入れました。
「うわ~い! 自分で囲炉裏の中に火をつけることができたよ」
「敬太くん、自分で火打ち石で火をつけることができたんだね。今度は自分もできるようになりたいな」
敬太は、囲炉裏の中で燃えている炎で水を温めているのを見ながら、自分で火おこしすることができたのを喜んでいます。新吉も、自分で敬太みたいに火おこしができるようになりたいと思っています。
「敬太くん、もうそろそろ鍋のお湯が熱くなりそうだから、土間から小さいたらいを持ってきたよ!」
新吉は、鍋に入っているお湯からかすかに湯気が立ってきたので、すぐに土間からたらいを持ってきました。敬太は、鍋の中のお湯を小さいたらいの中に入れましたが、これだけではまだ足りません。
「敬太くん、これだけだったらまだ足りないね」
「新吉くん、もう1回お水を沸かすよ」
敬太は、残っている桶の水を再び鍋の中に入れると、再び囲炉裏の自在鉤にかけてから沸かし始めました。囲炉裏の火の勢いを強くするために、敬太は囲炉裏の中に薪をもう2本入れました。
「新吉くん、これから長老さまとばあちゃを呼んでくるよ。長老さまたちに、おっかあの赤ちゃんを生むときの立ち会いをしてもらうんだ」
「敬太くん、外に出ても大丈夫なの? 外は雨がたくさん降っているぞ」
「ぼくは、おっかあのことを思えば、土砂降りの雨であっても平気だよ!」
敬太は、おみかの出産に立ち会うために、これから長老とおたつを呼んでくると言いました。しかし、敬太が引戸を少し開けると、外から激しい雨音が聞こえてきました。
新吉は、大雨なのに外へ出ようとする敬太を引き止めようとします。しかし、敬太は赤ちゃんを生むためにがんばっているおみかのことを思えば、たとえ土砂降りの雨であっても平気と言いました。
すると、土間にいるワンべえが引戸の前にいる敬太のそばへきました。
「敬太くん、ぼくもいっしょについて行くワン!」
「ワンべえくんがいっしょにいれば、雨が降っているときでも心強いよ」
敬太は、いっしょについて行くというワンべえの言葉を聞いて、大雨が降っているときであってもワンべえがいれば心強いと言いました。
「それじゃあ、長老さまの家へ行ってくるよ!」
「敬太くん、雨がいっぱい降っているから早く帰ってね」
敬太は、ワンべえといっしょに外へ出ると、急いで長老の家へ走って行きました。空は鉛色の雲に覆われており、強い雨が容赦なく降り続いています。それでも、敬太たちは長老たちにおみかの出産に立ち会ってほしいという思いから、雨が降っているのを気にすることなく走り続けました。
「長老さま! 長老さま!」
「おや、敬太くんとワンべえじゃないか。どうしたのかな?」
敬太は、長老の家の前で大きな声で呼ぶと、長老が引戸を開けて家から出てきました。長老は、こんなに大雨が降っているときに敬太とワンべえがきたので、どうしてここへきたのか聞きました。
「長老さま、ばあちゃ、すぐにきて! おっかあの大きなお腹から赤ちゃんが生まれるかもしれないの」
「敬太くんが大きな声で呼んだのは、こういうことだったんだね。この前、わしが見回りに行ったときにおみかさんを見たときには、既にお腹が大きかったからなあ」
敬太は、おみかの大きなお腹から赤ちゃんが生まれるかもしれないので、長老とおたつにおみかの出産に立ち会ってほしいと言いました。長老も、敬太が言っている内容をすぐに理解しました。長老は、少し前に村にある家々を見回るときにおみかの家にも寄りましたが、そのときにおみかのお腹はかなり大きかったことを長老は思い出しました。
「それじゃあ、わしらも急いでおみかさんの出産に立ち会うことにしようか。それはさておき、敬太くんは赤い腹掛け1枚以外何もつけないでここまできたのかな?」
「ぼくは、こんなに雨が降っているときであっても平気だよ!」
「はっはっは、敬太くんはどんなときであっても元気いっぱいなんだなあ」
長老はこんなに大雨が降っているのに、敬太が赤い腹掛け1枚だけの格好のままだったので、これでは風邪を引いてしまうのではと心配そうな表情を見せています。
しかし、敬太は雨が降っているときであったも、いつもの腹掛け1枚だけで平気であると元気な声で言いました。これを聞いた長老は、鉛色の雲に覆われている悪い天気であっても、敬太が相変わらず元気いっぱいであることに目を細めました。
「さあ、わしらは蓑を着てから外へ出るとするかな」
「敬太くん、待たせて本当にごめんね」
長老とおたつは、着物の上から蓑を羽織って前で結ぶと、すぐに屋外へ出ました。屋外には、敬太とワンべえが長老たちが出てくるのを待っていました。
「長老さま、ばあちゃ、おっかあも新吉くんも心配しているから早く行こうよ!」
「これこれ、敬太くんがおみかさんのことを心配するのは分かるけど、そんなに焦ることはないぞ」
敬太とワンべえは、家にいるおみかと新吉を心配させたくないので、駆け足で走ろうとします。しかし、長老は敬太が出産を控えるおみかの身体のことを心配していることに理解を示しながらも、そんなに焦ることはないと敬太に諭しました。
敬太は、雨が降り続く中で、ワンべえや長老たちといっしょにおみかの家へ向かって行きました。
「おっかあ、新吉くん、長老たちを連れてきたよ!」
「敬太くん、長老さまとばあちゃを連れてきてくれてありがとう!」
敬太とワンべえは、長老とおたつを連れておみかの家へ戻ってきました。新吉は、長老たちを連れてきた敬太に感謝の言葉を言いました。しかし、強い雨が降っている最中に長老たちを呼びに行ったので、敬太の体は腹掛けも含めてびしょぬれになっています。
「敬太くん、雨で身体がびしょぬれになっているけど、大丈夫?」
「ぼくは、こんなにびしょぬれになっても、いつもこの赤い腹掛け1枚をつけているから大丈夫だよ!」
新吉は、敬太が雨でびしょぬれになっているのを心配して大丈夫なのか聞きました。すると、敬太はいつも腹掛け1枚だけつけていれば、大雨で身体がびしょぬれになっても大丈夫と明るい笑顔で言いました。
長老とおたつは、羽織っていた蓑を土間の壁に吊るすと、板の間にいるおみかのところへ行きました。敬太も、雨でぬれている身体をブルブルと振るってから、土間のところにあるムシロを持ってきました。
「おっかあ、ムシロをここに敷いてもいいかな?」
「敬太くん、どうもありがとうね。ムシロを敷いたら、ここへ移動するからね。あたしは、少し動くぐらいのことだったら大丈夫だよ」
敬太は、板の間の奥にムシロを敷きました。おみかは、お腹の赤ちゃんを大事そうにしながら、敬太が敷いたムシロのところまでゆっくりと移動しました。そして、ムシロを敷いたところへやってきたおみかは、両足を伸ばしたままで座りました。
「さあ、次は天井に力綱をぶらさげるとするかな。縄をぶらさげて力綱にするんじゃ」
「長老さま、ぼくの肩の上に座ってね! 座ったらゆっくりと立ち上がるから」
「力持ちの敬太くんがいるおかげで、わしも本当に大助かりじゃ」
長老は、土間にあった縄を使って、おみかが座っているムシロの真上にある天井から力綱をぶら下げることにしました。でも、長老の身長では天井に縄をぶら下げることはできません。そこで、敬太は自分の肩の上に長老さまを座らせてから、肩車にしてゆっくり立ち上がりながら長老さまを担ぎました。
長老は、敬太が大人である自分を楽々と担ぎ上げたおかげで、天井で縄をぶら下げて力綱にする作業を無事に終わることができました。長老が力綱をぶら下げる作業が終わったら、新吉はすぐに板の間の隅っこにあったおみかのお布団を持ってきました。
「長老さま、板の間の壁に畳んだ布団を立てておいたよ!」
「新吉くん、あたしのためにしてくれたんだね。本当にありがとうね」
「新吉くんも、おみかさんに対するやさしい気遣いがあるからこそ、こういったところにも気が利くんだね」
新吉は、板の間に敷いたムシロの後ろにある壁に畳んだ布団を立てておきました。これは出産に臨む女性が同じ姿勢を続けるのがつらいので、少しでも負担を軽くするためです。
おみかは、自分が同じ姿勢で座っていなければならないことを知って、後ろの壁に畳んだ布団を立てた新吉に感謝の言葉を述べました。長老も、新吉が誰も言われなくても、おみかに対するやさしい気遣いを行っていることに感心しました。
「これで、おみかさんの出産に備えた準備が終わったぞ。あとは、おみかさんの赤ちゃんがいつ生まれるかということだな」
「当分の間、おみかさんはご飯を作ることができないから、その間はわたしがご飯を作ってあげるからね」
おみかの出産に備えた準備を終えると、おたつはすぐに台所へ行きました。おたつが台所へ行ったのは、敬太たちの晩ご飯を作るためです。これから出産に臨むおみかに代わって、しばらくの間はおたつが代わりに晩ご飯を作ります。
「ばあちゃが作ってくれる晩ご飯、楽しみにしているよ!」
「敬太くんと新吉くんには、取れたてのサトイモをいっぱい食べさせてあげるからね」
敬太と新吉は、少し前に長老の家でお泊りをしたことがあります。そのときに、おたつが作ってくれたサトイモの海水ゆでとわかめの味噌汁をおいしく食べたことを知っているので、2人はおたつが作ってくれる晩ご飯を楽しみにしています。
おたつも、敬太と新吉にはいっぱい食べて元気に育ってほしいので、取れたてのサトイモをいっぱい食べさせてあげると笑顔を見せながら言いました。
そのとき、引戸をドンドンと叩く音が聞こえました。敬太は、どうしたんだろうと思って土間へ下りると、すぐに引戸を開けました。引戸を開けると、そこには、ふんどし姿の村人の男性が雨に打たれながら立っていました。その男性は、切羽詰った表情で何か言おうとしています。
「どうしたんですか?」
「た、大変だ! 素潜り漁に行った吉之助がまだ帰ってこないぞ!」
「えっ、吉之助さんがまだ帰ってこないの?」
引戸を開けた敬太は、その男性にどうしたのか尋ねました。すると、男性は吉之助が小舟で巣潜り漁に出たまま帰ってこないと訴えかけるような口調で言いました。敬太も、自分に素潜りを教えてもらった吉之助がまだ戻ってこないことに驚きを隠せませんでした。
すると、おみかのそばにいた長老がすぐに土間へ下りると、敬太と男性が話している家の入り口のところへやってきました。
「吉之助がまだここへ戻っていないって、まさか…」
「長老さま、まさかって…。素潜り漁の名人である吉之助さんが人食いザメに襲われるなんて考えたくないよ!」
「わしだって、そういうことは考えたくないぞ。だけど、いつもならとっくに戻ってくるはずの吉之助が戻ってこないとなると、何か重大なことが起こった可能性が十分にあり得るだろうし…」
長老は、吉之助がまだ戻ってこないということが、もしかしたら最悪の事態になっているかもしれないと言葉を口にしました。しかし、敬太にとって、吉之助は自分に素潜りを教えてもらった恩人でもあります。それ故に、敬太は吉之助が人食いザメに襲われるなんて考えたくないと長老に言いました。
長老は、敬太が吉之助を思う気持ちはよく分かるし、吉之助が人食いザメに襲われたということは自分も考えたくないと言いました。しかし、吉之助がいまだに戻っていないということもまた事実であり、長老は吉之助が漁の途中で何か重大なことが起こった可能性があり得ると言いました。
「長老さま、吉之助が乗った小舟には弟の常助もいっしょに乗っているんだ…。こんなに雨が降っている悪い天気になった上に、波が高くなっているし…」
男性は、左目から涙を流しながら、小舟には吉之助の他にもう1人乗っていることを長老に言いました。吉之助以外に小舟に乗っているのは、吉之助の実弟である常助です。
空は鉛色の雲に覆われて強い雨が降っている上に、強い風が吹き始めました。そして、浜辺には高い波が次々と押し寄せてきます。
「常助くんって、もしかして少し前に海でおぼれていたところをぼくが助けた男の子のことかな?」
「常助の名前をどうして知っているの?」
「ぼくが男の子を助けた後に名前を尋ねたら、常助くんと答えてくれたんだ」
敬太は、少し前に男の子が海でおぼれているところを自分が助けたことを思い出しながら、自分が助けた男の子が常助であることを男性に話しました。
「敬太くんが、海でおぼれている常助くんを助けてあげたのはわしも知っているぞ。敬太くんは助けを求める人がいたら、子供であろうと大人であろうと自分から助けに行くからなあ」
長老は、たまたま浜辺で敬太たちが遊んでいるところに立ち寄っているので、敬太が常助を助けるために急いで海の中を泳いで行ったことを覚えていました。助けを求める人がいたら、敬太は子供も大人も関係なく自分から助けに行くと長老は言いました。
「敬太くん、今から小舟に乗っている吉之助と常助くんを探しに行ってくれないかな。わしにとっても、2人がまだ帰ってこないのがとても心配なんじゃ…。あの海の沖合いには、相変わらず人食いザメが村人たちに襲いかかって命を落とす村人もいるからなあ。その上、今日は大雨で風が強くなってきているし…」
長老は、海の沖合いに出たまま帰ってこない吉之助と常助を探しに行ってほしいと敬太に言いました。敬太としても、本当なら誰から言われなくても吉之助たちを自分から助けに行くところです。
「でも、おっかあのお腹にいる赤ちゃんがいつ生まれるか分からないし、ムシロの上に座ったままで苦しそうな顔つきを見るたびに、ぼくはとても心配しているんだ…」
敬太が板の間のほうへ振り向くと、赤ちゃんを生むために時折苦しそうな顔つきを見せるおみかの姿がありました。敬太は、そんなおみかの姿を見ながら、自分がおみかの出産を見守らないでいいのか、心の中で何度も自問自答しています。
敬太は、誰に対してもやさしい気持ちがあるが故に、目の前で出産に向けてがんばっているおみかを放っておいて助けに行っていいのかという思いがあります。そのとき、おみかは敬太にやさしい言葉をかけてきました。
「敬太くん、あたしのことは新吉くんや長老さまたちが見守ってくれるから心配しなくてもいいよ。だから、早く海に出て助けに行きなさい」
「おっかあ…」
おみかは、自分の赤ちゃんのことだったら心配しなくても大丈夫とやさしい笑顔で言いました。それよりも、海の沖合いに行ったまま帰ってこない吉之助たちを助けに行ってほしいと敬太に言いました。敬太は、おみかが言ったその言葉を聞いてうなづきました。
「サメが襲ってくる危険を伴うところで、勇気を出して助けに行くことができる村人はいないからなあ。そんな中で、人食いザメを撃退したことがある敬太くんだけが、わしらにとって唯一の頼りなんじゃ」
「長老さま、今から小舟で吉之助さんと常助くんを探しに行ってくるよ! 目の前に人食いザメが現れても、ぼくがこの手でやっつけるぞ!」
「吉之助たちがどうなっているかは、わしも分からないことじゃ。だけど、わしは吉之助たちが無事にここへ戻ってくることを信じているんじゃ」
長老は、海の沖合いで襲いかかる人食いザメを撃退した敬太だけが唯一の頼りであると懇願しました。これを聞いた敬太は、小舟で吉之助と常助を探しに行くことを決意するとともに、人食いザメが現れても自らの手でやっつけると元気な声で言いました。
そして、敬太は土間の壁に吊るされているモリを手にしました。このモリは、人食いザメに襲われて命を落とした登美蔵の形見です。
「このモリは、人食いザメに襲われても決して離さなかったおっとうの形見…。これがあれば、天国のおっとうもぼくを見守ってくれるんだ」
敬太は、モリを右手で握ると、このモリが新吉のお父さんであった登美蔵の形見であることを再確認しています。天国へ旅立っていった登美蔵が見守ってくれると考えながら、敬太はこのモリを持ち上げました。
「敬太くん、吉之助や常助くんとともに無事に帰ってくることを願っているぞ。こんな荒れた天気で助けに行くのもなんだが、無茶なことだけはするんじゃないぞ」
長老は、まだ帰ってこない吉之助や常助の2人とともに、敬太も無事に戻ってくることを願っています。そして、長老は雨が降り続いて風も強くなっている悪天候の中で助けに行くことから、敬太には無茶なことだけはするなと忠告しました。
「それじゃあ、吉之助さんと常助くんを見つけに行ってくるからね!」
「敬太くんがいないとさびしいワン…。いっしょに連れて行ってほしいワン!」
敬太は、吉之助と常助を探すために家から出ようとすると、土間にいたワンべえがへばりついてきました。ワンべえは、敬太がいないとさびしいので、いっしょに海に連れて行ってほしいとせがんできました。
「しょうがないなあ。ワンべえくんもいっしょにきてもいいよ。その代わり、小舟に乗って海の沖合いまで行くから、絶対に海の中へ落ちないようにしようね」
「わ~い! 敬太くんといっしょだワン! ペロペロペロッ~」
「もうっ、ワンべえくんったら、ぼくの足をペロペロしなくても…」
ワンべえがへばりつきながら敬太と行きたいと言うので、敬太はワンべえもいっしょに連れて行くことにしました。もちろん、敬太が海へ行くのは遊びに行くわけではありません。あくまで、海の沖合いに行ったまま帰ってこない吉之助と常助の2人を探しに行くのが目的です。
しかし、敬太といっしょに海へ行くのがうれしいワンべえは、敬太の足をペロペロとなめています。さすがの敬太も、ワンべえのなめなめ攻撃にすっかり参っている様子です。
「それじゃあ、みんなの前に吉之助さんと常助くんといっしょに戻ってくるからね!」
「敬太くん、必ずここへ戻ってきてね! ぼくとの約束だよ!」
「新吉くん、ちゃんと約束は守るからね」
敬太は、これから吉之助と常助を探すために海へ出るので、みんなとはしばらくお別れすることになります。そして、敬太は浜辺へ必ず戻ってくるからと新吉と約束すると、2人はお互いに右手で握手しました。敬太と新吉が握手する姿は、2人がまるで兄弟のように信頼関係を持っているからです。
「あたしも元気な赤ちゃんを生むようにがんばるからね。敬太くんが笑顔で戻ってくるのを待っているよ」
「敬太くん、おみかさんはわしらが見守っているからな。敬太くんが無事に戻ってくることを祈っているぞ」
敬太が無事に戻ってくるのを待っているのは、おみかも長老も同じ気持ちです。敬太は、みんなからの励ましを受けながら、ワンべえといっしょに浜辺へ行きました。
「うわあっ、雨がまた強くなったし、強い風が吹いてきたなあ」
外は強い雨が降っている上に、風も次第に強くなってきました。そんな中で、敬太は小舟を自分の力で真上まで持ち上げると、そのまま波打ち際まで持って行きました。しかし、波打ち際には高い波が次々と押し寄せてきます。
「敬太くん、本当に大丈夫なのかワン…」
「大丈夫だよ。ぼくがワンべえくんがを小舟から落ちないようにするからね」
敬太とワンべえは小舟に乗ると、次々と押し寄せる高い波の中を漕ぎ始めました。敬太にとっても、悪天候の中で小舟を漕ぐのは初めてです。しかし、敬太は巧みに小舟を漕ぎながら、高い波を次々と乗り越えて行きました。
こうして、敬太たちは吉之助と常助が無事であることを祈りながら、沖合いに向かって小舟を漕いで行きました。




