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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第5章 敬太くんと人食いザメとの戦い

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その7

 「みんな着いたぞ。ここがわしの家じゃ」

 「うわ~っ! 長老さまの家は、ぼくの家よりも広いなあ」


 浜辺を歩いてきた敬太たちは、長老の家までやってきました。新吉は、長老の家が自分が暮らすおみかの家と比べて広いことに驚いています。


 「あれっ、敬太くんはちょっとそわそわしているけど、どうしたのじゃ?」

 「長老さま、ぼくは今までこんな広い家に住んだことがないから…」

 「ははは、そういうことなら大丈夫じゃ。わしのばあちゃんはとてもやさしいし、子供たちの顔を見るのが何よりも楽しみにしているからのう」


 敬太は、長老の家を見るたびに、何やら落ち着かない様子です。なぜなら、敬太は今までこのような広い家に住んだことがないからです。でも、そんな敬太に長老さまは大丈夫とやさしく語りかけました。


 そして、長老は自分の妻が子供のことが大好きで、子供たちの顔を見るのが何よりも楽しみにしていることを敬太に言いました。


 「じゃあ、これから家の中へ入ろうかな。ばあちゃんには必ずあいさつをしないといけないぞ」

 「長老さま、ちゃんとあいさつをするからね!」


 長老が自分の家に先に入ると、敬太をはじめとする子供たちが次々と家の中へ入りました。長老の家の中は広い間取りとなっており、土間の中に漁具が数多く置いています。


 「こんにちは。みんな、今日はお泊りするためにここへきたんだね」

 「ばあちゃ、こんにちは! ここでお泊りをするからよろしくね!」


 長老の妻は、穏やかな顔つきでお泊りにやってきた子供たちにあいさつをすると、敬太も長老の妻に元気な声であいさつをしました。


 「敬太くんは、あいさつするときも相変わらず元気いっぱいじゃなあ」

 「でへへ、ぼくはいつも元気な声を出してあいさつをするんだよ!」


 敬太のあいさつを聞いた長老は、元気いっぱいのあいさつをする敬太を見ながら目を細めています。敬太も、少し照れながら元気な声でいつもあいさつすることを明るい笑顔で言いました。


 「それじゃあ、わしから子供たちを紹介するからね。まずは、さっき元気な声であいさつした敬太くんからじゃ」

 「ばあちゃ、よろしくお願いします」

 「続いて、新吉くん、さちちゃん、清三郎くん、なつちゃん、そして辰六くんじゃ」

 「ばあちゃ、よろしく!」「よろちくね(よろしくね)!」

 「わたしの名前はおたつというの。こちらこそよろしくね」


 長老は、子供たちを板の間の手前で横一列に並ぶと、1人ずつ自己紹介し始めました。長老が自己紹介すると、子供たちはみんなおたつに元気な声であいさつしました。子供たちのあいさつが終わると、おたつも自分の自己紹介をしてから子供たちへのあいさつをしました。


 「ばあちゃ、板の間に上がってもいいかな?」

 「遠慮しなくても、みんなここに上がってもいいのよ」


 敬太は、おたつに板の間に上がってもいいのか聞いてみました。おたつは子供たちに遠慮しなくてもいいよと言うと、子供たちはすぐに板の間へ上がりました。


 「ふふふ、子供たちはみんな腹掛け1枚だけでいつも元気いっぱいなんだね」

 「ばあちゃ、ぼくはいつもこの赤い腹掛け1枚だけで、朝から夜までずっと過ごしているよ!」

 「ぼくも冬は寒いから上に着物を着ることがあるけど、それ以外はずっとこの腹掛けだけつけているぞ!」


 おたつは、子供たち全員が腹掛け1枚だけの格好を見ながら、いつも元気いっぱいと笑顔を見せながら言いました。敬太も新吉も、腹掛け1枚だけで過ごしていることを元気な声で自慢しました。


 「はっはっは、小さい子供は腹掛け1枚だけの格好とかわいい笑顔がお似合いだからなあ。それに、物干しに干されているでっかいおねしょのお布団も立派なものじゃ」

 「えっ、ぼくたちのおねしょのことも知っているの?」

 「敬太くんと新吉くんがいつもおねしょしているのは、わしもよく知っているぞ。2人のでっかくて元気なおねしょのお布団が物干しに干されているのをよく見るからなあ」


 長老は、腹掛け1枚とかわいい笑顔が小さい子供にお似合いであると言うとともに、物干しに干されているおねしょ布団も立派なものと笑みを浮かべながら言いました。敬太は、長老がどうしておねしょのことを知っているのか少しびっくりしました。どうやら、長老は村の家々を見回るときに、おみかの家の物干しに干されている敬太と新吉のおねしょ布団をよく見るそうです。


 「ふふふ、みんながいつもおねしょすることは長老さまから聞いているわ。子供たちがお布団にでっかいおねしょをしちゃっても、わたしも長老さまも気にしていないよ」

 「家の前の物干しには、子供たち全員のお布団が干せるようになっているから、お布団におねしょしても大丈夫だぞ!」

 「長老さま、ばあちゃ、いつもありがとう!」


 おたつは、子供たちがおねしょしても気にしていないよとやさしい表情でいいました。長老も、子供たち全員のお布団を物干しに干すことができるから、おねしょをしても大丈夫と子供たちに言いました。おたつと長老の言葉を聞いた子供たちは、2人に感謝の言葉を述べました。


 「お布団に元気いっぱいのおねしょをしたら、長老さまとばあちゃに見せるからね!」

 「敬太くんは、いつもでっかいおねしょするのを自慢しているんだね。明日起きたときに、敬太くんのお布団をみるのを楽しみにしているわ」


 敬太は、お布団へのおねしょを長老とおたつに見せることを明るい笑顔で言いました。これを聞いたおたつも、敬太のお布団へのおねしょを見ることを楽しみにしていると言いました。


 「さあ、今日は子供たちがいっぱいいるから、すぐに晩ご飯の準備でもしようかな」


 おたつは、これから晩ご飯の準備に入るところです。いつもと違って、今日は子供たちが6人もいるので忙しくなりそうです。


 「長老さま、これから薪割りをしてもいいかな? お庭に薪がいっぱい積まれているのがあったよ」

 「おおっ、そうじゃな。わしもこの年になったら、薪割りをするのも一苦労じゃからなあ。敬太くんが薪割りをしてくれるのなら大助かりじゃ」


 敬太は、長老に薪割りをしてもいいのかどうか尋ねました。これを聞いた長老も、敬太が庭で薪割りをしてくれたら大助かりと言いました。


 「これは、わしがいつも使っているまさかりじゃ」

 「長老さま、ありがとう! 使った後は元のところへ戻すからね」

 「敬太くん、お庭にある薪はかなりあるけど、大丈夫かな?」

 「大丈夫だよ! ぼくは、薪割りをいつもしているからすぐにできるよ!」


 長老は、敬太に自分のまさかりを貸しました。敬太は、長老にお礼を言うと、すぐに薪が積まれている庭へ出ました。積まれている薪の量はかなりのもので、普通なら大人であってもかなりの時間を要します。


 しかし、敬太は山奥でおじいちゃんやおばあちゃんと暮らしていたときから、薪割りを欠かさずに行ってきました。そのため、目の前に薪がたくさん積まれていても、敬太は全く気にすることはありません。


 「えいっ! えいっ! えいっ! えいっ!」


 敬太は、まさかりを1回振り下ろしただけで簡単に薪を割ることができました。その後も、敬太は薪割りに手慣れた様子で次々と薪を真っ二つに割り続けました。


 「敬太くん、いつの間にか積まれていた薪がほとんど無くなったなあ。わしがやるときは、あれだけ薪が積んでいれば時間がかかっていたのに」

 「長老さま、ぼくはいつも薪割りをして手慣れているから、このくらいだったらすぐにできるよ!」

 「敬太くんのおかげで、わしらも大助かりじゃ。本当にありがとうな」


 長老は、敬太が薪割りをしている様子を見ようと庭へ出ました。すると、敬太の前には薪を真っ二つに割ったのが山積みになっているとともに、後ろにあるはずの薪がほとんど無くなっていることに驚いていました。


 長老が同じくらいの量の薪を割るときには、かなりの時間を要していましたが、敬太はそれをすぐにやってのけたのです。長老は、敬太のおかげで自分たちも大助かりしているので、敬太に感謝の言葉を言いました。


 「敬太くん、薪割りしたのを土間へ運ぶのはわしもいっしょに手伝うぞ」

 「長老さま、どうもありがとう! でも、ぼくは薪割りとか畑仕事とかのお手伝いを当たり前のようにやっているから大丈夫だよ」

 「はっはっは、敬太くんが普段から一生懸命お手伝いをしているのは、わしらにもよく伝わっているぞ。わしも、わしらのためにお手伝いをしている敬太くんに感謝をしなければいけないからね」


 長老は、敬太が薪割りしたのを土間のほうへ持って行くことにしました。敬太が、普段から家で薪割りなどのお手伝いを一生懸命しているのを長老はよく知っています。それ故に、長老は自分たちのためにお手伝いをしている敬太に感謝の気持ちを伝えました。


 すると、2人が話を交わしている最中に、他の子供たちも次々と庭へ出てきました。


 「敬太くん、ぼくたちも運ぶのを手伝うよ」

 「ぼくもやりたい!」「いっしょに運ぼう、運ぼう!」


 新吉は、まさかりで割った薪を運ぶのを手伝うと敬太に言うと、他の子供たちも薪を運ぶのを手伝いたいと敬太の体にへばりつきながら言いました。


 「ははは、小さい子供は敬太くんのことが本当に大好きなんだな」

 「でへへ、ぼくは子供たちのかわいい顔を見るのがいつも楽しみなんだよ」


 長老は、小さい子供が敬太の体にへばりついているのを見ながら目を細めています。敬太は、いつも子供たちのかわいい顔を見るのを楽しみにしているのです。


 まさかりで割った薪は、みんなで協力して土間の方へ持って行きましたので、あっという間に運び終えることができました。これには、晩ご飯の準備をしているおたつもびっくりしています。


 「もしかして、敬太くんが1人だけで薪割りをしたの?」

 「いつも薪割りをしているから、まさかりで次々と簡単に薪を割ることができたよ」

 「あれだけたくさんの薪があったのに、敬太くんのおかげで薪割りがすぐ終わらせることができるなんて、敬太くんは本当にすごい子供なんだね」


 敬太は、いつも薪割りしているおかげで、まさかりで次々と薪を割ることができたと明るい笑顔で言いました。これを聞いたおたつは、敬太のおかげで薪割りがすぐに終わったことで、改めて敬太がすごい子供であることに目を細めていました。


 「さあ、今日はみんなにイモをいっぱい食べさせてあげるわね」

 「うわ~い! でっかい親イモもあるぞ」


 おたつは、サトイモがいっぱい入っている竹かごを台所の隅から出しました。竹かごには親イモも入っているのが見えたので、敬太は思わず足をピョンピョン跳ねながら大喜びしました。


 「親イモは誰も食べないから今まで畑で取らなかったけど、敬太くんが親イモを食べるのが大好きというのを長老さまから聞いたわ。敬太くんには、取れたてのでっかい親イモがあるよ」

 「それじゃあ、すぐに晩ご飯を作ろうよ! ぼくは、割ったばかりの薪を焚き口の中に入れて火おこしをするから」

 「ふふふ、敬太くんはイモをいっぱい食べるのが楽しみなんだね」


 サトイモで食べることができるのは子イモと孫イモであり、大きい親イモは食べないのが普通です。しかし、敬太はサトイモの中でも親イモを食べるのが一番大好きです。そのことを長老から聞いたおたつは、敬太に畑で取れたばかりのでっかい親イモを用意していることを言いました。


 親イモを早く食べたい敬太は、自分で焚き口で火おこしをするから、すぐに晩ご飯を作ろうとおたつに言いました。おたつは、イモをいっぱい食べるのが大好きな敬太の顔を見ながら目を細めています。


 そのとき、新吉が水をいっぱい入れた桶を両手で持ちながら土間まで運んできました。


 「ばあちゃ、海へ行って海水を汲んできたよ!」

 「新吉くんも、お手伝いをしてくれてありがとうね」


 新吉は、波打ち際から海の中へ入ってから、桶の中に海水を汲んでここまで持ってきました。おたつは、自分からお手伝いをしてくれる新吉に感謝しました。


 「他にお手伝いがあったらお願いしてね!」

 「それだったら、ここからだと遠くなるけど、村人たちが使っている井戸へ行って水を汲んできてもらえるかな」


 新吉は、他にお手伝いがあるかおたつに尋ねました。すると、おたつは村人たちが共同で使用している井戸まで行って水を汲んでほしいと新吉にお願いしました。


 「ばあちゃ、水汲み用の桶を持って行ってくるからね!」

 「新吉くん、急がなくても大丈夫だよ」


 新吉は、水汲み用の桶を持って、村人たちが使っている井戸のほうへ向かいました。おたつは、急いで行かなくてもいいよと新吉に言いながら見送りました。


 「ばあちゃ、新吉くんがサトイモを煮るための海水を汲んできたから、すぐに晩ご飯を作ることができるね」

 「新吉くんは、いつも敬太くんがお手伝いをするのを見ているから、自分から積極的にお手伝いをしようという気持ちがあるんだね。これからも、敬太くんと新吉くんがずっと元気で仲良しの子供でいてほしいな」


 新吉が海水を汲んできたのは、晩ご飯で主食であるサトイモを煮るためです。海水で煮ることで、サトイモに塩味がついておいしく食べることができるのです。


 おたつは、お互いに自分からお手伝いをしてくれる敬太と新吉を見て、いつまでも2人が元気で仲良しの子供でいてほしいと願っています。


 「それじゃあ、火おこしをよろしくね!」

 「ばあちゃ、ぼくはいつも火おこしをしているから、まかせてよ!」


 おたつは、土鍋の中に海水を入れると、サトイモを皮をむかずにそのまま入れます。今日は、敬太や新吉をはじめとする子供たちもいっしょに食べます。そのため、土鍋で煮るサトイモもかなりの量になるので、何度も繰り返してサトイモを煮ることになります。


 サトイモを何度も煮ることから、焚き口での火おこしもその分だけ長時間行うことになります。ただでさえ真夏の暑さの中で、火おこしを行うのは大人にとってもかなりつらいものがあります。しかし、敬太はどんなに暑いときであっても、晩ご飯を作るときの火おこしは1日も欠かさずにやっています。


 敬太は、焚き口の中に薪を入れると、おたつは火打ち石で火をおこしてから焚き口の薪に火をつけました。敬太は、薪を入れるとすぐに火吹き竹で吹き始めました。


 「ふーっ、ふうーっ、ふうーっ!」


 敬太は、火吹き竹で吹きながら火を大きくすることで、焚き口に火が行き渡るようにしていきます。その合間に、敬太はまさかりで割った薪を次々と焚き口の中に入れました。


 「体がかなり熱くなったけど、まだまだかんばるぞ! ふーっ、ふーっ、ふうーっ!」


 太陽は西のほうへ傾きましたが、まだ真夏の暑い時期であり、セミの鳴き声が土間の中にも聞こえてきます。そんな中、土間の中はうだるような暑さだけでなく、火が行き渡る焚き口からの熱さが加わって、敬太の体からは大量の汗が出るほどです。


 それでも、敬太は決して弱音を吐くことはしません。敬太は、どんなに暑いときであっても火吹き竹で吹き続けています。


 そうするうちに、土鍋が沸騰してサトイモがゆで上がりました。ゆで上がったサトイモは、海水が入っていた桶の中に杓子を使って入れました。しかし、竹かごの中にはサトイモがまだ残っています。おたつは、土鍋の中に残りのサトイモを入れると、再び煮始めました。敬太は、おたつがサトイモを再び入れたのを見て、再び火吹き竹で焚き口の火を吹き始めました。


 「ふうーっ、ふうーっ、ふうーっ、ふううーっ!」


 敬太は、子供たちにおいしいサトイモを食べさせるためにも、薪を焚き口の中に入れては火吹き竹で火を吹くことを繰り返し行っています。火おこしに手慣れている敬太にとっては、いつも家の手伝いで行っているので、つらいと感じることは全くありません。


 「敬太くん、これでサトイモが全部煮ることができたよ。あとは、新吉くんが水を汲んで帰ったら、敬太くんが採ってきたわかめを使って味噌汁を作るからね」

 「新吉くんも、そろそろ水を汲んで帰ってくるころかな」


 おたつは、今日の晩ご飯で食べるサトイモを全部煮ることができたので、杓子でサトイモを桶の中へ全部移しました。煮たばかりのサトイモは手で持つとまだ熱いので、しばらくの間は桶の中でさますことにします。


 すると、水汲みに井戸まで行ってきた新吉が戻ってきました。


 「ばあちゃ、ただいま! 井戸へ行って水を汲んできたよ!」

 「新吉くんもご苦労さまね」


 新吉は、桶に汲んできた水が入っている桶を台所の前に置くと、おたつも新吉にねぎらいの言葉を言いました。


 「敬太くん、火おこしをずっとやっているんだね。大丈夫かな?」

 「新吉くん、大丈夫だよ! 火おこしは、ぼくがいつも家でやっていることだから平気だよ!」


 新吉が水汲みに行っている間に、敬太は焚き口の前で座りながら火おこしをずっとやっています。暑い中での火おこしとあって、敬太が座っていたところは大量の汗でぬれていました。でも、これは敬太がおいしい晩ご飯を作るおたつのために一生懸命がんばった証拠でもあるのです。


 「ばあちゃ、もう一度火おこしをするから、早く味噌汁を作ろうよ!」

 「敬太くん、こんなに汗をかいているけど大丈夫なの?」

 「ぼくは、こんなに暑い日であっても火おこしをするのは全然平気だよ! ふーっ、ふーっ、ふうーっ!」


 敬太は、おたつに早く味噌汁を作ろうと言いました。おたつは、敬太が汗をいっぱいかいているので少し心配しています。しかし、敬太はいつも赤い腹掛け1枚だけつけているので、いっぱい汗をかいても笑顔を見せながら堂々としています。


 そして、敬太は再び火吹き竹で火を吹くと、再び焚き口の中に火が行き渡りました。これを見たおたつは、食べやすいように切ったわかめと自家製の味噌を入れて、味噌汁を作り始めました。


 しばらくすると、味噌汁がグツグツと煮立ってきたので、敬太は火おこしをするのをやめました。味噌汁が入っている土鍋の中からは、わかめのおいしい香りが台所全体に広がってきました。


 「さあ、平べったい皿と木の器を出して盛り付けるからね。敬太くん、もうちょっとしたら晩ご飯が食べられるよ」

 「ばあちゃ、おいしい晩ご飯を作ってくれてありがとうね! ぐうううううっ~」


 おたつは、木の平べったい皿と木の器を出して、海水で煮たサトイモとわかめの味噌汁を盛り付けるところです。敬太は、みんなのために晩ご飯を作ってくれたおたつに感謝の言葉を述べました。すると、敬太のお腹からでっかい音が鳴りました。


 「ふふふ、敬太くんはお腹の音も元気いっぱいなんだね」

 「でへへ、もうすぐ晩ご飯が食べられると思ったら、お腹からでっかい音が元気よく鳴っちゃったよ!」

 「敬太くんは、火おこしを長い時間手伝ってくれたからね。でっかい親イモを平べったい皿に盛り付けてあげるからね」


 敬太は、もうすぐ晩ご飯が食べることができるとあって、お腹からでっかい音が鳴っちゃったことを照れた表情でおたつに言いました。


 おたつも、火おこしを長時間手伝ってくれた敬太への感謝を込めて、平べったい皿に敬太が大好きなでっかい親イモを盛り付けました。そして、サトイモと味噌汁を子供たちが食べる分を含めて次々と盛りつけていきました。


 おたつと敬太は、2人で協力しながら、海水でゆでたサトイモとわかめの味噌汁を板の間の囲炉裏へ持っていきました。囲炉裏には、長老や新吉をはじめとする子供たちが晩ご飯ができるのを待っていました。


 「わ~い! 晩ご飯だ! 晩ご飯だ!」「今日もイモをいっぱい食べるぞ!」


 囲炉裏の周りに、サトイモとわかめの味噌汁をそれぞれ盛り付けたのを次々と置いていきます。子供たちも、目の前の晩ご飯を早く食べたいところですが、みんなが囲炉裏に集まるまでは決して食べ物に手をつけません。


 そこへ、晩ご飯を囲炉裏まで持ってきた敬太とおたつが板の間へ上がると、すぐにみんなが集まる囲炉裏の周りに座りました。


 「みんな、晩ご飯ができたから、そろそろ食べようかな」

 「ばあちゃがぼくたちのために心をこめて作ったから、残さないで全部食べようね!」


 今日の晩ご飯は、おたつが子供たちのために丹念に作ったものです。敬太は、台所で火おこしの手伝いをしながら、おたつが晩ご飯を作っているのを見ています。


 敬太は、子供たちに晩ご飯を作ってくれたおたつのためにも、残さないで全部食べようと子供たちに言いました。


 「それじゃあ、みんなでいただきます!」


 子供たちは、いつも家出食べるときと同じように「いただきます!」と言ってから食べ始めました。サトイモはこの村の主食とあって、子供たちもサトイモを右手でつかむと、口の中にほおばりながら食べています。


 「このイモ、とってもおいしいよ!」「ばあちゃ、どうもありがとう!」

 「みんながおいしいと言ってくれて、わたしもとってもうれしいわ」


 おたつが作ったサトイモの海水ゆでは、子供たちからおいしいと言ってくれるので、おたつもうれしそうな表情を見せています。


 すると、ワンべえがおたつのそばへやってきて、しっぽを振りながら何か欲しがっているしぐさを見せています。


 「ぼくにもサトイモを食べたいワン!」

 「ワンべえくんの分も忘れていないよ。ワンべえくんにも小さいサトイモだけど、ちゃんと用意してあげるからね」

 「どうもありがとうワン!」


 子供たちがおいしそうにサトイモを食べているのを見たワンべえは、自分もサトイモの海水ゆでを食べたがっています。おたつは、ワンべえに子犬でも食べられるように小さいサトイモを用意しました。ワンべえは、目の前にあるサトイモを見ながら、おたつに感謝の言葉をしっぽを振りながら言いました。


 「敬太くんには、でっかい親イモを3つも盛り付けたから、いっぱい食べてね」

 「ばあちゃ、どうもありがとう!」

 「敬太くん、お礼をいうのはわたしのほうだわ。おいしい晩ご飯ができたのも、敬太くんが一生懸命に薪割りや火おこしをしたおかげだよ」


 敬太の平べったい皿には、サトイモの中でも特にでっかい親イモが3個もあります。でっかい親イモを食べるのが大好きな敬太は、おたつへの感謝の言葉を元気な声で言いました。おたつは、敬太が薪割りや火おこしといったお手伝いを一生懸命にしてくれたおかげと目を細めながら言いました。


 「ばあちゃ、この親イモは取れたてだから、とってもおいしいよ!」

 「敬太くんがうれしそうにいっぱい食べてくれて、わたしもうれしいわ」


 敬太は、目の前にある親イモを右手でつかんで口の中にほおばって入れると、モグモグとおいしそうに食べています。いつもイモを食べるのが大好きな敬太は、大きな親イモをいっぱい食べることができる喜びをおたつに笑顔で伝えました。


 しかし、敬太が親イモを口の中でモグモグと食べているとき、お腹に思わず力が入ってしまいました。


 「ブッ! ブブッ! ブブッ!」

 「ふふふ、敬太くんはでっかいおならが出るのも元気いっぱいなんだね」

 「でへへ、お腹に力が入っちゃって、おならが3回も続けて出ちゃったよ」


 敬太は、晩ご飯の途中で元気なおならを3回も続けて出てしまいました。でも、おならが出るのは元気な子供である証拠です。おたつは、おならが出ちゃった敬太をやさしい口調で声をかけると、敬太は照れた表情で笑顔を見せました。


 「ははは、敬太くんがこれだけのおならが出るのであれば、元気なうんちがいっぱい出るのを楽しみにしているぞ!」

 「でっかいうんちが出たら、長老さまにも見せてあげるよ!」

 「敬太くんのうんちがどんなものか、わしも楽しみだからなあ」


 長老は、でっかいおならが出た敬太を見ながら、次の日には元気なうんちがいっぱい出るのを楽しみにしていると笑顔で言いました。これを聞いた敬太は、でっかいうんちが出たら長老にも見せてあげると明るい表情で言いました。


 こうして、にぎやかな笑い声に囲まれた長老の家で食べる晩ご飯は、子供たちにとっていい思い出となりました。そして、おたつが作ったサトイモの海水ゆでとわかめの味噌汁は、1つも残さずにみんなで全部食べることができました。


 「ばあちゃ、ごちそうさま! でっかい親イモを全部食べることができたよ!」

 「敬太くんは、あんなにでっかい親イモを残さないで食べることができたね。1つも残さずにたべてくれて、わたしもうれしいわ」


 敬太は、おたつに親イモを全部食べることができたと明るい表情で言いました。これを聞いたおたつも、敬太がでっかい親イモを1つも残さないで全部食べてくれたことが何よりもうれしそうです。


 「ばあちゃ、ぼくも残さなかったよ!」「晩ご飯、おいしかったね!」

 「みんなも晩ご飯を残さないで食べてくれたんだね。どうもありがとう」


 他の子供たちも、おたつに晩ご飯を残さないでおいしく食べたことを次々と笑顔で言いました。おいしかったと言う子供たちの笑顔を見て、おたつは子供たちのために晩ご飯を作って本当によかったと満足しています。


 「それじゃあ、今からみんなにスイカを用意するけど、食べることができるかな?」

 「スイカ食べたい! 食べたい!」「スイカ! スイカ!」


 おたつは、晩ご飯を食べ終わった子供たちにスイカを切り分けて持ってきました。子供たちは、おたつが持ってきたスイカを見て大喜びです。


 「さあ、みんなが大好きなスイカを持ってきたから、残さないで食べてね」

 「ばあちゃ、とっても甘くておいしいよ! ぼくはスイカを食べるのも大好きだよ!」


 おたつは、切り分けたスイカをみんなに手渡しました。子供たちは、スイカにかぶりつきながらおいしそうに食べています。敬太も、とっても甘くておいしいスイカを両手で持ってかぶりついて食べています。


 「ふふふ、敬太くんはスイカもよく食べるのね。敬太くんは好き嫌いをしないで何でも食べるのかな?」

 「ぼくは、好き嫌いをしないでどんなものでも何でも食べるよ!」


 おたつは、すいかをおいしそうに食べる敬太を見ながら、好き嫌いしないで何でも食べるのか敬太に聞いてみました。敬太は、おたつに好き嫌いをしないで何でも食べるよと元気な声で答えました。


 「敬太くんがいつも元気いっぱいなのは、好き嫌いしないで何でも食べているおかげなんだね。でも、こんなにスイカを食べたら、お布団にでっかいおねしょをしちゃうよ」

 「ばあちゃ、でっかいおねしょをしちゃったらお布団を見せてあげるからね!」

 「ふふふ、敬太くんのおねしょ布団がどんな形になっているのか楽しみにするね」


 おたつは、敬太がいつもこんなに元気いっぱいであるのも、普段の食事から好き嫌いなく何でも食べるおかげと目を細めています。


 スイカには、水分がたっぷり含まれているので、子供たちにとっては夏の暑いときにピッタリの果物です。しかし、子供が寝る前にスイカを食べすぎるとお布団におねしょをしてしまう原因となります。


 おたつは、敬太が毎日のようにお布団にでっかくて元気なおねしょをするのに、スイカを食べ続けていることに心配しています。


 そんな心配をよそに、敬太はでっかいおねしょをしたらおたつに見せてあげると笑顔で言いました。おたつも、敬太のいつもの元気な声を聞いて安心しました。


 太陽が西に沈むと、長老の家の辺りも少しずつ暗くなってきました。


 「もう暗くなってきたし、そろそろ寝る用意でもしようかなあ。お布団が板の間の隅っこにたたんでいるから、手伝ってくれないかな」

 「長老さま、みんなのお布団を敷くのを手伝うよ! ぼくはいつも自分でお布団を敷いているよ!」

 「ぼくも、敬太くんといっしょにお布団を敷くのを手伝うよ!」

 「敬太くんも、新吉くんも、何でも自分でお手伝いしようという心意気が感じられるなあ。早速だけど、隅っこにあるお布団と掛け布団を板の間に敷いてくださいね」


 長老は、外が次第に暗くなってきたので、寝るためのお布団を敷くのを手伝ってほしいと子供たちに呼びかけました。すると、敬太と新吉が長老の呼びかけにすぐ応じました。敬太も新吉も、普段から自分でお布団を敷くので、他の子供たちのお布団と掛け布団を敷くのは手慣れたものです。


 「長老さま、板の間にお布団を全部敷いたよ!」

 「敬太くん、新吉くん、お布団を敷いてくれてありがとうね。さあ、もう暗くなってきたから、そろそろ寝ようかなあ」


 長老は、板の間にお布団を全部敷いた敬太と新吉に感謝の言葉を言うとともに、子供たちにお布団に入って寝るように促しました。


 「敬太くんと新吉くんは、薪割りや火おこしや水汲みとよく手伝ってくれたからなあ。お布団の中でぐっすりと寝るんだぞ」

 「長老さま、明日もお手伝いしてほしいことがあったらよろしくね!」

 「はっはっは、敬太くんも、新吉くんも、自分から何でも手伝いをしようという意欲がわしから見ても十分に感じられるぞ。わしの手に負えないときにはよろしく頼むぞ!」

 「長老さま、そのときにはぼくにまかせてよ! それでは、おやすみなさい」


 長老は、お布団の中に入ろうとする敬太と新吉を呼び止めると、晩ご飯のお手伝いをしてくれた2人に布団の中でゆっくり休むようにやさしく話しかけました。敬太と新吉の2人を明るい笑顔を見ながら、長老は自分からお手伝いをしようという意欲が強いことに目を細めています。


 敬太は、長老の手に負えないときには自分にまかせてと元気な声で言ってから、そのままお布団の中へ入りました。そして、そのまま夢の中へ入って行きました。


 「それじゃあ、ぼくもお布団の中で寝るからね。長老さま、おやすみなさい!」

 「ふふふ、子供たちが寝るときの顔は本当にかわいいね。それでは、わたしたちも寝ようかな」

 「子供たちは本当に元気いっぱいだぞ。でも、わしらにとっては子供たちがいつも元気でいることが何よりも幸せだからなあ」


 新吉も、長老に寝るときのあいさつをすると、そのままお布団の中に入って眠りに入りました。他の子供たちも、かわいい寝顔を見せながらぐっすりと眠っていきました。


 おたつは、子供たちの寝顔が本当にかわいいねと言うと、長老も子供たちがいつも元気でいることが自分たちにとっても幸せであるとやさしい笑顔で言いました。そして、長老とおたつは、子供たち全員が眠っているのを見ながら、そのままお布団に入って眠りの中に入りました。

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