その5
敬太がおみかの家で暮らし始めてから数日が経過しました。
敬太と新吉は、今日もワンべえや他の子供たちと波打ち際で水遊びをしたり、海の中で泳いだりして遊んでいました。
「それっ、パシャパシャ! パシャパシャパシャッ!」
「あっ、敬太くんったら、よくもやってくれたな! 今度はこっちからお返しだぞ! パシャンパシャン!」
敬太は、無邪気な表情で新吉の体に思い切り海水をパシャパシャとかけました。海水をかけられた新吉は、笑顔を見せながらも、お返しとして敬太に海水をいっぱいかけまくりました。
「わいわ~い! 敬太くんに水をかけまくるぞ! それそれっ!」
「パシャパシャパシャ!」「パシャパシャ! パシャン!」
「でへへ、ぼくもみんなからいっぱい海の水をかけられちゃった」
子供たちは、新吉に海水をかけられた敬太を見て、次々と海水をパシャパシャかけ続けました。敬太は、前だけでなく横からも思い切り海水をかけられてしまったので、ちょっと参った気持ちになりました。
「ぼくも忘れては困るワン! パシャパシャパシャン!」
「ワンべえくんも、水遊びがしたくてウズウズしていたんだね」
敬太は、さらにワンべえからも海水をパシャパシャとかけられてしまいました。それでも、敬太は小さい子供のことが大好きなので、どんなに子供たちやワンべえから海水をかけられてもいつもの明るい笑顔を絶やすことはありません。
「今度は、ぼくがここで泳ぐから、みんなもぼくが泳ぐところをよく見てね!」
敬太は、自分の胸のところまで海の中に入ると、水深の浅いところで泳ぎ始めました。子供たちも、敬太が泳いでいるところを見ながら、自分も泳ぎたいと次々と泳ごうとします。しかし、子供たちはまだ3~6歳児の小さい子供なので、泳ごうとしてもすぐに足をついて水面から上がってしまいます。
そんな中にあって、さちと清三郎の2人は少しでも長く泳げるように敬太にアピールしますが、少し泳いだところで海底に足を付いてしまいました。それでも、小さい子供が少しでも海で泳ぐことができたことに、敬太もうれしそうな表情を見せています。
「さちちゃんも清三郎くんも、上手にに泳げるようになったね!」
「敬太くん、いつもありがとう!」
「もっと泳げるようになったら、敬太くんといっしょに泳ぎたいなあ」
敬太は、少しでも泳ぐことができたさちと清三郎の両手にタッチして褒めました。両手でタッチされたさちと清三郎は足をピョンピョンさせながら喜んでいます。
「あっ、そうだ! あれを練習しないといけないぞ。家の中から持ってこないといけないなあ」
「敬太くん、家から何を持ってくるの?」
「新吉くん、これから海の中に潜ってモリ突きの練習をするんだ」
敬太は何かを思い出すと、すぐにおみかの家へ戻りました。敬太が家へ戻ったのは、登美蔵の形見であるモリを使って、素潜り漁の練習をするためです。
「敬太くん、手にもっているのはなあに?」「見せて、見せて!」
「これは、モリという海の中でお魚を取るための道具だよ。先っぽは危険だから触ったらダメだよ」
敬太が一旦おみかの家へ戻ったのは、土間の壁に吊るしているモリを持ってくるためでした。敬太がモリを持って浜辺へ戻ってくると、子供たちが敬太の周りに集まってきました。子供たちにせがまれた敬太は、家から持ってきたモリについて分かりやすく説明しています。モリの実物を初めて見る子供たちは、敬太の説明を聞きながら目を輝かせていました。
「ぼくはこれから素潜り漁の練習をするから、みんなと遊ぶのはここまでだよ。また明日もみんなで遊ぼうね」
「敬太くん、また明日ね」「明日もいっしょに遊ぼうよ~」
敬太は、子供たちと別れるのはつらいけど、自分としても素潜り漁の練習をしなければならないので仕方がありません。敬太は、子供たちと明日も遊ぶことを約束すると、子供たちも明日もいっしょに遊ぼうと言ってそれぞれ浜辺から家のほうへ戻って行きました。
浜辺の波打ち際に残っているのは、敬太と新吉、それにワンべえの2人と1匹です。
「新吉くん、これから素潜り漁の練習をしよう!」
「う~ん、ぼくは前よりも長く泳げるようになったけど、素潜り漁をするのは…」
敬太は、右手にモリを持ちながら素潜り漁の練習をしようとします。しかし、新吉は以前よりも長い距離を泳げるようになったものの、まだ海中への素潜りは二の足を踏んでいるようです。しかし、新吉が素潜り漁に二の足を踏むのは、それ以上にあの時の出来事が大きな影を落としているのです。
「敬太くんが素潜り漁がしたいのは、ぼくだってよく分かるよ。でも、敬太くんがおっとうみたいにあの人食いザメに襲われて命を落とすところだけは見たくないよ!」
新吉は、敬太と友達以上に兄弟同然の存在だと思っているからこそ、お父さんである登美蔵みたいに人食いザメによって死んでしまうのは見たくないそうです。敬太は、新吉の言葉を聞いて少し沈黙しました。でも、人食いザメを恐がっていては、いつまでたっても素潜り漁の練習はできません。
「新吉くん、ぼくを心配してくれてありがとう。でも、やっぱり素潜り漁の練習をしながら、おっとうの形見であるこのモリを使いこなせるようにがんばるよ!」
「どんなに恐ろしい人食いザメがいても立ち向かっていくところは、敬太くんらしいところだね。それだったら、おっとうの友達が小舟で素潜り漁に出るみたいだよ」
敬太は、新吉が自分のことを心配してくれることに感謝しながらも、モリを使いこなすためにも素潜り漁の練習がしたいと新吉に言いました。そんな敬太の強い気持ちを感じた新吉は、登美蔵の友達が小舟で巣潜り漁に出るという話を聞いていたので、すぐに敬太といっしょにそこへ向かいました。敬太と新吉といっしょにいたワンべえも、2人の後をついて行きました。
「吉之助さん、今から小舟で漁に出るの?」
「おっ、新吉くんか。敬太くんと子犬のワンべえもいるけど、どうしたんだ?」
新吉は、浜辺に置かれている小舟を出そうとしている吉之助を呼びました。その声を聞いた吉之助が振り向くと、新吉とともに敬太とワンべえもいっしょにいるので、どうしたのかと聞きました。
「吉之助さん、今から漁に出て何をするのかな?」
「ははは、これから小舟に乗って素潜り漁をするんだ。おれがしている格好を見たらすぐ分かるだろ」
吉之助は、これから小舟に乗ってから沖合いで素潜り漁をするそうです。よく見ると、吉之助の体は裸の上に濃い青色のふんどしだけつけている格好です。
「あっ、そのふんどしは登美蔵さんがつけていたのと同じ色だね」
「このふんどしは、素潜り漁で一人前になった人だけがつけることができるもので、村の長老さまから贈られたものなんだよ」
素潜りは、一歩間違えば重大な事故につながりかねないことから、できるだけ海中で息を止めながら水深の深いところまで潜れるようにするとともに、適切な海面呼吸を行うなどの厳しい訓練が必要となります。素潜り漁で一人前になるというのは、こうした厳しい訓練を乗り越えた村人である証拠であり、村の長老からその村人へ濃い青色のふんどしを贈られます。
吉之助が今は亡き登美蔵と同じように濃い青色のふんどしをつけているのは、吉之助が素潜り漁で一人前であると認められた証拠です。
「おれは、新吉くんの親父である登美蔵さんから素潜り漁のいろはを教わったことがあるけど、素潜り漁にはとても厳しい人だったんだよ。おれが素潜りの練習をしていたときも、登美蔵さんから何度も厳しく注意されたんだ」
「吉之助さんも、素潜り漁で一人前になるまでには、かなり大変だったんですね」
「なあに、自分だって素潜りがうまくできるようにがんばろうと思ったから、そんなに苦にはならなかったよ。それに、普段の登美蔵さんは、おれを含めて誰に対してもやさしく接してくれたんだよ」
吉之助は、素潜り漁を教えてもらったときの登美蔵はとても厳しかったそうですが、それも吉之助の素質を登美蔵が認めていたからこそなのです。そして、漁を終えた後の登美蔵は、一転して誰にでもやさしい気持ちで接してくれるので、吉之助を含めて村人たちから慕われていたのです。
「ところで、吉之助さんはどうしてぼくの名前を知っているの?」
「ははは、この前の地引き網のとき、長老さまに元気な声で言っていたのは敬太くんじゃないの」
敬太は、吉之助が敬太と初対面なのに、どうして敬太の名前を知っているのか不思議そうな様子です。しかし、吉之助は地引き網のときに、長老に元気な声で言っていたのが敬太であることを既に知っていたのです。
「それに、この村でいつも赤い腹掛け1枚だけつけている子供は敬太くんだけだから、赤い腹掛けの子供を見ただけで敬太くんとすぐに分かるよ。いつもおみかの家の物干しには、敬太くんと新吉くんのでっかいおねしょ布団が並んで干しているね」
「でへへ、ぼくはいつも朝起きたときにでっかくて元気なおねしょをお布団にやっちゃうんだよ。きょうのおねしょもすごいでしょ!」
「おねしょするのは、元気な子供だったら当たり前のことだからね。おれも、小さいときにはお布団と腹掛けによくおねしょをしちゃったものさ」
吉之助は、浜岸村で赤い腹掛けの子供が敬太だけなのですぐに分かるそうです。そして、おみかの家の物干しに干されている敬太と新吉のおねしょ布団のことも知っています。これを聞いた敬太は、照れながらもお布団へのでっかいおねしょのことを自慢しました。吉之助も、敬太に自分の小さいころもよくおねしょをしていたことを笑顔を見せながら話しました。
「それはそうと、どうしてここへきたのかな?」
「ぼくは、このモリを使って素潜り漁ができるようになりたいんだ! 吉之助さん、いっしょにこの小舟に乗ってもいいかな?」
敬太は、登美蔵の形見であるモリを右手で持ちながら、素潜り漁ができるようになりたいと吉之助に言いました。
「敬太くんが持っているモリは、登美蔵さんの形見なんだね。でも、敬太くんはまだ小さい子供なんだから、今から素潜り漁なんかしなくてもいいのに」
「ぼくは、どうしてもおっとうを襲った人食いザメへのかたき討ちをしたいんだ! そのためにも、海の中に飛び込んで素潜りができるようにがんばるよ!」
吉之助は、大人であっても危険と隣り合わせの素潜り漁がしたいという敬太を見て、最初は乗り気ではありませんでした。しかし、敬太は登美蔵の命を奪った人食いザメへのかたき討ちをするためにも、自分の力で素潜りができるようにがんばると吉之助に言いました。
「そうか、敬太くんがそんなに素潜り漁がしたいのなら、おれが連れてってあげるよ。その代わり、素潜りの練習は小さい子供であっても特別扱いしないぞ!」
「吉之助さん、どうもありがとう! どんなにきびしい練習であってもがんばるよ!」
吉之助は、敬太の強い気持ちを感じたので、敬太を自分の小舟に乗せて沖合いまで連れて行くことにしました。吉之助が指導する素潜りの練習は、当然ながら大人が行う練習と全く同じであり、敬太みたいな小さい子供であっても特別扱いしません。それでも、敬太は素潜りの練習をすることができるとあって、足をピョンピョンさせながらうれしそうな表情を見せています。
「この小舟の中に吉之助さんが使うモリが入っているんだね」
「おれは、お魚や貝を素潜りしながらこのモリで突いて取るんだよ。それをしながら、敬太くんの素潜りができているかちゃんと見るからね」
吉之助がこれから乗る小舟には、自分が素潜り漁で使うためのモリを置いています。吉之助は、沖合いでこれを使って素潜り漁をするそうです。同時に、敬太がうまく素潜りができているかのチェックも行います。
「とりあえず、敬太くんはモリを使わないでそのまま素潜りができるかどうかだな」
「じゃあ、今日はモリを使わないで飛び込むことからかな?」
「まあ、そういうことだな。海中での素潜りがきちんとできれば、モリ突きは簡単にできるからね」
今日行うのは、モリを使わないでそのまま海中へ飛び込んで素潜りをする練習です。素潜りをしながらのモリ突きはお預けとなりましたが、敬太は気持ちを入れ替えてこれから素潜りの練習ができることを楽しみにしているようです。
「敬太くんが持っているモリは、ぼくが家へ持って帰るからね」
「新吉くん、ワンべえくん、素潜りの練習が終わったらすぐ帰ってくるようにするよ」
「敬太くん、人食いザメには気をつけるんだぞ」
「敬太くん、無事に帰ってきてほしいワン!」
登美蔵の形見であるモリは、新吉が持って帰ることにしました。敬太は、素潜りの練習が終わったらすぐ帰ると言いましたが、これから向かう沖合いの海では登美蔵が人食いザメに襲われて命を落とした場所でもあります。新吉もワンべえも、敬太が登美蔵みたいに人食いザメに襲われるかもしれないので心配そうな様子で見ています。
しかし、敬太は素潜りの練習で、沖合いに人食いザメが現れることは承知の上です。これだけの強い気持ちがあるからこそ、吉之助は敬太を小舟に乗せて沖合いまでいっしょに連れて行くことにしたのです。
「吉之助さん、この小舟をぼくが波打ち際まで持ち上げて行くよ!」
「おいおい、この小舟はおれでも1人で押すのは大変なのに、小舟を小さい子供が持ち上げるなんて…」
吉之助は、大人1人で小舟を押すのが大変なのに、小さい子供である敬太が小舟を持ち上げると言ったことに驚きを隠せませんでした。しかし、敬太はその小舟を持ち上げるために舟底に両手を入れました。
「うぐぐっ、うぐぐぐっ、うぐぐぐっ! えーいっ!」
敬太は、目の前にある小舟を持ち上げるために、腰に力を入れながら持ち上げようとしています。そして、敬太は思い切り気合を入れると、小舟を敬太の頭上まで持ち上げることができました。敬太が持ち上げた小舟の実際の重さは分かりませんが、推定で約30貫(約112kg)ぐらいの重量があると考えられます。
敬太が浜辺を歩きながら持って行った小舟は、波打ち際のところで下ろしました。これを見た吉之助は、小舟を1人で持ち上げた敬太の凄まじい力に改めて驚きました。
「あの小舟は大人でも押すだけで精一杯なのに、敬太くんは両手で頭上へ持ち上げるほどのすごい力を持っているんだな」
「ぼくは、かなりでかい岩を1人で持ち上げることもできるし、どんなに重いものであっても両腕の力で持ち上げることができるよ!」
吉之助は小舟を持ち上げた敬太を見て驚いていますが、敬太はどんな重いものでも当たり前のように持ち上げることができると言いました。そして、敬太は笑顔を見せながら両腕を曲げると、ぷっくりと膨らんだ力こぶを吉之助に見せました。
吉之助と敬太が小舟に乗ると、吉之助は舟をこぎながら少しずつ沖合いに向かって進んでいきます。
「敬太くんが凄まじい力があることはよく分かったよ。だけど、これから練習する素潜りは一歩間違えば死んでしまうことだってあるんだぞ!」
「吉之助さん、素潜りをするときに大事なことは?」
「素潜りが上手に海中でどれくらい息を止めることができるかということと、海面できちんと呼吸ができることの2つが大事なんだぞ」
吉之助は、素潜りをするときに一歩間違えば重大な死亡事故につながることがあると敬太にあえて厳しい言葉で言いました。
2人が乗っている小舟は、海の沖合いまでやってきました。ここまでくると、浜辺は小さく見える程度となり、村の家々も豆つぶ程度の大きさにしか見えません。
「よ~し! おれはこれからこのモリを使って素潜り漁をするから、どうやってやるのかちゃんと見ろよな!」
「ぼくも、吉之助さんみたいに素潜りができるようにするためにちゃんと見るからね」
吉之助は、右手に自分専用のモリを持って立ち上がると、スカリという網袋を腰に巻きつけました。スカリは、モリで突いたお魚や貝などを入れるものです。
吉之助は、素潜り漁をどうやって行うのかちゃんと見るようにと敬太に言いました。敬太も、素潜りを自分の力でできるようになりたいので、吉之助がどうやって素潜りをするのかよく見ることにしました。
「行くぞ! そりゃあ!」
「うわっ、吉之助さんの姿が小さくなったぞ!」
吉之助は、小舟から直接海の中に飛び込むと、あっという間にその姿が小さくなっていきました。敬太は、吉之助の姿が小さくなっていくのを見ながらびっくりしていました。そうしている間に、吉之助は呼吸をするために再び海面へ現れました。吉之助のスカリの中には、早くもヒラメとカレイが1匹ずつ入っています。
「吉之助さんの素潜りはとても上手ですごいね!」
「次は、敬太くんが海の中へ飛び込んでごらん。素潜りがちゃんとできているか、おれが見てやるから」
「吉之助さん、今から海の中に飛び込むからよく見てね!」
吉之助が海中で素潜りを上手に行ったのを見て、敬太も素潜りをするときに、海中で息を止めても大丈夫なように深く深呼吸しました。そして、敬太は海の中へ思い切って飛び込んで行きました。
「うわあっ、海の中にはいっぱいお魚がいるんだなあ」
敬太は、海中の水深の深いところまで潜って行くと、メバルやヒラメ、カレイといった様々なお魚が泳いでいます。海底には、お魚以外にもいろんな貝が岩の間にちらほらとあります。
「でっかい貝があるぞ! これなら、ぼくの手で十分取ることができるぞ!」
敬太は、岩の間にある大きな貝を見つけると、急いでその貝を右手でつかみました。大きな貝をつかんだ敬太は、すぐに海面に向かって浮上しました。
「吉之助さん、ぼくの素潜りはどうだった?」
「敬太くんの素潜りは、初めてとは思えないほど上手に海底まで潜って行ったなあ。おれが素潜りしていた時間よりも長く潜っていたようだし。ところで、右手に持っているのは?」
「ぼくは、素潜りしたときに岩の間にあった大きな貝を取ってきたよ!」
「おおっ、敬太くんは素潜りをしながら大きなサザエも取ってきたのか! この調子なら、おれよりも素潜りが上手になるかもしれないなあ」
敬太は、大きく呼吸をするために海面に現れると、素潜り漁をしていた吉之助が一旦小舟に戻っていました。吉之助は、敬太が素潜りしているのと同時に自分も水深の深いところまで潜って行きましたが、素潜り初体験の敬太がずっと息を止めながらもぐり続けていることに驚いていたようです。そのうち、吉之助はこれ以上息を止めることができなくなったので、すぐに海面まで浮上して行きました。
江戸時代初期においては、現在のような潜水時間の測定方法は存在しませんでしたが、敬太の潜水時間は吉之助の潜水時間よりも長かったことは確実です。そして、敬太は明るい笑顔で、右手に持っている大きなサザエを吉之助に見せています。
「敬太くんは、素潜り漁がしたかったから、大きな貝を取ってきたんだね。この貝は、敬太くんが家へ持って帰って食べるといいよ」
「うわ~い! これから素潜りしながら大きな貝を取っていくぞ!」
「こりゃ、おれも負けていられないな」
敬太は、自分が取ってきた大きなサザエを家へ持って帰ってもいいよと吉之助が言ってくれたので大喜びです。そして、敬太は大きな貝を探すために再び海底に潜りました。吉之助も、敬太が自分よりも潜水時間が長いことを見せ付けられたので、自分も敬太には負けられないという思いから、再び海中へ飛び込みました。
「吉之助さん、見て見て! ここまで潜れるようになったよ!」
「ははは、敬太くんはおれが教えなくても、すぐに素潜りが上手にできるんだなあ。だったら、おれがモリ突きで長中を取っている間に、敬太くんは海底にある貝を取ってみたらどうかな」
「うわ~い! 海底にある岩を見つけながら大きな貝を取って行くぞ!」
素潜りすることにすっかり慣れた敬太は、海底にある岩を探しては大きなサザエやヤドカリを右手を使って取っていきます。一方、吉之助のほうも、海の中を泳いでいるメバルやカレイといったお魚や大きな貝を次々とモリを突いて取っていきました。こうして、2人はお魚を取るために海中へ潜ったり、呼吸するために海面へ浮上したりを繰り返していきました。
「今日は、こんなにたくさんのお魚や大きな貝が取れたなあ。それと、敬太くんはおれが教えなくても、すぐに素潜りができたのにはびっくりしたよ」
「でも、これでぼくが素潜りができることが分かったし、最後は2人でいっしょに素潜り漁ができるまでになったね」
素潜り漁を終えた敬太と吉之助は、海面からすぐに沖合いの小舟に戻りました。吉之助の腰に付けているスカリの中には、たくさんのお魚や大きな貝が入っているので、敬太はとてもうれしそうな表情を見せています。
吉之助は、自分が教えなくても敬太がすぐに素潜りできたことに改めてびっくりしました。しかし、敬太は吉之助と2人でいっしょに素潜り漁をするなど、素潜りに慣れたことでますますモリ突きでの素潜り漁がしたくてウズウズしています。
「まあ、敬太がモリ突きをしたいのは分かるけど、もうそろそろ帰らないと家の人が心配しているぞ」
「それじゃあ、今度はモリを持ってきて、素潜りでいっしょにモリ突きをしようよ!」
「分かった、分かったよ! 敬太くんの元気な笑顔には、おれもすっかり参ったなあ」
吉之助は、敬太がモリを使って素潜り漁をしたがっていることを知っていますが、そろそろ帰らないとおみつや新吉が心配していることを敬太に伝えました。
これを聞いた敬太は、吉之助に今度はいっしょに素潜りしながらモリ突きをしようと笑顔を見せながら言いました。吉之助は、いつも元気いっぱいの敬太の笑顔にすっかりと参った様子です。
「じゃあ、そろそろ波打ち際まで戻ることに…」
「あれっ、吉之助さん、どうしたのかな?」
「しーっ! 敬太くん、大きな声を出さないの!」
吉之助が、浜辺の波打ち際まで戻ろうと小舟を漕ごうとします。しかし、後ろを振り返った瞬間、吉之助は何やら恐ろしいものを見たのか急に表情が硬くなりました。
硬い表情になっている吉之助を見た敬太は、どうしたのかなと吉之助に言いました。すると、吉之助は敬太に大きな声を出さずに静かにするように小声で促しました。敬太は、急に小声で言い始めた吉之助の姿を不思議そうな目で見ました。
吉之助は、血相を変えながら小舟を急いで漕ぎ出したので、敬太も吉之助に合わせて漕いでいます。しかし、敬太は吉之助があわてて小舟を漕い出したことが気になりました。
「どうしてあわてているの?」
「敬太くん、この小舟を急いで漕ぐぞ! あの人食いザメの背びれがはっきりと見えたんだ!」
さっき、吉之助が後ろに振り返ったときに見た恐ろしいものというのは、人食いザメの背びれだったのです。吉之助は、人食いザメに襲われて命を落とした登美蔵の遺体を見たときのことが何度も頭によぎりました。
吉之助と敬太は小舟を漕ぎ続けていますが、次第にサメの背びれが大きく見えるようになりました。それは、小舟と比べて人食いザメの速度がかなり速いということを意味します。サメは普段ゆったりと泳いでいますが、近くに獲物がいると分かれば、瞬間的にかなりのスピードで泳ぐことがあります。その運動能力から、サメは時速20~25km程度の速さで高速遊泳することができます。
「うわあっ、人食いザメが小舟の真後ろにきたあっ!」
「吉之助さん、ぼくがサメの弱点がどこにあるのか分かったよ!」
人食いザメは、ついに敬太と吉之助が乗っている小舟の真後ろまで迫ってきました。サメの背びれを見た吉之助は、自分も登美蔵みたいに人食いザメに食われてしまうのかと背筋が凍る面持ちになっています。そんな中、敬太は村人たちが恐れている人食いザメの弱点がどこなのかを見つけたようです。
敬太は、ワンべえといっしょに山道を歩いていたときのことを思い出しました。
山道を歩いている途中で、ワンべえが突然立ち止まると、いきなり山道の地面を自分の鼻でにおいを嗅ぎ取っていきました。そのにおいを嗅ぎ取ると、ワンべえは近くに野犬の集団がいる気配を感じたので、野犬が近くにいることを身震いするしぐさを見せながら敬太に伝えました。ワンべえに限らず、犬の鼻の嗅覚は人間の1万倍以上ですが、それは獲物を遠くから狙ったり、外敵の存在を遠くから察知するために必要不可欠なものとして身についています。
「人食いザメも、獲物のにおいを遠いところからでもたどってくることができるけど、もしかしたら鼻面に一撃を食らわせば…」
敬太は、犬と同じようにサメも遠方の獲物を狙うために鋭い嗅覚を持っているのではと考えています。それならば、逆に鋭い嗅覚の元となる鼻に強い攻撃を加えたら、サメが逃げるかもしれないとひらめきました。
しかし、人食いザメには、鋭い歯を見せながら大きな口を開けて、獲物をすばやくかみついてきます。サメの鼻は、その大きな口のすぐ上の部分にあります。サメの弱点が鼻である場合であっても、正面からの攻撃だと自らの命が危険にさらされる可能性が大きくなります。だからといって、敬太といっしょに小舟に乗っている吉之助を危険にさらすわけにもいきません。
「吉之助さん、ぼくがこの拳と蹴りでサメをやっつけてみせるよ!」
「おいおい! 敬太くん、それは無茶だぞ! そんなことをしたら、登美蔵さんの二の舞になるぞ!」
「そんなこと言っても、戦ってみなきゃ分からないよ!」
敬太は、吉之助に自らの拳と蹴りでサメをやっつけると元気な声で言いました。吉之助は、敬太の行動が人食いザメに刺激を与えかねないので、敬太にサメと戦うことをやめさせようとします。しかし、敬太は一度決めたことをやめようとはしません。
「そりゃあっ、サメさん、ここまでおいで!」
「ふはははは、おめえみたいなちびっ子が我々に食べられるとも知らずに、海に飛び込むという無謀なことをするとはなあ。我々にとって、こんなちびっ子はかみ応えのある獲物として好都合だなあ、ふはははは!」
敬太は、吉之助の静止を振り切って、小舟から空中に向かって思い切りジャンプしました。すると、人食いザメが海面から突如として現れると、敬太をかみ殺そうと鋭い歯をむき出しにしなが飛び上がりました。しかし、敬太は間一髪で人食いザメの顔を飛び越えることができました。
「よ~し! ちょうどいいところにサメの背びれがあったぞ!」
「うわっ、わしの背びれにしがみつきやがって!」
敬太は、サメの顔を飛び越えると、そのまま海の中に両足から飛び込みました。そこには、人食いザメの背びれがたまたま敬太の真下にあったので、敬太はその背びれにしがみつきました。
「おめえが背びれから離さないのなら、わしが振り落としてやるわ!」
「ぼくは、山奥で大きなクマと戦って勝ったことがあるんだぞ! たとえ人食いザメであっても、ぼくは絶対に負けないぞ! えいっ! えいっ! えいえいえ~いっ!」
敬太が背びれにしがみついていることに気づいた人食いザメは、速いスピードで海中を遊泳しながら敬太を振り落とそうとします。しかし、大きなツキノワグマに勝ったことがある敬太は、大きな人食いザメの背中に何回も強い拳で殴り続けました。
「グエッ! グエッグエエッ!」
「うんしょ、うんしょっと、よ~し! 今度はサメの頭のほうへ近づくぞ!」
人食いザメは、敬太の強い拳を受けて痛そうな表情をしています。敬太は、今のうちにサメの背びれを使って反転させながら、自分の体をサメの正面と同じ方向に向くようにしました。そして、敬太は自分のお尻をサメの背中に座りながら、サメの頭のところまで両手と両足を使いながら前へ進みました。
「おまえが攻撃しないなら、こんどは小舟に入る人間を襲ってやるぜ! まあ、大人であっても人間だったらかみごたえがあるからな、ふはははは!」
「人食いザメめ、村人たちを襲うことは絶対許さないぞ! えいえいえ~いっ!」
サメは、目の前に小舟を再び発見すると、小舟に乗っている吉之助を襲おうと再び海面から顔を出しました。しかし、敬太はサメが海面から顔を出したのを見計らって、サメの頭を両手の拳で強く殴り続けました。
「グエグエッ、グエッ、グエエッ!」
「よくも、よくも村人の命を奪いやがって!」
サメは、敬太の強い拳によるパンチが何発も頭部に食らったので、痛くて痛くてたまりません。それでも、敬太はまだまだ攻撃を緩めることはありません。村人たちが何人も人食いザメの犠牲になったことを考えれば、敬太は人食いザメを許すことができません。
「えいえいっ! えいえいっ! えいっえいっ! えいえいえいえ~いっ!」
「グエグエッ! グエグエッ! グエッグエッ!」
敬太は、怒りを込めた両手の拳でサメの頭を何度も叩きつけるように殴りました。サメは、敬太が繰り出す強い拳が次々と頭部に命中したこともあって、今まで以上の強い痛みが体全体に響き渡りました。
「わわっ、このままじゃサメの背中から落ちちゃうぞ!」
人食いサメは、海面から出たり潜ったりしながら、激しい痛みに耐えかねてもがき苦しんでいます。そして、サメがもがき苦しみながら暴れていることから、敬太はサメの頭部を離さないように持ち続けています。
「うわっ、うわわっ…」
敬太は、人食いザメの頭を必死に離さないようにお腹に力を入れています。しかし、人食いザメが海面から再び顔を大きく出したその時のことです。
「ブブウウウッ! ブウウウウウッ!」
敬太は、人食いザメの頭上で元気いっぱいのおならを2連発しました。敬太のおならの音は、小舟にいる吉之助の耳にも聞こえるほどの大きな音です。
敬太はでっかいおならが出た勢いで、サメの頭から手が離れて海の中にそのままドボンッと飛び込みました。海中に飛び込んだ敬太は、海面から顔を出すと吉之助が乗っている小舟が目の前にあったので、すぐにその小舟に上がりました。
「うわっ、おめえのおならは本当にくさいぞ! ゲホゲホッ! ゲホゲホッ!」
「でっかいサトイモを毎日食べているから、ぼくはいつもこんなにでっかいおならが出ることができるぞ!」
人食いザメは、海面から顔を大きく出したときに、敬太のお尻からのでっかいおならが2回も続けて命中しました。敬太のおならが顔面に命中したサメにとっては、おならのにおいがとてもくさくてたまりません。
敬太は、おならが命中してもだえる人食いザメを見ながら、赤い腹掛け1枚だけの格好で堂々と仁王立ちしています。そして、敬太は元気な声で元気いっぱいのおならが何度も出るのは、大好きなサトイモをいつも食べているおかげと言いました。
「わしの頭や背中に何度も殴ったうえに、でっかいおならまでしやがって! 今度会ったときには生きて帰れるとは思うなよ。仲間も連れて、おめえをこの鋭い歯で丸ごと骨までかみ砕いてやるからな!」
敬太から大きな屈辱を味わった人食いザメは、恨みつらみを敬太に吐き捨てるように言いながら海中へ潜ると、そのまま沖の方へ去っていきました。
吉之助は、敬太が全くの無傷で無事に戻ってきたことに、思わず涙を流しました。
「敬太くんが無事に帰ってきてくれて、おれも本当にうれしいよ。今まで、真正面から人食いザメに出くわした村人で生きて帰ったのは1人もいなかったからなあ」
人食いザメが海の沖合いに現れてから、サメに出くわした村人たちで生き残った人はいませんでした。そんな中で、吉之助はまだ7歳児の小さい男の子である敬太が無事に帰ってきたことにうれしさを隠せませんでした。
「吉之助さん、人食いザメが目の前にいても、ぼくは全然平気だったよ!」
「でも、次も同じようにサメと真正面から立ち向かっても、無事に帰ってくるとは限らないぞ」
敬太は、人食いザメと戦ったときの様子を話しながら、目の前にサメがいても平気だったことを吉之助に言いました。これを聞いた吉之助は、今度も同じように生きて帰れるとは限らないと敬太に釘を刺しました。
「人食いザメが何匹きたって、ぼくはこの拳があれば恐くないよ!」
「おいおい、敬太くんは本当に人食いザメが恐くないのか! まあ、敬太くんがいつも元気なのは、やっぱりこの力こぶがあるおかげなんだなあ」
敬太は自分の両手を握り拳にすると、両腕を曲げながら力こぶを吉之助に見せました。そして、敬太は人食いザメが何匹もきても全然恐くないと明るい声で言いました。
恐ろしい人食いザメであっても平気であると言い切った敬太の姿を見て、吉之助はびっくりした表情を見せました。しかし、敬太が堂々と立って力こぶを見せる姿は、敬太がいつも元気いっぱいである証拠でもあるので、吉之助は笑顔を見せながら見守っています。
敬太は、吉之助といっしょに小舟で浜辺へ戻ると、すぐにおみかの家へ戻りました。家の前では、おみかと新吉が敬太の帰りを待っています。
「おっかあ、新吉くん、ただいま! 海の中へ飛び込んで、深いところまで素潜りをすることができたよ!」
敬太は、おみかと新吉にあいさつをしてから、自分で素潜りをすることができたことを元気な笑顔で言いました。
「敬太くん、自分で素潜りをすることができたのね。敬太くんなら、登美蔵さんの形見であるモリを使ってお魚や大きな貝を突いて取ることができるんじゃないかな?」
「じゃあ、おっとうのモリを使って素潜り漁をしてもいいの?」
「敬太くんは、素潜りすることにもう慣れているから、モリを使って素潜り漁をしてもいいわよ」
「わいわ~い! 海の中での素潜り漁でモリ突きができるぞ!」
おみかは、自分で素潜りができた敬太の姿を見ながら、登美蔵の形見であるモリを使って素潜り漁をすることも可能じゃないかなと敬太に言いました。
敬太は、うれしそうな表情でおみかにモリ突きでの素潜り漁をしてもいいのかを聞いてみると、おみかは素潜りが完全にできるようになった敬太にモリ突きを行うことを許してくれました。これを聞いた敬太は、足をピョンピョンさせながら、自分で素潜り漁ができることを喜んでいます。
「敬太くんは、ずっとおっとうの形見であるモリを使いたかったんだね。ぼくも、敬太くんみたいに素潜りができるようにがんばるよ!」
「今度は、ぼくが新吉くんの素潜りができるように応援するよ!」
新吉は、素潜り漁ができることに喜んでいる敬太を見ながら、自分も敬太みたいに素潜りができるようにがんばると敬太に言いました。敬太も、新吉が素潜りができるように応援すると笑顔で言いました。
敬太たち3人がにぎやかに話していると、吉之助が濃い青色のふんどし姿でおみかの家へやってきました。
「吉之助さん、ぼくの素潜りはどうだった?」
「敬太くんは、おれが何も教えなくても、自分から水深の深いところまで潜ることができるから心配することは無いよ」
敬太は、自分の素潜りについての感想を吉之助に求めると、吉之助は敬太自身が自分の力で水深の深いところまで素潜りすることが可能である点を評価するとともに、敬太にはもう何も教えなくても自分から素潜りができると絶賛しました。
そして、吉之助は小舟の目の前に現れた恐ろしい人食いザメのことを話し始めました。
「それはそうと、今日は敬太くんのおかげで本当に助かったよ。目の前にいる人食いザメを敬太くん1人でやっつけたんだからな」
「えっ、敬太くんが人食いザメをやっつけたって本当なの?」
「おれが言ったって信じてくれないかもしれないけど、あれだけ村人たちが恐れている人食いザメを敬太くんが1人で立ち向かって行ったんだぞ」
吉之助は、小舟の目の前に現れた人食いザメを敬太が1人でやっつけたことを言うと、おみかも新吉も本当なのかと驚きを隠せない様子です。それでも、村人たちが恐れる人食いザメを敬太が堂々と立ち向かって行ったのは確かです。
「ぼくは、目の前にいる人食いザメの背びれをつかむと、サメの背中や頭部にこの握り拳で何回も食らわせたぞ!」
「敬太くん、本当に恐くなかったのかな?」
「人食いザメであっても、ツキノワグマであっても、ぼくは全然恐くないぞ!」
敬太は、人食いザメに握り拳で強烈なパンチを背中や頭部に何度も食らわせたことを新吉やおみかに言いました。新吉は、敬太に本当に人食いザメは恐くなかったのかなと言いましたが、敬太にとっては目の前にいるのが人食いザメであっても、ツキノワグマであっても全然恐くないと明るい笑顔で答えました。
「そうだ、きょうはでっかい親イモをいっぱい持ってきたぞ!」
「吉之助さん、親イモは食べないの?」
「親イモは普通食べないものだぞ。でも、敬太くんが親イモを食べるのが大好きだということを聞いたからね。人食いザメに襲われそうになったところを敬太くんが助けてくれたことだし、いままで段々畑でとれた親イモをいくつかと持ってきたぞ!」
吉之助は、背中に背負っている竹かごを地面に下ろしました。その竹かごには、敬太の大好きなサトイモの親イモが何個もあります。吉之助は、人食いザメをやっつけて撃退してくれた敬太へのお礼として、段々畑で収穫された親イモを持ってきてくれたのです。
「うわ~い! うわ~い! 吉之助さん、親イモを持ってきてくれて本当に…」
敬太は、吉之助が持ってきた大好きな親イモを見て、足をピョンピョン飛び跳ねながら大喜びしています。しかし、敬太が大喜びしているそのときのことです。
「プウウウウウッ! プウッ! プウウウッ!」
「敬太くん、元気なおならがいっぱい出ちゃったね」
「でへへ、でっかいおならを3連発しちゃったよ」
敬太は、でっかい音をしながら元気なおならを3連発してしまいました。でも、おならは敬太が元気な男の子である証拠なので、敬太は照れながらも元気な笑顔でおならが出ちゃったことを言いました。
「敬太くんは、おならも元気いっぱいなんだね。人食いザメと戦ったときも、とどめは敬太くんのでっかいおならを2回もサメの顔面に命中させたからね」
「人食いザメの頭部から落ちないようにお腹に力を入れたら、つい力を入れすぎて元気なおならが2回も出てしまったよ!」
吉之助は、敬太が人食いザメと戦ったときのとどめに、元気なおならをサメの顔面に2回も命中させたことを言いました。これを聞いた敬太は、お腹に力を入れすぎて元気なおならが出てしまったことを言いました。
「敬太くんのでっかいおならは、人食いザメにもみごとに命中させたんだね! ぼくも、イモをいっぱい食べておならがいっぱい出るようにがんばるよ」
新吉は、敬太が人食いザメにでっかいおならを命中させたことを喜ぶとともに、自分も敬太みたいにイモを食べておならがいっぱい出るようにがんばると言いました。




