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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第3章 敬太くんと山ごもりの少年
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その1

 敬太が歩いている山道は、山林で覆われている上に険しいところです。しかし、敬太はそんなことにはめげずに、いつも通り明るい笑顔を見せながら歩いています。


 険しい山道が続いた山林も、ようやく抜け出るところまでやってきました。敬太が一旦立ち止まると、山林の木々の間から見慣れたような風景が広がっています。


 そこには、辺り一面が田んぼや畑が広がっており、その周りに農家がいくつか点在しています。これを見た敬太は、山林から抜け出そうと急ぎ足で走り出しました。


 山林から抜け出た敬太は、近くにあるお地蔵さんのところへ行きました。


 「どうか、ぼくのおっとうとおっかあが見つかりますように……」


 敬太は、一日でも早くお父さんとお母さんが見つかるようにお地蔵さんにお祈りしています。すると、近くから子供の泣き声が聞こえてきました。


 「うわあああ~ん、うわああああ~ん」


 敬太が泣き声が聞こえる方向へ行くと、そこには似たような顔立ちの小さい子供が3人います。子供たちは、敬太よりも少し身長が低くて顔もかなり幼い感じです。そして、子供たちは敬太と同じような腹掛け1枚だけの格好です。


 「みんな、どうしたの?」

 「うえええ~ん、ぼくたち、迷子なの」

 「おうちに帰りたい!」「おっかあといっしょにいたい!」


 敬太は、子供たちにどうして泣いているのか聞きました。子供たちがずっと泣いているのは、お母さんとはぐれてそのまま山林の近くまで行ってしまったからです。


 「じゃあ、みんなを抱っこしてもいいかな?」

 「うわ~い、抱っこ、抱っこ」

 「抱っこ抱っこ!」


 敬太は抱っこをしてあげると言うと、子供たちはみんな大喜びです。これを見た敬太は、子供たちを1人ずつ抱っこをすることになりました。


 「わ~い、わいわ~い」

 「もう一回、抱っこ抱っこ!」


 子供たちは抱っこされるのがとても気に入ったので、何回も敬太に抱っこをせがみます。敬太は、いつも通りの元気な笑顔で子供たちに接しています。


 抱っこを何回か繰り返して、またまた子供たちの1人を敬太が抱っこしたときのことです。


 「ねえねえ、高い高いして~」

 「じゃあ、高い高いしようか」


 敬太は子供の体を両手で高く上げると、子供はキャッキャッと喜んでいます。敬太は、再び子供の体を高く上げました。


 「ジョオオオ~、ジョジョジョババ~」

 「きゃっきゃっ、きゃっきゃっ」

 「でへへ、元気なおしっこを顔にかけられちゃった」


 子供は、敬太の顔面におしっこを命中させました。おしっこを顔にひっかけられた敬太ですが、そんなことを気にすることはありません。どんなことがあっても、敬太は明るくて元気いっぱいの笑顔を見せています。


 「さあ、ぼくといっしょにおうちを探そうね。おうちに行けば、おっかあに会えるかもしれないよ」

 「うわ~い、おっかあに会える!」「わいわいわ~い!」


 敬太は、子供たちといっしょに連れて歩き始めました。子供たちが住んでいる家までは、少し距離があります。


 そんな中でも、敬太は疲れを見せずに元気よく歩き続けています。


 しばらく歩いていると、村の中心に入っていきました。そこにある道標には、「峰紅村みねべにむら」と書かれています。


 そこでは田んぼや畑で農作業をしたり、小さい子供たちが元気に遊んだりしています。農村でのいつもの風景は、敬太が住んでいた村と何ら変わりません。


 そのとき、子供たちが誰かを見つけると急いで走り出しました。若そうな外見の女の人を見つけた子供たちは、すぐに女の人へ飛びつきました。子供たちが抱きついた女の人は、袖なしで丈の短い薄緑色の着物を着ています。


 「おっかあ、おっかあ、会いたかったよ~」

 「おっかあ、ごめんなさい」


 子供たちは、お母さんに会うことができたのでへばりつきながら泣いています。


 「おっかあ、この子が迷子になったぼくたちを見つけてくれたんだよ」


 子供たちは、自分たちを見つけてくれた敬太をお母さんに紹介しました。これを聞いたお母さんは、敬太のところへやってきました。


 「子供たちを見つけてくれて、本当にありがとうございます」

 「ぼくは小さい子供が大好きだし、子供が困っているのを見たら助けてあげるのは当たり前だよ」


 子供たちのお母さんは、敬太にお礼を言いました。すると、敬太は当たり前のことをしただけと返事をしました。


 「そうそう、君の名前は何という名前かな?」

 「ぼくの名前は敬太。いつも明るくて元気いっぱいの7歳の男の子だよ」


 敬太は、子供たちのお母さんに自己紹介をしました。そして、敬太はぷっくりと膨らんだ両腕の力こぶをお母さんに見せました。


 「あらあら、まだ小さい男の子なのに、すごい力こぶを持っているんだね」

 「ぼくは、ものすごく重いものであっても楽々と持ち上げることができるよ」


 子供たちのお母さんは、敬太があれだけの力こぶを持っていることにびっくりしました。重いものを普通に持ち上げるぐらいのことは、敬太にとって朝飯前です。


 「それじゃ、私のおうちの中にある石うすを外に出してほしいけど、手伝ってもらえるかな?」

 「ぼくはいつも家のお手伝いをしているから、石うすを外に出すことくらい大丈夫だよ」


 子供たちのお母さんが手伝ってほしいとお願いされたので、敬太も喜んで手伝うことにしました。これを見た子供たちは、ピョンピョン飛び跳ねたりしながら喜んでいます。


 子供たちやそのお母さんが暮らしている家は、敬太の目の前にありました。その家の外観は、敬太が住んでいた家よりは少し広く感じます。


 庭へ入ると、子供たちのお母さんが敬太に自分の名前を言いました。


 「私の名前は、おさいと申します。敬太くん、よろしくね」

 「おさいさん、こちらこそよろしくお願いします」

 「敬太くん、そんなにかしこまらなくてもいいのよ。普通におっかあって私に言ってくれるほうがうれしいわ」


 おさいは、敬太の顔を見て、本当に心のやさしい子供と感じています。子供たち3人も敬太の前へやってくると、自分たちの名前を言い出しました。


 「敬太くん、ぼくは藤吉という名前だよ」

 「ぼくは藤助。4歳だよ」「ぼくは藤五郎、藤五郎っていうの」

 「藤吉くん、藤助くん、藤五郎くんなのか。3人ともかっこいい名前だね」

 「ぼくたちの名前もかっこいいけど、敬太くんもかっこいい名前だよ」


 子供たちは、敬太に自分たちの名前を元気な声で言いました。そして、敬太と子供たちは自分たちの名前をお互いに言いながら喜んでいます。


 「でも、3人ともほとんど同じ顔に見えるけど、どうして?」

 「ぼくたちは三つ子として生まれてきたんだよ」


 敬太は、子供たちが三つ子であることを初めて知りました。すると、おさいが敬太に三つ子を産んだときのことを話しました。


 「この子供たちを産むときは、三つ子だったので半日がかりでの出産だったのよ。出産するときは、一度に3人を産むから死ぬほど大変なことだったんだよ。でも、こうして3人とも元気にすくすく育っていることが何よりもうれしいわ」


 おさいが三つ子を産むために、どれだけ大変だったかということは敬太にもひしひしと伝わりました。


 「おっかあ、おうちの中にある石うすを外に出してもいいかな?」

 「敬太くん、大丈夫なの? その石うすはとても重いんだよ」

 「おっかあ、石うすぐらい1人で持つことができるよ」


 敬太がおさいの家の中に入ると、大きな石うすがどっしりと置かれていました。それは、見るからにとても重たそうな石うすです。


 「敬太くん、こんな格好じゃ石うすを持つことができないでしょ。さあ、大きな風呂敷と小さな風呂敷を下ろしてごらん」

 「あっ、そうだった。背中に大きな風呂敷をかついているんだった、でへへ」


 敬太は、大きな風呂敷と小さい風呂敷を板の間に置くことにしました。


 おさいや子供たちは、あれだけ重い石うすを敬太が1人だけで持ち上げられるのか心配そうに見ています。


 「うぐぐぐっ、うぐぐぐぐっ、え~いっ!」


 敬太は目の前にある石うすを持つと、気合を入れて持ち上げようとします。すると、あれだけ重そうな石うすを楽々と両手で持ち上げることができました。


 敬太は、石うすを持ち上げたままで外へ出てきました。そして、軒下のところまで持って行ってから石うすを置きました。これを見たおさいや子供たちは、敬太が1人で石うすを持ってきたことにとてもびっくりしました。


 「あれだけ重い石うすを小さい子供が1人で持ってくるとは、すごい男の子だわ」

 「わあ、すごいなあ! 敬太くん、1人で重いものを持てるんだね」


 子供たちは、敬太の体に両手で抱きつくようにへばりつきました。


 「敬太くん、おんぶ!」

 「おんぶ、おんぶ、おんぶ!」「抱っこ、抱っこ!」


 子供たちは、力持ちで心のやさしい敬太のことが大好きになりました。そして、敬太にへばりついたままでおんぶや抱っこをせがみました。


 敬太は子供たちをおんぶや抱っこをすると、そのまま家のお庭を歩き回っています。敬太がおんぶや抱っこをして歩き回ってくれるので、子供たちは大喜びです。


 敬太たちのにぎやかな声を聞いて、おさいも敬太と子供たちが仲良くなったことを喜んでいます。

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