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《獣人のこども》おねしょ敬太くんの大ぼうけん  作者: ケンタシノリ
第9章 敬太くん、獣岩城で最後の戦い
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その15

 敬太は、大きな地図を描いたお布団を持ち上げて自分の元気さを相手の獣人に見せつけています。お布団へのおねしょは、敬太が元気な男の子である何よりの証拠だからです。


 敬太が明るい笑顔で仁王立ちしているとは対照的に、向かい側に立っている獣人は全身が震えるほどの怒りに満ちています。


「このチビめ……。よくも2回も続けておねしょを命中させやがって……」


 姿をくらまして敬太を亡き者にしようと考えた獣人の計画は、敬太のおねしょによって台無しになりました。


「獣人め、姿を現したからには絶対に負けないぞ!」


 敬太は、相手に向かって全身で突進しながら体当たりしていきます。


「え~いっ! とりゃああああっ!」


 その凄まじい勢いに、相手は反撃に転じる前に後ろへ倒れてしまいました。さらに攻撃を続けようと、敬太は獣人の上へ乗ろうとします。


「おめえの動きなんぞ、すでにお見通しということをまだ分からないようだな」


 獣人は、仰向け状態のままで両腕を使って敬太の体をきつく抱きしめるように捕まえました。一気に形勢を逆転すると、その大きな腕で敬太の小さい体を絞めつけていきます。


「どうだ! おめえみたいなチビはこうやってつぶさないといけないな」

「ぐぐぐぐっ……。これくらいのことであきらめるつもりはないぞ」


 敬太はこの状況から脱しようと、歯を食いしばりながら凄まじい力を入れています。その気迫は、敬太の顔つきにも表れています。


「うぐぐぐぐぐっ! んぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ……」

「どんなに力をいれようとも……。うわわわっ!」

「ええ~いっ!」


 敬太は、力の限りを尽くして獣人による拘束から脱出することができました。そばに寄ってきたワンべえは、敬太の様子を心配そうに見ています。


「敬太くん、大丈夫かワン?」

「ワンべえくん、心配してくれてありがとう! どんなことがあっても、ぼくは絶対に負けないからね!」


 明るい顔つきの敬太は、右手の握り拳を胸に当てながらワンべえと顔を合わせました。しかし、獣人との戦いはまだ終わったわけではありません。


「敬太よ……。逃げようたってそうはいかないぜ」

「逃げるつもりなんかないもん! 獣人なんか、この手で絶対に倒してやるからな!」


 敬太は、再び正面から突っ込むように獣人へ体当たりしていきます。その攻撃に、獣人は必死に食い止めようとしています。


「えいっ! えいっ! えいっ!」

「このチビめ、同じ攻撃が通用すると思ったら……」


 獣人はすかさず反撃に転じようと右足を振り上げますが、敬太はその動きを見逃しません。敬太は高く飛び上がると、獣人の右肩を踏み台にするように南側の壁に向かって飛び越えます。


「ふはははは! やっぱり逃げるとは本当に情けない……」


 敬太の動きを見て、獣人は不気味な笑みを浮かべながら自分から逃げたと思い込んでいます。けれども、それは獣人の思い込みによる勘違いです。


 敬太は南にある格子窓近くの壁に右足をつくと、そこから獣人の背中へ頭から飛び込むように突っ込んでいきました。


「え~いっ! とりゃあっ!」

「グエエエエエエエッ!」


 後方から隙を突かれた獣人は、敬太の強烈な頭突きを食らって前から崩れ落ちました。敬太は、うつ伏せに倒れ込んだ獣人の背中の上に乗ると、さらなる攻撃を加えようと真上へ飛び上がりました。


「行くぞ! え~いっ、それっ!」

「グエエエッ……。や、やめろ……」

「まだまだ! え~いっ! え~いっ! え~いっ!」


 敬太は何度も飛び上がっては、垂直からの落下技で獣人の体を打ちつけます。反撃に転じたい獣人ですが、敬太による立て続けの攻撃を食らって身動きが取れません。


「獣人め、どうだ!」

「グエエエッ、グエエエエエエエッ……」


 自らの全身を使っての攻撃を続ける敬太ですが、新たな敵が潜んでいることにはまだ気づいていません。


「あんなチビの前に全く役に立たないとは……。こうなったら、おれが直接行かないといけないな」


 その間も獣人への攻撃を続ける敬太ですが、目の先の空中には敬太の大好きな食べ物が飛んできました。


「うわ~い! 大きなイモだ! 大きなイモだ!」


 敬太は、大好物のでっかいイモを右手で受け取ると、攻撃をいったんやめて手にしたばかりのイモを口にほおばっていきます。あれだけ激しく戦う敬太にとって、イモは凄まじい力を出すためにも大切な食べ物です。


 しかし、それは獣人たちが敬太を油断させるための罠です。敬太の前には、体全体が筋肉のかたまりである力獣が現れました。


「ぐはははは! 敬太め、ここで再び会うことができるとはなあ」

「でっかいイモを食べている最中にいきなり現れやがって!」

「食べることばかり夢中になっているようだが、果たしてそれでいいのかな?」


 敬太は、イモを口に入れながら力獣と向かい合っています。その背後からは、先ほどまで敬太に痛めつけられた獣人が迫ってきています。


「うわわっ! いきなり何をするんだ!」

「おめえの弱点はなあ、大好きな食べ物にばかり気に取られているところなんだよ!」


 獣人は不気味な笑みを浮かべながら、敬太の首をつかんで上へ持ち上げています。敬太は足をバタバタさせながら抵抗しようとしますが、獣人はそんなことに耳を傾けるつもりはありません。


「今までさんざん痛めつけられたからには、たっぷりとお返ししないとな」


 獣人が自らわしづかみした敬太を投げつけると、力獣は右足で強烈な蹴りを敬太に食らわせようとします。


「これでも食らえ! うりゃうりゃあっ!」

「うわっ! い、いててっ、いててててててっ……」


 力獣から攻撃を食らってうずくまった敬太ですが、痛みをこらえながらもすぐに立ち上がりました。


「こんなことぐらいで負けないぞ!」

「ほほう、自信だけは相変わらずだな」

「何だと! ぼくだって、同じ攻撃だけ繰り出しているわけではないぞ」


 敬太は両側にいる敵を倒そうとある秘策を立てると、力獣に向かって正面から突っ込んでいきました。


「ぐははははは! 同じ手が通用しないと何度言ったら……」


 力獣が敬太の攻撃を見透かすかのように食い止めようとしますが、敬太はそれをうまくかわしていきます。そこから力獣を高く飛び越すと、敬太は北の方向にある壁に足をつけました。


 そのはずみをうまく利用して、敬太は空中で回転しながら攻撃を加えようとします。


「力獣め! これでも食らえ!」

「グエッ! グエグエグエエッ……」


 敬太は力獣の背中にぶつかりながら、両手の拳や両足のかかとを使った攻撃を何度も繰り出していきます。隙だらけの背中への攻撃に、力獣はうつ伏せの状態でドシンと音を立てるように倒れてしまいました。


 次に攻撃を加える相手は、向かい側にいるもう1人の敵です。敬太は、この勢いをぶつけようと獣人へ向かって行きます。


「このチビめ、調子に乗りやがって……」


 獣人は敬太の攻撃を見越して、両手を出して食い止めようとします。しかし、敬太のほうも獣人の動きに対して、高く飛び上がるようにしてかわしていきます。


「うぐぐぐぐっ! これでどうだ!」

「うわっ! グ、グエグエエッ……」


 敬太は獣人の後ろから持ち上げると、このまま南側の壁に強く叩きつけました。強く打ちつけられた獣人は、そのまま崩れるようにぐったりしています。


 ここからとどめを刺そうとする敬太ですが、その背後からは力獣が迫ってきています。


「おっと、そう簡単にやられるおれたちじゃないぜ」

「わわわっ! 何をするんだ!」

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