その10
獣岩城に入った敬太とワンべえは、周りに広がる不気味さが獣人たちの本拠であることを肌で感じています。
「敬太くん、油断したらダメだワン」
「ああ、分かってるって!」
この先を進むと、再び扉らしきものが見えてきました。けれども、そこを通るためには横に並んで待ち構える獣人たちを倒さなければなりません。
さらに、その後ろに控えるのがその扉を見張る獣人2人です。その力は、敬太が先ほど倒したいる入口見張り番の獣人と同じくらいかそれ以上と言われています。
「まずは、前にいる獣人からやっつけていくぞ!」
敬太は、その小さい体で獣人たちに向かって駆け出していきます。獣人たちのほうも、真正面からきた敬太を倒すべく周りを取り囲もうとします。
そんな動きにも、敬太は目の前にいる獣人に体当たりを食らわせてからそのまま持ち上げます。そして、間髪入れることなく後方へ投げ飛ばすように叩きつけました。
「い、いててててっ……」
「えいっ! えいっ! えいっ!」
敬太は、床に倒れ込んだ獣人の上でピョンピョン飛び跳ねています。そんな敬太に、他の獣人は仲間を助けようと飛びかかってきました。
「このガキめ、調子に乗りやがって!」
「ただで済むとは思うなよ」
獣人たちが一斉に襲いかかっても、真上へ飛び上がった敬太は相手の動きを見逃しません。そこから急降下すると、敬太は強烈な蹴り技で獣人たちを突き飛ばしていきます。
「とりゃあっ! とりゃあっ! とりゃあっ!」
「グエッ! グエエエッ!」
敬太による立て続けの攻撃に、獣人たちは次々と床に打ちつけられるように倒れ込みました。これを見た敬太は、獣人連中を1人ずつ持ち上げては城の出入口のほうへ投げ飛ばしていきます。
「ぐぐぐぐぐぐぐっ! とりゃああっ!」
「わ、わわわっ! や、やめろ……」
思わず叫び声を上げたのもむなしく、敬太に投げ飛ばされた獣人たちはぶざまな姿をさらすことになりました。
「あんなチビと戦ったら命が持たない……」
「わ、わわわっ!」
あまりにも強い敬太の前に、獣人たちは獣岩城から一斉に逃げ出していきました。けれども、敬太の前には油断できない相手が次の扉の前で待ち構えています。
「よくここまでやってきたな! だが、おれたちがあんなザコと同じだと思ったら大間違いだぜ!」
「どんな強い相手だって、ぼくは決して手を抜かないぞ!」
見張り役の獣人たちは、2人ともなぎなたを手にしながら不気味な笑みを浮かべています。そんな相手の姿に、敬太も本気を出して立ち向かっていきます。
すると、獣人たちは真正面から突っ込む敬太になぎなたを振り回しました。
「これでも食らえ! おりゃああっ!」
「うわっ! お、おっとっと!」
獣人たちによるいきなりの攻撃に、敬太は辛うじてかわしていきます。何とかして攻撃に移りたい敬太ですが、獣人たちのなぎなたを避けようとして思わず尻餅をついてしまいました。
これを見た獣人たちは、さらなる攻撃で敬太につけ込もうとします。
「ふはははは! おめえみたいにばか力で戦うのとは違うことを思い知らせてやるぜ!」
「おりゃ! おりゃ! おりゃあっ!」
「こ、これでは反撃することが……。わわっ!」
「ほれほれ、コロコロと逃げてばかりじゃ攻撃が終わらないぜ」
獣人たちは、起き上がろうとする敬太になぎなたで攻撃を加えていきます。立て続けの攻撃を間一髪でかわした敬太は、なんとか反撃の好機をうかがおうとしています。
「獣人め、これならどうだ!」
敬太は、獣人によるなぎなた攻撃をかわそうと一気に高く飛び上がりました。そこから急降下すると、獣人の1人に右足で強く蹴り上げようとします。
「え~いっ! とりゃあっ! とりゃあとりゃあっ!」
「わわわっ! いきなり何を……」
獣人は、敬太の強烈に蹴り上げる攻撃に思わず後ろに倒れ込みました。これに勢いづいた敬太は、もう1人の獣人へも攻撃を仕掛けていきます。
「このチビめ! よくもやりやがったな!」
獣人はなぎなたで正面から突こうとしますが、これに反応しない敬太ではありません。敬太は、わずかな隙を突いて獣人の後方へ回りました。
「獣人め! とりゃっ! とりゃっ! とりゃとりゃとりゃっ!」
もう1人の獣人の腰を持ち上げた敬太は、その獣人を床へ何度も叩きつけて行きます。立て続けの攻撃に、獣人はあまりの痛みに耐えられない様子です。
「敬太め……。うぐぐっ、うぐぐぐぐぐっ……」
「ぼくの攻撃はこんなものじゃないぞ! それっ! それっ!」
「い、いててっ! いてててててててっ!」
獣人の上に飛び乗った敬太は、その場でピョンピョンと何度も跳ねています。敬太から繰り返し攻撃を受ければ、獣人もかなり痛そうな表情を見せるのも無理ありません。
しかし、敬太が相手にする獣人は1人ではありません。敬太のそばには、もう1人の敵が怒りに満ちた顔立ちで近づいてきました。
「敬太め、ただで済むとは思うなよ……」
獣人は、自分の仲間を助けようと敬太になぎなたを向けようとします。なぎなたを持つ右手の震えようは、明らかに敬太へのいら立ちを表しています。
「これで地獄へ行ったもらうぜ! どりゃああっ!」
「うわっ! わわわわっ!」
もう1人の獣人による不意打ちに気づいた敬太は、あわてながらも辛うじてなぎなた攻撃からよけました。けれども、そのときのはずみで敬太は床の上に落ちてしまいました。
すぐさま起き上がった敬太の向かい側には、攻撃を食らって倒れていた獣人がもう一方の獣人の手を借りて立ち上がろうとしています。
「よ、よくもやりやがって……」
「このガキめ、今まで受けた攻撃のお返しをしてやるからな……」
鋭い目つきでにらみつける獣人たちを前に、敬太は真一文字に口を結びながら拳を握りしめています。ワンべえも、敬太のそばに寄ってきて声を掛けています。
「敬太くん、ぼくもいっしょに戦いたいワン」
「ワンべえくん、獣人たちの動きに気をつけてね」
いつも行動をともにしている友達の存在は、敬太にとって頼もしい限りです。敬太とワンべえは、相手の敵に向かって飛びかかっていきます。
「獣人め! え~いっ! とりゃとりゃあっ!」
「ウ、ウゲゲゲッ……」
敬太は、自らの握り拳を獣人の体に次々と食らわせています。獣人は何度も拳を食らいながらも、痛みをこらえて何とかして反撃に転じようと試みます。
「これならどうだ! えいっ! えいっ! とりゃあっ!」
「グエッ! わああああっ……」
敬太が力を込めたその拳は、獣人の腹へ見事に命中しました。あまりの威力に、獣人は仰向けの状態で強く打ちつけるように倒れ込みました。
一方、ワンべえのほうも、もう1人の獣人の動きを止めようと歯をむき出しにして噛みつきました。
「い、いてててっ……。おれの手に噛みつきやがって!」
「どんなことがあっても、絶対に放さないワン!」
獣人がどんなに振り落とそうとしても、ワンべえは決して放すことはありません。ワンべえの活躍ぶりを見て、敬太にも大きな力がわいてきました。
「獣人め、これでとどめだ!」
「わっ! わわわわっ! や、やめてくれ……」
「力を込めたぼくの拳を受けて見ろ! ええ~いっ! とりゃあああああっ!」
敬太はとどめの一撃を食らわそうと、獣人を両手で持ち上げては空に浮かせます。その落下の瞬間、敬太は右上に力こぶを入れた力強い拳を真正面に放ちました。
「うぐっ! うわああああああああああああああっ……」
凄まじい威力の拳を食らった獣人は、扉が開いたままの城の出入口へ飛ばされました。こうして、獣人は深い堀の中へ落ちると二度と顔を出すことはありませんでした。
見張り役の獣人を倒した敬太ですが、まだこれで終わったわけではありません。敬太が倒すべき獣人はもう1人います。




