小生意気なバゲット
最近、仕事を頑張っていたから、自分へのご褒美気分でちょっとだけ値の張るバゲットを買ってみた。
いつも前を通るパン屋のバゲット。
焼き立ての香りが鼻をくすぐって、いつか食べたいと思っていた。
袋から出して、オーブンに入れる。
香ばしい香りが狭い部屋いっぱいに広がる。
そうだ、コーヒーを用意しておこう。
インスタントコーヒーだけれど。
まぁ、気分、気分。
焼き上がったバゲットにナイフを入れ、マーガリンを塗ろうとした時。
手元のバゲットがブルブルと震えた。
「ノン!アタクシはおフランス生まれの高級バゲット様ですことよ!そんな安っぽいマーガリンなんか塗らないで欲しいですわね!」
は?
「は?じゃないですわ!その、しみったれたマーガリンをよして、今すぐお高いバターをお塗りなさい!」
は?何様?
「おだまり!アタクシは・・アタクシには、それぐらいの価値がございますのよ!」
バゲットが、これ以上曲がらない、というぐらいにふんぞり返った。
慌てて、手で形を整える。
「んまぁ!インスタントコーヒーの小汚い粉がつきましたわ!早く落としなさい!」
適当に、手でパッパッとバゲットの表面を払った。
「まっ!これだから貧乏人は嫌ですわ!あなたにはデリカシーのかけらもございませんのね!」
はいはい。
私は、パクパクとよく動くバゲットの切込みにマーガリンを塗りたくって、スライスチーズとハムを挟み込んだ。
そして、点数を集めて貰ったお皿にバゲットを乗せて、コーヒーと一緒にテーブルに運んだ。
「ムグ、ムグ、なんというものを挟むのですかっ、ムグ、この皿は何?ムグ、まさか、このまま食べるつもりでは・・・」
私はテレビをつけて、昼のワイドショーを観ながら、バゲットにかぶりついた。
「ノーーーーーン!」
今度は、普通の食パンにしておこう。
また点数が貯まるように。




