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ここはなにかが欠けている

ねんがんのぶきをてにいれたぞ

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/29

ドンという男がここにいる。年齢十六歳。下級の一つ星冒険者。

職種は戦士…だが、先程まで武器らしい武器は何も持っていなかった。


先程、町中の清掃やら工事手伝いやらで稼いだ大銀貨をほぼ全てつぎ込み、

新品の小剣と盾、防具一式をようやく入手したところである。



元々田舎で農家のせがれだった彼は、親から継げる畑もなかったため、

町に出て冒険者として大活躍してやる!と妄想していたのだが。

いざ冒険者組合の建物で冒険者見習い申請をしてみれば、

これまで一度も武器を使ったことがない、とようやく気が付いた。


組合併設の訓練所で練習用の武器を持たせてもらったが、

どれもこれも自分では重たいわ、かさばるわで、まともに使えない。

何とか使えそうな小剣で行こう!と考えたものの、価格に撃墜される。

農具だって安くはないのだ。武器が安いはずもなかったのだ。


そもそも購入以前に、見習いに戦闘依頼など本来受けられるはずもない。

まず先立つものを何とかするべく、ドンは町の雑用に励んで励んで励んだ。


ドンは夢想家ではあるが、根は結構真面目なのだ。努力も怠らない。

町へ出て見習い登録から二か月間、相部屋で組合の宿泊所に泊まり込み、

資金を貯めるため、腹持ちが良くて安いもので細々と食いつなぎ、

持ち前の大きい身体と腕力を活かして肉体労働をこなした。

働きぶりは評価され、見習いからの脱却は早かった。


窓口と宿泊所を往復する日々が続いたある日、

冒険者組合の内部には、安めの武器や防具を扱う売店があると気づいた。

初心者への救済策という事で、やや基準から外れた武器や防具が、

職人達の厚意で格安出品されているのである。

当然正規品よりかなり安い。半額未満。


実のところ、見習い登録初日に受付嬢よりこの店の説明もあったのだが、

ドンははじめての事が多すぎて、店の説明が頭に入っていなかった。

まだまだ資金が足りないと思っていたドンだが、ここの製品なら買える。

迷わず組合より預金を引き出し(組合は所持金預かりも有償でしている)、

所持金の八割以上をつぎ込んで即日買い込んだ。


防具を身に着け、盾を左手に装着し、鞘から買ったばかりの小剣を抜く。

感慨深いものがあったが、


「おいっ、危ないだろっ!ここで武器を抜くんじゃないよっ」


と店員に叱られ、ドンは慌てて小剣を鞘に納めた。



叱られはしたものの、ドンはその日興奮して眠れなかった。

寝床についても顔がにやけてしまい、武器も防具も装備したまま横になる。

あちこちぶつかって痛いと思うのだが、全く気にならないようだ。


翌日、興奮冷めやらぬドンは朝食も食べずに組合の依頼案内板に突撃する。

この装備にふさわしい依頼を受けるぞ!と華々しい未来を夢見ていたが。

募集内容の条件に、思わず固まる。


【要戦闘経験者。対人経験ありが望ましい】


ドンは、狐を追い払ったことはある。ネズミも最近追い払った。人はない。

戦闘経験自体が、一度もない。


…組合裏の訓練所に通って、しばらく鍛えてもらおう…。

二ヵ月前よりは現実が見えるドンは、今後の道筋の長さに遠い目になった。

自分はタイトル元ネタをプレイした事はありません。

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