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ヒーローキラー  作者: カサタ


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9/9

9話 魔女っ子メイちゃんの究極魔法!?

日曜日の昼、俺と大河はショッピングモールのカフェに先に来ていた。


窓際の席を確保して、俺は軽く息をつく。カフェって学生にとっては高めだけど、今の俺はこのくらい余裕で払える。俺ってお金持ちなの。


俺は優しいから大河の分まで今日は奢ってやった。まあ、怪しまれないよう「今日だけ」ということにはしてるけどね。


「お、ここでいいんじゃない?」


大河が4人席の空いたテーブルを見つけた。

この時間に4人席が空いてるとは運がいいな。


「ラッキー、いい席じゃん!」


俺たちはそこに座ると、いつもどおり中身のない話をしながら白川が到着するのを待った。


それから5分ほどすると白川が現れ、店内を見渡して俺たちの姿を見つけると、笑顔で近寄ってきた。


相変わらず好青年だ。

清潔感のある制服に姿勢の良さ、自然な笑顔。


俺に負けず劣らずってとこか。


軽く会釈して席に着く白川を、俺はちらりと観察する。何も知らなければ普通の高校生なのに、どこか底知れぬ強さを感じる。

九条さんの言葉がよぎって、一瞬だけ緊張が走ったが、まあ普通にしてれば大丈夫だろう。


白川も注文を済ませ、3人でどの映画を見るか話し合ったが、結局みんな見たい映画がバラバラで、じゃんけんで決めることになった。

じゃんけんの勝者は白川で、その結果『魔女っ子メイちゃんの究極魔法』を見ることになった。


「おい転校生、ちょっとは自重と言うものを知らないのかね?」


こいつは自分の趣味趣向を隠すつもりはまったくないらしい。

やっぱりこの歳で特Sという謎のランクにいるやつだ。堂々としていて寧ろ尊敬するぜ。


「え、なんで?《メイ究》めっちゃおもしろくない?」


「いや……、どうなんだ?おもしろいのか?」


大河は『魔女っ子メイちゃんの究極魔法』略して《メイ究》をあまり見たことがないらしい。


まあ俺もだが。


「勝者は白川だからな。まあ、今回は譲るとしよう。」


大河と肩をすくめながら、俺も納得する。

それから上映時間までまだ時間があったからカフェで適当に喋って時間を潰すことにした。


結構色々話したが、白川は異能治安局の隊員ってことを除けば普通の高校生だった。


談笑を続けていると、ポケットに入れていたスマホが振動した。通知が来たようだ。おもむろにスマホを取り出し、画面を確認すると、相手は九条さんだった。


内容としては、タイミングを見て電話をかけてきてほしいとのこと。


「悪い、ちょっとうんこ行ってくる」


2人はメイ究の話で盛り上がっていて俺の声が届いてるかは不明だったが、俺は席を立ち店を出た。


トイレに向かうフリをしながら、電話をかけ直す。


「九条さん、おつかれっす。」


「急に悪いわね。うちのボスに藤沢君のことを話したら特殊な任務言い渡されてね。受けるかどうかは藤沢君に任せるわ。危険だし、朝霧も今回はいないからね。」


「ボスから直接っすか。なんか怖いっすね。受けるかどうかはとりあえず任務内容を聞いてから考えます。」


「わかったわ。……それで今回の任務は、異能治安局へのスパイ任務よ。」


「おふ」


びっくりして変な返事してしまった。


「前に一度、峯岸から誘われたことあるって言ってたわよね?それにおそらくだけど、今回白川が近づいてきてるのも、あなたをスカウトするのが目的だと思うの。」 


「なるほど……。確かにそれならこんなに強引に白川が近づいてきたのもわかる気がする。」


ただのコミュ力バグり好青年オタク野郎ではなかったわけだ。


「どう?受けてみる?期間は未定。報酬はいいはずよ。それにどうせ今は朝霧も戦線離脱してるから他に仕事もないし、タイミング的にも悪くないかなって思うけど」


「あー、全然いいっすよ。任せてください。」


この任務をこなせばボスからの信頼も得られて何より報酬がでかい。

やらないわけがないだろ。お金は大事。


「話が早くて助かるわ。じゃあボスには私から伝えておく。それと今回の任務にあたって条件があるんだけど、この任務中で使っていい能力は風を操る能力のみよ。」


「了解っす!俺、がんばります!」


電話しながら敬礼をする。九条さん、俺頑張るっす。

無事完遂したらいっぱい褒めてください。


「連絡は定期的に取ること。すでにもう1人東京支部には潜入しているうちのメンバーがいるから、藤沢君が潜入成功したらコンタクトを取らせるわ」


すでに潜入している先輩がいるわけか。

美人なお姉さんだといいな。


「わかりました。じゃあそろそろ切りますね。うんこが長いやつって思われるのも癪なんで!」


「……わかったわ。それじゃあ。頑張ってね」


「はい!」


そう言って電話を切った。


条件は明確だ。表向き使える能力は、空裂き討伐で得た風を操る力だけ。他の能力は封印だ。

この能力だけでもかなり使えるからありがたいな。


任務内容を頭の中で確認し、席に戻ると時間もちょうどよく映画館に向かうことになった。

3階の上映フロアへ行き、ギリギリでチケットを購入。席は空いており、3人並んで座ることができた。

ギリギリでもこんなに席が空いてるって……本当に面白いのか?


暗い館内。スクリーンの光が俺たちを照らす。

隣で白川が画面に集中している。

その目の輝きは6歳の時初めてドラえもんの映画を見にきた時の俺の目と同じだった。

そして『魔女っ子メイちゃんの究極魔法』が上映開始した。


映画が終わり、時間は夕方17時。腹を空かせた俺たちはフードコートに向かった。

ちなみに、映画はおもしろくはなかった。


それぞれ何を食べるか悩んでると、

その瞬間だった――


「うわっ!」


館内に悲鳴が響く。

声を上げた人の視線の先には、大人の男性の肩ぐらいの高さの四足歩行の黒い獣が、フードコートの真ん中にいた。

さっきまではなにもいなかったのに、どこから現れたんだ?


体は細身だけど筋肉質。低く身をかがめていつでも襲いかかれるような状態だ。


「あれは……!シャドウリーパー!?ランク6相当の魔獣じゃないか!なんでこんなところに……!」


白川の表情が一気に変わる。さっきまでの学生気分は消え、今は異能治安局隊員の顔になっていた。


「ランク6の魔獣!?おい、やべーだろ!!専門部隊が必要なレベルじゃねーか!」


大河が白川の言葉に発狂する。

周囲は一気にパニック。人が逃げ惑い、テーブルや椅子が倒れる。


「白川……!」


とりあえず頼んだ。お前ならランク6くらい余裕だろ?

驚く(演技)俺に、白川は落ち着いた声で言った。


「僕は異能治安局の隊員だ。階級はAランク。ここは僕が対処するから2人は安全なところに避難して」


そう言い残して白川はシャドウリーパーの元へ駆けていきながら能力を発動する。


「No.2アーセナル、剣ッ!」


白川の手元に一振りの剣が出現した。その刀身には、少し青い光のようなオーラのようなものを纏っている。

そしてそのオーラはそのまま白川の体を包んだ。

その瞬間白川の速度が2段階ほど上がった。


俺と大河は少し離れたところから物陰に隠れてその光景を見ていた。


「白川って隊員だったんだな。しかもAランクって副隊長クラスじゃなかったっけ?変なやつだとは思ってたけどやっぱ変なやつ……いや、すげーやつだったんだな」


大河が記憶を確かめるように呟く。異能治安局はその能力を使った戦闘の派手さから一般市民からはヒーロー戦隊のような人気と支持を得ている。

なので隊員ってだけでも世間では一目を置かれる存在だ。


白川はシャドウリーパーの元へ駆け寄った勢いのまま切り掛かる。


「ギャァッ!」


シャドウリーパーは反応が遅れ、白川の一撃をもろに受け体に大きな裂傷を負った。


うん、問題なさそうだな。

そう思った瞬間白川の周りにさらに4体のシャドウリーパーがどこからともなく現れた。


急に囲まれてしまった白川の頬に、一筋の汗がつたう。


あれは流石に厳しそうだ。このままだと白川1人では到底守りきれないか……。


「ちょっと行ってくる」


俺は大河を比較的安全な場所に避難させると、自分も戦場に向かう。


「おい!」


大河の声が背中に聞こえるが、俺はそれを無視して風の能力を発動する。


自分に追い風を発動し、一っ飛びで白川の元へ辿り着く算段だ。


「おわっ!!」


まあ結果的には出力をミスって白川を飛び越えて派手にシャドウリーパーの真ん前へ着地したわけだが。


「藤沢君ッ!」


目の前のシャドウリーパーは、その鋭い爪で俺を引き裂こうと前足を振った。


俺は動体視力強化でそれを見極めてギリギリで回避すると、強烈な突風でシャドウリーパーを吹き飛ばし、そこに不可視の風の斬撃を無数に放つ。


この技には俺と朝霧もかなり悩まされた。見えないのに当たったらすごいダメージだもんな。


案の定、シャドウリーパーは反応できず風の斬撃にバラバラにされた。


すると、思わぬことが起きる。

シャドウリーパーの死骸が黒い霧になって霧散したのだ。


……なんだ?よくわからんが後で考えよう。今は白川の援護に努める。


それからは風を操って魔獣の動きを制限しつつ、白川と連携する。

舞う風に魔獣が動きを止められ、白川が確実ダメージを与えていく。

戦闘の最中、視界の端に一瞬だけ、笑いながらこの光景を見ている女が映った。

目が合う。女はハッとした顔をしたあと、すぐに逃げていった。

追いかけたい衝動に駆られたが、魔獣を放置するわけにはいかない。俺は風で援護しつつ、白川はご自慢の剣で正確に攻撃を重ねる。

俺が攻撃に回ると、館内をめちゃくちゃにしてしまうからな。

魔獣は次々に致命的ダメージを受け、黒い霧となって霧散する。

白川は眉をひそめ、霧散した魔獣を見つめる。


「……これは召喚獣が倒されたときの現象だ。どこかにこの事件をが引き起こした犯人がいる。」


召喚獣……?もしかして、さっきの女か?


「召喚系の能力者か……。欲しいな」


思わず呟いてしまい冷や汗をかくが、運良く白川には聞こえてなかったみたいだ。


犯人はすでに姿を消しているだろう。白川はスマホでどこかに連絡していた。聞こえた内容的にどうやら、異能治安局の現場処理班を呼んでいるようだ。


そして、ひと段落すると、白川は俺の力を称賛してくれた。


「藤沢君、凄い強いんだね!峯岸さんにはちょっと聞いてたけど想像以上だよ!」


「ああ、そうか?あんなもん俺に任せれば余裕だよ余裕!」


俺は誇らしげに胸を張る。


「実はさ、峯岸さんから君を可能ならスカウトするように頼まれてたんだけど……」


お、それはちょうどいいな!こんなに早くその話が舞い込んでくるとは。


「でも僕としては実は反対だったんだ。」


「え?」


なんか雲行きが怪しいぞ?


「だって藤沢君はまだ学生だし、正直あまり期待してなかったんだよね。」


「お、おう……。」


「でもさっき一緒に戦ってみて確信した!藤沢君は異能治安局に必要な人間だ!ぜひ異能治安局東京支部に入隊してくれないかな?」


「おん、こっちこそ頼むわ」


俺は間髪入れず了承する。

即答する俺に白川が呆気に取られてるところに大河が合流する。


「お前ら、強すぎるだろ!やばすき問題!」


大河の興奮ぶりに、俺は苦笑いするしかなかった。

白川は「詳しいことは今夜改めて連絡する」と言い残し、現場に戻った。

大河がある程度落ち着いた後、俺たち2人はそのまま帰路につく。

まあもちろん帰り道の話題は自然と能力の話になるわけだが。


「お前なんで能力使えること隠してたんだよ。あんなすげー能力もってんのにさー。」


当たり前だ。なんたってこの能力はランク8の魔獣《空裂き》の能力だからな。


「あー、隠してたわけじゃなくてさ、最近発現したんだよ。近々言おうとは思ってたけど忘れてた」


「なるほどなー。実を言うと、俺も能力者なんだぜ!」


「まじかよ!どんな能力なんだ?」


大河はニヤッと笑う。


「まあ百聞は一見にしかずってやつだ。見てろ。」


そう言って、大河が歩道の隅の方に手を翳すと、一瞬で直径、深さ共に50cmほどの穴ができた。


「半径5メートル以内で穴の大きさは固定だ。どうだ?」


大河が告白する。地面に深さ50cmの穴を瞬時に作る能力だという。


「うん、地味だな。それとこの穴埋めれんのか?見つかったら怒られるぞ?」


「は?無理に決まってんだろ」


だと思った。


「なんで今まで隠してた?」


俺は率直な疑問をぶつける。大河とは割と長い付き合いだが、能力を使えることは知らなかった。

なんなら能力の話題自体そんなにしてこなかった。


「湊が最近まで能力使えないと思ってたから、気を遣って話してなかったんだよ。俺って優しいから」


大河は笑う。俺は、改めていい友達を持ったなとしみじみ思った。

その後、2人でコンビニに寄り、アイスを買ってそれぞれ家に帰った。


――平和?な週末は、こうして過ぎていった。

魔獣脅威度

★★★★★★☆☆☆☆☆市街地で単独でも混乱を起こす。専門部隊必須。

(今回の映画館の魔獣はここ)


白川俊介 特S級 

能力:ロストナンバーズ

No.1〜8までそれぞれ別の能力があり、No.が高いほど強力な能力になる。ただし、No.3からは能力を使った後にさまざまな反動がある。


今回使用したのはNo.2アーセナル

系統:武器召喚

能力詳細 : 任意の武器を一本のみ召喚 武器を握っている間、筋力・瞬発力・反射神経など身体能力が大幅強化 武器を失う/手放すと即解除


No.6以降は、峯岸によって使用を制限されている。


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