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ヒーローキラー  作者: カサタ


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10話 入隊試験

俺は異能治安局東京支部の建物の前に立っていた。

ここにくるのは2度目だな。


一見するとただの官庁ビルだが、壁の随所に見える補強材や結界装置が、ここが“戦場に一番近い職場”であることを物語っている。


つい先日峯岸とやりあってできた、戦場の傷跡(主に峯岸の能力で)は、ほぼ修復されつつあった。


「うわぁ……税金の匂いがする」


軽くぼやきながら中へ入ると、受付で名前を告げ、案内されたのは地下の広いフロアだった。


地下もあったんだな。前回は支部長室にしか用がなかったから気づかなかった。


「やあ、藤沢君。今日はよろしく頼むよ。」


声をかけてきたのは、峯岸だった。

俺は思わず身構えそうになるが、ギリギリで今の自分の立場を思い出し、踏みとどまった。


「あ、この間はどうも。今日はよろしくお願いします。」


軽く頭を下げる。


「こちらこそ。今日は来てくれて嬉しいよ。事前に白川君の方から聞いてたと思うけど、これから戦闘力試験を行うよ。実戦形式だけど、こちらで安全は確保するから安心して」


「了解っす」


まあ、今さら緊張する必要もない。

使う能力は“風”だけ。これだけ気をつけてれば問題ないだろう。


九条さんとの約束だ。

ぶっちゃけ動体視力強化は使うつもりだけど。


「相手をしてくれる試験管はA級隊員だから、遠慮しなくていいからね。」


「試験管の神田だ。中々強力な能力を持っているそうだが、それも使い手次第だ。がっかりさせないでくれよ?」


そう言って俺の肩に手を置いてきた。

おお、もしかして煽られてる?


「大丈夫ですよ。神田さんこそ、簡単に終わらないでくださいね?」


「このガ……わ、わかった。それじゃあさっそく始めようか」


必死に笑顔を取り繕ってるが、隠しきれてないぞー。

煽り耐性低めだなこの人。俺も人のこといえないけども。


俺と神田はそれぞれ指定の位置に着くと開始の合図を待った。


「それでは、はじめ!」


峯岸の合図と共に俺は周囲に風邪を纏う。


「初手は譲ってやるからいつでもいいぞ」


「では、お言葉に甘えて。風刃ッ!」


俺は神田に向かって風の斬撃を放つ。


「四神武装ーー玄武」


神田がそう呟くと、神田の左腕に亀の甲羅のような盾が出現し、俺の風刃を弾いた。


「見えない斬撃か。」


「まだまだいきますよ。疾風脚!」


今度は足元に風を集中させ瞬間的に加速し、神田との距離を積める。

神田は変わらず盾を構えた状態で、受けの姿勢だ。


だったら……


「旋風」


神田を中心に小規模な竜巻を発生させ、視界を妨害させると同時に拘束する。

俺はその隙に神田の背後に高速で移動した。


「目眩しか!二重武装、青龍、玄武!」


その瞬間、神田の右手には一本の剣が握られていた。その剣には青白いオーラのようなものが纏っている。

神田がその場で一回転するように薙ぐと、竜巻はかき消された。

見た感じ、あのオーラの分攻撃範囲が広がってるように見える。

俺は慌てず、次の手を打つ。


瞬嵐しゅんらん!」


疾風脚で神田を中心に縦横無尽に高速移動し、様々な角度から風刃を連発する。


最初はなんとか盾で凌いでいたが、徐々に反応が間に合わなくなっていき、体に切り傷ができ始める。


「くそッ!三重武装、白虎、青龍、玄武!」


神田の足が獣の足のような見た目に変わる。

なるほど、白虎の足てきなことか。


その瞬間、神田は俺に向かって高速で突っ込んでくる。

俺の風刃もモーションを見て判断してるのか躱されるか、盾で塞がれる。

なんだ?機動力だけじゃなくて、動体視力も上がってるのか?身体能力の全体的な向上ってとこかな。

便利な能力だ。


だけどこのまま近づかせるつもりはない。


「逆風!」


俺は向かってくる神田に、空裂き戦でかなり苦しめられた経験のある技を放つ。


この技は広範囲な、簡単に言えば相手にとって向かい風を起こす。

内容はシンプルだが、その威力がおかしく、普通にくらえばこちらに踏み込むことはほぼ不可能。

頑張ってもその場に踏みとどまるのがやっと。

俺はバッタの強靭な脚力とシャドウウルフ化で一歩一歩なんとか近づけたが、それくらいフィジカル強化系の能力がないと前に進むことは困難だと思う。


「風刃乱舞ッ!」


身動きが取れなくなった神田に追撃を放つ。

風刃乱舞って言ってるけど、ただ風刃を連発するだけなんだけどね。


「ぐわっ!」


ただこれを凌げるやつはそうそういない。

ギリギリで踏ん張っていた神田も、逆風に混ざって追撃してくる風刃を盾で防ぎきることができず、脚に一撃をもらったタイミングでバランスを崩し後方に吹き飛ばされる。


俺は、神田を壁にはりつけにしたまま近づく。


「勝負ありっすよね?」


確認するが、神田は激しい向かい風のせいでまともに喋ることができない。


「そこまで!」


代わりにここで峯岸が試合終了の合図を出したことで俺は風を消した。


神田は前のめり倒れるのをなんとか、踏ん張って耐えた。

プライドが倒れるのを防いだか。


峯岸が俺の方へ笑顔で近づいてくると、口を開いた。


「お疲れ様。藤沢君、異能治安局東京支部は、君をS級隊員として歓迎するよ。」


お、やっぱり?A級の神田に勝ったからなー。

神田はなんか少し悔しそうな顔をしてる。


「新人でS級は、久しぶりだ。これからの活躍を大いに期待するよ。」


しれっと観戦に来てた職員たちがざわつく。

まあ、そりゃそうか。

こうして俺は、正式に異能治安局東京支部への配属が決まった。


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