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@彼女
「え?」
瑞希を上に乗せたまま、俺は聞き返した。
"え?俺の聞き間違いか?"
「…隼人、好き」
聞き間違いじゃなかった。
今度は、ハッキリ聞こえた。
「瑞希?」
チラッと横目でみると、真っ赤に染まった瑞希の耳がみえた。
バタバタ、バタバタ、パタパタ
"!!!"
さっきまで、向こうの遊具にいた小学生たちが駆け寄ってきた。
「なにしてるの?」
「ねぇ、ねぇ、自転車たおれてるよ」
「どこか痛いの?」
「どーして、くっついてるの?」
子どもたちは取り囲むと、一斉に話しかけてきた。俺が、どうしたらいいか困惑していると、
1人の女の子が、心配そうに、瑞希を覗き込んだ。
「あれ?お姉ちゃん、泣いてるの?」
「えー、お兄ちゃんに泣かされたの?」
子どもたちが、ガヤガヤ騒ぎ出す。
「ぃや、ちがっ」
俺の反論する声は、子どもたちには届かない。
すると、俺の首にまわしていた瑞希の腕が、すっと離れた。
彼女は、心配してくれた女の子の方を向くと
「あのね、お姉ちゃんね、やっと…」
「やっと?」
女の子が、首をかしげた。
「やっと、このお兄ちゃんの彼女になれたから、うれしくて、泣いちゃった!」
"えぇ?!お、おい、瑞希っ"
「なんだぁ~、ラブラブかぁ」
キャー、キャー
女の子たちが、騒ぎ出した。
「おい、瑞希!」
俺が瑞希の名前をよぶと、彼女は、振り向いた。
「ダメ?」
「ダメなわけない、だろ…う、うれしかったりする。」
瑞希の満面の笑みが、そこにあった。
@それからの、2人
「瑞希ぃ~、遅れるぞ~」
俺は、玄関で、リュックを背負いマウンテンバイクの鍵をとった。
「待って~。あ、ニャン吉、いってくるね。」
パタパタ、パタッ
瑞希が、ようやく玄関へ来た。
「遅れるよ」
「うん。さ、行こう。」
駅までは一緒に歩く。
「今日もあっちぃなぁ~」
夏の太陽が、もうヒリヒリと照りつける。
「ほんと。あ、でも、今日、夕立あるみたいだよ。隼人、自転車でいいの?」
「ん~、ま、なんとかなるだろ」
「じゃぁ、また。あ、今夜は19時にO駅前ね!」
そういって、瑞希は地下鉄の入り口に走って、消えていった。
半年前、銀杏の舞い散る黄色い公園で、俺は5年越しの告白をした。
小学生たちに囲まれて、祝福され、俺と瑞希は付き合い出した。
春になって、大学を卒業した俺たちは、一緒に暮らしはじめた。
初ボーナスもお互い入って、旅行でもしようかと、ひそかにリサーチしていたのに。
「ねぇ、次の土日。地元、一緒に帰ろう?ボーナス入ったし」
「え?」
「…ん~、うん。隼人のご両親にも挨拶…久しぶりに会いたいし。高校の友だちにも会いたいしさ。」
「ふ~ん…うちの両親なんて、放っときゃいいけど…」
「うん。でもね、隼人と付き合ってること、ちゃんと報告しときたいの。だって、隼人とのこと、大事にしたいから。」
"そっか、じゃあ、俺も瑞希の両親に会うとするかな…
なんだかな…まるで婚約報告みたいじゃねーか"
@ランウェイ
「…はい、そうです。それはデスクの一番目の引き出しに、あ、はい…」
帰り、瑞希との待ち合わせ場所まで、バイクを飛ばしていると、事務所から連絡がきた。
自転車を降り、説明しながら歩いていると約束の場所についてしまった。
「隼人、こっち」
瑞希が手を振って歩いてきた。
「あ、じゃあ、すみません。よろしくお願いします。はい、あとは明日。はい、失礼します。」
瑞希が心配そうに見上げている。
「大丈夫なの?」
「ああ、平気。それより、今日はどっか行くのか?」
「うん。こっち」
瑞希に着いていくと、一軒のカフェバーにたどり着いた。
中に入って案内されて、驚いた。
だって、榊とななちゃんが仲良さそうに座っていたから。
「おー。」
俺に気づいた榊が手をあげた。ななちゃんは、少し恥ずかしそうにした。
瑞希が振り返って、ウィンクした。
「ね!ビックリしたでしょ。」
4人で楽しい時間をすごした。想い出話に花が咲いた。瑞希も終始楽しそうに笑っていた。
帰り道、また、あの駅前の信号で待たされた。
「あー、お腹いっぱい」
瑞希は満足そうに、お腹をさわっている。
「あーあ、また太るな、それ」
「もう、うるさい!」
彼女はバックを振り上げた。その勢いで倒れそうになった。
「きゃ…」
「おっ」
うまいこと、キャッチできた。
"あ、信号、変わった!"
俺は掴んだ瑞希の腕をそのまま、引っ張って、横断歩道を渡り始めた。すると、体勢をもどした彼女が、俺から腕をはずし、代わりに手を握ってきた。
彼女見ると、すこし頬をピンク色に染めて、優しく微笑んだ。
停止線に止まる車たちのライトに照らし出されて、
まるで、自分達だけが浮かび上がってみえた。
"俺の自慢の彼女、なんだよ。
もう誰にも渡さない。"
__ fin __
「ミセカイ」さんの「アオイハル」という曲と、そのサムネイルのマカロンKさんのイラストから、想像して描いた作品です。
(作品を書くことは許可を頂いています)
https://youtu.be/8DoSIRG5kwE?si=zIYi-jwRONPnzb82




