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@俺の気持ち
瑞希は、新しい彼と付き合いだして、雰囲気がかわった。ブランド物の鞄を持ってみたり、今まで履いたことのないミュールや、シフォンのスカートといった大人っぽいアイテムがふえた。
そんな、瑞希に俺はとまどった。
ただ、瑞希はいつも嬉しそうにしていたから、黙って見守っていた。
それが、どうだ…
結局半年くらいで、捨てられて。
相手に婚約者ができたって、本当は瑞希と付き合う前から、もう決まってたんじゃないのか?
イラつく…
お願いだから、
俺の大事な瑞希をもて遊ばないでくれ
大切にしてやってくれ
彼女が恋に傷ついて泣いてる姿は、もうこりごりなんだよ…
瑞希も瑞希で、何回おなじようなこと繰り返すんだよ…
もっと、自分を大事にしろよ…
そんな苛立ちから、思わず
「…俺だって、もう限界なんだよ。いい加減気づけよ、もう5年だぞ…」
なんて言葉を吐き捨てて、部屋をでてきてしまった。
俺だったら…俺だったら…
ぜったい泣かせないのにっ!!
「だから、だったら、告白して、お前が瑞希ちゃんのこと幸せにしてやりゃいいじゃん。」
色々、事情を知っている榊に、そう言われた。
* * * * * * * * * * *
「けど…」
「告白して振られたら、友達でもいられなくなったら嫌だー、ってか。アホか、お前。自分の気持ち伝えもせず、他の男のもんになるほうが、許せなくない?」
「….」
「…素直になれよ。…それに…さっきも!ちゃんと話きいてやれよ。"俺だったら泣かせない"んだろ?」
その日、その後は講義もなく、俺は研究室で卒論の作成をしていた。
ふと、気がつくと、研究室の窓から街のビルの向こうに、夕陽が沈んでいくのが見えた。
光が目に入った。
「っ、まぶし…」
俺は作業の手をとめて、コーヒサーバーの横に立った。ブラックで何口か飲んで、後はすてた。
「俺、今日は帰るわ」
まだ残っている研究室の奴らに声をかけて、外へ出た。
いつものように、マウンテンバイクを停めている北門の駐輪場にきた。
「えっ?」
@銀杏並木
停めてある俺のマウンテンバイク。
そこに腰かけている瑞希がいた。
「瑞希…」
俺の声に気がついて、振り返った。
「隼人っ」
彼女は笑って、おいでおいで、と手を振っている。その笑顔に引き寄せられるように、俺は近づいた。
「なんで…」
「ん?あ、榊くんが、隼人が帰るのは、たぶん、このぐらいの時間だろうって。」
「そう。」
"アイツ、なに考えてんだ…
「隼人、一緒に帰っていい?」
「え?いいけど」
北門から駅までは銀杏並木の下り坂が続く。
俺は、バイクを押して、瑞希と並んで歩いた。
黄色い葉が、ときどき舞う。カサッ、乾いた葉を踏む音が重なったり、ずれたり、2人の足取りに合わせて聴こえてくる。
「この道、隼人と並んで歩くの久しぶりだね」
「んー。そうだっけかな。」
「うん。そうだよ。隼人、忘れっぽくなった?クスクス(笑)」
「そんなことねーけど…」
「隼人、コンビニバイトやめたんだっけ?」
「あー、夏頃かな。」
「今は?」
「就職先の事務所で、補助員させてもらってるよ。時給わりといいの。」
「そっか…順調だね。…わたし、内定辞退したいな…」
「もったいねー…」
「そうだね。」
駅横の公園まで来た。
瑞希は、ここから電車だ。
小学生たちが元気に走り回っている。
ベビーカーを引いた若い母親が、足早に通りすぎていった。
公園についた途端、瑞希は下を向いたまま、しゃべらなくなった。
なんだか、俺は居づらくなって、
「…じゃーな…」
と、瑞希を置いていこうとした。
@5年越しの告白
「ま、待って、待って、隼人」
瑞希は、俺のマウンテンバイクの後輪を、ぐっと掴んで止めてきた。
「おい!危ないだろ!手、怪我するぞ」
「あ、ごめん。」
タイヤから外した彼女の掌は土で汚れていた。
「ほらっ」
俺は彼女にタオルを渡して、手を拭うよう促した。
「で、なに?」
「あ、あのねっ」
瑞希は、胸元に手を置いて、ふぅ~と大きく息を吐いた。
「あのねっ、こんなこと言ったら不謹慎だって、言われるかもしれないけど……昨日、隼人が帰っちゃった後、すごい悲しかった。」瑞希の声が、だんだん自信なさげに小さくなる。
「でね…私、やっと、気がついたよ…あ、あのね、わ、私──⚪×△×⚪△〰️」
俺は、気がついたら、彼女の口を手で塞いでいた。
「む〰️む〰️」
瑞希は、必死に何か言おうとして、顔が赤くなってきた。
「うるさい。それ以上は言うな!」
そう言われて、彼女は静かになった。
俺は、そっと、手を離した。
秋風が吹いて、銀杏の葉がクルクルと2人のあいだを舞った。
彼女の髪もなびいた。顔にかかる髪を押さえながら、不安そうに、下を向いている。
「俺、おまえが好きだ。高2の春に初めて会ったときからずっと…」
"い、言った!"
瑞希が、パッと顔をあげた。
「…い、い、1回しか言わないからな!」




