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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
序章:始まりは禍と共に
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屋上の青春、刃物付き

 唯一知っている抵抗の意思が無いことを示す方法が両手を挙げることだったのでとりあえず指先を揃えて天井に向けつつ言われた通りに着いていく。階段を最上階の3階のさらに上、屋上階まで駆け登っていく。屋上へのドアはつい最近柵が一部壊れていたとかで「立入禁止」の張り紙と鍵によって閉鎖されているのだが、桜木さんはドアの鍵部分に手を添えて先ほど俺の首元に当てていた刀で無理矢理開錠し(叩き割っ)てしまった。いつ刀を仕舞っていつ取り出したのか全く分からなかったが、そのことについて質問したら切り殺される可能性があるので口を閉じる。

屋上に出て扉が閉まったその瞬間、また引っ張られて張り倒される。次は組み付かずに喉元に刀を突き付けながら桜木さんは話し始めた。


「無駄なやり取りはしない。()()を今すぐに解け。」


「は…!?能力…?マジで何のこと!?こっちは朝から訳わかんないこと続きでテンパって…」


「無駄なやり取りはしないと言ったのが聞こえなかったの?」


 刀の切っ先が俺の顎に触れて言葉を遮られる。言葉を選ばなければいけないのはもちろんわかるが「知らない」以外に言える情報が無い。どうすればこの状況を治められる?そもそも桜木さんは何者なんだ?クソ…わからないことが増えてばかりで話が一向に見えない…でも話をしないと進まないことは明白だ。わけわからな過ぎてちょっとイライラしてきた心と切っ先に触れて震える体を落ち着かせながら目を見て返答する。


「何て言われてもさっきの通りなんだ…!俺はその能力?なんてもの知らないし、クラスの奴らがどうなってるのかこっちが聞きたいくらいなんだ!信じてくれ!」


「……もういい。」


 果たして対話が通じたのか…それとも対話を諦めたのか…桜木さんの刀は空に向けて振り上げられた。昨日は美しいとすら思った桜木さんの立ち姿が俺の最後の見る景色になるだなんて人生わかんないものだ。今際の際に直面するとこんなにも思考が取っ散らかるとは、思わず祈る様に目を瞑ってしまう。しかしてその刀は振り下ろされこそしたが、俺の頭を半分にすることは無く──


「…はぁ。ミルカさん確認出来ましたか?」


『──できたよ。言ってることに嘘はない…つまりただの暴走ってワケだけど…』


「うーわ、そっちの方が厄介極まりないですね…そんな気はしてましたが。」


 刀を鞘へと仕舞うことなくどこかへ消してしまった桜木さんは胸ポケットに入れっぱなしであったろうスマートフォンから聞こえる声と会話している。また知らない人が増えたせいで疑問が増殖して止まないのだが、とりあえず即殺なんてことにはならずに済んだらしい。やっぱ殺すってならない内に話を始めよう。俺はへたり込んだまま質問を始めた。


「…とりあえず質問からいいですか?まずこんな脅迫紛いなことをすることになった発端とかから教えてほしいんだけど…」


「発端…まずクラスの人達の様子がおかしいことには気づいてたでしょ?」


「うん…何かされたとかじゃないけど、確実にいつものみんなじゃ…」


「彼ら一回も学校から出てないのよ。君が休んだ日からずっとね。」


 どうやら俺が想像してた事態の二段階くらい上を行く事態になっていたらしい。桜木さんの言葉を俺が取り違えていなければクラスの皆で仲良く二泊三日のお泊り会を行ったということになるのだが…もう謎が増え続けることを一旦受け入れつつ、質問を続けていく。


「…ってことはその謎行動をさせてる人が何処かに居るってこと?それでもって桜木さんはその犯人を俺だと思っていたと?」


「理解が早くて助かるわ、でも大きな間違いがまだ一つある。()()()()()。そこはもうわかってるの。」


「いや待てまだ疑われてるのか俺!?信じてくれる流れじゃなかったのかよ!というか動機も証拠もないのに…」


「動機はともかく証拠はあるわ、状況証拠だけど。そもそも貴方の立場が不可解すぎるのよ。貴方のクラスは貴方を中心として回ってる。それこそ休むだけで大騒ぎになるくらいにね…そんな立場に今年の春に転校してきたばっかりの人間が簡単になれると思うの?」


 図星だった。クラス委員には自分で立候補したわけじゃない、皆の推薦があったから2学期から委員になったのだ。生徒会の人達にも関わりがあるが、一学期にあった体育祭の手伝いをほんの少し行っただけで所属している訳でもそれ以外に関係がある訳でも無い。それなのにやけに生徒会の面々は俺を次期生徒会に推してくる。これら全て4か月に満たない間にしか関わってない人間に対する評価だと納得できない人間が居るのも頷けるというものだ。


「いや…!確かにそれは珍しいと自分でも思うけど…有り得ない話じゃないだろ!」


「話は最後まで聞いて。確かに私たちはこれを貴方の意図的な犯行と思って調査していた…けれどどうやら違う、要は自覚が無かったのよ。」


「…え?」


 どこでそう判断したのかわからず間抜けな声で聞き返す。それに対して桜木さんは何ともめんどくさそうな顔でため息交じりに何も理解していなかった俺に対する答え合わせをしてくれた。


「貴方が持つ能力は恐らく()()。その能力が今暴走してしまっているの。」


「洗脳…?暴走ってそんなこといきなり言われ…ても……」


 ようやく抜けた腰が戻ってきたので立ち上がった俺は思わず絶句してしまった。洗脳能力や暴走などという余りに現実離れした言葉の応酬に頭がショートしてしまったのか?否、俺は全く別のものを見て固まってしまっていた。桜木さんが扉を背にしていたからこそ俺しか気づけなかったのだ。


ドアの窓と張り紙の間からこちらを見ている武田の姿を。

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