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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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幽世のギタリスト

 すり抜けた?見間違いか?遠近法で轢かれたと勘違いしたのか?

 琴ノ葉は動転しながらも未だ立ち尽くす少女の元へと駆け寄ろうとする。しかしそんな琴ノ葉の腕を仄香が捕まえた。


「ど、どうしたんですか!?赤信号ですよ!?」


「でもあそこに人が…!」


「人…?」


 琴ノ葉は横断歩道に指を差して訴えるが仄香は手を離さない。このままでは今度こそ彼女は轢かれるかもしれないと思い、また横断歩道へ目を移す。

 しかしそこには既に先ほどの彼女の姿は無かった。


「え…あれ?居ない…逃げたのか…?船額さん見てた?」


「へ…?見てたって何を…」


「横断歩道に居た人だよ!轢かれそうになってたでしょ!?」


「あ、落ち着いて…!その…さっきから横断歩道に人なんて…ずっと()()()ですよ…?」


「…は」


 全身に寒気が走って固まる。吸っていた息が漏れるようなか細い声しか出すことができなかった。

 最初から居なかった?そんな訳ない。流石に居ない人を居る様に見間違えるほど目は悪くない。しかし車がすり抜けたこと、車が減速せず通り抜けたことなどを合わせて考えると矛盾があることは事実だ。俺の頭の中に「幽霊だった」という結論が思い浮かぶ。


「…いやいや…そんな、幽霊とか…そんな…」


 今まで生きてきて心霊体験なんてしたことも無い。そんな話はあまり信じてない口だったので人から聞くことも少なかった。だからこそ俺には耐性が無かったのだ。

 沈黙が俺と船額さんの間に走り、嫌な汗が頬を伝った時だった。


「なんだお前、見えてんのか」


「!?!?!!?!?」


 視界の右端からぬっと何者かの顔が飛び出て俺に話しかけてきた。緊張の糸が張り詰めていた所に突如として現れた予測不能の登場人物に俺は一瞬でパニックを起こし、きゅうりを背後に置かれた猫の如く跳ね飛んでしまった。


「〜!?!?っ!?!?」


「えっ、ちょっ琴ノ葉君!」


 跳ねた俺は思いっきり脚をもつれさせて派手に転ぶ。船額さんにもぶつかってしまったみたいでメガネがずり落ちている様子が視界に映っているが、それよりもマジモンの幽霊がまだ目の前にいることの方が一大事で頭に他のことが入っていなかった。

 故に、俺は今いる場所が()()である事にも気が付いてなかったのだ。


 横からクラクションの音が近づいてくる事で俺はやっと自分の状況に気が付いた。そして今の俺は腰が完全に抜けており避けれないと言うことにも遅れて気が付く。


(あ、マジか終わっ…)


「ダッ…メェ!!!」


 死を予感して走馬灯を見ようとした瞬間、俺の体がえげつない勢いで何かに引っ張られた。この感覚は覚えがある、いやここまで勢い強くなかったけど。これは船額さんの能力だ。

 奇しくも俺の間抜けによって船額さんの閉じていた花がまた開いたみたいだ。良かったよ船額さんいつも頑張ってたからねところでこれ止まらないんだけどこのままじゃ地面にぶつ「おぶぉっ!!がぁぁぁぁ!!」


「あぁ!琴ノ葉くん!ごめんなさい止められなくて…!」


「あちゃ〜やっば、これやり過ぎた感じ?」


「うわぁ誰ぇ!?!?」


 なんだこの状況、もうメチャクチャだよ。


 ◇◇


「いや〜すまないね。あそこまでいい反応されるとは…てか話戻すけど、見えてんだ?」


「うん…もしかしなくても皆には見えてない?」


「私もさっきまで全く見えませんでした…でも今はハッキリ見えます」


 ちょっとグロ目な擦り傷をしてしまった額に船額さんから貰った絆創膏を貼って応急処置をしながら謎の女の子から話を聞く。話してみれば割と活発な印象を受ける人だ。


「単刀直入に聞くけど…君は一体?」


「う〜ん…?多分…幽…霊?になンのかなぁ?」


「本人がよくわかってないパターンあるんだ…」


「少し前くらいに気付いたらこの交差点に立ってンだよね。何でここにいるのかとか何で他の人に見えないかもわからない。記憶が無いんよ〜」


 道沿いの花壇に腰をかけながら幽霊は呑気に説明する。まるで他人事のように聞こえるほど、声からは焦りや戸惑いの感情を感じない。


「記憶が無いって…俺たちはここで起きてる不審事故の原因調査の為に来たんだよ。その…あー名前もわかんない?」


「んにゃ、それはわかるよ。夏踏(なぶみ)レイ、よろしくぅ〜」


「琴ノ葉扇だ」 「ふ、船額仄香です…!」


「扇クンと仄香チャンね〜おけおけ。事故ね〜確かにたまに事故現場ここで見たことあるわ。もしかしなくてもそれ、ウチのせい?」


「そう……だと思う。流石に事故多発する地域に能力者が居て、それでいて無関係なんて可能性低いだろうし…」


「能力者?なんそれウチの事?」


「そっかそこからか…うん、普通の人間にない力を持つ人の事。多分夏踏さんもそうだと思う。詳しいことはわかんないからちょっと着いて来てほしいんだけど…」


「おけ~どうせ暇だったしいいべ。つかずっと暇だったわ」


(ノリが軽い…私が会話に入れなくなるタイプだ…)


 灰香と同様の手順で神社へ連絡&連行をする琴ノ葉一行は行き道で質問会を開きながら(喋っているのはほぼ琴ノ葉と夏踏のみだが)歩いていた。


「さっきもちょっと言ったけどウチがはっきり覚えてるのは名前と幽霊になった後の事だけやんな。自分が何しててどうなって今こうなってるかがふんわりとしか思い出せねー。まぁ多分高校生やってたんやろうけど」


「そりゃ難儀なもので…ずっと気になってたけど背中のケースは?」


「ん?あぁそういやこれもあったな。ウチのギターよこれ」


 そういって夏踏は背負っていたケースからギターを取り出す。見たところ何の変哲もないエレキギターのように思えるが、夏踏が弦を弾くと機器に一切繋がっていないギターから電気の通った音が鳴った。不思議と体の芯に響くような感覚がする音だ。


「このギターがウチの命より大事なもんやった事も覚えてんな。もう死んでるけど」


「その幽霊ブラックジョーク止めてくれ…ツッコミ辛いよ……」


 ナハハっと夏踏は笑い飛ばす。この場で一番明るいのが死人なのヤバいだろ。


「それで…こっちからも質問やけど、なんで二人はウチのことが見えるん?幽霊初めてどのくらいか知らんけど一回も話しかけられたこと無かったよ?」


「うーん……それがわからないんだよなぁ…船額さん心当たりある?見えるようになる前と後で」


「ぇあ!?私!?う、うーん…?思いつかないです、ね…」


 視認条件は未だよくわからないままだ。唯一の情報が「俺は最初から、船額さんは途中から見れた」と言う事のみ。完全ランダムだったらお手上げなんだけど…

 琴ノ葉たちが頭を悩ませていたら夏踏が何やらニヤついて琴ノ葉と灰香の顔を交互にチラチラと見始めた。


「…てかさぁ~お二人どういう関係~?お仕事の内容はよく知らんけど、昼下がりに二人で仲良く行動する仲って事~?」


「はぁ?」「はぁ!?!?」


 何言ってんだと思って呆れた声を出したら同時に俺の声量の2倍くらいの声で船額さんが勢いで否定した。声小さいと思ってたけど、たまにバグったスピーカーみたいに音量マックスになるな。


「いえいえそんな訳ないですよ琴ノ葉君はいい人ですけど私とそういう目で見られるの困るでしょうし私はただ助けてもらったからお手伝いをと」


「超早口で否定すんじゃんwわらうw」


 早口をよく聞くとやはり船額さんの中で俺は友人のラインにも満てないことが伺えて少しげんなりした。そのままハイテンションゴーストトークに巻き込まれながら俺らは神社に到着した。

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