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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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ぼっちとギャル

 念動力騒動から二日後の朝、月曜日を迎えた俺は学校での事件以来初めての登校となる。ホームルームが始まる少し前、俺は職員室の隣の生徒指導室に呼び出されていた。


「琴ノ葉~…呼ばれた理由、わかるよな?」


「………スゥ~…」


「いくら緊急時でも、いや緊急時だからこそ間違えちゃいけない判断ってのがあるだろう?」


「ソッスネ……」


「普通に考えてやっちゃダメだろう?()()()()()()使()()()()()()()()()ちゃ」


「ハイスンマセン……」


 正直朝一で呼び出し喰らったときは爆破のことがバレたのかと思って死ぬほど焦った。けど約束通りミルカさんは何かしら手を施してくれたらしく、俺に疑いが向く事は無かった。しかし放送室からの避難命令、これはバレた。そりゃそうだ。担任のアサちゃん先生なら俺の声だって一瞬で気づくし、そもそもあの場であんな迅速に避難命令を出せる生徒なんて現場にいた俺くらいだ。


「お前がクラスメイトのこと案じてとった行動だってのはわかる。けどだからこそ突っ走るんじゃなくて冷静に動くべきだろう?」


「オッシャルトウリデ…」


 勝手な判断で全校生徒を混乱させかねない行動をとった俺にアサちゃん先生はひどく怒っているようだった。どうやら俺の一連の行動をアサちゃん先生は爆発の現場を見たことでパニックになって勝手な行動をしてしまったのだと解釈したらしい。都合がいいのでそういうことにして朝から説教を喰らっていたのだ。結局朝のホームルームぎりぎりまでお説教は続き、最後に「お前の周りのための行動力は信頼している」的な言葉で締めて解放された。

 ここまでアサちゃん先生が心を痛めて説教を解いた相手が爆破の犯人だと思うとこちらも本当に心が痛む。申し訳ねぇ…


 先生より一足先に教室へ戻る。教室に入っても以前のように俺を囲んで話す人はいない。洗脳解除は上手くいったようで、あの日の友達を止める発言を改めて問いただされることはなかった。と言うよりほぼほぼみんな忘れているようだ。

 武田とも会ったが、話はすれど以前の様な体当たり挨拶も無く当たり障りのない会話をした後に他の奴らの方に行ってしまった。


「……流石に寂しい…ねぇ」


 俺は少し昔のことを思い出した。と言っても高1の話だが。

 中学の頃から俺は友人関係に飢えていた。同い年をまとめ上げ、中心となる人物。そんな人間になれたらと言うのが小さな夢だったのだ。


 それで高校生になって俺は行動を起こした。委員や係、イベントの役員なんかも積極的に取り組んでクラスの中の中心人物になろうとした。けど、結論から言えば俺は浮いただけだった。クラスメイトがそこまでやる気のあるやつじゃなかったこともあり俺の存在はただただ邪魔。こすい内申点稼ぎばっかのつまらない奴と言うのが俺のクラスの立ち位置になった。


 理由は明白。俺は周りを見ていなかった。クラスのリーダーは皆に気を配るからリーダーなのだ。ただの目立ちたがりに務まる枠じゃない。ハブられたという事実だけ見れば俺が被害者に見えるが、只の自業自得でしかなかった。それに気づくのにこんなにも時間がかかってしまった。その上結局洗脳事件まで起こしてしまっているんだから救えない。


「……ナーバスになってきた。桜木さんに相手でもしてもらうか…?」


 彼女のきつい態度は今の俺には寧ろありがたいまである。というか今日はまだ見ていないがどこに居るのだろう?

 そう思って見渡すと桜木さんがもう一人と一緒に教室に入ってきた。


「いやマジウチの居ないとこで出来事起こりすぎ的な?風邪のせいでウチだけ和ちゃんと仲良くなれてないのつらみすぎんじゃん?」


「そ、そう…??」


「マジヤバすぎな〜?お、扇よっすよっす!!ウチおらん間委員の仕事大丈夫だった〜?」


 隣の女子は教室で喋るボリュームとは思えないくらいの大きさで一方的に桜木さんに話しかけ続けてたが俺に気づいて軽く挨拶をしてきた。


「あぁ…おはよ、間取さん」


 彼女の名は間取芳華(まとりよしか)さん。俺と同じクラス委員で、ノリから分かるように常にテンションが高い所謂ギャルという奴だ。


「いや〜和ちゃんとさっきトイレで会ってさ?知らん子や〜って思って話しかけたら転校生だし同じクラスだしで知らん情報ばっかなのヤバくてさ〜しかも学校燃えたんでしょ?ウケる」


 間取さんは桜木さんが転校してきたその日から休んでたから色々知らないのも無理はない。それでも学校で火事が起きたことをウケるで済ませれる精神は正直羨ましい。


「それじゃ、私席あっちだから…」


「ん~また後でね~!てか扇珍しくね?周りに人が居ないの。いっつも集落出来上がってるのにさ」


「あぁ…いや、まぁ…」


 間取さんが知らないのは桜木さんや火事のことだけじゃない。俺が皆と友達を止めたことももちろん知らないのだ。皆は自然に記憶が補完されているが間取さんだけ何にも影響を受けていないから違和感がすごいのだろう。


「その、いきなり変なこと聞くんだけどさ…俺と間取さんってどういう関係?」


「……………は?え?何扇いきなり告ろうと…」


「違う違う違う!!いやマジで違くって……」


「はー何?友達関係で悩みでもあんの?よくわかんないけど…まぁ普通に()()()()()()じゃね?もっと言うなら委員仲間?」


「そっか…ありがと。忘れてくれて良いから」


「いやそんなこと言われてもムズイっつの!」


 今の発言から察するに間取さんは俺の洗脳の影響を受けてない。少なくとも『友達』と言う認識を強制させられていないみたいだな。

 と言ってもそれはある程度予想していた事だった。なにせ間取さんは俺が初めて登校したときも風邪で休んでいたからだ。一番強い洗脳をした日に居なかったから逃れることができたんだろう。もしものことを考えて聞いてみたが杞憂だったようだ。


「…扇、なんかあったんなら言いなよ?ウチに手伝えることあるなら…」


「ありがとう、でもほんとに何にもないよ。気にしないで」


「ふーん…?ならいいや、今日の日誌わたし書くから~」


 何と言うか、まさにこういうところだろうな…友人ではないと言いつつも普段の俺のことよく見てて、違和感があれば心配してくれる。それでいて過干渉はしない。人間として出来すぎている……


 俺のことを能力で友達を作っていた偽物の人気者とするならば彼女は正真正銘、真のクラスの人気者と言うべき人だろう。天真爛漫で人と壁を作らない、悪口や陰口を叩くことが無いどころか基本そう言うことには否定的。しかし真面目すぎず堅苦しくない性格。

 おまけに顔も美人で天から二物も三物も与えられたような人だ。強いて欠点を言うなら押しが強い事くらい?


「俺も見習わせてもらおう…」


 これから人と仲良くなる為にも人から学ばねばならない…そう思いながら前を向きなおす。すると視界の端に何かが…覗いている?

 ドアの隙間に目をやるとじっとこちらを見つめている船額さんと目が合った。


「ひょっ!?」


 船額さんは素っ頓狂な声を出して何処かへすっ飛んでった。

 ……まずは彼女とのコミュニケーションだな…

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