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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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コンクルージョン:シンデレラ

「…今回の落下は緩やかで安心しましたよ」


 桜木さんがため息吐きながら嫌味を飛ばしてくる。しかしその顔は俺を攻撃する時の顔ではなく、ひどく安堵したような顔つきだった。


「ご心配おかけしてどうも。この後はどうする?とりあえず神社?」


「そうですね、今から連絡します。ヒカリは周囲に目撃者がいないか、居たとしたらどれぐらいか確認してきて」


「了解!行ってきます!」


 走って周囲の見回りに行った蝗梠さんを見送ってから向き直る。件の女の子は完全に惚けてしまっていて口が開いたままになっていた。


「大丈夫?いや大丈夫じゃないだろうけど…立てるかな?」


「うぇっあっはい大丈夫です立ちます!」


「良かった。多分事情も何もわからないだろうからそれを説明してくれる人のところに案内したいんだけど…えっと名前聞いてなかったよね?」


「あっはい船額…船額仄香です」


「船額さんね。俺は琴ノ葉扇、よろしく!」


「……///」


「?」


 名前を返しただけなのだが下を向かれてしまった。な、なぜ…琴ノ葉流会話術ではこの喋り出しで失敗することなんて無い筈なのに…!


「希さんに連絡着きました。今すぐに向かって大丈夫だそうです。ヒカリ呼んできます」


「り、了解…船額さんも着いて来てもらえる?」


「わかり、ました…」


 こうして念動力事件は能力者本人にケガも無く幕を引くことができた。しかしここからも面倒なのが能力者と言うもの。船額さんは結構シャイみたいだけど神だとか何だとかの話をすんなり受け入れられるだろうか?笑原さんが綺麗にフォローしてくれるのを祈るばかりだ。

 ちなみに移動中の電車内では驚くほど話が弾まなかった。



 ◇◇


 時は1時間ほど後…

 神社に着いた俺たちは船額さんを希さんに引き渡して休憩タイムに入っていた。多分俺が一昨日受けた説明と似たような事を船額さんにもしてるのだろう。俺ら三人は屋敷の応接間でぐでっとしていた。


「いやーそれにしても琴ノ葉、中々すごいね〜能力のことわかったの一昨日なんでしょ?2日後にはもうお手柄なんてやるじゃん」


 蝗梠さんが日の照っている縁側に近い場所で大の字に寝転びながら褒めてくれた。たまにお尻をさすってるから、能力発動のためとは言え痛いは痛いんだろうな。


「ありがとう…でも賭けは賭けだからね。今度からはもっと安全に同じことができるようにならないとマズいよなぁ」


「本当にですよまったく…まぁミスって落ちても私とヒカリの2人でどうにかしてたんじゃないですか?」


「それ蝗梠さんの負担デカくない?」


 刀で受け止められたら こと / のは になってしまうからやめて欲しい。


「そういえば結局琴ノ葉の能力は名前どうするの?決めてないみたいな話だったじゃん」


「あー…確かに」


 無意識のうちに使ってたからかなのかはわからないが、俺は能力を自覚してから割とすんなり扱えてるんだよな。意図せず命令しても能力が勝手に発動するなんてことも今のところは起きてない。普通は結構苦労するらしい。

 でもなぁ……せっかくなら付けたいじゃん?名前。男の子なんだから、自分の身に何か宿ったならカッコいい名前をつけたくなるものだろう。


「無理して決めるものでも無いですけどね。安定して発動するためのものですから、無くても発動できてる琴ノ葉君なら必要もないでしょうし」


「桜木さんは何て名前付けてるの?」


「え、何で私なんですか…」


「いや参考にしたいじゃん」


 他に知ってる例はそこのアンチヒーローさんしか居ないし…


「…なんか癪なので言いません。けどまぁ、自分が能力のことどんな風に思ってるかで決めればいいんじゃ無いですか?」


 なんかはぐらかされたな。でも一理ある話だ。元々能力を使うイメージをするためのものなのだから、能力が自分の中で連想できなきゃ意味がない。

 俺が洗脳(コイツ)をどう思ってるかと言われると、正直あまり良い物ではない。なにせこれのせいで新しい高校生活を大きく失敗させられてるからな。だから俺の印象で決めると嫌味を込めた名前になりそうなんだが…

 そこで俺は希さんが俺の能力を端的に言い表してくれたことを思い出した。


「…じゃあ、『禍福(かふく)(かど)』で」


 禍福の禍の字は戒めだ。俺の能力は人に迷惑をかけることがあることを忘れないために。

 禍福の福の字は目標だ。俺の能力で人を救うという目的を忘れないために。

 その二つが出入りする俺の口は門だ。だから禍福の門。


「…まぁいいんじゃないです?」


「えーいいの琴ノ葉?もっとカッコよく英語読みさせない?てかかふくって何?」


「君たちさぁ…」


 いい感じのネーミング(当社比)が出来たのに反応が残念な二人に呆れつつ、蝗梠さんに禍福の字を教えていると屋敷に話を終えたであろう船額さんと希さんが入ってきた。


「はーいちゅうもーく!大事な話があるので聞いてくださーい!」


 手をぱんぱんと叩きながら俺たちの前に立つ希さんに体を向ける。見た感じ船額さんはオドオドこそしているが取り乱しているわけではなさそうだ。


「えー説明とか相談を諸々行った結果、灰香ちゃんも神社に加入することになりました~拍手!」


「琴ノ葉君に続いてこの子もですか?今まではほとんど全員一般社会に戻してましたよね?」


 桜木さんが口を挟む。以前説明されたが、能力を見込んで誘われた俺と違って普通の場合は能力の制御が利くようになれば元の生活に戻ってもらうんだと。聞けば俺以前で最後の加入は蝗梠さんで2年前のことらしい。そんな中、急に二人もメンバーを増やすと言うのだからまぁ桜木さんの言い分もわからないこともない。


「灰香ちゃんの神力が離れても感知できる、って話少し前にしたわよね?実際会ってみて再確認できたのだけれど、彼女の神力はあまりにも多すぎるのよねぇ…私より多い人なんて初めて見たもの」


 希さんの神力の量を知らないから何とも言えないが、神から直接力をもらった一族より力が強いなんてあり得るんだ…


「ここまで強いと周囲に何かしら影響を与えかねない。その上灰香ちゃんからも協力したいって提案を受けたので!」


「よ、よろしくお願いします…」


「いいね~いいね~!仲間が増えるのはいいことだ!ね?ナゴもいいでしょ?」


「む………別に拒絶してるわけじゃないですから…よろしくお願いします」


 蝗梠さんに絆されて桜木さんが折れた。俺は反対するような事もないので、晴れてこの場の三人から船額さんの加入が認められる。


「俺からも、これからよろしく船額さん!」


「は…はぃ………」


 挨拶にと差し出した手を握り返す船額さんの手はびっくりするほど弱々しかった。これは受け入れられるのに時間がいるタイプだろうか?俺と船額さんとの出会いは微妙な関係からのスタートとなったのだった。

そんなことねぇよ

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