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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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ディープダイブ イン スカイハイ

いつもより長いですが、書いてて楽しかったお気に入りの話です。

 悪い夢を見ている気分だ。無意識に殺人未遂をして、怖い人たちに追いかけられて、よくわからない力で空まで吹き飛んで、命と同じくらい大事にしているものを失くして。吹き荒ぶ風の音だけが耳に入る。このままどうなるのだろうか?宇宙まで達して死ぬのだろうか?それともどこかで力が切れて落下して死ぬ?なんにせよ明るい未来なんてない気がする。変だな、未来のことを考えたはずなのに頭の中に今までの過去がたくさん浮かんできた。走馬灯と言うやつだろう。


 私のコミュ障は幼稚園の時からだ。別にいじめだとか喧嘩だとかでなったわけじゃない。当時の私は女児向けの魔法少女が戦うアニメより特撮や戦隊モノの方が好きな子供だった。それで趣味の合う同性の子がおらず、かといってヤンチャな男の子と一緒におばかな事をやる性格でもなかったので、私の孤立はいたって自然なものだった。

 その頃から既に友人への憧れはあったが3~5歳の子に解決方法を思案することも出来ず、気づけば小学生になっていた。小2の時女の子が一人、教室で一人本を読んでいる私に声を掛けてくれたことがあった。その時は嬉しくて嬉しくて、持っていたライトノベルの内容をいっぱい語ったのを覚えている。そしてその説明を聞いて何言ってるんだろう?といった苦笑いをして「そうなんだ」とだけ返してくれた顔はもっと忘れない。


 中学の頃はSNSで自作の二次創作漫画や夢小説を投稿し続けたり、給食時間に流す曲に当時好きだったラブコメ原作のお色気要素強めのアニソンリクエストしたり…うわぁすごい。ものすごい黒歴史の数々に走馬灯が地獄絵図になってしまった。ここはあまり思い出さずにスルーしよう。

 そして高校生。私はFan’sの配信に出会った。正確には他の配信者もいる切り抜き動画でだが。友人のいない生活で作った推しは、さながら心の穴を雑に埋めてくれるパズルのピースだったと思う。特に内輪風太郎君の凛々しい声から繰り出される訳わかんない名言は考えることを忘れさせてくれた。


 でももうその生活も終わりだろうか。内輪君の眼鏡も失くした上に訳わかんない力に殺される。ある意味命を二回も落としたようなものだ。一周回って笑えてくる。笑えるはずだ、こんな滑稽な人生。笑って終わってしまえ…なのになんで、なんで私の目から涙が止まらないのだろう。


「う”ぅ…いや…死にたくない!死にたくない!!誰か…助けて…!!」


 振り絞って口にした私の願いを神様は聞き入れてくれたのだろうか。空を飛ぶ私の()()()()()()声が聞こえてきた。


「君!!この眼鏡…内輪風太郎くんの眼鏡…!!君のだろう!!?」


「………はぇ?」


「君のものじゃないかと思って届けに来た!!だから…手を取ってくれ!!」


 目を開くとそこには私が無くした眼鏡を見せつけながら私に手を伸ばす男の子の姿があった。日を背に受ける彼の姿はまるで、あの陰鬱とした日々を救ってくれた皇子様のように、私を光で照らしてくれる救世主のように私の目に映った。

 気が付けば私はその手を握り返していた。彼は私を引っ張りあげて全身で捕まえてくれる。


「あ、あの、わ、わた…」


「大丈夫、落ち着いて?俺は君を助けに来たんだ。とりあえず今はこの状況をどうにかするよ!」


「どど、どうやって…?」


「君の能力(ちから)でここまで飛んだんだ。きっと君の能力(ちから)ならここから降りられる」


「…えぇぇ!?無理、無理ですよ!私この力のこと何も知らなくて、それで…」


「それも大丈夫!使うのは…()だから」


 そう言うと彼は私の目を手で覆うように隠して耳元に喋りかけてきた。さっきまで周りの音を遮断していた風の音が彼の体に遮られ小さくなって彼の声のみが鮮明に聞こえる。


「だから……『今から俺の言う通り体を預けてくれ』」


 そこで私の意識は霧が掛かるように朧気になった。




 よし、ここまでは上手く事が運んでいる。蝗梠さんが上昇し続けるこの子よりも上に行けるかとか落とし物を見せた時に落ち着いてくれるかとか、賭けだらけ・穴だらけの作戦だったが、上手く行っているなら無問題だ。ここからはある意味さっきまでよりも安全かもしれない。なぜなら一度だけ経験があるから。神社に加入が決まったその日に希さんと笑原さん、それと何も知らない蝗梠さんの協力の元で俺の能力の検証会を行った。仕事をするにしてもまたいつ暴走するかわからないのでは使い物にならないからな。


 その時わかった事の一つに「洗脳の強弱」があった。洗脳条件を満たしていても軽くお願いするだけなら、相手の浅い意志を変えるくらいしか出来ない。けれど俺はクラス全員の潜在意識を歪ませた経験があるからもっと強い洗脳ができることはわかっていた。それで色々蝗梠さんで試した結果、洗脳の強弱は「命令する時の俺の意志の強さ」と「相手の抵抗する意志の強さ」、そして「命令を聞く時の集中」が関わることが判明した。これがわかるまで洗脳しまくられた蝗梠さんには頭が上がらない。終わったら全部忘れてたけど。


 話を戻そう。この強い洗脳は相手の無意識下からすべてを支配できる。つまり相手の出来ることなら何でもやらせられる。能力の発動もだ。ここからはまだ推測だが、無意識下からの支配ならばまだ能力を制御しきれていない人も間接的に制御することができるのではないだろうか?と言うのが今回の作戦の肝だ。後は彼女の能力さえうまく使えれば…


「落ち着け俺…焦ったって状況は変わんない…ふぅ…『上昇せずに留まれ』」


 未だに上昇し続けもうすぐ飛行機が飛ぶくらいの高さに達するところで、命令に従い能力が停止した。


「……っしゃぁ~~……『ゆっくりそのまま垂直に降りろ』…お、降り始めた」


 ふわふわと服をたなびかせながら降りていく。女の子を絶対落とさないように抱きしめつつ能力が切れないよう意識を向け続ける。時間にして5分程降下し続けてようやく元いた位置に下りることができた。先に失敗に備えて下りていた蝗梠さんと桜木さんが出迎えてくれる。


「すっげぇ~もうあんなに使いこなしてるんだ?」


「ははは…おっとその前に洗脳解かなきゃ。『もう大丈夫。起きて?』」


「ん…?」


 意識が戻ったら男の子にお姫様抱っこされてました。状況が若干飲み込めないけど、おそらく助かったと思われます。


「これも忘れないうちに…もう落とさないようにしてね?」


 私を優しく下ろした彼はまだ腰が抜けて立てない私に眼鏡を掛けさせてくれました。空で見た光景がまだ目の裏に焼き付いていたせいでしょうか?彼の顔を見ると私は動悸が止まりませんでした。

内輪君のファンネームは「内輪ノリ」、ファンマークは扇子の絵文字です。(今考えた)

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