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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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ふらいあうぇい

 走り去った女の子を追いかけた俺たちは割とすぐに見つけることができた。というのも路地裏から何かを破壊するような大きな音がしたので向かったらそこに立ち尽くしていたのだ。場所は昨日調べたあの路地裏。これはどんぴしゃで正解じゃないのか…?

話しかけ方を考えている間に桜木さんが先に声をかけてしまった。


「…ごめんなさいね、何やら焦っているようだったから。良かったら手伝いますが?」


「え、いや、そ、そ…」


 桜木さん詰め方怖すぎるって…後ろで蝗梠さんも無言で見つめてるから、側から見たら完全にカツアゲしてるヤンキー女子だ。女の子完全に萎縮しちゃってるし割って入った方がいいかと思ったが、俺が言葉を発するより桜木さんが詰める方が早かった。


「ここら辺で()()があったんですよ。人が突き飛ばされて車に轢かれるっていう…原因もわかってないですし、危ないんですよ」


 俺の時もそうだったが桜木さんは疑ってる時、わかりやすく態度に出る。威圧感もあるし、体験した身からすると女の子が可哀そうで仕方ないんだよなぁ…

 流石に見てられず助け舟を出そうとした時だった。女の子が震えながら声発し始めたと同時に嫌な予感が体を走る。


「どうしました?事情を聞かせて…」


「わ、私…知らない…関係ないです!」


「っ!?やはり当たりでしたか…!!」


 涙目になった女の子が声を張り上げた瞬間、桜木さんの体が()()()()()()。後ろで見ていた俺と蝗梠さんが一斉に動き出す。蝗梠さんは桜木さんに飛びつき今に吹き飛びそうな体を自分の重みで引きずり下ろす。一方俺は、桜木さんが浮き上がったと同時に逃げ出してしまった女の子を追いかけるために路地裏へ。


「待って!落ち着いて話を聞いてくれ!」


 ファーストコンタクトがマズかった。能力の強力性に気を取られて警戒しすぎたのだ。警戒は相手に不快感を生む。加えて俺と同じくいきなり能力が目覚めて、その上頼る人もいなかったのなら情緒が安定してなくてもおかしくない。要は完全にテンパってしまっているのだろう。さっきから落ち着く様に(洗脳)を掛けようとしているが効果無しだ。


「くっそ…不用意に触れたら俺も吹き飛ぶ可能性があるし……止まってくれ!お願いだから!」


「嫌…逃げなきゃ…わ!?わわわわわ!!??」


 しかし次に浮き出したのは俺ではなく女の子の方だった。今度は横方向ではなく、上方向へ一瞬で飛び上がってしまった。飛び方を見るにかなり不安定だ。いつ壁にぶつかったり急降下するかわからない。そこに蝗梠さんと桜木さんが追い付いてきた。


「あの子は!?」


「上!多分暴走してる!」


「任せて、アタシなら届く!ナゴ!」


 蝗梠さんが前に出てクラウチングスタートのように体勢を低くし尻を突き出してきた。何事かと思う暇もなく桜木さんはそこへ全力の飛び蹴りを喰らわせた。


「い”っっっ………てきます!!!」


 彼女の名誉のため、解説を行う。蝗梠ヒカリの能力”反抗的な英雄(アンチ・ヒーロー)”は条件を満たす事で一時的に身体を強化するものである。その条件とは「()()()()」だ。焦り、怒り、恐れなど多くの感情を糧に彼女は体を強くできる。それは痛みによる苦痛も例外ではない…その上、体を常に鍛えている桜木の蹴りがもたらす苦痛は生半可なものではなかった。


「ふっ!ほっ!とっ!どっ!けぇぇぇ!!!」


 壁を蹴りあげて建物の側面を駆け上がり、屋上を蹴り飛ばして空飛ぶ少女に手を伸ばす。その手は見事少女の足首を掴むことができた。


「掴んだ!そのまま降りてこい…!」


「きゃぁっ!い、いやっ!」


「えっ」


 しかしまたしても強い力でヒカリはいとも容易く突き放されてしまった。そのままヒカリは勢いよく路地裏は落下してしまい地面へ叩きつけられる。


「蝗梠さん!」


「だぁーっ!掴んだけどダメだ!力が強すぎる!」


 頭から逆さまに落ちたヒカリだったが流石は身体能力強化、無傷のようだ。しかし問題は継続中。まず空まで届く必要がある上に、近づいた時に吹き飛ばされないようにしないといけない。

 せめてあの子の能力の暴走だけでも抑えられれば……

 …いや何を弱気なこと言ってるんだ。出来るだろう、俺になら。この口ならば。ふと希さんに言われた言葉を思い出す。「口は禍福の門」…今こそ俺の口から福を招く時なんだ。


「2人とも!一つだけ案がある!俺を上まで連れてってくれ!」


「ダメよ!ヒカリじゃなきゃ落ちて死ぬわよ!?」


「わかってる…けどこのままじゃ死ぬのはあの子かもしれない!そんなこと絶対させたくない!」


 桜木さんは言い返そうとするが時間が無いこと、他に案がないことを考えて言いたいことを飲み込む。苦虫を噛み潰したようなその顔は、また琴ノ葉の策に頼ることへの拒絶か、それとも他者の命を危険に晒すことへの拒否反応だろうか。


「…とりあえずやって欲しいこと言って」


「やることは単純。俺を背負った状態でさっきみたいに蝗梠さんがあの子の元にいけばいい。ただ今度はあの子の上に行きたいんだ」


「んー…おっけ!ナゴもう1発キツいの頂戴?」


「わかったわよ…けど何する気?貴方の能力を使うにしても空じゃあ話なんて聞いてくれないんじゃないの?」


 ヒカリの背におんぶされながら桜木の質問にニヤリと笑いながら扇は返答する。


「そうだね…だけどどうしてもこっちを見てしまうくらい気になるものがあれば俺の方に耳が向く可能性はある…」


そう、例えば休みの日にわざわざ外に出てまで探し回るくらい大切な落とし物…とかね。

俺を乗せたロケット:ヒカリ号は桜木さんの蹴りを合図に空へと飛び出した。

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