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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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イントロダクション:シンデレラ

 昨日に引き続き事件現場周辺で調査、今日は土曜日で休日なので蝗梠さんも一緒だ。


「でもさー正直アタシ達だけで探すの無理じゃないの?ミルカさんに手伝ってもらうべきじゃんか」


「今日と明日は集中したいとかなんとか…琴ノ葉君の件で仕事中断してもらっていたししょうがないんじゃない?」


 希さんから聞いたが桜木さんと蝗梠さんは幼馴染と言うやつらしい。性格がかなり違う二人だが関わってきた年数が年数のため他人目線でも仲が良いのが伝わってくる。と言うかそれが原因でさっきから話の輪に入れていない。濃い一日を過ごしたせいか桜木さんとはそこそこ話せるのだが蝗梠さんとはまだまだなんだよな…


「そういえば蝗梠さんの能力の内容すら聞いてないや。昨日の話で身体能力強化って事だけは桜木さんが言ってたけど…」


「んー?そっか琴ノ葉にゃ言ってなかったけな。アタシの能力はね!その名も!!”反抗的な英雄(アンチ・ヒーロー)”!!!」


「アン…なんて?」


 日曜日の朝くらいに見たことある気がするポーズを取りながら蝗梠さんはドヤ顔している。いや説明足りないって。どっから説明を求めればいいんだ?


「ヒカリ…いつも言ってるけど能力名だけじゃ内容伝わらないから…」


「桜木さん、もしかして皆能力に名前付けてるの?」


 いやクール美人感だしてる桜木さんとか第一印象完全反社の笑原さんがいちいち能力に名前を付けてるわけ…


「付けてますよ」


「うそぉまじで!?」


 曰く、能力を円滑に使用できるようになるための最初のステップが名付けらしい。開花したては能力を使いたい時に使う事すらままならないため、名前を意識しながら能力を使用することで使い方を体に覚えさせるらしい。一昨日に神社で簡単な能力チェックは行ったがそこまでは教えられなかった。


「と言っても慣れれば名前も意識せずに使えますから…ヒカリは気に入ってるからずっと名前言うの止めないんですよ」


「だってかっこいいじゃん?世の悪に反抗アンチして正義を守る英雄ヒーロー!前にテレビか何かでこの言葉聞いた時からかっこいいって思っててさ~」


「……ねぇ、確かアンチヒーローって…」


 さっき取ってたポーズや今の解説聞く限りだと蝗梠さんが目指してるのはがっつり善性のある正義のヒーローだろう。それに対してアンチヒーローって真逆の手段を選ばない系の半分悪みたいなヤツのことでは…


「言ってあげないでください…微妙にズレてるけど本人が納得してるんですから…」


 桜木さんが遠い目をしている…これは前にも言ったけど相手にされなかった…そんな顔だろうか。


「それなら俺も考えとかないと…うおっ!」


「きゃ…!す、すみません!」


 曲がり角の死角から人が飛び出してきてぶつかってしまった。かなり急いでいるのだろうか、ペコっと一度頭を下げてすぐに走り去ってしまった。同じくらいの高校生に見えたが、少なくとも知り合いではないな。見覚えが無い。


「あ…こっちから謝り返す暇もなかった…」


「……」


「…?桜木さんどうかした?」


 いつものノリなら「周りをよく見ないから人にもぶつかるし知らない内に洗脳なんてするんですよ、もうちょっと周りを顧みる努力をしたらどうですか」くらいは言ってきそうなのに。…なんだか心の中の桜木さんに罵倒されて少し悲しい気分になってしまった。


「…今の人ちょっと気になりますね」


「今の人が?まぁ焦りようから察するにかなり切羽詰まってるのは俺にもわかったけど…それだけで?」


「よくわかんないけどナゴが言うなら多分怪しい!」


「俺だって財布とか大事なもの落としたりしたらあれくらい…」


「貴方が拾った眼鏡、そこそこ貴重なんじゃなかったですか?」


「ぐ…た、確かに…」


「どうせ手掛かりもないんです。確かめるだけ確かめますよ」


「よくわかんないけどナゴが言うなら多分正しい!」


 この他責任ヒーローめ!桜木さんに言われるがまま走り去ってしまったあの女の子を追いかけるため俺たちは走り出した。



 ◇◇



「…ない……ない………ない!!!」


 忌々しいあの場所へわざわざ戻ってきた私だったが、結果から言えば空振りだった。落としたであろう眼鏡はどこにもない。心優しい誰かが踏まれないように端に寄せたり何かの上に置いてくれていないか探し回ったが見つからない。強いて言うなら花束が置かれていないことから一昨日のあの人は死んでいない可能性がまだあることが私にとって朗報だろうか。


「えぇ…そんな…交番に届けられてる?盗まれた?うぅ…」


 どの可能性もあるが確かめようもない。交番は近くにないから届けられたとて何処かすらわからないし、価値を知っている人が居たらパクられてもおかしくはない。何せ私のおこづかい半年分に誕生日プレゼントの権利を合わせてようやく手に入れたグッズだ。フリマアプリで転売でもすればそれなりになってしまう。


「い、いや…まだ何かの下に飛んでった可能性もあるし……ほら!この室外機の下とか…」


 自分を鼓舞するために前向きな言葉(?)を口に出す。よく考えたら現実逃避だが、よく考えなければいい話なのだ。


「室外機って重いよね…?でも地べたに寝そべるのも…ちょっと傾けるくらいなら…」


 室外機を少しずらそうと力んだが、思った数十倍手ごたえは軽かった。


「あれ?意外と軽いんだ?ってやっぱり下にもない…」


 がっくりしながら手を下ろす。ため息を吐きながら顔を上げると私の頭の上ぐらいに浮遊する室外機が目に入った。


「…ほわぁぁぁ!そうだったぁ!!」


 びっくりして飛び退くとガシャァン!!と大きな音を立てて室外機が落下した。忘れていたがこの謎のパワーも私を悩ませていたのだった。あの日から今の間まで再現できなかったので完全に頭から抜け落ちていた。これとナンパ男のその後、眼鏡の行方、一体どれから手を付ければ…


「すみません」


「へ、へい!?」


 いきなり声を掛けられてびっくりしながら振り向くと、そこには女の子が立っていました。けれどその目つきは私の隠し事をすべて看破しているような目で。

 あぁ…なんで私は迂闊に外になんか出てしまったのでしょう。私は私自身への恨み言を心の中で呟いた。

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