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口は禍の門-琴ノ葉扇の不可思議結友譚-  作者: 角笛譲治
第一章:舞踏会のご案内 仄暗い路地裏より
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灰の香る少女

時は琴ノ葉扇が神社へと加入した日の朝まで遡る───



 午前8時ごろ、多くの学生がまだ眠たい体を動かしながら学校へとやってくる。やれ今日の1時間目が物理だの今日締切の提出書類を持ってきたかだのやいのやいのと言いながら校門へと皆足を運んでいるのだが、おそらくこの中でわた「やっほ!!!和歩(かずほ)おっはよ~!!」


「きゃっ!もぉ…おはよ。毎回後ろから飛びついてこないでって毎日……あ、ごめんなさい!ぶつかっちゃって…」


「あ、いえ、だい、だいじょぶです。ハイ…」


「ほんとにごめんなさい!…もぉ凛ちゃん!危ないでしょ??」


「ごめんって~あはは…」


 後ろから不意にぶつかられて人の挨拶に巻き込まれる。ぶつかってきた人からの謝罪にもそろそろ慣れてきてしまっている。

 朝っぱらからテンション高めなクラスメイト?(知らない人)の挨拶を皮切りに誰かもわからない人の挨拶をすり抜けて教室へと向かう。同じ学年っぽい男子数人、顔は見たことあるけど喋ったことない女子数人、何の教科担当かわからない先生、何の集まりかわかんない先輩。その脇をすり抜け、隙間を縫う様な華麗な足取りで誰とも会話せずに廊下を行く。途中びっくりするくらい静かな教室を見つけて「なんだこの安住の地は」と思ったが、他の教室を眺め続ける暇なんか無いため素早く通り過ぎる。他人に巻き込まれない為には素早さが命であるがために。


 これこそが私、船額(ふながく)灰香(ほのか)の朝なのだ。そう、私は知り合いや友達が極端に少ない。というか普通に会話する人はこの学校に居ない。別に嫌われるような事をしてるとかカーストの高い陽キャ女子の地雷を踏んでハブられている訳でもない。シンプルに人付き合いが苦手が故に高校二年生になるまでの間一人ともまともな人間関係を築くことなくこの日まで過ごしてきただけだ。ここまでぼっちを拗らせてきた私レベルの陰キャともなれば友達のいない生活など全くもって問題ないのである!!!ワーッハッハッハッハ!!


 ……………う”そ”で”す”ぅ”ぅ”ほ”ん”と”は”お”友”達”欲”し”い”で”す”ぅ”ぅ”ぅ”!!!後ろから激突してくるくらい激しい朝の挨拶したいんですぅ!朝から今日の学校の怠さを共有・共感しながら教室まで上がりたいんですぅ!朝から凱旋の如く挨拶回りするなんて夢も見ちゃっているんですぅ!!でも友達の作り方わかんないんですぅぅ!!!


 これは心の中で大粒の涙を流し、嗚咽をあげている、そんな彼女に()()が訪れた最初の一日…





 どうも皆さん、私です。船額です。登校から数十分が経った今私はどこにいるのか?運動場です。いえ、次の時間体育じゃないです。教室で本読んでたらいきなり火災用非常ベルが鳴り避難命令も出て皆避難して始めて、列に入りそびれた私は一人で流れに従って避難してきました。誰も私に声かけてくれなかったですし、居ないのにも気づかれてなかったぽいです。まぁ遅れた私が悪いんですけどね。列の中で独りぽつねんと時が経つのを待っていたのですが、結局火事が鎮火された後即下校となってしまいました。個人的に本を読む場所が変わるだけなのでそんなに困ることはないですね…せっかく空いた時間ができたのなら本屋にでも寄っていこうかな…


 校門周りが人でごった返す前に即時退散!本屋は大きな店に行くのもいいですが、個人的には色んな店を巡って珍しい一冊を探すのが好きなので今日は家に向かうまでに書店をいくつか回ってみようと思います。さて、今日はどんな本に出会えるのでしょう……シンプルに小説もいいですがエッセイだって魅力的なもの多いですし詩集だって…


「ねぇねぇ君、その制服…近くの玖発峯(くはつみね)高校だよね?こんな時間に何してるの?」


「ひゅぇぃ?」


 話しかけられるのを想定していなかったので「はい?」という二文字だけで噛んでしまいました。と言うかもしやこれはナンパと言うやつなのでしょうか?


「いや普通学校行く時間なのにこんな所いるってことはさ、()()()なのかなって?」


「ほ、いえ、ちが、違くて…」


「だーいじょうぶだって…俺も()()()だから遊びたくてね?一緒にどう?って誘いに来たんだけど」


「ひっ、あのっや…」


 男が肩に手を回してきて抱き寄せてきた。心の中ではいくらでも吠え散らかせるし罵倒だって言える。けれど現実で手を出されれば私は文字通り手も足も出ない。無理矢理引っ張られるように路地裏の道に連れていかれても掠れるような声しか出ない。そもそもナンパだなんて人生初めてだから対処方法すら知らない。でもこのままじゃ…

 色々考えた末、足を止めて抵抗を始めるに至った船額。しかし男からしたらそれは抵抗にも満たなかったようで…


「ん?どうした?ほら早くこっちおいでよ……!」


「きゃっ…!!」


 男と接触して眼鏡が地面に落ちる。度は入っていない伊達メガネなので視えなくなるわけではないが大事なものなのだ。今すぐ拾いたいが男が許してくれない。


「あれ、髪と眼鏡でわかりにくかったけど顔超美人じゃん?」


「…っ……っ…」


 瞳に涙がたまってきた。私がどうしてこんな目に?ここで助けてくれる友人がいれば違ったのだろうか?普段から人と関わっていたら拒絶出来ていただろうか?そんなこと言ったって仕方ないじゃ無いか。成れるのなら成りたい私に成りたかった。そんなことで、それだけで私は汚されるのか?

くそ、くそ、くそっ!…言ってやる。どうせ人生最悪の日になるなら何したって同じだ。私みたいな芋女にすら拒絶される屈辱を味わって最悪な気分になって萎えてしまえ!


「…………け」


「あ?」


 ありったけ息を吸い込んで、一息で吐き捨てる。


「う、うるさい…()()()()()!」


 押しのけた手は空振り。しかし肩を握っていた感触が消える。それどころか人の気配すらも。恐る恐る顔を見上げたが路地裏に男の姿は見当たらない。質の悪い幻覚でも見ていたのか?いやそんなことより眼鏡…そう思って振り返った時に見てしまった。



道路に倒れるさっきの男が車に轢き潰される瞬間を。

仄香ちゃんの髪は二つ結びで色はグレーです。

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