少年は焦り、惑い、そして笑う
ジャンルを文芸展の為に変更したせいかランキングに載ったみたいで驚きました。使用の穴を突いた裏技みたいな方法だとは思う(なのであまりよろしくないことかも知れません。知らずとは言え申し訳ないです。)ので素直に喜べませんが、見ていただいてる人がいるのは事実なのでそこはとても嬉しいです。ありがとうございます。
俺からの返事を聞いた希さんは心底楽しそうに笑いながらお茶を飲んでいる。桜木さんは何やら浮かない顔をしているが。それでも桜木さんから否定の言葉は出てこないのを見るに、俺が組織に入ることをある程度予想して受け入れてたのだろうか?
「ふふっ…別に今日じゃなくったって一回帰ってからでも遅くなかったのに、ずいぶんと早く覚悟が決まったようですね?」
「あ、確かに…でも決めた覚悟を鈍らせたくはなかったので!」
「また無鉄砲が発動して体が動いたんでしょう…」
「うぐ…」
「まぁ掛かり気味なのは否定できないでしょう?まだ詳しい内容も喋ってないしね。せっかく渡辺さんからのご厚意で梨ももらったので、これとお菓子でも食べながら話すとしましょう。重たい雰囲気で続けるのもなんですし…」
さっき渡辺さんから貰った梨と希さんが持って帰っていたお菓子とでパーティが開かれようとしたその瞬間玄関が開かれる音がした。そういえば他にもメンバーがいる筈なのに挨拶すらしていなかったな…失礼を働く訳にもいかないため、座ろうとしていた体を正して気を付けの姿勢で出迎えよう。これならどんな人でも悪印象を抱かれる事はな……い…
現れたのは180センチは優に超えているであろう長身にスーツを決めた男性だった。眼鏡をかけているがその目は剃刀かと言うほどキレ目で顔を見られるだけで委縮してしまいそうだ。何より頬に付いている切り傷のような跡が強面の印象を50倍くらい跳ね上げている。
「笑原さん、おかえりなさい」
「おうただいま…あ?誰コイツ?」
え?ヤ〇ザだ。〇クザ入ってきた、ヤク〇入ってきてますよ希さん早く気づいて!桜木さん早く刀出して刀!!ていうか気を付けしてて良かったぁ!!!胡坐とかかいてお菓子貪り食ってたら「は?俺の前で何胡坐かいてんの?小指出せ詰めてやるからよ」みたいな展開になっていたに違いない。いやでもこっからどうするの俺?下手に身動きしたら詰められそうで怖い!!
「彼はこの前から追っていた高校の能力者です。ほら、わざわざ転校して調査することになったじゃないですか。その件の人です」
「あぁ…ここに上がってるってことは敵意は無かった訳だな?もっというなら片は付いたワケか…お前名前は?」
「はいっ琴ノ葉扇と申しますあの今回は神社の皆さまに助けていただき大変ありがたく思っており今後ともお手伝いをさせたくなので小指だけはどうか勘弁してうぐぉ…」
「落ち着いて。この人は神社の副リーダー的な人だから」
え?副リーダー?何てことだこの神社はヤ〇ザの事務所でもあったと…?いや流石にそろそろ落ち着け俺、これ以上テンパって喋ると本気のパンチを桜木さんからお見舞いされそう…と、とりあえずこの人の風貌はともかくリーダーである希さんが行っている活動は本物だってことは渡辺さんを通じてわかってるんだ大丈夫だ…
「おう悪いな威嚇するような出で立ちでよ。ここで活動してる笑原翔だ。」
「あ、はい…こちらこそよろしくお願いします」
「カタギだから安心してくれ。…今はな」
「……(無言で桜木さんに近寄る)」
「え何狭いんだけど止めて」
無言で求めた助けはなんとも空しく振り払われてしまった所で今まで黙っていた希さんが声を発した。何やらローテーブルの下でゴソゴソしてたみたいだけどどうかしたのだろうか?
「今琴ノ葉君に私達の活動内容を説明しようとしてた所なの!彼、私達に協力したいってさ!」
「おおいい意気だなそりゃ。それでその下の袋は何だ?」
「…別にただのお菓子の入った袋デスガ…」
「おぅんなもん買ってきたのか。レシートは?」
「わ、忘れちゃった」
「そうか袋見してみろ。…なぁんかやけに個包装の小せぇ菓子とか駄菓子が多いなぁ?なぁ希…いくら勝ったんだ?」
「…今日は1000円とちょっと」
「ふぅーっ……希ィ…洗濯板の刑」
「そんなぁ!勝ったのにぃ!」
何が何だかわからないが何やら笑原さんの方が立場が上に見えるが…?普通にお菓子を持ってきた訳じゃなかったのか…??
その後、希さんがギザギザした洗濯板の上に正座させられて悶えてる様子を見た俺からの流石に説明が欲しいとの要望に笑原さんは答えてくれた。どうやら希さん、重度の賭け中毒らしく一度怒られて以来禁止令が出てるそうだ。しかし度々目を盗んでは息抜きしに行ってバレないよう菓子に交換してるらしく、見つかるとこうなるらしい。
「お前能力使うなよ?この前みたいに2mm浮いてたりしてみろよ…」
「…う、浮いた場合は…?」
「5mm沈める」
「プラマイマイナスぅ!?あだだだだだ…」
嘘だろ俺この人に数分前感銘を受けて人生で最大級になるかもしれない決断したんだぞ…今洗濯板の上でくねくねしてる人に…
「悪ぃ待たせたな。活動内容だったか?俺が説明する」
「あっ放置なんですね…よろしくお願いします」
「基本この近辺の地域のパトロールが主だ。ここは統計的に能力者が多くてな…都心にも近いから流れてきた能力者とかも来やすい。その他には情報屋から貰った情報で少し遠出もしたりする」
俺の学校潜入もその遠出の一つか…転校とかは俺には難しいだろうが学校終わりにパトロールくらいなら俺にもできるはずだ。
「だが大事なのはそこじゃない…いいか?当たり前だが能力は危険だ。お前含めここにいる全ての能力者は人を簡単に殺せる」
「…!」
「それは野良の能力者もそうだ。中には積極的に危害を加える者もいる…そんな奴らをお前は相手しなきゃならない…その覚悟はあるんだな?」
俺は少し驚いた。仕事内容や笑原さんの発言にではない。引くこともたじろぐ事も無く意思が変わらない己の精神にだ。もう少し自分の心は弱いと思っていたのだがやはり人生は経験、飛んだり爆ぜたりしてみるのらしい。
俺は笑原さんの質問に笑顔で返して見せた。
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